＜真実への路＞
第一部 第四話「再会」
（１１）
目を覚ました時
目の前には小心者そのもの表情をした小男と、黒いローブを纏った長身の人物が居た。
朦朧とする意識をはっきりさせようとして、あたしは頭を左右に強く振る。
「・・・目が醒めたようだな」
ローブの人物・・・どうやら男性が、私の動きに気が付いた。
「本当にこんな小娘を取り戻す為に、あのガウリイが来るのか？」
小男の方が甲高い声で叫ぶなり、私の髪を掴んで顔を上に向かせる。
その時気が付いたんだけど、私は牢獄様な場所で鎖に繋がれていた。
ガウリイ・・・その単語に、私の心の中で何かが激しく揺らめく
「ふん、何を期待してるのか知らないけど・・・ガウリイなら来ないわよ。
あたしの事は忘れて、王様の仕事に専念するそうだから」
あたしは半ば自嘲気味な声で、目の前の二人にそう忠告をする。
ガウリイのせいでこんな目に会っているみたいだけど、今は文句を言う気力すら沸かない・・・
情け無い、あたしはリナ＝インバースなのよ？
こんな事で意気消沈をして、顔を下げているなんて・・・らしくない、らしくないよぉ
「こんな事を言ってるぞ、ダリオ！！」
「心配するなと言っているだろう、ガドル殿
ガウリイの奴はこの女の事を見捨てはしない。
見捨てるのなら、白鳳の軍団から見張りをだしなどしないだろう」
・・・何ですって？
ガウリイが・・・あれだけ私の言葉を無視したくせに、私に見張りをつけていたの？
ダリオと呼ばれた男の言葉に、思わず反応をして私は強く睨む。
「良い目だ、希望を見つけた時の目だな。
・・・だが、その目が絶望に染まる瞬間が、私は一番好きだ」
一瞬、背筋に氷を当てられたように感じた。
感情の伺えない瞳が、私の顔を凝視していた。
そして、そう言い残したまま、牢獄からダリオは立ち去って行った・・・
足音さえ殆どたてずに、消えて行くその姿に私はある確信をもった。
「ガウリイの奴も変わった趣味をしているな、こんな小娘に執着するとは」
「悪かったわね、小娘で」
捨て台詞を残して立ち去ろうとガドルに、あたしは憎まれ口を返してやった。
普段、自分の発言に反論する人間いないのか・・・ガドルは真っ赤な顔になってあたしを怒鳴りつける。
「き、貴様！！
一体誰に向かって口を聞いているつもりだ！！」
「この国の前宰相様で〜
魔族の力を借りてまで戦争に勝とうとする極悪人〜」
バシッ！！
怒りに顔を赤くしたガドルが、震える手であたしの頬を張っていた。
「なんて生意気な女だ！！
言っておくがな、貴様の魔力はダリオによって封印されている！！
ここから逃げ出そうと思っても無駄だからな！！」
憎々しげにそう言い残すと、甲高い足音を残してガトルはこの場を去った。
そしてようやく、あたしは今までの出来事を思い出していた。
・・・ミリーナと港に向かって歩いていた時、複数のゾンビに襲われ。
それらを退治した後に、あのダリオらしき男によってあたし達は気絶させられたのだった。
油断もあったと思う。
だけど、あたしとミリーナを相手にして勝利を収めたその手並み
そして、あたしの魔力を封じたという話を聞く限り・・・
「―――ライティング」
やはり、あたしの魔力は発動しなかった・・・
初歩的なライティングでさえこうなのだ、非力なあたしではこの鎖を断ち切る事は不可能だ。
「・・・来るかな、ガウリイ」
あの会見で彼は言った・・・自分は最早一国の王なのだ、と
ならば、来るはずは無い。
一人の女と、一国の運命を担うその身の安全
分かりきっている答えだ。
でも、あたしは―――
彼の事を信じたかった・・・
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