<真実への路> 第一部 第一話「始まりの別れ」 (10)
彼は突然帰ってきた・・・
「ミリ―ナ!! 今帰ったぞ!! 会いたかったぜ!!」
そう言いながら私に向って走ってくる。 そして・・・
「騒がしいですよルーク。 少しは静かにして下さい。」
私の一言で凍り付いた。
「あ、ああ・・・えっと、ただいまミリ―ナ。 もしかして怒ってる?」
「誰がですか。」
「・・・誰がだろうね。」
本当に元気な人ねルーク。 でも、私は貴方の様にはなれない。
「それで? 用事の方は済んだわけルーク。」
リナさんの確認の声が聞こえる。
「ああ、そっちの方はバッチリだ。 ところでガウリイはどうしたんだ?」
ああ、今その質問は禁句なのに・・・
「・・・ガウリイは宿屋の親子と一緒に買出し中よ!! 荷物持ちになってるわ。」
「ああ、あの娘さんと奥さんね。 ・・・どうせあんた達が大食なせいで、在庫が尽きたんだろう? まあ自業自得だわな。」
大声で笑うルーク・・・そして私はリナさんを止める機会を逃した。
「・・・ディミルアーウィン」
ゴオオッッッウゥッッッ!!
「のわ〜〜〜〜!!」
周りの机や座席と一緒にルークが飛んで行く・・・ 壁にぶつかり机に埋まって沈黙するルーク。
「ふん!! 元はといえばあんたがどっかに出掛けるのが、悪いんでしょうが!!」
「でもリナ・・・その理由がこれじゃ聞けないわよ。」
アメリアさんの突っ込みに、リナさんは冷や汗を流す。
「ルークが全部悪いの!! あたしは悪く無いもん!!」
・・・まあ、ルークも自業自得ですよね。
「どうするんだリナ? まだ目を覚まさないぞルークの奴。」
「何よあれ位の事で意識不明なんて、ガウリイなら3秒で復活するわよ。」
「・・・それはガウリイさんだけだと思うわリナ。」
「一般人と旦那を比べるのには、無理があると思うがな。」
ルークのベットの側で皆さんが集まっている。 怪我人の部屋にしてはなかなかに騒がしい。 それにもう夜だというのに、今だルークは目を覚まさない。
「今は取り敢えず様子を見ましょう。 私が今は看病しておきます。」
私の提案に一同賛成の声を返す。 ガウリイさんがリナさんに話し掛ける。
「じゃあリナ、ちょっと話さないか。」
「いいわよ? 何の話し。」
「リナの部屋で話すよ。」
そうして二人はルークの部屋から出て行った。
「アメリアちょっと夜風に当たってくるが、一緒に行くか?」
ゼルガディスさんの誘いに、アメリアさんが私を見て・・・
「そうね、邪魔しちゃ悪そうですからね。」
何を考えてるのやら。 このお二人も間もなくして部屋から出て行った。
そしてしばらく経った後・・・
「う、う〜〜ん。 ちくしょう、あの呪文馬鹿娘が。」
ルークが目を覚ます。 安堵の気持ちが沸いてくるが、それを顔に出す事はない。
「気が付きましたかルーク? 今皆さんを呼んで来ます。」
そう言い置いて私が側を離れ様とすると。
「ちょっと待ってくれミリ―ナ・・・大切な話しがあるんだ。」
体をベットから起こし、私の腕をルークが掴む。 そのルークの顔は今まで戦闘でしか見た事の無い、真剣なものだった。
「・・・何ですかルーク?」
その顔と気迫に押される様に、私は再び席に座る。
「ミリ―ナ・・・これはどうしても、確かめておきたい事なんだ。 ふざけてもいなし冗談でも無い・・・ その上で聞く、俺と一緒になってくれないか。」
その言葉を言いきったルーク・・・ 心からの言葉だと私でも解る。 本当に私を求めている事も解る。 でも私は・・・彼ほど素直にもなれないし・・・答える勇気が・・・
「私と貴方が出会って、まだ一年足らずなんですよ? それなのにいきなり求婚ですか? 何を考えているんです。」
取り敢えずの逃げをうつ。
「そんな建前を聞きたいんじゃない!! 俺の気持ちはもう以前から決まっている!! 俺はミリ―ナの本当の気持ちが知りたいんだ!! 月日なんて関係無い!!」
それなのに・・・今日のルークは私を逃がしてはくれなかった。 何故今なの? 私にはもっと時間が必要なのに・・・
「解りません・・・私が貴方をどう思っているのかなんて・・・ 私は貴方の事を殆ど知りませんし・・・ 貴方は私の全てを知っているわけではないでしょう。」
・・・これも逃げの口実にしかならない。 そしてルークはその逃げの口実を許してはくれない。
「・・・それも逃げる為の口実だ。 なあミリ―ナお願いだ、正直な気持ちだけを伝えてくれ。 俺は・・・その結果に従う。」
そこまで思いつめる程の事があったのですかルーク。 でも今の関係を壊すほど私は強くなれなかった・・・ ルーク・・・貴方の今の眼差しは私には痛すぎる。 私はルークの手を振り切って、彼の部屋から飛び出した。
「ミリーナ!! お願いだ答えてくれ!!」
その声に追いたてられる様に私は宿屋さえ飛び出す。
「本当に解らないんですルーク、私自身自分の気持ちが・・・」
そう心の中で答えつつ走り続ける。 ・・・ルークは追い掛けてはこなかった。
そして次の日の朝を迎え・・・
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