<真実への路> 第一部 第二話「それぞれの理由(わけ)」 (7) 「第一艦隊!! 右回りに旋回し周り込め!! 第二艦隊は前方に攻撃を集中し第一艦隊のサポート!! 第三艦隊は港町の守備に徹しろ!!」 エイジが適切な指示を次々に繰り出している。 その命令に淀みは無く・・・ あきらかに彼が、命令をする立場の人間である事を覗わせる。 それに船員達もその命令に逆らう事なく、流れる様に作業を進めている。 この事からも、船員達がエイジに全幅の信頼を寄せている事が解る。 先程のエイジが恐ろしく無いと言えば嘘になる。 しかし、この港町はセイルーンの領地でもあるのだ。 ここで王族である私が見て見ぬ振りなど出来る筈が無い!! そしてエイジが私達に気が付く。 「アメリア姫、ここからは危険です。 港町で待っていてくれませんか?」 エイジが本心から、私達を心配してくれているのは解る。 だが・・・これだけは譲れない。 「・・・いいえ。 これは私の国で起こった不祥事です!! それを他国の人の貴方に任せて私が避難するなど、とんでも無い事です!! 私はこの国の王族として、この戦いに参戦する義務があります!!」 私は一気に自分の考えをエイジにぶつける!! エイジは始め驚いた顔をしていたが・・・ 「ははは!! 俺は貴方が気に入りましたよ姫!! なかなかそこまで言い切れる王族なんていませんよ。 俺の知っているなかでも、姫は三人目のいい王族です。」 顔を笑顔でいっぱいにしながら、エイジが私に話しかける。 「では、貴方の船に同行させて貰えますね。」 「・・・しっかり掴まっていて下さいよ。 俺も海戦はまだ二回目なんですからね。」 え!! それはちょっと・・・ 「おや? 後悔してますか。」 エイジがまた微笑みながら私に話しかける。 「大丈夫です!! こうみえても私は魔術と体術に自信がありますから!!」 「頼りにしてますよ姫。」 そして私達を乗せた船は港を出港した。 海賊船との接触寸前に、シルフィールさんがとんでも無い事を言い出す。 「あの〜、私がドラグ・スレイブを唱えれば一撃で終わるのでは。」 「「・・・本気?」」 「何か不都合でも?」 シルフィールさん・・・頼みますからそれだけは止めて下さい。 「呪文の衝撃波で津波が起こりますよ・・・確実にね。」 エイジが説明をする・・・しかし、リナに毒されてるなシルフィールさん。 「そ、そうですね。 済みません気が付きませんでした!!」 そんなやりとりをしながら、私達は海賊との海戦に突入した。 海賊自体は結束力も弱く、ただ数に物を言わせて責めて来るだけだった。 こちらは船の数自体は少ないものの、エイジの卓越した指揮で海賊を圧倒していた。 そして・・・事件は海賊達の船が残り少なくなってから起きた。 「お前等!! これを見て見ろ!!」 そう言って海賊達の頭目らしき者が指差した物は・・・ 「あっ!! あれは投石器じゃないですか!!」 海賊達は船に大型の投石器を付けていた。 海戦での戦いは火矢と白兵戦が普通です。 後は例外として魔術が使われるくらい・・・ あの投石器はあきらかに海戦向きではない。 あれほどの大きさの投石器ならば、準備をしている内に白兵戦に突入してしまう。 それに海上の船に当てるには、余りに精度が悪過ぎる兵器です。 ならば何故海賊達は投石器等を船に積んでいるのか? 「・・・手に入れられなければ消してしまうつもりか?」 エイジの呟きに海賊達の狙いに気が付く。 まさか!! 港町を壊滅させるつもりなの!! 確かにあの大きさの投石器なら、あの距離からでも町を直接狙える!! 「もう気が付いただろう? そうさお前等が邪魔をするからその町は消え去るんだよ!! 燃える町と住民の悲鳴を聞いて、俺達に逆らった事を後悔しやがれ!!」 海賊の頭目の合図を受け、一斉に海賊船から燃え盛る岩石が飛び出す!! 駄目だ!! 私の力では、あの無数の燃える岩石を止める事は出来ない!! 私は目を閉じて耳を塞ぎたかった・・・ 隣ではシルフィールさんが青い顔で海賊船を睨んでいた。 だが・・・エイジだけは違っていた。 「つくづく救い難い馬鹿共だな。 仕方が無いなこの結界内では少々疲れるが・・・」 そう呟き私達が見ている前で腰の剣を抜く。 エイジの腰の剣は、王族の私が目を見張る程の立派な剣だった。 白色を基調とし、鞘全体に豪華な刺繍や宝石があしらってある。 そして、その剣を眼前に構えたエイジから呪文が唱えられる。 「大空を舞いし大いなる者よ 我、盟友にして我、契約せし者よ その自由を司る翼もて!! 我と汝に仇をなす者共に!! 疾風の洗礼を与えん!!」 私が聞いた事も無い呪文をエイジが唱え終わった瞬間・・・ エイジの体と構えた剣から白い閃光が迸る!! その眩しさに目を閉じる私。 そんな私の耳にシルフィールさんの声が聞こえる。 「・・・そんな、あれほどの数の岩石が!!」 シルフィールさんの声に反応して私も上空を見上げる。 そして、私達は大空に奇跡を目撃した。
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