チャ〜〜〜、チャ、チャ、チャ、チャッチャチャ〜、
                  チャラララ、チャチャチャチャ〜

鳴り響く宙明節な勝利のBGMに合わせ、徐々にズームアップ。
上半身が画面一杯になる位置まで近付いた所で、今度は大豪寺のバストショット。
とまあ、此処までは前回と同じ。

『やれやれ。最初で最後の桧舞台も、これで終わりか』

『けけけっ。まあ、そう腐るなよシンゴ』

『そうそう。お前には、小柄でスレンダーなのがウリなYFシリーズの娘達より、
 グラマーでエネルギッシュなフェティダちゃんの方が似合ってるって』

『そういうので、俺に同意を求めるなよリック。
 戦闘機を擬人化して欲情するのはお前の勝手だが、そういう特殊な趣味を他人に押し付けるな!』

『(フッ)故人曰く、仲良きことは美しきかな…と、言った処かな』

ついでに、戦闘機小隊の子達の様子も流してみる。
此処までタップリ1分強。いや、二分は確保しただろう。
駄目押しとばかりに、艦長による今後の方針表明も付けておく。

これで累計約三分。
だが、それでもカヲリ君からの連絡が入らず、仕方なく、エンディングテーマを先行して放送する。
そして、曲とテロップが流れ終え、『連載2回目にして、早くも放送事故発生か!』と、俺が覚悟したその時、

『シベティ、シベティ、シンダラ、バシニ、ソワカ。(たいへんお待たせしました提督)』

『オン、ハンドメイ、シンダマニ、ジンバラ、ウン。(シャムシエルさんは、漸く此方の申し出を受けてくれましたわ)』

使徒の魂の回収作業と同時進行で、説得成功の報告が。
いや、正にギリギリだったな。

『シンダラ、バシニ、ソワカ!』

そして儀式の最終段階。
今回は短目に纏めた転生の舞を終え、カヲリ君の指先より山吹色の光線が発射された。
直撃を受けたシャムシェルのコアが激しく明滅。
その部分がスッポリと抜け落ち、手の平大の光の玉が出現する。
それが吸い込まれる様にの右手に収まるのと同時に、彼女はその身を一際眩しく発光させ、

   シュッ

「(ハアハア)ミッション(ハアハア)コンプリートですわ」

息も絶え絶えな状態で、此処、提督室へと帰ってきた。
普段からは考えられないその姿に驚愕しつつも、俺はすぐさま出立を指示。

『それでは、カメラマンが戦闘区域にホイホイやってくるなんていう不祥事が二度と起こらない様、これより報道業界の粛清を始めちゃいます。
 主要な所には本日中に伺いますので、降伏の準備をしておいて下さいね』

それを受け、艦長は先程提示しておいた最初の目的地。
例の馬鹿たれ三人組が所属していた日本記者クラブ本部へ向け、艦を発進させた。
ちなみに、今回は戦自による追撃は無しだ。
何せ、第四使徒との前哨戦の段階で、空軍は部隊が半壊してたみたいだし。
とゆ〜か、今回は襲撃されていたら、かなり困ってたろうな。
戦闘前に貴重なデータを提供してくれた事といい、毎回、コチラにとって都合良く動いてくれて大感謝だ。

「大丈夫かいカヲル君」

事が一段落したところで、俺は改めてカヲリ君に声を掛けた。
些か不人情な様だが、計画よりもその身の安全を優先させたりしたら、彼女はきっと、烈火の如く怒っていたことだろう。
責任感の強い娘だからなあ、良くも悪くも。

「すみません。彼女、兎に角、此方の話を、聞いてくれなくて。
 精神の同調にも、非協力的でしたので、高速化が、不完全になり、こんなに遅く………」

呼吸の方は落ち着いたものの、無防備な姿のまま、単語のぶつ切りの様な感じで語るカヲリ君。
この娘がこんな有様になる以上、相当疲弊しているとみて間違ない。
取り急ぎその言を封じ、『後の事は任せておけ』と言い含め、グッタリと力の抜けたその身体をソファーへと運ぶ。
俺の言葉に安心したのか、彼女はそのままゆっくりと目を閉じ、霊的昏睡状態に。
それを見届けた後、

アーク、カヲリ君の容態は?

   イツゾヤノ、ゴート、オナジクライ

げっ、そこまで深刻なのか?

   ダイジョウブ。イマ、SP、ホジュウシテル

そうか。そう言えばお前、カヲリ君よりも高次元の精神生命体だったんだっけ。
たった今、初めてそれを実感したぞ。

   ホメコトバ、ナッテナイ

当然だろう。俺がお前を誉めるとしたら、それはアキトが帰ってきた後の事。
それも、八方丸く収まって有頂天な心理状態な時に気が向いたらの話だ。
それ以外のケースなどありえんよ。

   ソコマデイウカネ、フツウ

言われても仕方ないだけの事をやっただろうが、お前は!



   〜 二時間後、転生の間 〜

アークによるカヲリ君のSP補充を終えた後、俺は新たな使徒娘を迎えるべく、転生儀式の準備を始めた。
無論、艦長の掲げた公約。放送業界の粛清は既に終了している。

あの連中の飼い主だけあって、言論の自由を前面に押し出した崇高な………
それでいて、実質部分はなんとも自分勝手な主張を繰り返した出版業界の大物達だったが、
人的被害だけは出ない場所に一発打ち込んだら、一も二も無く全面降伏。
それはもう『相手が聖職者なら他人に、権力者なら本人に銃を向けるのが交渉事のコツ』と言っていた、
某主人公の主張を裏付けるかの様な節操の無さだった。
………でも、アレってギャグ漫画なんだよね。(泣笑)

ちなみに、アメリカを始めとする他の先進国は、
『ウチは日本と違って、国際法とTPOくらいちゃんと知っている』
という意味のセリフを、あの放送のすぐ後に、それぞれの御当地の言語と情勢に合わせた内容で表明。
それ故、此方としては、粛清を行う口実を失った格好になっている。

そんな訳で、現在このロサ・カニーナは、カヲリ君の回復待ちの状態で、太平洋上を意味も無く航行中。
俺が今、こうして彼女抜きでの転生儀式を試みているのも、
クルー達が暇を持て余し、早急な新生使徒娘の誕生パーティ開始を求めてきたからだったりするのだ。

設置を終えたフラスコを前に物思う。
アニタ君の時でさえ苦も無く対応していたカヲリ君がああまで疲弊するなんて、いったいどんな超絶問題児なのだろうかと。

う〜ん。たしか、『兎に角、此方の話を、聞いてくれなくて』だったか。
高慢ちきなタカビー女ってとこかな? 使徒としての武器も、女王様な鞭だったし。
正直、あまり仲間にしたいタイプじゃないなあ。
だがまあ、整備班の間じゃ、その手のキャラの人気も結構高かったりするから問題あるまい。
何より、カヲリ君の苦労に報いる為だ。此処はキッチリ、大人な対応をするとしよう。

「さあ、目覚めるが良い。神に祝福されし、天使の魂を受け継ぎし子よ!」

一抹の不安を抱えつつも、俺は神官服に着替え、定形の祝詞を読み上げた。
今回は一人二役なので、その宣言に合わせ、自らの懐から使徒の魂を解き放つ。だが、

   コツン
            コロコロコロ………

何故か、前回の様に飛び立っては行かず、赤い光玉は虚しく床に零れ落ちた。
先程までの一人芝居と相俟って、いっそこのまま立ち去りたい様な痛い空気が流れる。
だが、だからと言って、このまま知らん振りしている訳にもいかない。
仕方なく、拾い上げて直接フラスコの中に投入する。
些か興ざめであるが、放っておく訳にもいかないし。

   ゴボ、ゴボ、ゴボ……………

光玉が綾波レイのスペアボディの上に落ちると、そのまま吸い込まれてゆき、魂の定着作業が始まった。
『まずは一安心』と、ホッと胸を撫で下ろす俺。
だが、その完了を告げる激しい発光現象が収まった時、

「……………あれ?」

飛び出して来る筈の新たな使徒娘は現れず、フラスコ内部にも、それらしい人陰が無かった。

   シ〜〜〜ン

先程までよりも更に痛い空気が流れる。今度はマジに逃げ出したい。

   ガチャリ

だが、俺の退路を塞ぐ形で、唯一の出入り口から復活したカヲリ君が登場。

「いい加減になさいラナ。
 これ以上ダダを捏ねるなら、極刑に値するわよ。
 問答無用で、アークさんの上役の所に強制送還ってことね」

同胞殺しの報復を覚悟し身を硬くする俺をスルーして、無人のフラスコに向かって激しく叱責した。
それに答える………とゆ〜かビビッた様に、フラスコが再び激しく発光。
そして、その輝きが収まると、そこには左右に分けた三つ編みの少女が、たれパンダを連想させる格好で寝入っていた。

「すみません提督。後で、よく言って聞かせますので、どうか見捨てないでやって下さい」

それをバックに、平謝りな謝罪と懇願をしてくるカヲリ君。

「よ〜するに、『ああいう』娘なのか」

『どうか間違いであってくれ』と、一縷の期待を込めつつ、噂の少女を指差し確認を取る。
だが、カヲリ君の返答は、俺の最悪の予想すらも上回るものだった。

「いえ。提督の御想像すらも越えて、『こういう』娘です」

「「……………(ハア〜)」」

互いに顔を見合わせると、俺達は特大の溜息をついた。

「やるか」

「やりましょう」

「「吼えろ、我が内なる竜よ! 秘剣、竜王牙斬!」」

   (キャアアア〜〜〜ッ!)

取り敢えず、目覚まし代わりに、カヲリ君経由で軽めの一撃をぶち込み、半強制的に起床させてみる。
たが、事態は一向に好転しなかった。
二言目には『ねむ〜い』だの『面倒くさ〜い』を連発。
今にも閉じそうな半開きのタレ目で、恨みがましい視線を送ってくるのだ。
その姿からは、人が生きていく上で必要不可欠な、向上心というものが欠片も感じられない。
彼女との面談中、正直、いっそ南極辺りに。
ロンギネスの槍の横っちょにでも、番犬代わりに放り出してやろうかとも思ったが、
この三年寝太郎娘も肉体自体は人間なので、定期的に食物を摂取しなければ一週間と持たない………
いやそれ以前に、そこまでやっちゃうと、流石にカヲリ君が黙っていないだろうから止めておく。

そんな訳で、この娘の意識改革を促すため、転校生として第一中学2Aへ送り込み、北斗に『可愛がって』貰う事にした。



   〜 20分後 日々平穏、ロサ・カニーナ支店 〜

「………という訳で、彼女には第一中学校に通って貰う事になった。
 住居の方も2015年の芍薬にとったので、顔を合わせる機会は余り無いだろうが、見かけた時は遠慮なく叩き起こしてやってくれ

そんなこんなで、今や遅しと待構えていたクルー達の前で、このコマッタちゃんの紹介………より正確には、注意点の説明を行う。
チラッと横目で垂れ幕の向うの人影を確認し、

「それでは紹介しよう。彼女が俺達の新しい仲間だ」

せめて本人の口から自己紹介をさせるべく、俺は展開に巻きを入れて事を進めた。

   ピラリ

「はじめまして。わ〜たし………(スゥ)」

「って、立ったまま眠るな〜っ!(バシッ)」

いきなりかましてくれた大ボケに、力一杯ツッコミを入れる。
だが、彼女は生意気にも、薄っすらと膜状にATフィールドを張ってこれに対抗。
ハリセン程度の打撃では、小揺るぎもしやがらない。
ちっ、やはり粉砕バットにしておくんだった。

「キター! ついに…ついにウチにも、癒し系が登場だ!」

「本来ならば中心となる筈のこのタイプが不在のまま幾年月………長かったよなあ、オイ」

と、どうしようもない展開にも拘らす、何故か沸きに沸く整備班の面々。

「見ろよ、あのあどけない寝姿。
 まるで、陽だまりの中うたた寝する子猫の様な可憐さだ!」

確かにな。一日に四時間位しか活動しないあたりなんて、正にそのまんま………って、納得してどうする俺!

その後、完全に寝入ってしまったポケポケ娘を寝袋に詰め、蓑虫の如く吊るしたその愛くるしい(?)姿を肴にする形で、
彼女の誕生パーティは無意味に盛り上がった。
『それはちょっと違うだろ?』という、俺の心からのツッコミを無視して。

かくて、元第四使徒、真昼の天使シャムシエルこと日暮ラナの昼行灯な人生が幕を開けた。
そのまま閉じてやりたい気がしないでもないが………

そんなに眠いなら、なんでワザワザ起き出して使徒化したんだよ、お前は。
と、言ってやりたいたいのグッと堪えつつ、俺はテーブルの上に置いてあった瓶ビールをラッパ飲みした。



   〜  同時刻 影護邸 〜

>SYSOP

「ところで、シーちゃん」

夕食を終えた数時間後、茶の間で夜食のポテチを摘みながら、枝織ちゃんはちょっと意地悪な目をして言った。

「今後、電話の応対は、全部シーちゃんに任せちゃうことにしたからね」

「え?」

「だって。此処に掛かってくる電話は、みんなシーちゃん宛だもん」

言いたい事は言ったという風に、枝織ちゃんはシンジに背中を向け、TV画面の方に関心を移す。

「ちょっと待ってください枝織さん。幾等なんでもそんな筈が………」

と言いかけて、シンジはハタと思い出した。
これまでの三週間、影森家の電話が一度として鳴らなかった事を。

   トゥルルルル、トゥルルルル………

「ほら、言ってるそばから早速きたよ」

『誰からかは、わかっているでしょ』といった声色で、シンジを促す枝織ちゃん。

助けを求めても、振り返りもしない。
珍しく相手の目を見ずに、『ほら、早く』と促す枝織ちゃん。
シンジは、照れくさそうに、ぽりぽりとこめかみを掻いた後、

「はい、影護です」

『おう、シンジか。良かった、無事やったんやな』

TVの喧騒が鳴り響く中で、何故かその電話の声は、シンジの耳にハッキリと聞こえた。
そして、取り留めの無い………でも、何故かこそばゆい会話を交わした後、茶の間へと戻るシンジ。

するとに、それを待構えていたの様なタイミングで振り返った枝織ちゃんは、よく響く声で、

「素敵な御友達が出来て良かったね、シーちゃん」

と言って、満足げに笑ったのだった。




『次回予告』

鬱陶しい雨の中、自分の心を克服出来ないミサトは、ついにシンジにも敗れた挙句に逃げ出す。
14歳の子供に負けた以上、それは無理はなかった。
目的も持たず彷徨う事しか知らないミサトを組織は連れ戻す。
そこに優しい言葉は無かった。二人の少女を除いて・・・

次回「雨、(負けて)逃げ出した後」

飢えたる者は常に問い、答えの中には何時も罠。




あとがき

お久しぶりです。臨時にお休みを頂けた御陰で、どうにか年内に再投稿する事が出来ました幸運なでぶりんです。
これもひとえに、このような拙い作品に御感想を下さる方達の御蔭です。
この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

御指摘頂きました問題点なのですが、私の未熟さ故、その改善に見事に失敗。
組織の駄目ぶりではなく、ネルフの非情さを強調したかったのですが、
ゲンドウが不在な事もあって、更に駄目っぷりばかりが強調された表現となってしまいました。(猛反省)
見苦しくも言い訳をさせて頂きますと、今回、もっとも空回りしたリツコですが、これは彼女の限界を示すのを目的としたものです。
それに、全くああいう策略を仕掛けないのは、エヴァの世界観からして一寸不自然ですし。
次回以降は、彼女も冬月に習って、北斗に対して不干渉なスタンスをとる予定ですので、少しは駄目な雰囲気も改善されるのではないかと。
また、もっとも個人攻撃の多いミサトですが、これは彼女への愛です。(断言)
次回も空回りする事が決定していますが、彼女こそが本作品のヒロインなのです。
今の所、比較的優等生なシンジ共々、その成長物語を長い目で見て頂けると幸いです。

それでは、また来年、再び御目にかかれる日が来る事を祈りまして。

PS:>ところで、最後まで次回予告は高橋良輔風で行く気ですか?

勿論、そのつもりです! 実は、タイトルと次回予告だけは全話分出来ているんです!
と、前作の感想を頂いた時には、胸をはって(画面の前で)断言していたのですが、
本作の次回予告をコピーしてきた時、よ〜やく、これが代理人様の遠回しな忠告だった事に気付く事ができました。
そうなんです。考えてみたらこれって、只のネタバレなんですよね。
でも………それでも、このままで行こうと思います。
だって、これが一年前、最初に完成した部分。思い入れが強すぎて、もう変えようが無いんです。(爆)
こんな御馬鹿な私ですか、どうか今後とも御鞭撻下さいますよう宜しく御願い致します。




【アキトの平行世界漫遊記A】

 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

愛だったのか(爆)。

まぁ、本編のシンジ相当の役回りっぽくなってきたので今なら何となくそれもわかるような(笑)。

ちなみに、今回のリツコ程度なら別にいいかなと。

でぶりんさんが仰っているように、リツコらしい、ネルフらしい行動ではありますし。

私が不快感を覚えるのは理屈をつけて何から何まで否定するようなことです。

誰にだっていいところはあるんだし、人間の失敗や醜いところばかりを強調されると見てるほうも嫌なもんです。

悪役ならなんぼ極悪非道でも別にいいんですけどね。

ほら、たとえばオオサキ提督の頭の中にいる誰かさんとか(え?)。

 

>誤字とか

今回はケアレスミス以外はあまり目立ったところはありませんでしたね。

ただ、「〜のまま」という表現のところで「の」がなくなってることが多かったのはちょっと気になります。