<スレイヤーズ西遊記>





第四十一話 



ガウリイの過去 その5


あらすじ

 もう、その5か・・・
 早いもんだな。

(そうですよね〜、私も出番が欲しいですよ。)

 ・・・お前って作中に出て無い筈じゃあ?

(・・・忘れて下さい。
 ただの独り言ですから。)

 ・・・

(忘れるんです!! 今、直ぐに!!)

 ガクガクガク!!

 あ、あ、あ、あ、あ・・・(頭を激しくシェイクされている)

 わ、解かった、解かったからその手を離せ!!

(ふう、どうやら私の誠意が通じたみたいですね。)

 ・・・殺意の間違いだろうが?

(もう一度やります?
 その少ない脳味噌が潰れてもしりませんけど。)

 目がマジだよお前(汗)
 解かった、綺麗さっぱり忘れるから俺に近寄るな!!

(・・・(冷めた目で凝視))

 本当だってば!!

(まあ、いいでしょう。)

 本気で・・・生命の危機を感じたぞ、俺は(汗)
 さて、それではスレイヤーズ西遊記 第四十一話 今から始まります!!

「・・・真面目な俺は、受けが悪いらしい。」
「そりゃそうでしょ。」
「上に同じです。」
「更に同じ。」
「キッキキキ!!」(俺なんて、前回出番が無かったんだぞ!!)






第一章.現状


 今、ガウリイは焼け残った宿屋の部屋で、例の隊長と向い合っていた。
 隊長はガウリイから発するプレッシャーに気圧され、無口になっている。

「それで、その団体の正体は?」

「それは・・・正確な情報は解かりません。
 ただ、奴等の目的が大戦を再び起す事だというくらいしか・・・」

 
 シィィ〜〜〜ン


 静寂が部屋中に満ちる。

「そうか・・・他に手掛かりとかは無いのか?」

 その静寂を破ったのはガウリイが先だった。

「もう一つ信じられない話しなのですが・・・
 先の大戦で戦死した筈の、あの『紅い虎』を見たと言う情報があります。」

 
 ガタッ!!

 
 ガウリイが急に席を立った為、座っていた椅子が後ろに倒れる。
 その表情っはフードに隠れて見えないが・・・
 雰囲気から動揺しているのが覗えた。

「・・・既に複数の兵士がその報告を聞いています。
 もし、その話しが本当なら我等の女王は・・・」

「・・・もういい。」

 隊長の台詞をガウリイの厳しい声が遮る。
 その言葉を聞いて硬直する隊長。

「やはり、何事も無く通り抜けるのは不可能なのか。
 俺にとってこの事件は・・・」

 贖罪なのか?

 ガウリイの口からその台詞は出無かった。
 だが、隊長はそう聞えたと思った。

「今更、貴方様の正体を問う様な愚問は致しません。
 ですが、確実に奴の目標は女王様です・・・
 そして、貴方にしかあの狂った男から女王様を守れる人物は、存在しないでしょう。」

 隊長は決死の覚悟で、フードを被ったままのガウリイを見詰める。
 しかし、ガウリイからの返答は無かった。

「『獅!!」

「まあ、待てよ。
 俺はただの旅の坊主だ、この国の将来を憂いはしても助ける事は出来ん。
 だが、旧知の友人に顔を出さないのも無礼だな。
 ・・・旅のついでに、首都のその友人に合いに行くとするか。」

 そのガウリイの言葉を聞いて、隊長は安堵の溜息を漏らす。
 そして、ガウリイは苦笑をしていた。
 所詮、自分には彼女の危機を見捨てる事など、出来ないのだと・・・

「そうですか、その友人の方も楽しみにしているでしょうね。」

「・・・それを聞くと、余計に気が重くなるな。
 なにしろ、その友人にさんざん世話になっておいて。
 逃げ出す様にして、遠い街で出家をしたからな。」

 隊長の言葉を聞いて、肩を竦めながらガウリイが返事を返す。
 そして、部屋の出口に向って歩き出す。
 そのガウリイの後姿を見送りながら・・・

「もう、貴方にとって全ては、忘れた過去なのですか?」

 隊長は最後の質問をする。

「・・・今の俺に過去は必要無い。
 ただ、それだけだ。」


 バタン・・・


 そう言い残してガウリイは部屋から消えた。

「でも、貴方はあの方を守ってくれるんですよね。
 昔の様に・・・」

 隊長は部屋の中で、そう呟いた。






第二章.視線


 ガウリイが宿屋から出て来ると。
 外で待っていたリナ、アメリア、ゼルガディスが寄って来る。

「・・・で、話しは終ったのガウリイ?」

「一応はな。」

 キツイ視線をガウリイに向けるリナ。
 そのリナの視線の意味を感じて、ゼルガディスを睨むガウリイ。
 そして、そのガウリイの視線を受け肩を竦めるゼルガディス。

「ま、今更隠し様があるまい。
 ここまで見事に巻き込まれたんだからな。」

「だからと言ってだな。」

 軽くそう言うゼルガディスに、ガウリイが食って掛かろうとする。

 が・・・

「そ・の・前・に、ガウリイ君、詳しい話しを聞きたいんですけど?」

「・・・目が笑ってませんよリナさぁん。」

 リナの静かな怒りの波動に、怯えまくるアメリア。
 大きな瞳には、涙が浮かんでいる。

「何よ。」


 ガン!!


 そのアメリアを見て、ちょっと罪悪感を覚えたリナは、足元の石ころを蹴る。

「ギャゥ!!」

 ・・・不幸にも、その石ころは空を飛んでいた一匹のムササビに命中した。
 そして、そのまま視界から消えるムササビ。
 その墜落先には、まだ燃え盛る炎があったりする。


 ギャァァァァァァァ・・・


「ん? 何だか悲鳴の様な声が聞えないか?」

「何、誤魔化してるのよ。
 で、その女王様を助けに行く訳?
 あたし達に、そんな余裕なんかあるの?」

 ガウリイの台詞を聞いて、リナっがそう切り返す。
 その台詞の端々には、怒りの感情が見え隠れしている。

「・・・まあ昔、世話になった人だし。
 それに、ちょっとした約束もあるからな。」

 そして、何かを考え込むガウリイ・・・
 その姿を見てリナは、内心穏かでは無かった。

 今までは全てにおいて、自分の事を優先してくれたガウリイが。
 自分の意見を聞いてくれない・・・
 何か嫌な感情が、自分の心の内にある事をリナは感じた。

「そ!! 勝手にすれば!!
 所詮あたしは、ガウリイのお供なんだしね!!」

「おいおい、何を怒ってるんだよリナ?」

 しかし、ガウリイの言葉をリナは無視する。
 そして、そのまま町の外に向って歩き出す。

「何なんだ?」

「・・・本気で言ってるのか?」

 ゼルガディスが呆れた声でガウリイに問う。

「本気って・・・俺は昔世話になった人を助け様としているだけだぞ?」

「でも、女性の方なんですよね?」

 アメリアがガウリイにそう質問をする。

「ああ、そうだよ・・・3年前も綺麗な子だったけど。
 今はきっと美人になってるだろうな。」

「「・・・」」

「俺の過去は・・・出来れば、リナには知って欲しく無かった。
 幾ら英雄と呼ばれても、結局ただの人殺しなんだからな。」

「いや、その気持ちは解るが・・・リナが怒ってるのは他の事だ。」

「そうなのか?」

 ガウリイのその言葉を聞いて、頭を抱えるゼルガディスとアメリア。
 彼等は頭痛の種には、事欠かない様だ。

 そんな二人を、不思議そうに見ていたガウリイだったが・・・

「じゃあ、リナは何に怒ってるんだ?」

 そう呟いてリナの後ろを、ガウリイは頭を掻きながら付いて行く。
 そして、ガウリイの後ろを、ゼルガディスとアメリアが付いて行く。

「これは、また・・・面倒な事になりそうだな。」

「・・・そうですよね。」

 ガウリイの後ろを歩く、二人の表情は・・・限りなく暗かった。

 そして、ガウリイ達はその町を旅立ったのだった。
 



 ・・・一匹の火傷を負ったムササビを残して。

「キキィ〜」

 悲しげなムササビの鳴き声が、半壊した町に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

第四十一話         END
							 	 	第四十二話に続く
あとがき

「こんにちわ、ニンエです。

 何だか近頃調子が悪いですね。

 ・・・ま、今回は誰かさんが久しぶり痛い目にあいましたし。

 少しは調子が戻ってきてるんでしょうかね?

 では、また次回でお会いしましょう。」

 

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