冷たい沈黙が、ブリッジに満ちている。
もう一分近く、誰も声を発する者はいなかった。
それでもユリカは、満面の笑顔でVサインをしつづけている。
「……えっと、ひとつ質問していいかな」
イネスが、ついに沈黙を破るだけの精神力を取り戻した。
「その左手に抱えている、クマの顔をプリントした『まくら』は、いったいなんなのかしら……」
これ? と首をかしげると、ユリカはクマ柄の可愛らしいまくらを、顔の前に掲げて見せた。
「お気に入りだから、持って来ちゃいました! カワイイよね?」
イネスの精神力は、あっという間に尽き果てた。
どうとでもしてくれというように、脱力した表情で頭をかかえている。
「ユリカさん……来ちゃったんですね」
ルリの声は、奇妙に平坦なものだった。それが、ルリの感情が大きく揺らいでいる証拠でもあることを、ユリカだけが知っている。
「えっへん! わたしを置いて、アキトのとこに行こうなんて、ルリちゃん、あまい!
恋する乙女に、隠し事なんて通用しません!!」
まくらを脇に抱え、パジャマ姿で胸を張るユリカの姿は、ルリに本気で悩んでいたことを、馬鹿馬鹿しく思わせるのに十分だった。
「やっぱり、ユリカさんですね」そう思い、すべてを受け入れようと、ルリは決心を固めていた。
「なんで……なんで、ユリカさんまで来ちゃったんですか!
絶対安静だって、お医者さんも言ってたのに!」
メグミがそう叫びながら立ち上がった。
その声には、元看護婦の職業意識のようなものが感じられる。
それでなくとも、ユリカの様態は、全員が知るところなのだ。
こんな場所にいていい病状では、絶対にありえなかった。
「平気です!
ときどき眩暈がしたり、
意識が途切れたり、
全身が痛くなったり、
足とか手が動かなくなったり、
脳波が直線を描いちゃったりとかするだけです!
今日は絶好調ですから、気にせずにいきましょう!!」
「気になります!!」
そう叫び返したメグミにも、自分が無意味なおせっかいを焼いているだけだということはわかっていた。
ユリカは自分の身体などより、アキトを選んだのだ。
ユリカの身体は、安静にしていたところで、回復するような状態ではない。
制御を受け付けなくなったナノマシンを駆除する方法は存在しないのだから。
暴走したナノマシンは、つねに一定数を保ちつつ、確実にユリカの身体を破壊しつづけるだろう。
それならば、身体が言うことをきくうちに、アキトを追いかけたい。
ユリカのそんな思いが、メグミにもイヤというほど理解できた。
でも、だからこそ、メグミの心は激しく乱れるのだった。
「……気になるの! 気になるんです!
アキトさんも、ユリカさんもバカです!! なんでそんなに、ムチャばっかりするんですか!
私達だって……私達にも…………なんでよ」
あとはもう、言葉にならなかった。
そんなメグミの背をさすりながら、職業的な声色で口をひらいたのはイネスであった。
「テンカワ・ユリカ。キミの病状は、担当医から詳しく報告を受けている。
もし、この艦に同乗したいのであれば、
以後、その全行動は、私の監視下において行われるのが適当であると考えるが、どうか。
また、専任看護婦として、このメグミ=レイナードを、つねにそばに置くことを進言する。
これに不満があるならば、私としては、即刻、キミを元の病院に送り返すのが最善と言わざるをえない。
どうかな、艦長」
ルリは、即座に首肯した。
「テンカワ・ユリカ。キミの返答は?」
「よろしくお願いしまあ〜す!」
そのユリカの返事を受け、イネスの顔から、職業人の仮面がはがれおちた。
「まったく、ルリくんじゃないけれど、馬鹿ばっかなんだから」
苦笑するイネスが喋り終わるのを待っていたように、ミナトが口をはさんだ。
どうやら、あらゆる動揺をいっさい無視して、操艦に集中しつづけていたらしい。
「せっかくいいシーンなのに、ゴメンなさいねぇ。
そろそろナデシコが地球の重力圏を突破するの。
重力制御が効くから平気だとは思うんだけど、艦長――じゃない、ユリカさんも、
どこかのシートに座っていてくれないかなぁ」
さすがの大物ぶりを発揮して、ミナトはブリッジの雰囲気を正常なものに引き戻してしまった。
「は〜い、了解しました!
――えっとぉ、こっちかな? ……わっ! あや!? ふえ! やん!!」
ユリカは目が見えていないのだ。
あちこちにぶつかり、足を引っ掛け、転げまわりながら、ついにひとつのシートを発見した。
「……あ、あの、ここはボクの……」
「ハーリー君、どいて」
ルリのひと声に、ハーリーは情けない表情でシートから立ち上がった。
どうせ、ワンマン・オペレーションが可能なナデシコCなのだ。
ハーリーのひとりぐらい、いなくなっても何の問題もない。
「あの、それでボクはどこにいれば……」
「ジャマ」
ひとことで切って捨てられたハーリーは、しくしくと涙を流しながら、ブリッジのすみっこで、のの字を書きはじめた。
それは、11歳の少年の背中とは、とても信じられない、煤けた背中であった。
「えっと、ルリちゃん? いまの人、誰だっけ」
「気にしないでください。どうでもいいことですから」
そうなの? と首をかしげたユリカにすら、五感を超越した暗いオーラが感じられる。
「――ユリカさん。どうやって、このことを知ったんですか?」
「えへへ〜、アカツキさんに教えてもらっちゃった。CCもアカツキさんがくれたんだよ」
「まったく、会長までおせっかい好きになっちゃったわね」とエリナ。
それでも表情は温和なものだった。
必要なおせっかいというものもある。
つらい役目を、自分から引き受けたアカツキを責める気は、エリナにはなかった。
『ボクには地球でやらなければならないことがあるからね』そう言って別れたアカツキの、やらなければならないことのひとつが、これだったのだろう。
「ま、極楽トンボも極楽トンボなりに、いろいろ考えてるってことかな」
そんなエリナの言葉を乗せ、ナデシコCはついに大気圏から離脱した。
ルリは、精神、肉体の両面から、急激に衰弱していった。
体内で暴れる、遺跡のナノマシンを、別種のナノマシンで抑え、掌握する。
火星の後継者達が残した、実験記録のひとつをトレースして、いま、ルリの体内を舞台に、別次元の異様な戦いが繰り広げられていた。
IFS強化体質のマシンチャイルドでなければ、この戦いに勝利を収める事など不可能だった。
つねに一緒に戦いつづけてきたオモイカネのサポートすら受けられず、ルリは孤独に、みずからのインナースペースでの戦いを続けている。
『ラピス――』
戦いの中、何度も何度も、ルリはその名を呼んでいた。
『あなたも、アキトさんのために、この試練を受けたのですね。アキトさんの目、アキトさんの耳、アキトさんの手足となるために』
火星の後継者が目指したのは、遺跡のコントロールであったのだが、結果的に、遺跡のナノマシンを体内に注入した者同士のリンクという、意外な副作用をもたらした。
いま、ルリは、ユリカの身体から採取した遺跡のナノマシンと、その制御用に調整されたナノマシンを、同時に体内に注入している。
自分の体内のナノマシンを掌握することで、ユリカのナノマシンもある程度コントロールできるはずだった。
アキトとラピスのリンクの正体。
それがどれほど過酷なものであるのかを知るにつれ、ルリの中で、ラピスという少女の存在が大きくなっていた。
『ラピス――私の分身。あなたのいる場所に、私も行きます』
ギリギリの生死の淵を、3日3晩さまよった挙句、ルリは、戦いに勝利した。
力の入らない身体で、無理に上半身だけ持ち上げたルリが見たのは、今にも抱きついてきそうなハーリーの、涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡れた顔と、それを背後から抱きとめて、柔らかに微笑んでいるミナト、そして、喜びと憂慮が半々に入り混じった、ナデシコクルーの面々だった。
それらの視線を一身にうけ、さて、どうしよう、と一瞬悩んだが、言葉は自然にあふれ出た。
「ただいま……です」
おかえり! という声が、いくつも帰ってきたのだった。
ナデシコCがハツミドリ2号コロニーに到着するまでの数日と、ルリがリンク処置をうけて意識を失っていた3日間のあいだに、火星の後継者――アキトによるコロニー襲撃は2回発生していた。
どちらも被害は甚大で、テンカワ・アキトという、史上最悪のテロリストの名は、さらに世に広まり、憎悪の対象となっていた。
『そろそろね』
エリナとイネスがそう言ったのは、ほぼ同時であった。
ルリにも、それは感じられた。
裏工作として、ハツミドリ2号コロニーに遺跡が隠されているという情報は、すでに流してある。
それが、火星の後継者達の情報網に引っかかり、アキトが姿をあらわす日はもうじき、そういう思いが、全員の胸に芽生え始めていた。
奇妙な圧迫感がナデシコ艦内に漂うなか、ルリのサポートで視力をわずかに取り戻したユリカは、メグミに車椅子の背を押してもらいながら、ある場所を目指して通路を移動していた。
なぜか、その膝の上には、あいかわらずクマ柄のまくらを抱いている。
「ウ・リ・バ・タ・ケさ〜〜ん! あっそび〜ましょっ!!」
目的地の扉の前で、無邪気な子供のような声でそう言うと、扉が開いて、慌てた様子のウリバタケが飛び出してきた。
「バカタレ! そんな大声を出す奴がいるか! バレたら、どうすんだよ!」
はやく入れ! とユリカとメグミを招き入れると、きょろきょろと不審な態度で通路に誰もいないことを確かめてから、扉を閉めた。
「まったく、なに考えてやがんだ。このことが、ルリちゃんの耳にでも入ろうもんなら、
俺は間違いなく素っ裸のまま、宇宙遊泳させられちまうんだぞ。殺す気か、俺のこと」
「メグミちゃん。ウリバタケさん、怒ってるよ」
ふりかえってそう言うユリカに、メグミは疲れたように首を横に振るだけだった。
「――で、決心は本当にかわらねぇんだな。いいんだな、それで」
ウリバタケは、いくらか真面目な口調になった。
「当然です。アキトを連れ戻すのは、わたしの役目。
ほかの人に、それを押し付けるなんて、絶対にできません」
それに、と続けるユリカの顔には、誰にも見せたことのない、苦悩の色があった。
「……それに、ただ待っているだけの私じゃ、もうアキトの顔を正面から見れないから……」
ウリバタケは扉に背を当て、じっとそんなユリカの後ろ姿を見ていた。
「――よっしゃ!
なら、このウリバタケ・セイヤ様が、そんなユリカ嬢ちゃんのために、とっておきの力をくれてやらぁ!
見て驚くんじゃねえぞ」
ワケのわからない物体を、押しのけ、かきわけしながら、ウリバタケは自分の端末に近づいた。
モニタの灯を入れると、すでにそこには、いくつもの図面と、その図面から立体化された3D映像が、ゆっくりと回転していた。
「時間がなかったからな。基本的な思想は、アキトのブラックサレナと一緒だ。
ブラックサレナに対抗できる機体なんざ、そうそう作れるわけがねえしな。
その上で、パイロットの技術の差を補うために、いくつかのアイディアを盛り込んでみた」
その3D映像は、たしかにブラックサレナに酷似していた。
ブラックサレナの同型機。そう呼んで差し支えないだろう。
「最大の違いは、インターフェースだな。
IFSはその名の通り、イメージで機体をコントロールするがな、こいつはそうじゃねぇ。
おい、メグミちゃんよ、あんた、自分の身体を動かすのに、事前にイメージを浮かべたりするか?」
メグミは、やはり口をひらかず、ただ首を横に振った。
「そのとおり。自分の身体を動かすのに、イメージなんか必要ねぇ。
IFSってのは、まだ大きな壁の存在する、中途半端なインターフェースだってことだ。
訓練をつむことで、その壁を切り崩したのが、アキトや、リョーコちゃんといった、
エース級のエステバリス・ライダーってワケだな。
だが、こいつには、特製のバーチャル・システムが組み込んである!」
勢い込んで、ウリバタケは続けた。
「本来なら、バーチャル・システムってのは、こんなサイズの機体に収まるもんじゃねえんだけどな、
火星の後継者どもが、遺跡を通じてユリカ嬢ちゃんに幻覚を見せていた技術を応用した、
遠隔バーチャル・システムだ。
遺跡のナノマシンを体内に持つ、あんたなら、こいつを使いこなせる。
この機体が、そのまんま、あんたの手足になるんだ!」
わかったのか、わからなかったのか、半口をあけたままの、ぼやっとした顔で、ユリカは、ウリバタケの顔を見ていた。
「――あ〜っと……わかったのかな?」
ユリカと、メグミが、同時にブンブンと首を横にふった。
「合体するんだよ! 合体! レッツ・ゲキガイ〜ン!! てな。
あんたと、この機体が合体すんの!」
ユリカの顔が引きつった。
「……へ?」
ユリカは、可愛らしく小首をかしげてみせながら、冷や汗を浮かべている。
ウソだよねぇ〜? とその顔が問うていた。
ウリバタケは、腰に手をあてたまま、無情にそれを否定してのけた。
いきなり、ユリカはボロボロと大粒の涙をこぼしはじめた。
「……ひ、ひどい! わたしの身体を弄んで、改造人間にするつもりなのね!!
イネスさんだ! イネスさんが、裏で糸を引いてるんだわ!!」
ユリカは、メグミの腰に抱きついた。
「メグミちゃん! ウリバタケさんとイネスさんが、わたしに酷いことしようとしてるの!!」
「ウリバタケさん、ヒドイです!」
ユリカの頭を抱きかかえながら、メグミはウリバタケに非難のまなざしを向けた。
「……おまえら……ホンキで言ってんのか……」
ふたりが仲良くうなずく。
「あーそうかい……」
言い訳するのもバカバカしくなったのか、ウリバタケはガックリと脱力した態で、説明を続けた。
「いいやもう。ええっと、あとはなんだったっけな。
――ブラックサレナの、1.2倍強に出力を強化したスラスターと……ああ、そうそう、
ナノマシン溶液でフレキシブルに反応する対G装備なんか、ものすげぇ発明なんだけどな。
ま、どうでもいいんだろうな、おまえらにゃ」
投げやりな口調で説明を終えると、ユリカをふりかえった。
「……って感じだ。ブラックサレナのパーツがほとんど流用できるから、完成は三日後ぐらいだな。
どうだ、乗ってみるか?」
「改造手術は?」おずおずとユリカ。
「してほしいのか? イネス女史に頼んでやってもいいぞ」
ユリカは思い切り首をふりながら、車椅子のまま、がたがたとあとずさった。
おっと、忘れてた! と、ウリバタケが手を叩いた。
「――こいつの名前は、ヴァイスリーリエ。白百合だ」
「ふん、罠だな」
北辰六人衆がひとり、風塵の渡(ワタリ)は、その情報をうけとるなり、即座に断言した。
遺跡の所在が、そうやすやすと、判明するはずがないのだ。
その入手不可能なはずの情報が、こうも都合のいい時期に手に入るなど、疑ってかかるのが当然であった。
「しかし、何者かが我らを誘っているとも考えられる。
案外、真実をふくんでいるやも知れぬな。無下にもできぬか……」
風塵の渡はしばし熟考すると、ふいに顔をあげた。
「なに、こちらには、テンカワ・アキトという、最高の手駒があるのだ。
いずれは、潰さねばならぬ浮き島よ。いま潰したとして、なにが悪い」
決断したのか、風塵の渡は桃色の髪の幼い少女に命じた。
「むすめ。ヒトリシズカに通信をつなげろ」
桃色の髪の少女――ラピスは、それに大人しく応じた。
ラピスはオペレーター席のIFSインターフェースに、その小さな両の手を乗せ、ダッシュに話しかけた。
「ダッシュ。回線オープン。高度暗号化モード。ヒトリシズカに接続」
それは即座に実行された。
正面のメインスクリーンに、戦艦ヒトリシズカのブリッジが映る。
『どうしました、渡。この宙域での通信は、いささか危険でありましょう』
その独特のイントネーションを持つ声は、聞く者の背にぞくりとする感触を与えた。
とくに男であれば、その魅惑に逆らうことは難しいであろう。
長い絹のような黒髪につけられた艶やかな紅い髪どめが、どんな豪華な装飾品よりも、彼女の美貌を引き立たせていた。
北辰六人衆のもう一人の生き残り、螢火である。
「なに、かまうものか。次に潰す目標が決まったのでな。
今回は少しばかり危険な匂いを感じるゆえ、おぬしにも来てもらおうと思ったのだ。
久しぶりに、暴れるのもよかろう。どうだ」
蛍火が妖艶に笑った。
『それは楽しみだこと。危険などという言葉を、あなたの口から聴くことができるなんて、本当に久しぶり』
赤い舌先が、ちろりと唇を舐めあげる。
『承知しました。合流いたしましょう。浮き島ハツミドリ2号の宙域でよろしいのですね』
「やはり知っていたか」風塵の渡の顔に苦笑が走った。
「あなどれぬ女よ。頼りにさせてもらうぞ。北辰様の無念、我らの手で晴らそうぞ」
『言うまでもありませぬ。我が身のうちに燃えさかる怨念の黒き焔、
消すには、まだまだ贄の血が足りなさすぎる。ああ、北辰様……』
自分の身を掻き抱く蛍火をよそに、ラピスが立ち上がった。
そのまま無造作な足取りでブリッジから出て行こうとする。
「むすめ! おぬし、どこへ行く!」
「アキト……」
それだけ言うと、ブリッジから立ち去った。
「ふん、もうそんな時刻か」
『北辰様……ああ、北辰様ぁ! ああぁん……』
ひとりで悶え狂う蛍火をうんざりとした表情で眺めながら、風塵の渡は、そう独りごちた。
「アキト……」
手に流入食の入った皿を乗せ、ラピスは膝をついているブラックサレナのアサルトピットによじのぼる。
黒いバイザーに隠され、その表情をうかがい知ることは出来なかったが、どこか魂の抜けたようなアキトが、その中でぐったりとして座っていた。
「アキト……」
スプーンですくった流入食を、慎重にアキトの口元に運ぶ。
「口をあけて」
それが聞こえたのか、アキトは人形のように口をひらいた。
口に流入食を入れると、やはり人形のように咀嚼してから飲み込む。
その姿からは、人の意思のようなものは、まったく感じることが出来なかった。
ラピスは、なんどか皿とアキトの口の間でスプーンを往復させると、ふいに涙をこぼし始めた。
バランスを失った皿が格納庫の床に落下し、盛大な金属音を響かせ、転がっていった。
「アキト、アキト! 怖いよ! 怖い人がいっぱいいるの!
帰ってきて! 帰ってきてよ、アキト!」
アキトの胸に取りつき、泣きわめくラピスの声に応える者は、誰もいはしない。