<真実への路>


第一部 第一話「始まりの別れ」

(13)

 


「でっ? 結果はどうだんたんだ。」
「勝ち、だ。」
「・・・負け戦。」
「そうか・・・俺は・・・引き分けみたいな物だな。」
 俺の最後の言葉で周りに沈黙が落ちる。
「・・・それでいいのか? ガウリイ。」
 ゼルが俺に念を押してくる。
「ああ、もう一度聞いても結果は同じだろう。
 リナにはまだ気持ちの整理がつかんらしい。
 今から再チャレンジというのも、みっともないしな。」
 早まったかな・・・しかし、時間はもう無かった。
 俺の気持ちにケジメも付けておきたかったしな。
「まあ、ルークほど悲惨じゃないのが救いだな。」
「・・・ほっとけ。
 ミリーナ・・・逃げるほど嫌なのか、俺の事が・・・」
 ・・・これは重症だな。
 まあ目の前で逃走されれば、俺もこうなるだろうけどな。
「とにかく、俺の予想通りの結果になっちまったな。
 一勝一敗一引き分け・・・まあ綺麗に並んだもんだ。」
 勝者の余裕か・・・やたらと饒舌なゼルをルークと二人で睨む。
「・・・まあ、お気の毒様だったな。
 それで決行は予定通りに行うわけだ。」
 逃げたな・・・まあいい、いつまでもこの話題に関わっている訳にもいくまい。
「ああ、そうだな。
 ルークもうそろそろ気合を入れろ。」
「・・・解ってるよ。
 さてと、落ち込むだけ落ち込んだし・・・
 準備にかかりましょかね。」
 そして俺達はそれぞれの準備に取りかかった。
 それぞれの想い人の事を考えながら・・・

 


「リナ・・・俺の気持ちは伝えたからな・・・」
 大切な女性の事を想いながら準備を進める。
「アメリア・・・約束は守って見せる。」
 俺は自分自身と、愛しい少女に約束を誓いながら準備を進めた。
「ミリーナ・・・俺はお前が本当に必要なんだ、だがお前が・・・」
 もう考えるのはよそう、正式に断られた訳じゃない。
 また聞き出すチャンスがあるかもしれない。
「行くか。」「ああ、いいぞ。」「こっちもだ。」
 そして闇夜に紛れて俺達は旅立った・・・
 一度だけ、彼女達のいる宿屋を振り返ってから。

 


「おっはよ〜アメリア!!
 今日も良い天気よね〜」
 気分良くあたしはアメリアに朝の挨拶をする。
「おはようリナ。
 かなりご機嫌ね? どうかしたの。」
 そう言うアメリアも始終顔が笑みのままだ。
「そっちこそ顔が笑顔で固まってるわよ。
 何があったのかな〜」
「べ、別にいいじゃないの・・・
 それより男性陣と、ミリーナさんがまだ起きてこないのだけど。」
 そうアメリアが言った瞬間。
 宿屋の扉が開き・・・ミリーナが入って来る。
「お、おはようミリーナ・・・
 今朝は早起きだったのね。」
 ミリーナの異様な目付きを気にしながら、朝の挨拶をする。
「・・・一晩中外にいましたから。」
「何でまたそんな事を!!」
 アメリアの質問にミリーナは苦しそうな顔をして答える。
「自分の気持ちが解らなかったのです。
 もしかしたら私は、酷い事をしてしまったかもしれません。」
「・・・ルークの事なの?」
 あたしの問に無言で首を振るミリーナ。
 その顔は苦悶の表情で彩られていた。
「ルークの事が嫌いな訳ではありません・・・
 しかし、彼の真摯な眼差しに私は耐えられなかった。」
 それはあたしも昨日経験した事だった。
 あたしは逃げる程には追い詰められなかったが・・・
 もしかして!!
「アメリア!! あんた昨日ゼルに告白されたんじゃ!!」
 アメリアも何かがおかしい事に気が付く。
「ええ!! 何だか足並みが揃いすぎてるわ!!」
 そしてお互いに託宣の存在を思い出す!!
「ガウリイ!!」
 あたしはガウリイの部屋に向って走る!!
「ゼルガディスさん!!」
 隣ではアメリアが、ゼルの部屋に向って走っている。
「ルーク?・・・貴方まさか・・・」
 ミリーナも異常な程のあたし達の反応を見て、反射的にルークの部屋に向う。
 何故気が付かなかった!!
 ルークとガウリイが、託宣について何らかの秘密を知ってる事は解っていた!!
 それに合わせた様な昨日の告白・・・あれはもしかして・・・
 考えたく無い結果があたしの頭に浮かぶ。
 あたしはあの時、素直にならなければいけなかったのか!!
 そしてガウリイの部屋には・・・
「ガウリイ・・・どうしてよ・・・これは、どうゆう事なのよ!!」
 そこには彼の剣・・・あたしとの絆を結ぶ証・・・ブラスト・ソードが置いてあった。
 震える手でその剣を取り確認する。
「本物だ・・・本物だよ。
 ガウリイ・・・あたしが答えなかったから置いていったの?
 それとも始めから、あたしを置き去りにするつもりだったの?」
 頭の中をいろいろな想像が駆け巡る・・・
 どれも当たっている様で・・・全部が外れている様だった・・・
「リナ・・・これがゼルガディスさんの部屋に・・・」
「リナさん・・・ルークが部屋にいないの・・・その代わりに・・・」
 後ろにはゼルのブロードソードを、泣きそうな顔で抱えたアメリアと。
 ルークの魔法剣を抱え、呆然とした表情のミリーナがいた。
「ここには・・・これがあったわ・・・」
「そっ、それは!!」
「まさか!!」
 あたし達の知らない所でガウリイ達は、何かを決断し・・・あたし達を置いていった。
 それぞれの想い人に、それぞれの命というべき剣を託して。
「一体・・・何が起きてるのよガウリイ・・・
 こんなの・・・こんなのあなたらしく無いじゃないの!!」
 姿を消した彼には聞こえない・・・あたしの叫びだけが部屋に響き渡る・・・

 

 

 そしてこれは・・・運命の別れ・・・

 

 

(第二話)へ続く

 

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