<真実への路>

 

 

第一部 第四話「再会」

 

(7)

 

 

 私達は予想外の苦戦を強いられています。

 ・・・ガウリイ様は、私の隣で忌々しげに敵の軍勢を睨んでいます。

 

 そう、アンデットで構成された不死の軍団を。

 

「フィーナ、君の力で一度にどれだけのアンデットを浄化出来る?」

 

「せいぜい、2千体が限度ですガウリイ様。

 何か触媒となるモノがあれば別ですが。」

 

「そうか。」

 

 現在、自軍に向かってくるアンデットの総数は・・・約2万体。

 私の全力をもってしても、浄化出来るのはその一割です。

 そして、通常の武器ではアンデットを滅ぼす事は出来ない。

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

     ドゴォォォォォォ!!

 

 私達が眺めているアンデットの軍隊・・・その一角が爆音と共に燃え上がります。

 そして長大な炎が一瞬だけ現れ、数十のアンデットを燃やし尽くす。

 

「・・・ルークの奴、張り切るのはいいが。」

 

「一人だけ突出されても困りますね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

 ルークの実力が部隊から飛び抜けているのは周知の事実。

 だけど彼は軍団の指揮官でもあるはず。

 ・・・きっと副官は今頃泣いてるでしょうね。

 

「だが、ルークかもしくは魔剣の類を持つ者しか、この軍団には勝てない。

 ガルドの奴、戦争にアンデットを使うとは・・・そこまで常識を踏みにじるか。」

 

 言葉は静かですが・・・内心の怒りが、端々に伺えます。

 そう、敵の部隊は死者を辱めるものです。

 

 アンデットに殺された者はアンデットになる。

 

 つまり、昨日の友と嫌々ながらも剣を交える結果になる。

 そして、彼等は疲れを知らず進撃を止める事は無い。

 死してなお魂を束縛され、戦う事を強要される人達。

 この外法を用いることは・・・戦争では禁忌でした。

 

「せめて、強力な魔道士でもいれば・・・彼等の進撃を止める事も出来ますが。」

 

「・・・魔道士、か。」

 

 少し、遠い目をして考え事をされるガウリイ様。

 ・・・何か、気なることを私が言ったのかしら?

 

 やがて、微笑みながら私に向かってこう言われます。

 

「ルークの奴の封印が解除されれば、一網打尽なんだけどな。」

 

「それはガウリイ様も同じでしょう?」

 

「俺は・・・動けないよ。

 いや、動いてはいけないんだ今は。

 特に人間同士の戦争には、な。」

 

 悔しそうにそう呟き、ルークの活躍を遠めに眺めています。

 今、ガウリイ様は何を思っているのでしょうか?

 

「何時かは・・・通らなければならない道がある。

 だが、その道を忌避し、避けつづけ、居心地の良い場所に留まる事は・・・

 罪、なんだろうな。」

 

 そう言って、指揮棒を持ち立ち上がります。

 

「全軍、一時退却!!

 日が落ちる前に砦に帰還する!!」

 

 ガウリイ様の号令が部下達に伝達されようとした時・・・

 

    ドギュゥゥゥゥゥゥゥ・・・

 

 真紅の光線がアンデット軍団の中心に突き刺さり。

 

        キュアァァァ・・・

 

         ドガァァァァァァァァァンンンンン!!

 

 

 盛大な爆音と、爆風により半数以上のアンデットが消し飛びます!!

 

「何だ何だ、何なんだ〜〜〜〜〜〜〜・・・」

 

 あ、ルークも一緒に吹き飛んでる。

 

 一人で敵軍に特攻をするからです、良い薬になるでしょう。

 ・・・まあ、彼なら無事に帰還すると思いますし。

 

 それにしてもこれは・・・魔道士達に使える最大の呪文!!

 あの、ルビーアイの力を借りた・・・

 

「ドラグ・・・スレイブ、だと?

 まさか!!」

 

 隣ではガウリイ様が何故か、呆然とした表情で呟いています。

 一体・・・何が起こったのでしょうか?

 

 そして、その答えは直ぐに得られるのでした。

 私には予想も出来なかった存在によって。 

 

 

 

 

 

 

(8)に続く

 

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