時の流れに番外編

 

 

 

ナデシコ的三国志

 

 

七話、黄蓋周瑜に火攻めを提案し、曹操に偽りの手紙を送る前編

 

 

 

前回までのあらすじ

 

 

 

陸口布陣のため曹操は荊州水軍を指揮していた蔡瑁を司令官として派遣するが、霧の中を進むという愚を

犯し大きく時間を無駄にしてしまう。

一方呉は周瑜を司令官として派遣、焦らず落ち着いて長江を遡った結果見事陸口制圧に成功する。

更に遡り、進路を戻してきた魏軍を赤壁にて撃破、初戦を飾った。

破れた魏軍は北岸の烏林へ退き守りを固めた。

ここに一種の均衡状態となり戦局は長期化しようとしていた。

 

 

 

「ル、ルリちゃん・・・・・・・・・・・・・・いい加減機嫌直してよ(疲)。」

 

しょっぱなから劉備サラに仕える勇将趙雲アキトが、電子の妖精(臥竜)の異名を持つ諸葛亮ルリに許しを

乞うている。

言葉さえ聞かなければミスをした武将が軍師に謝罪しようとしているようにも見える。

 

「あんな胸なし我侭ロリ娘(ラピスファンごめんなさい)といちゃいちゃして!!。

 さぞ楽しい陸口取りでしたでしょうね!!(怒)。」

 

何度も同じ文句を言うルリにアキトもうんざりしていたが、ここ夏口に戻ってくる前にも相当絡まれていたのだ。

無事陸口制圧に成功しサラの元へ戻ってきたアキト、だがネルガル(呉)の兵士達から周瑜ラピスはアキトが

お気に入りで、ずーっとべったりだっという話が飛び交い、サラと張飛アリサからも烈火のごときお叱り(笑)を

受けた。

 

「アキト!!、いつ私があの子といちゃつけって命令を出したのよ!!(怒)。

 あなたはあくまでもラピスちゃんの護衛でしょ!!。」

 

「そうです!!、だから私と交代すればよかったのです!!(怒)。

 どういうつもりなのですか!!。」

 

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!!。

 ちゃんと護衛もしたんだよ。

 ラピスを狙って放たれた矢をちゃんと止めたし・・・・・・・・・・・・・・・・・・すいませんでした(汗)。」

 

弁解も2人に睨まれ無となり、頭を下げることになったアキト。

その後夏口へ帰る途上でもぶつぶつと文句を言われ、平謝りしてきたのだ。

 

「(女の子って根に持つなぁ・・・・・・・・・・・・それとも彼女達だけなのかなぁ)。

 と、とにかく今日一日はルリちゃんと一緒にいるからさ、勘弁してよ、ね、ね、ね(ホントは休みたいんだけど)。」

 

「ホントは休みたいと思ってますね?(怒)。」

 

簡単に見ぬかれ狼狽するアキト、さすがは最高の軍師である(笑)。

 

「ギク!?、ま、まあそれはともかく陸口制圧に成功してほっとしてるよ。」

 

アキトが真顔で言ったのでようやくルリも軍師の顔になった。

 

「そうですね、ですが楽観はできません。

 確かに陸口制圧は大きいですが、あくまでナデシコA(漢魏)の圧倒的有利となるのを防いだに過ぎませんし、

 初戦を飾って意気も上がってはいますが、兵力の差はまだまだいかんともし難いものがあります。

 恐らくこの戦いでナデシコAもネルガルを侮り難しと単純に攻勢には出てこないでしょう。

 やっかいですよ、長期戦になれば領土の少ないネルガルや私達の方がずっと不利な立場に立たされます

 から。」

 

ルリの見事な状況判断を前にアキトはさすがに厳しい表情を隠せなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・この状況を打開する手はないのかい?。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・こればかりはどうしようもありません。

 今は兆発を繰り返しているネルガルの根気に期待しましょう。

 それはそれとして!。」

 

「それはそれとして?。」

 

「ずっと一緒にいるって言ったのですから、ずっと一緒にいてもらいます!!。

 やはりまだ復調していない私のために添い寝をば!!(はぁと)。」

 

「え!?、もうすっかりいいってシュンさんが(関羽シュン)・・・・・・・・・・・・・・・

 うわ!?、まだ真昼間だよ(?)!!。」

 

「問答無用です!!(はぁと)。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・あんたら本当に戦争の渦中にいるのか?(BY作者)。

 

 

 

 

 

 

 

陸口からネルガルが操船でナデシコAが布陣する烏林近くまで出張り、何度も兆発を繰り返している。

 

「やーい、腰抜けー!。」

 

「やる気がないなら帰っちまえー!。」

 

「それでも中原を制した精鋭かー!。」

 

(き、緊張感のない兆発だな、BY作者)ナデシコAの兵力を少しでもそごうと今日も兆発しているが、

なんの変化もない。

 

「く!?、ネルガルめ!!、悔しい!!。

 今すぐにでも出張って八裂きにしてやりたいわ!!。」

 

前衛を守備しているのは前回に引き続いて荊州水軍都督(水軍の司令官)を任されている蔡瑁ムネタケだった。

陸口制圧失敗のあげく初戦で大敗を喫してしまった彼は、司令官の地位を降ろされるどころか殺されるのでは

ないかと焦っていた。

だが曹操ユリカはそれほど怒ってはいなかった。

 

「ふ〜ん、そっかぁ。

 でもまあいいよ。

 陸口をとられたからって負けるわけじゃないし。

 いいよ、許したげる。」

 

アキトには興味があってもムネタケに興味のないユリカ(当然です!!、BYユリカ)は最悪の事態ではなかった

ので、軽く許した。

これに渋い表情を見せたのは 程cメグミである。

 

「(久々の出番だわ!!)、艦長いいんですか?、そんなに簡単に許しちゃって。

 他の武将達へのしめしがつかないと思いますけど。」

 

だがユリカに気にした様子はない。

 

「いいのいいの、ほらよく言うじゃない。

 王者の器量って言うのよ、ブイ!!」

 

この時ムネタケはピースサインをしているユリカの前で平伏しているしかなかった。

ネルガルの兵に兆発されるよりもむしろそっちのほうに怒りが集中していた。

 

「(ワ、ワタシがどうしてこんな小娘に頭を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)」

 

ムネタケの存在など全く無視してメグミが先を進める。

 

「陸口をとられたのは痛いですけど、全体的に見れば対した事はないですよね。

 長期戦に持ちこむ以上挑発に乗らないで静観の構えを見せるのがベストだと思います。」。

 

「う〜ん、だらけそうだなぁ。

 ねえ、ジュン君はどう思う・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ、いない?。」

 

「(いつもだらけてるじゃない)。寝ぼけないでくださいよ。

 アオイさんはミナトさんやミスマル提督と一緒に許昌に帰ったじゃないですか!!。」

 

「あ、そうだっけ。」

 

呆れているメグミの説明を受けてユリカはやっと思い出した。

荀ケジュン陳羣ミナト夏候惇コウイチロウの3人は許昌の留守居役としてすでに帰還していた。

ユリカはとりあえずムネタケに指令を出した。

 

「いいですか、提督。

 向こうの兆発に乗ることなく静観の構えを見せてください。

 今度ミスったらお仕置きです!!。」

 

「ハ、ハハー!!。」

 

ひたすら平伏して命令を聞いていたムネタケ。

とりあえず現状維持できたのでほっと胸をなで下ろした。

 

「(と、とりあえず現状は維持できたようね・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 あの冷血男が艦長にどんな報告をするか気が気じゃなかたっけどこの分じゃ何も言ってないよう

 ね・・・・・・・・・・・・。

 今はこの屈辱に耐えて静観するしか出世の道はないわ!!。

 見てなさいよ。いずれあんた達パープリンの度肝を抜いてやるんだから!!。」

 

ムネタケは一礼するとその場から去ろうとした。

するとユリカがそれを止めた。

 

「ムネタケ提督、まだ言うことがあります。」

 

「は、言うこと(まさか心変わりして降格なんていうんじゃないでしょうね)?。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アキトだけは殺さないで捕縛してくださいね(はぁと)。」

 

「(この小娘なにを言うかと思ったら!!)、ははー、必ずや捕らえてご覧に入れます。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・ぶつけることのできない怒りを思い出しながら彼は必死にネルガルの兆発に耐えていた。

そしてこの対陣が一ヶ月に及ぶ頃に、一つの変化が起こることになる。

 

 

 

 

 

 

 

許昌、ここは魏の都だった所である。

204年曹操はに華北の雄、袁紹の子らを打ち破った際にその中心都市だったギョウを都にした。

これはギョウがそれだけ食料の生産に優れていた証拠である。

だがそれでも許昌は魏の中心都市であり、時の皇帝もここにずっと戴かれていたのだ。

 

「はー、心配だ心配だ心配だ心配だ心配だ・・・・・・・・・・・・・・・・以下略。」

 

夏候惇コウイチロウが同じ台詞を繰り返している。

娘の(?)ユリカが心配で仕方ないらしい。

困った顔でそれを諭そうとしたのは荀ケジュンである。

 

「提督、落ち着いてください。

 そんなに心配しなくても十分勝てる戦ですよ。」

 

「そうは言ってもだな。

 あの子はこう、大きな兵を持つとポカをやらかしてしまうことがあるからだなぁ。

 心配で仕方ないのだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん、何かね。、その書類は。」

 

コウイチロウはジュンが持っていた書類に目をつけた。

 

「え、ええ。

 新たな人材の候補者です。

 ユリカが、あ、いや、ユリカ様が智謀に優れる軍師を所望してるんですよ。」

 

「軍師?、メグミ君と君で十分じゃないのかね?。」

 

「ええ、でも僕は現場よりもバックアップですし、メグミさんは強気過ぎます。

 もっと柔軟な思考を持つ、穏やかな軍師が欲しいそうで。」

 

「我が娘ながらはっきりとした物言いだ。」

 

この一年前に、曹操は懐刀と言われた郭嘉を失っている(異説あり)。

曹操としてはこれに代わる新たなる軍師を欲しがっていたのだ。

 

「で、その候補の一人が彼女です。」

 

そう言ってジュンは履歴書を差し出した。

そこには長い黒髪を後ろに流した美しい女性が写っていた(だから写真って)。

 

「ほう、彼女は確か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「はい、名族司馬家の次女(本当は次男)司馬懿舞歌です。」

 

司馬家は漢の代々の名族である。

正確には201年に郡の会計官として推挙を受けたようだが、断っている。

 

「確か兄上が有能で名高い司馬朗八雲だったな。」

 

「彼女は兄の八雲を数倍する能力の持ち主ですよ。」

 

そう言いながらもジュンはため息を漏らした。

なにせ気ぐらいが高く一度は断られている。

何度招聘に赴いても結果は同じなんではないかと悪い考え方に陥ってしまっていた。

 

「うーむ、しかし何かこの人物を迎える気にはなれんのだが。」

 

「同感です。でも能力を考えれば是非とも欲しい逸材ですよ。」

 

舞歌になにかひっかかりを覚える二人。まるで後の歴史を知っているかのような勘の良さだ(笑)。

 

「でもとりあえずはネルガルとの戦いが終わってからです。

 それまではユリカ様もそれに気をとめてはいられないでしょうし。」

 

ジュンはそれだけ言うと、履歴書をまとめて仕事にとりかかった。

この司馬懿舞歌を登用する際にまた一悶着あるのは言うまでもない話・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「うう〜・・・・・・・・・・・・・・・・・イライラする!!(怒)。」

 

陸口に布陣してナデシコAとにらみ合いをしていたラピスは陣幕でいらいらしていた。

しきりに兆発を繰り返してみたものの、敵に動く気配はない。

如何にネルガルが水軍で抜群の強さがあるとしても、こちらの土俵に敵が乗ってこなければ利点にはならない。

長期戦になればどうしても守る側の方が不利になる。

ましてやナデシコAは華北をすでに手にしており、歴史に名高い屯田制も機能しており持久戦は十分耐えられる

だろう。

そうなれば残った手段は長期遠征のため士気が低下してきているナデシコA子飼いの兵、そしてナデシコAに

必ずしも服従しておらずやはり戦意に乏しい荊州兵に精神的な揺さぶりをかけてしびれを切れされたいと

ころだが、意外にも敵は我慢強かった。

 

「ちょっとムネタケを甘くみたかなぁ。

 破れたキノコ(笑)をそのまま都督のままにしとくなんてよほど水軍関係では人がいないのかと侮ったけど、

 なかなか統率できてるんだ。」

 

敵を誉めて入るところへ黄蓋ゴートが入ってきた。

 

「敵を誉めている場合ではないぞ、ラピス君。」

 

いつもしかめっ面の彼。疲れはしないのかとラピスは思った。

 

「別に疲れはしないが、一つ朗報が入った。」

 

「(なんで考えてることわかったの!?)。ろ、朗報?。

 あ、もしかしてアキトがサラを見限って私の元へ来るとか?(はぁと)。」

 

ゴートは無視して話を続ける。

 

「敵陣に諜報活動を仕掛けた所、敵が動かないわけが長期戦を狙ってという理由だけではないことがわかった。

 というより、後になって一つ追加された形だな。」

 

「どういうこと?。

 なんかむずかしい言い方だけど。」

 

「ナデシコAが布陣している烏林で疫病が発生しているらしい。

 これにより戦闘不能な兵が多発しているようだ。」

 

華北と華南は気候も生活習慣も全く違う部分が多々ある。

また水も違うようでこれにより多くの、とりわけ中原からきた兵が原因不明の疫病にかかったのだ。

ところがこれを聞いてもラピスはあまり嬉しそうな顔をしなかった。

 

「え、疫病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 でも病気に掛かっているのは大半は中原の兵達なんでしょ?。」

 

「断定できないがそうだろう。

 守備している前線の兵に顔色の悪さはうかがえないし、

 みな荊州兵のようだ。」

 

ラピスは肩を落としてがっくりとした。

 

「水軍に長じた荊州兵がかかるなら利になるけど、中原の兵にかかっているならあまり意味がないよ。

 この膠着状態は荊州兵が思っているよりずっと我慢強いせいなんだから。」

 

ラピスの言葉を聞いてゴートもうーむとうなるだけだった。

確かにナデシコAは多くの兵達が疫病にかかっていはいる。

だがそれにも関わらずこの状態を打開できていない。

それだけ兵力差が歴然としていたのだ。

 

「う〜、もう頭に来る〜!!(怒)。

 ねえ、アキト呼んで来て!!。

 退屈しのぎの相手してもらうんだ!!。」

 

錯乱気味のラピスにもゴートは特別に反応はせず冷静だった。

 

「残念だがそれは無理だ。

 すでに彼は夏口へ帰還している。

 夏口もここほどではないにしても重要だ。

 我々よりも劣る兵力の劉備サラにとっては貴重すぎる戦力だろう。

 そんな理由で呼び寄せることはできかねる。」

 

「う!?、真面目に対応しないでよ!!。

 軽いジョークじゃない!!。」

 

なげやり気味にラピスはこたえた。

ナデシコAをおびやかし始めた疫病、だが未だ優位はナデシコAにある。

ラピスの苛立ちはますます募っていった。

 

 

 

 

それから更に半月ほどが過ぎた。

情勢に変化はない。

いや、多少の小競り合いが生じた。

ここでもネルガルは勝利した。

だがムネタケはそれはそれで切り捨てがっちりと防備を固めていた。

付け入る隙はなく、更に戦線は膠着していた。

疫病に関しては、ナデシコAにとって忌々しき事態となっていたのは事実である。。

だがユリカはそれでも長期戦の維持を崩そうとはしなかった。

 

「とりあえず来年の春までがんばります!!、えっへん!!(?)」

 

と、明言して意思を示した。

この戦いに対するこだわりを感じる。

逆に小競り合いには勝っても直接大勢に影響はなく、ネルガルの苛立ちもぎりぎりのところだった。

 

「う〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

あいも変わらずいらだっているラピスの元へまたゴートがやってきた。

 

「ラピス君、一緒に偵察に行かないかね。

 興味深いことがわかった。」

 

ゴートが興味深いという言葉にあまり期待を感じないラピスだったが、気分転換も兼ねていくことにした。

船に乗ってナデシコAに近づくネルガルの軍船。

ラピスはいらいらしながらゴートにたずねた。

 

「ねえ、どこが興味深いの?。」

 

「気づかないか、あれを。」

 

ゴートが指差した先を見て、ラピスはようやく気づいた。

よく見ると船と船が連鎖のように繋がっている。

船と船の間に竹の橋を作って移動できるようになっていた。

さしずめ水上要塞と言った感じである。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴートさん、戻ろう。」

 

「うむ。」

 

2人は何か思うところがあったのか無言で陣に戻った。

ラピスの顔に苛立ちの表情は見えなかった。

 

 

 

 

夜となり、ラピスの陣幕にはゴートと程普ダッシュ、賛軍校尉(参謀長)の魯粛プロスに加え、三代に仕えた

最後の一人、中郎将の地位にいる韓当ブロスがいた。

彼らは皆開戦派である。

ゴートが話を切り出した。

 

「ここ陸口に布陣してからはや一ヶ月半近くが経つが、膠着状態が続きさすがに兵の間にも乱れが出始めて

 いる。

 ナデシコAの方も疫病で戦力の低下が著しいが、それでも我が軍はこの膠着を打ち破れずにいた。

 限界が近いかと焦りもあったがこれを打開する糸口をついに見つけた。」

 

『糸口〜?。

 期待できるのかい〜。』

 

怪訝な態度をとるブロスに対してゴートはいつになく自信を持った態度をとった。

 

「うむ、まずはこれを見てもらいたい。」

 

各々にナデシコAの船団を写した写真を配る(おいおい)。

皆特別反応はない。

 

「一見見ただけではわからないだろうが、よく見ると船と船の間を鎖で繋いであることがわかる。」

 

「なるほど、それに竹のような板橋が船と船の間に置いてありますな。

 これで行き来してるのですな。」

 

プロスは真っ先にそれに気づいた。

ゴートはプロスの反応に満足したようだ。

 

「恐らく、船に不慣れな中原の兵に少しでも陸と同じ感覚にしようとの処置なのだろう。

 実際彼らはこれで行き来をし、また陸ではなく船の上で訓練しているのも確認している。

 船どうしを繋ぐことで少しは”揺れ”を押さえられた結果なのだろう。」

 

ここでゴートは一呼吸おいた。

普段ほとんどしゃべらないので疲れたようだ(笑)。

深呼吸をすると再び話を続けた。

 

「この数珠繋ぎにしてある水上要塞とも呼べる船団、”連環”とでも呼称しよう。

 安定感こそ高いものの、鎖で繋いであるためそう簡単に切り離すことが出来ない仕組みのはずだ。

 簡単に外れるものにあれだけの安定感は出せない。

 しかし、我々にとってこの”連環”が勝利への鍵だ。」

 

そこへラピスがおいしいところをかっさらうように一言。

 

「火計・・・・・・・・・・・・・・・・・・だね。」

 

「その通りだ(俺が言おうと思ったのに)。

 鎖で繋いである船団なのだから火攻めを仕掛ければ逃げることもできずあっという間に燃え広がる。

 船団を焼き払ってしまえば、もはや彼らは撤退するしか残されていない。

 うまくいけば艦長の首もとれるというわけだ。」

 

だがそれにダッシュが待ったをかけた。

 

『確かに効果は大きいようだけどうまく行くのかな。

 向こうだってこちらの動きには気をくばっているよ。

 諜報活動くらいはできても敵の目をかいくぐって火をつけるなんてむずかしいよ。』

 

「もっともな意見だ。

 だがこれにもちゃんと答えがある。

 降伏の書状だ。

 降伏するから受け入れてくれと言っておいて、

 約束の期日に木の葉など燃え広がりやすいものを満載した船を突っ込ませればいい。

 敵も降伏してくると油断しているから一瞬の反応に欠ける筈だ。」

 

ゴートの意見に周りもうなり始めた。

もしかしたらうまく行くかもしれない。

だが問題は誰を降伏の役にするかだ。

 

「もちろん提案者の俺がやる。

 偽の書状で艦長を油断させる、そのくらいのことはできる。」

 

「そんな簡単に信じてもらえますかな。

 あなたは三代に仕えた重臣ですぞ。」

 

「うむ、そのことだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

ゴートが言いかけた時、ブロスが口を挟んだ。

 

『ああ〜、そうか〜。

 苦肉の策を仕掛けるんだね〜。』

 

その言葉にラピスが真っ赤になって反論した。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、私そんなのしないよ。

 だって私Sじゃないもん!!(爆)。」

 

「心配するな。

 俺もMではない!!(爆)。」

 

ヒュー、ヒュー、ヒュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

そ、外の風の音がやけによく聞こえた(作者錯乱気味か?)。

ちょっと下品な発想に陣幕は絶句してしまったようだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・ま、まあお二人がSかMかは置いとくとしてですなぁ。

 それに代わる有効な切り札がおありなのでしょうな、ゴートさん?。」

 

プロスの質問にゴートはちょっとむっとしながら答えた。

 

「ミスター、俺はではないぞ!!(くどいよあんたら)。

 そ、それはともかく、ひとつあの艦長に俺が投降すると信じこませる策がある。

 だがこれには一応ではあるがラピス君の同意が必要だ。」

 

『そうなんだ〜。

 のラピスにねえ〜(だからしつこいって)。』

 

ブロスのからかいにラピスは憤怒状態だった。

 

「だから私はじゃなっていってるでしょ!!(怒)。

 それより何?、私の同意って?。」

 

「うむ、降伏の書状に手土産を書くつもりなのだが、

 それを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・にすれば間違いなく信用するだろう。」

 

これを聞いて1人を抜いて全員が絶賛した。

 

「すばらしい!!、これならきっと艦長を信じ込ませられますな。」

 

『うんうん、あの艦長だものね。

 きっとうまく行くよ。』

 

『ゴートさん頭よかったんだね〜。』

 

皆の反応にゴートは大満足だった(顔に変化はないが)。

 

「よし、ではこの内容で早速書状を「だめ!!(怒)」

 

ラピスの大怒号が陣幕に響き渡った。

全員悶絶しかけている。

 

「何よその内容!!、納得できないよ!!(怒)。」

 

「し、しかしですなぁ、ラピス都督(くらくら)。

 ただ降伏の書状を出したくらいでは艦長は信用しませんぞ。

 それなりの条件を提示しなければ。」

 

なだめるプロスの意見が正論であるため、ラピスは次が繋がらない。

だが顔には不満と書いてあるような表情をしている。

 

「で、でも納得できないよ!!。

 大体本当に引っかかるの!?。」

 

「ひっかかる!!。」

 

ゴートが自信ありげに断じた。

 

「君がかかったくらいだ。

 絶対ひっかかる!!。」

 

「『『なるほど(〜)!!。』』」

 

ゴートの意見にラピス以外は納得たようだ。

ラピスはぐっとおし堪えながらもこれに同意をした。

 

「う、うまくいくんだよね(汗)。」

 

「うむ、それにこれはあくまでも餌だ。

 本当にそうするわけではない。

 だがこの書状の内容だけは一応サラ君達にも見せる必要はある。」

 

『反対されないかな。』

 

「それはないでしょう。

 危急存亡の時、選択の余地などないはずです。」

 

こうして、”連環”の水上要塞を火計で焼き払うという策は決まった。

偽手紙を送る使者はカン沢サユリとなった。

手紙の内容はサユリには教えていない、その場で判断して有利に進めろとだけゴートは言った。

内容を教えれば反対するに決まっているからだとゴートは思っていたのだ。

そう、内容は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりますよね(BY作者)。

果たして、ナデシコAはこの偽手紙を受け入れるのか?。

赤壁の前哨戦はもうすぐ終わろうとしている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

しばらくして、夏口に布陣しているサラ達の元へも極秘裏に偽の降伏文の内容が教えられた。

その時の反応を一言ずつどうぞ。

 

「なによこれ!!、納得できないわ!!(怒)。」

 

「酷過ぎます!!、一言の相談も無しに!!、絶対反対です!!(怒)。」

 

「く!?、ラピスはなぜ認めたのです!?(怒)。」

 

「まあ、本当にするわけではないからそう目くじら立てるな・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ち着いてくれよ(焦)。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う、うまくいけばいいけど。」

 

上から、サラ、アリサ、ルリ、シュン、そしてアキトでした。

 

 

七話、後半へ続く

 

 

ドクターイネスの三国志講座

 

皆さんこんにちは、前回ルリちゃんに出番を取られたイネスフレサンジュです(ルリちゃん覚えてなさい)。

今回は正史準拠じゃつまらないと言う人のために演義の赤壁の名場面を正史とのへだたりをふまえてお送り

するわ。

今回だけはきちっと聞いてもらうわ。前回出番なかったんだから!!。

 

華麗なる赤壁前哨

まず演義で真っ先に登場するのが諸葛亮。正史においては堂々とした弁舌で孫権をうならせた以外なんの記述

もないけれど、演義では正に神がかった智謀の冴えを見せてるわ。

まず張昭を始めとする幕僚陣を正論を持ってばったばったと切り裂く。

そして同じく登場してきた周瑜に妻の小喬と姉大喬を曹操にくれてやれば存続を認めるといって彼を開戦

に踏み切らせる。

その後も周瑜の無理難題を魯粛がはらはらする中華麗にさばき、最後ははったりまがいの技で東南風をふか

せる。

そのあまりの智謀に周瑜は孔明は人でないと畏怖を抱かせたというわけ。

次は借刀計。

すなわち他人の刀で敵を斬るという意味ね。周瑜は初戦で蔡瑁を破るが、彼は水上大要塞なる堅固な陣を

敷いて守りを固めたの。

蔡瑁を侮り難しと感じた周瑜は流言で落とし入れる策を敢行、信じた曹操はあっさりと蔡瑁を殺してしまったわ。

こうして曹操の刀で障害を取り除いた呉だったわけなのだけど、これは当然うそね。

そもそも蔡瑁に関する記述はほとんどなく、劉表の次男を後継ぎとして押したとあるだけ。

そして、次がショウ幹訪問。彼は周瑜と旧知であり、曹操に彼を説得してこちらに引き込むと豪語したのだけれ

ど、いざ呉に行くと周瑜は強気な面をみせるばかり。おまけに蔡瑁謀反の偽手紙を掴まされる始末。

ちなみにホウ統を曹操に紹介し、連環を仕掛けさせる結果も彼が作ったの。

当然だけどこれは史実ではないわ。ショウ幹は度胸があり弁舌に優れていたため、曹操は若き都督周瑜を

引き込むように命令したの。

で、実際あいに来たショウ幹を見て周瑜は彼が曹操方の人間だと気づいたわ。

それでも陣内を案内し、呉への忠節を語ったわ。これに感じ入ったショウ幹は引き込みを断念。

周瑜の忠義を曹操に言い、褒め称えたの。そう、正史のショウ幹は非常に有能でかっこよかった周瑜のよ

き友人だったの。

しかもこれは赤壁ではなくその前のことだったと、正史周瑜伝所引の江表伝にあるわ。

次に十万本の矢。周瑜は諸葛亮に10日で十万本の矢を作れと無理を言うと、諸葛亮は3日で作ると豪語、

もしできなかったらどんな処罰でも受けるといったわ。

いぶかしむ魯粛と共に諸葛亮は霧の中船団を走らせる。

曹操軍は霧のため近くに来るまで船団がわからず、焦ってありったけの矢を放ったの。

その結果合計して十万本以上の矢が船団に突き刺さり、

諸葛亮は悠々と矢をてにいれたというわけ。ちなみに矢がうまくささるようあらかじめ工夫してたのね。

当然これも史実にはないわ。ただ、演義の著者、羅貫中がモデルにしたのではないかとおぼしき記述が

魏略という書の中にあるわ。

213年の濡須の戦いのおり、孫権は偵察として船団を曹操軍近くまで走らせたの。

曹操はこれに対応するためありったけの矢を放ったわ、すると一方だけに矢が刺さったため、船がバランスを

崩して転覆しそうになったわ。

そこで、孫権は反転してもう一方にも同じように矢を放たせた、するとバランスがとれて陣に帰還したそうよ。

どうだったかしら、いい加減長くなるからこの辺でやめるわ。

後編でもう一回赤壁前哨を説明するから楽しみにしててね。

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

3104さんからの連載第七話前編の投稿です!!

う〜ん、戦いが白熱化してきましたね〜

でも、ユリカは相変わらず出番が少ない(苦笑)

それを言えば、アキトも出番が少ないですけど(笑)

今回はラピス達、ネルガル陣営の独壇場でしたね。

さてさて、ラピス達はどのような策でユリカを罠にかけるのでしょうか?(笑)

 

では3104さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

感想のメールを出す時には、この 3104さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!

 

 

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