<真実への路>


第一部 第三話「あの丘へ至る路」

(3)

 予定通りに俺達の船は航海を消化し・・・
 あの思い出の大陸を発って半月後、俺は新大陸に足を下ろした。
 この港町が新大陸で俺が始めて訪れた町になるわけだ。
 現状を考えれば不謹慎かもしれないが・・・やはり見知らぬ土地に足を踏み入れると心が湧く。
 これも俺の冒険心、もしくは探求心の仕業かもしれん。
 などと心の中で呟きながら俺は船の桟橋から港へと降りて行く。
「さて、これから先はまず何処へ行くんだ?」
 隣を歩くルークに今後の予定を質問する。
 しかしルークの視線は前方を向いたままだった。
 それにつられて俺もルークが睨んでいる方向を見る。
 ・・・武装した兵士の団体がこちらに向かってくる。
「なかなか豪勢なお出迎えだな・・・これがこちらの流儀か?」
「そう思うならあいつ等と一緒に酒でも飲んで来い・・・ガウリイを連れて逃げるぞ!!」
 やれやれ、着いた早々逃避行とはな。
 やはりこの土地でのガウリイの味方は少ないらしい。
 しかし俺達の後ろには既に旅装束を終えたガウリイと、それに付き従うエイジがいた。
「もう準備は整ってるさルーク。
 じゃあなエイジ・・・また会おう。」
「・・・俺はお元気でとしか言いませんよ。
 次に会う時はノアもジークも一緒ですからね。」
 その言葉を聞いてガウリイがエイジに微笑む。
「ああ、俺もさようならなんて聞きたく無いし言いたくも無い。
 必ず再会できるさ・・・俺のやるべき事はまだ始まってすらないんだから。」
 その言葉を聞いてエイジの顔にも笑顔が浮かぶ。
「ええ、待ってますよ俺達は頑固な敵の邪魔をしておきますよ。」
「頼む。」
 最後に一言だけエイジに告げガウリイは俺達と合流する。
「この有難いお出迎えをどう受け取るべきかな、ゼル?」
 悪戯を考える素振りで俺に意見を求めるガウリイ。
「一応相手の意見を聞いて見たらどうだ?
 俺もガウリイの罪状に興味があるからな。」
 それが今後の行動の指針にもなるだろう。
「まっ、あの程度の警備隊なら突破は簡単だろうしな。」
 ルークも反対はしないらしい、頭の後ろに腕を組んでガウリイの後ろに控えている。
 そうこう言ってる間に俺達は完璧に警備隊に囲まれてしまった。

 まず言葉を発言したのは警備隊の隊長らしき人物だった。
「貴様がガウリイ様の名前を騙る偽者か!!
 抵抗するならこの場で命を落とす事になるぞ!!」
 ・・・ほう偽者ときたか。
 思わず隣にいるガウリイの顔を覗き見る。
 流石にガウリイもその顔に苦笑を浮かべていた。
「じゃあ何故俺が偽者だというんだい警備隊の隊長さん?」
 ガウリイの台詞を聞いて隊長はニヤリと笑う。
 何か決定的な証拠があるのか?
「本物のガウリイ様ならば、ガブリエル家の家宝である光の剣を持っておられる筈!!
 貴様の腰にある剣はただの剣だろうが!!」
 成る程いいところに目を付けてくるな敵さんは。
 しかしガウリイが光の剣を持っている事は、こちらでは常識らしいな。
 隣のガウリイと目を合わせてお互いに笑う。
「う〜ん、流石に光の剣はもう手元に無いからな〜
 どうするゼル、異世界まで取りに行くか?」
「取り返しても誰も使いたがらないと思うぞ俺は・・・」
「まあな、あれは俺の存在をカモフラージュする為にあった物だしな。」
 ガウリイの事情と光の剣との関係は既に航海中に説明をうけている。
 しかし複雑な事情だったなあれは・・・
「え〜い!! 何を和んでいる犯罪者のくせに!!
 構わんさっさと捕まえろ!!」
 しびれを切らした隊長の命令に従って警備隊が俺達に殺到する。
「それじゃあいいぞルーク。」
 ガウリイが素早く身体を横に移動し、後ろのルークに合図を送る。
「はいはい・・・ディミルアーウィン!!」
 ガウリイの後ろで既に唱え終わっていた呪文を開放するルーク。
 ヒュゴォォォォォウウゥゥゥ!!!!
 超高圧の空気の固まりが目の前の地面に炸裂し、堪らず吹き飛ぶ警備隊隊長と隊員達。
「のわわわわわぁぁぁぁぁぁ!!!」
 まあ大した怪我はしないだろう。
 ルークも直接呪文を身体にぶつけずに、目の前の地面に放っていたからな。
「さ、逃げるぜガウリイ、ゼル!!」
 ルークを先頭に走り出す俺とガウリイ。
「これから先の予定はどうする!!」
 俺がルークに再度同じ質問をする。
「俺の家だよ!! 忘れ物があるんでな!!」
 走りながらルークが俺の質問に答える。
「じゃあルークの親父さんに会うのか・・・気が重いな。」
 本当に嫌そうな顔で呟くガウリイ。
「そこぼやか無い!! 仕方ないだろうがまだ名は継いでも力が無いんだから!!」
 成る程忘れ物とは例のアレか!!
「俺は結構楽しみだぞルークの親父さんなんかに会えるとはな。」
「・・・後悔するなよゼル。」
「・・・それは同感だぞ偏屈な爺だからな。」
 二人の呟きを聞きながら俺達は港町を脱出した。
 しかし・・・着いたそうそうこの騒ぎとはな、先が思いやられるぞ。
 だが俺はこの先にある冒険に心を湧かせている事も自覚していた。

 

 

 

(4)へ続く

 

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