<真実への路>


第一部 第三話「あの丘へ至る路」

(9)





 無事に帰って来れた、か・・・
 神殿を出てルーク達を確認し、やっと俺は一息付く事ができた。
 その時俺に頭の中に直接話し声が聞こえてきた。
 顔をしかめながらその声の主に意識を集中する。

『そう悲観することもなかろう。
 心配せずとも時間が経てば儂の知識は自然とお主に吸収されるわい。』

 能天気な声で諭される。
 ・・・そこで俺も声を出さずに心で直接その声の主に返答をする。

(それが何時に日になるか解らんから困ってるんだろうが!!)

『若いくせにつまらん事に拘るの〜』

 ・・・ところで、あんたの事はどう呼べばいんだ?

『そうじゃな・・・ロウと呼べばいいじゃろう。』

(解った。)

 そして俺とロウの共同生活は始まったのだ。










「ガウリイ!!」

「ガウリイ様!!」

「旦那!!」

 三人の友人から手荒な歓迎を受けた・・・これも俺を心配してくれるからこそだな。
 だが・・・俺は何処まで彼等に真実を話せばいいのだろうか?

『未だ時は満ちておらん・・・
 何の為に儂が現世に残ってお主の力を封じておると思う?』

(・・・解った、今は国内の平定だな。)

『それくらい自分で考えんと脳味噌が腐るぞ・・・』

 このっ糞爺が!!

『・・・聞こえておるぞガウリイ(怒)』

(・・・)

「何をぼうっとしてるんだガウリイ?
 ・・・それより神器の影響は無いのか?」

「あ、ああ何でも無いさ。
 神器についてはいずれ詳しく説明する。
 これからの方針は・・・まず国内の平定だ、その為にも直ぐに首都に向かう!!」

 ルークとゼルは少し不満気な顔をしたが、今後の方針に異は無かったらしい。
 大人しく自分達の荷物を取りに向かった。
 今後の事を考えている時、俺に彼女が話しかけてきた。

「あの・・・私は今後どうすればよいのでしょうか?」

 フィーナ・・・彼女と父親の不幸は俺と係わってしまった事かもしれない。
 どうする? このままこの神殿にいれば他国に攻め込めれるのが目に見えている。
 もうこの神殿を不可侵と思う価値は無く・・・
 その神殿の不可侵の象徴はいまや俺の手の中だった。
 
 彼女はその責務から今解放されたが、彼女の人生が終わったわけでは無い。
 やはり責任は俺が取るべきか・・・

「フィーナ、俺に付いてきてくれるか?」

「はい!! 喜んで!!」

 何故か俺の後ろでゼルとルークが顔を手で覆っていた。
 そしてお互いに目線で会話をして同時に天を仰ぐ・・・

『お主・・・あの時に聞いた話しだと心に決めた女性がいるのでは?』

(そう言った筈だが? それがどうした耄碌したのかロウ?)

『・・・天然か・・・それとも策士なのか(ブツブツ・・・)』

 どうやらボケが始まったらしい。
 そして顔を輝かせて俺に感謝の言葉を述べるフィーナと。
 暗い顔をしているゼルとルーク。
 そして・・・

 カチャリ・・・

 俺の手に持っていた大振りな剣が鳴る・・・
 王家では口伝で聖剣と伝えられる神器。
 ロウの精神が宿る剣。
 そして俺の力を封じ込め解放する事の出来る唯一の剣。
 この剣の銘は<蒼竜の剣>、今後俺の相棒となる・・・剣だ。







 その後の俺達の行動は早かった。
 まず神殿に残っている神官達に今後の避難先を指示し。
 周辺の住民達にも同様の指示を出した。
 この国は人口自体が少ないので俺の国に流れ込んでもさして困る事は無い。
 避難が間に合わない遠方の人は・・・隠れていてもらう。
 それ程時間をかけずに俺はこの地をまた治めるつもりだったから・・・

「・・・覚悟はいいなゼル、ルーク、それとフィーナ。
 やっと俺達はスタート地点に辿り付いただけなんだぜ?」

 俺は最後通知を出した。
 これから先は命賭けの国盗り合戦だ・・・
 何時も何かに怯えつづけ、他人を疑うだけの生活かもしれない。

「何を言ってるんだよこれからが楽しくなるんじゃないか!!
 俺はとことん付き会うぜガウリイ!!」

 だから俺は自分が信じた仲間とこの道を行きたい・・・
 ただの幼馴染のはずが、今は一番頼れる仲間となっていた。

「今更何を確認する必要があるんだ?
 ここまで連れて来ておいて引き返せ、など逆に拷問に等しいぞ・・・
 それにガウリイ、お前俺の身体を元に戻すヒントをくれるんだろう?」

 ああ、もう直ぐその知識は俺のものになるさゼル。
 結局俺は他人を巻き込む事で何時も前進してきたんだ・・・

「私は・・・何時もガウリイ様の味方です!!」

 俺は彼女を・・・幸せには出来ない。
 だが彼女が幸せになる手伝いは出来る筈だ!!
 そして・・・リナを!!

「出発!!!」

 俺は皆に声をかけ首都に向けて馬を駆け出した。
 後には頼れる仲間が・・・

 

 

 

(10)へ続く

 

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