<真実への路>
第一部 第四話「再会」
(10)
私達がそのテントに辿り付いた時・・・
内部では男性二人が泣きながら酒を酌み交わしていました。
見ていて、実に何と言うか―――コメントに困るわ。
「・・・おい、幾ら相手の主戦力を壊滅させたからと言って、油断のしすぎじゃないのか?」
憮然とした表情で、私の隣に居た男性がそう注意をする。
その言葉を聞き、彼等が私達の方を向いた瞬間!!
―――ギィン!!
空間が音を立てて軋むような視線を私は全身に受けました!!
背筋に冷たい汗が浮かびます・・・
「・・・ゼルゥ〜、お前は良いよな綺麗に元の鞘に収まってよ〜」
「・・・(コクコク)」
酔っ払いその一の難癖に、顔を顰めるゼルガディスさん。
酔っ払いその二は、涙目でお酒の入った杯を干しながら頷いています。
その姿からはとてもじゃないですが・・・列国の王と、その将軍の一人とは想像出来ません。
「だいたいよ〜、嘘でもいいから『顔を見に来た』とか『突然消えて心配だった』って言えないかな〜
・・・まあ、そんな事言うミリーナじゃない事は分かってるけどよ。
ドチクショ〜〜〜〜〜〜〜!!」
でも一人で愚痴を言って、一人で完結してる辺り。
まだまだ扱い易い酔っ払いかもね、少なくともお酒と相槌さえあれば、他に被害は及ばないし。
「俺は・・・俺は!! お前が、お前が憎い!!
一人だけ幸せになりやがって〜〜〜〜〜!!
あの時の三人の誓いを破るつもりだな、ゼル!!」
「こら!! 叩くな!! 燃やすな!! 斬り付けるな!!
その剣で斬られたら俺でも無事に済まんだろうが!!」
・・・前言撤回、とことんデンジャーな酔っ払いだわ、この人
逃げ惑うゼルガディスさんをテントの入り口から見守りながら、私は一人冷汗をかいていた。
ちなみに、ガウリイさんは一人黙々とお酒を飲み続けていた。
「馬鹿ですか、貴方達は?」
「う・・・」
「・・・そう、はっきり断定しなくても」
自棄酒の理由を問い質したところ、その真相を聞き私は呆れた。
ついでに言えば、その八つ当たりの被害にあったゼルガディスさんの視線はとことん冷たい。
まあ、当然だと思うけど。
でも、国王とその将軍を正座させているこの光景は・・・この国の人達には見せられないわね〜
「まあ、確かに私達を戦争に巻き込みたくなかった事は分かります。
ですが、もう少し言葉の選び様があるでしょう?
ましてや、何も言わずに姿を消すなんて言語道断!!
すなわち悪です!!」
「「・・・背後で怯えてるゼルはどうなんだよ?」」
「既にお仕置き済みです!!」
私の台詞を聞いて、気の毒そうな顔をゼルガディスさんに向ける二人
そんな二人に、ゼルガディスさんは沈痛な表情で頷く。
「・・・ブライ宰相とノア将軍の目の前でな、昔の事を荒いざら披露されてしまった。
ついでに自分の事を皆に紹介しろと・・・城中にお触れを出す騒ぎだ」
何故か拳を握り締め、顔は下を向けたまま搾り出すように呟くゼルガディスさん。
「「・・・た、大変だったんだな、お前も」」
同情の漲る声でゼルガディスさんを慰める二人でした。
かなり不本意ですが、今はそれどころじゃないわね。
私が更にキツイお灸を据えようとした時・・・
唐突にテントの入り口が開かれ
「大変だガウリイ、ルーク!!
お前さん達の想い人がガドルの奴に捕まったらしい!!」
手に何やら手紙らしきモノを握った男性。
あの船団を率いていた、エイジと名乗っていた男性がそこには居た。
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