>OOSAKI

   〜 同時刻。ダークネス秘密基地、大首領室 〜

その日、俺はカウチに寝そべりながらポテチを食べていた。
そう。『これ以上は無い』ってくらい、暇を持て余していたのだ。
だがまあ、偶にはこういうのも悪くないかも知れない。
何せ、これまでずっと働き詰めだった事だし。

『金い〜ろの眠りから〜醒めて、誰の心もミステリアスマ〜インド』

「………何をやってるですか、提督? この忙しい時に」

と、TVから流れる昔懐かしいメロディを堪能していた時、何故か呆れ顔の我が副官殿が。
やれやれ。偶の休みにまでしょうがないヤツだな。
まあ良い。少しだけ相手をしてやるか。どうせ暇だし。

「忙しいって何がだ? 俺の出番なんて無いだろ? 何せ、今回の使徒戦はホシノ君が仕切ってるんだし」

そう、実は本気でヤル事が無いのだ。
御蔭で、華の使徒戦だと言うのに遊びを入れる事も出来ず、こうして無聊を囲っているとう訳である。
何と言うか、あまり有能過ぎるってのも考えものだよな。

「(ハア〜)良い歳して拗ねないで下さい。見苦しい」

す、拗ねるって………まあ、改めて我が身を振り返ると概ねそんな感じなんだが。
にしても、そこまで判っているなら、もうチョッと労わってくれてもイイんじゃないのか?

と、そんなチョっぴり傷付いた俺に追討ちを掛ける様に、ナカザトは呆れ顔のまま、

「(コホン)何より、そんなにお暇でしたら、為すべき事は他に幾らもあるでしょう。
 たとえば、既に何時もの半分位にまで堪りました書類仕事とか」

「なあ、ナカザト。お前の辞書には『思いやり』って言葉が載って無いのか?
 とゆ〜か、そんなに追詰めてくれるなよ。そんなんじゃ、今に爆発しちまうぞ俺は。『ロ…ロディ○ス!』とか言い残して」

「おや? メガト○ンではなかったのですか、提督の役所は?」

大分イイ性格になったなあ、コイツも。
だが、まだまだ甘いぜ。

「とゆ〜コトは、お前は次回作でいきなり死亡するスタース○リーム?」

「………はいはい、どうせ自分は不平家な裏切り者ですよ。
 そんな事より、本業の方を進める気が無いのでしたら、せめて部下のメンタルケアを。
 今回、主役の一角を担うトライデント中隊の諸君の激励にでも行ってきて下さい」

「って、そんなに拗ねるなよ。ジュンと違って需要の無い、可愛げの無いルックスなんだからさあ」

「じ…自分は拗ねてなどいません!」

「判った、判った。そういう事にしておいてやるよ」

「提督〜!」

と、ささやかな仕返しを決めた後、尚も真っ赤になって怒っている。
相も変わらずオラニャンなナカザトの勧めに従い、俺はトライデント中隊の子達が待機しているブリーフイングルームへと向かった。

『メインバスを探っています。このコードは………ええっ!? そんなあ!』

『どうしたの!?』

『使徒は………使徒はMAGIに侵入する気です!』

『(クッ)I/Oシステムをダウンして!』

出撃前の事前情報の収集を兼ねて、ネルフの様子をリアルタイムで映す臨時のシアタールームとなっている其処を訪れると、丁度、修羅場に。
『誤報だ。 探知機のミスである。そう日本政府と委員会には伝えろ』とか
『パイロットを待つ必要は無い。直ぐに地上へ射出しろ。初号機を最優先だ。その為にはその為には他の二機を破棄しても構わん』
と言った、どこかの髭親父の理不尽かつ偉そうな命令が無かったにも関わらず、
概ねTV版準拠の展開を経て、MAGIがサブ・コンピューターからのハッキングを受けている所だった。

『カウント、どうぞ!』

『3……2……1!』

良く知らない。日向マコトと青葉シゲルの代理っぽい娘達が、取り出した鍵を足元の鍵穴に差し込み、タイミングを合わせて同時にそれを捻る。
MAGIを外界より物理的に隔離。PCで言えば、モデムを引っこ抜いて強制的にオフラインの状態にした訳である。
本来ならば、それで汚染は止まる筈だった。
だが、世の中そう甘くは無く、

『なっ!? 電源が切れません!』

『使徒、更に侵入! ………メキルオールに接触! 駄目です、使徒に乗っ取られます!!』

かくて、何時も通りのモニター越しの戦いでありながら、今回ばかりは使徒戦の矢面に立つ事となったネルフスタッフ達。
その奮闘振りはと言えば、

『メ…メルキオール、使徒にリプログラムされました!』

『じ…自律自爆を提訴!………否決。………ひ、否決!』

「こ…今度はメルキオールが(グスッ)バルタザールをハッキングしていまふ」

と、メインで戦っている娘達の戦意はもうボロボロ。もはや崩壊寸前な状態。

いや、まいったね。
劇場版でも此処まで酷くは無かったと言うか。何時も通りの布陣であれば、既に涙目になっている伊吹マヤとて今少しマシだったんだろうが………

まあ、絶体絶命の窮地に立ってすら迷いの無い。
良い意味でも悪い意味でも、完璧に腹を括っているウチの女傑達の方が特殊なんであって、
絶体絶命のピンチを前に今にも泣き出しそうになっているコッチこそが、いわゆる普通の女の子な反応なんだろうけど、
此処に居るのは、曲りなりにも未知の怪物と戦う事を前提としているスタッフ達の筈。
それが、蓋を開けて見れば。葛城ミサトに関しては諸事情を鑑みるにまあ仕方がないとしても、二軍とは言え他の者達までが、この有様とは。
ネルフ首脳陣は、ほんと〜に戦争をヤル気があったんだろうか?
こうなると、本気で疑問符を付けたくなるな。

『(クッ)このままじゃ押し負けるわよ、リツコ。
 取り敢えず時間稼ぎを。対応策が出来るまでMAGIの電源をカットして!』

『駄目よ! スタンドアローンな各支部の物と違って、本部のオリジナルMAGIは三基合議制。
 一つでも欠けたら、その時点で統合性が取れなくなって、システム上、死んだも同然………
 (ハッ)マヤ、ロジックモード変更! パルタザールとカスパーのシンクロコードを15秒単位にして!」

『は、はひ』

そんな俺でさえ別の意味で諦めかけた現場にあって、一人意気軒昂なアスカちゃんが激を。
それをヒントに、赤木リツコがTV版準拠な策を立案&実行。
メインモニターの点滅が目に見えて遅くなり、と同時に、発令所全体に安堵混じりの複雑な溜め息が漏れる。

『どのくらい持つの?』

『そうね。およそ二時間という所かしら』

アスカちゃんの問いに、赤木リツコが思案顔で応える。
だが、そんな彼女達を嘲笑う様に予想外な事態が勃発。

『だ…駄目です! 使徒の侵食が更に加速しました!』

伊吹マヤより悲鳴の様な報告が。
それを受け、シンクロコードを15分単位に。処理速度を可能な限り遅らせるよう指示する、赤木リツコ。
無論、その代償は少なく無い。
これによって、MAGIのスペックは最低以下に。
事実上、使い物にならない状態にとなり、久しぶりに、ネルフは使徒への攻撃手段を完全に失ったのである。

いやはや、幾ら完全な出来レースとは言え、此処までホシノ君の筋書き通りに事が進むと、流石に拍子抜けと言うか、別の意味で空恐ろしくなるな。
だがまあ、仮にも味方の娘がやっている事。
此処は、素直に頼もしいと思う様にしておこう。
なんと言っても、彼女は今回限りのスポット参戦だし。

  ピコン

『たった今、作戦名『MQ』の準備の為に特殊任務に就いていたロサ・フェティダが帰還しました。
 これより、第11使徒イロウル攻略作戦及びダークネスとしての放送活動を開始します。
 宣戦布告と同時に作戦名『MW』を開始しますので、トライデント中隊の皆さんは所定の配置に就いて下さい』

と言ってる間に準備が整ったらしく、コミニュケより、お仕事モードなホシノ君のフラットな声音での指示が。
う〜ん。慣れもあるんだろうが、やっぱ通信関係はサラ君かレイナード君に限るな。
そりゃ指揮官としては正しい態度なんだろうが、こうも事務的な口調だと士気に関わってくるし。
かと言って、この辺の権限をアマノ君に握らせると、なんか俺なんかには思いもよらない様な形で悪用しそうだし………
矢張り、その適正を無視して。ヤマダのそれに合わせて、彼女をオペレーター役に抜擢したのは失敗だったのかも知れん。

まあ良い。その辺の諸問題は、次のクルーに入った際のドサクサに何とかすれば済む事。
今は、目の前の使徒戦に集中すべきだろう。
さ〜てと。そんじゃまあ、俺は俺の仕事をするとしましょうかね〜

「(コホン)とゆ〜ワケで、出番だぞ諸君。至急、シミュレーションルームに向かってくれたまえ。
 今回の使徒戦で紡がれる二つの物語の一つは君達が主役。『光ファイバーコミニケーション』で『夢は此処にあるよ』だ」

「そういう色んな意味で危険な発言はお止め下さい、提督!」

「そうか? 俺としては、このギリギリ感がミソだと思うんだが」

「ギリギリどころか、明らかなピーンボールです!」

そんな何時ものやりとりに、軽い緊張状態にあったトライデント中隊の子達より失笑が零れる。
うむ。矢張り、ウチはこうでなくてはイカン。
シリアスなのは、今回の使徒戦に。作戦名『MW』に、そこはかとなく人生が掛かっている春待三尉とテレサ君だけで充分だ。



   〜 15分後。ネルフ本部の上空800m、ロサ・カニーナ提督室 〜

かくて、ホシノ君の指揮の下、第11使徒戦が開始されたのだが、

『お茶の間の皆さん、お待たせ致しました。
 愛ある限り戦いましょう、この命燃え尽きるまで。悪の秘密結社ダークネスの美少女女幹部、星野ルリ、お初に見参です。ブイ』

………って、チョッと待っちいな嬢ちゃん。
オジさん、ドコに突っ込めばイイんだよ、そのボケ。

ああもう、ラピスちゃんでもやらない様なネタを惜しげも無く。
しかも、艦長それとは対照的な。いつも以上に抑揚無く淡々とした口調と、明らかにウケを狙ってやってるし。
何や知らんが、色々と堪ってたんだなあ、ストレスが。いや、困ったもんだ。

『で、何の用? コッチは使徒と交戦中。おまけに、絶対絶命な状況とメッチャ忙しいんだけど』

そんな俺の困惑を尻目に、バーリートゥ−ド上等な渾身のネタをスルーしつつ話しを進めに掛るアスカちゃん。
だが、白百合ルックなホシノ君の攻勢は更に続き、

『それでは『次回をお楽しみに』という事して、来週まで話を引っ張りましょうか?』

『悪いけど一話完結方式で頼むわ。
 端的に言えば『今回は譲ってやるから、サッサと使徒を倒しなさい!』って所かしら』

『随分な物言いですね。
 と言いますか、其方のコンピューターに取り付いている細菌サイズの使徒をどうやって? 
 ひょっとして、『今がチャンスよ! 本部に主砲を。私達ごと使徒を倒しさい』
 『そんな! 私には……私にはアスカさん達を撃つなんて出来ません!』
 『馬鹿! 私達の使命を忘れたの?』
 『アスカさん………(グスッ)グラビティブラスト発射準備を』と言った展開を御望みなので………』

『って、あんたバカァ?
 ンな物理的な力技に頼るまでもなく、真っ向からの実力勝負でも充分勝てるでしょうが、アンタ等なら。
 何せ、こ〜やって、事実上ダウンしているMAGIをハッキングして国際放送をヤってる事自体が、
 今、バルタザールをハッキング中の使徒以上のシステム掌握能力があるって証明みたいなモンなんだし』

嗚呼、今日ほど君の存在が。無駄に偉そうな、その堂々たる態度が頼もしく感じられた事は無いよ、アスカちゃん。
流石、カヲリ君やレイちゃんと言った同系等のキャラ達の間で揉まれているだけあって、こういう展開での仕切りには慣れているっぽい。
後は頼んだよ、色んな意味で。

『いえ、流石にそこまで簡単な話でも無いですよ。
 何せ、もはや単純なマイクロマシーンの群体とは呼べない。既に、一つの生物としての知能形成に至るほど爆発的な進化を遂げている相手ですし。
 ちなみに、自己の弱点克服に腐心してるっぽいんで、それを逆手に取って進化の終着点へ。
 レミングスの如く自滅して貰おうと思って、先程、自己進化促進プログラムを流してみたんですけど、引っ掛ってくれませんでしたし』

『つまり、既に明確な自我を持っているって事か。厄介ね。
 で、ドウするの? あるんでしょう、アンタ等には打開策が。そろそろソイツを聞かせて貰えない?』

『そうですね。では、掴みのジョークはこの辺にして。これより此方の使徒殲滅作戦の説明に入ります』

なおも強気な。どこまでも挑戦的な口調のアスカちゃん。
だが、その内容自体はホシノ君の注文通りのモノだったらしく、サクサク話が進んでゆく。
正直、俺には到底出来そうもないやり取りである。
これが世代の差というものなのだろうか?

『御承知の通り、ネルフ本部にあるオリジナルMAGIは特別です。
 その最大の特色は、開発者である赤木ナオコ博士の三つの擬似人格を、それぞれの機体のメインOSとしている点です。
 これによって、三基合議制という他に類を見ない。
 他の支部にあるコピーMAGIの追従を許さない驚異的なスペックを誇っている訳ですが、それ故に、明確な弱点が。
 そのシステムの性格上、もしも三基の内一つでも欠けたら、その時点で三つのペルソナからなる複合式OSの統合性が失われる事に。
 常駐型管理システムとしては役立たずに。死んだも同然という事になります。
 そして、現在メルキオールに続いてバルタザールも、その根幹部分を。
 赤木ナオコ博士の擬似人格を抑えられてしまっています。
 従って、そちらのMAGIを完全復旧させるには、使徒殲滅の前にコレを奪還しなくてはなりません』

『ふ〜ん、御親切な事ね。
 で、具体的にはど〜すんの? ワザワザコッチに御伺いを立ててきたって事は『ソッチのスパコンに繋いで強引に』ってワケじゃないんでしょ?』

『はい。それも考えなかった訳では無いのですが、万が一の場合。
 此方のメインコンピューターであるダッシュが乗っ取られ、ナデシコ級の機動戦艦であるこのロサ・カニーナが使徒に掌握されてしまったりしたら最後、事は地球だけの問題では。
 火星や木星にまで飛び火する大惨事となりかねません。
 従って、ワンクッション置いた形で。中継点を通して、これよりワクチンプログラムを流す事に。
 また、事後承諾で申し訳ありませんが、そちらのチルド……レン(?)の方達にも、それに協力して頂く事になりました』

最後にチョッとだけ言い澱んだ後、ホシノ君が画面を変更。
ラピスちゃんの監修の下、この時の為に用意したPVを流し出す。

『ファ○コンウオーズを知ってるかい?』 『『『『ファ○コンウオーズを知ってるかい?』』』

『今度はMAGIウオーズだぞ』 『『『今度はMAGIウオーズだぞ』』』

春待三尉の号令の下、それを復唱しつつ訓練に励むトライデント中隊達の姿が。
隊列進行に始まり、それを引き継ぐ形で『かなり凄い』とか『母ちゃん達にはナイショだぞ』と言ったナレーションの下、
匍匐前進、障害物登攀、ナイフの投擲、まるで殺陣の様なビジュアル重視な白兵戦訓練と続き、最後に隊員全員でのアサルトライフルの一斉射撃シーンが。

『MAGIウオーズが出〜たぞ』

そのまま画面は寄ってゆき、ウインクする春待三尉のバストアップに。
羞恥心からか、もう何十回もリティクとなった曰く付きのラストシーンが決まった。

『な…何よ、コレ?』

『とあるゲームにヒントを得て作成されたっぽい、ウリバタケ印のワクチンプログラムです』

呆れ顔のアスカちゃんを尻目に、ホシノ君は淡々と説明を続行。
それに合わせて、ゲーム………じゃなくて、ワクチンプログラムがスタート。
紡錘陣形を取った戦車小隊。5台のウィンスカーD型が突撃を開始。
申し訳程度に警戒態勢を取っていた敵の戦車部隊を一気に蹴散らすと共に、敵に占拠されている工場へ歩兵小隊が侵入する為の橋頭堡を確保。

『(パン、パン、パン)HAHAHA、死にたいヤツから前に出な。極楽へ逝かせてやるぜ!』

『Fire(ドゴ〜ン)』

満を持して。使徒戦の性格上、これまで中々見せ場に恵まれなかった赤木士長が、やたらイイ笑顔を浮かべつつ先陣を切って突撃。
キャットウオークに詰めていた見張りの歩兵を、まるでカンフー映画の様な動きで派手に動き回りつつ手にした二丁拳銃にて、次々に打ち落す。
それをフォローする形で、警報に合わせ出動してきた増援部隊。
M16で武装した十数人の敵主力歩兵小隊は、出会い頭に、ワークマン士長がパンツァーファウストにて一掃。

そんな彼等の活躍によって、春待三尉率いるトライデント中隊は最初の補給ポイントを確保。
新兵器の開発を。約一年前に、一番最初に完成した部隊の装備であるウィンスカーD型に続いて、ゲームの中でも自身の愛機を入手する為の技術力の一端を手に入れた。
それと同時に、このワクチンプログラムの効果で、極僅かながら使徒の侵食から回復した事を示す証左が。
現在の状況をリアルタイムで映し出しているネルフ管制室の大型モニター。
その画面内にて、完全に乗っ取られて真っ赤だったメルキオールが、端っこの部分だけが正常化を示す青色に変化した。

『え…えらく手間暇を掛けてるって言うか、気の長い方法ね。
 いつもの機動兵器で。ダーク・ガンガーとか言うヤツで一気に殲滅ってワケには行かないの?』

『これはワクチンプログラムですからね。
 重用なのは本作戦に従事している方達のマンパワーであって、現実の破壊力はあまり関係ありません。
 まあ、仮にその辺が有効であったとしても同じ事ですけどね』

『えっ、何で?』

あの大豪寺さんに、必要以上にMAGIを傷つける事無く少しずつ復旧させてゆくなんて細かい作業が出来ると思いますか?』

『………なるほど。納得したわ。
 ンじゃ、ソレはソレとして。シンジ達はナニをヤっているの?』

『基本的には同じ事ですよ。  只、プログラムの内容と言うか、復旧方法が少々違うだけです』

アスカちゃんの消極的な肯定の下、ホシノ君の状況説明は続く。
画面が切り替わり、今度は堅牢な城砦のアップが。
次いで、主人公達が全滅する度に所持金の半分をチョロまかす事で有名な某王様の王宮の様子が映し出される。
それに合わせて、数多のゲームの中でも五本の指に入るであろう超有名な。交響曲になった事もある、あのBGMが流れ出し、

   チャ〜チャチャチャチャチャチャチャ〜、チャラララ〜ラ、チャチャチャチャ〜チャ

『それでは、そなたが大魔王バ○モスを倒してくれると言うのだな』

『だ〜か〜ら、そんな事を言った憶えは欠片もないつ〜の』

『おお。勇者オ○テガの子、勇者ミサトの旅立ちに祝福あれ』

『人の話しを聞け〜〜〜っ!』

う〜ん。流石の葛城ミサトも、RPGの住人には勝てないか。まあ、当り前だけど。
それでも、チョッと新鮮って言うか、イイ気味だと言おうか。
にしても、ファンタジーな服装が。取り分け、勇者っぽいソレが全然似合っていないな。
矢張り、年齢的にキツイものがあると言うか、どこかの如何わしい店特有の、原作を全く知らないでヤっているとしか思えないコスプレみたいだ。

『出会いと別れの場所、ルイーダの店にようこそ』

とか言ってる間にもプレロールは進み、半強制的に最初のイベントポイントへ。
キャラクターの設定がウリと言うか。半ば主人公とその仲間達の物語を追うだけって感じになりがちな昨今のRPGとは対照的に、
1から仲間のキャラメイクをする事も出来る自由度の高いこのゲームではあるが、此処は予め用意された既存のプレイヤー選んで貰う。
そう。些か心苦しくはあるが、コレのお守をする役は最初から決まっているのだ。

『うえ〜〜ん。シ〜ンちゃ〜ん!(ガシッ)』

『って、そんな泣かないで下さいよ、ミサトさん』

『(グシュ)泣きたくもなるわよ。
 だってだって。(グシュ)此処じゃ誰も私の話を聞いてくれないってゆ〜か(グシュ)世間の風が冷たいのよ〜』

年甲斐もなくマジ泣きしつつ、女武闘家ルックのシンジ君の胸に縋りつく葛城ミサト。
ちなみに、彼女の衣装が原作の緑を基調としたものではなく某格ゲーの2Pカラーっぽい桃色なのは、君とラピスちゃんとの御約束だ。

『言いたい事は判りましたから、サッサと放して……じゃなくて、いい加減泣き止んで下さい』

『マユミの言に賛同。葛城三佐、現在は作戦行動中。直ちに碇君を開放する事を要求します』

かくて、その後現れた、女僧侶ルックのマユミちゃんと女魔法使いルックのレイちゃんに宥められ(?) 漸く旅立ちを決意する葛城ミサト。
そんな彼女達の下に、

   ポン

『初めまして。この度、本作戦のナビゲーター役を務めます電子の妖精です』

と、SDホシノ君(何気に14歳バージョン)が登場。
以前、記録映像として見せて貰った、オモイカネの叛乱時の様な形で、葛城ミサトの左肩にチョコンと乗りつつ挨拶を。

『それでは、色々と時間を押していますんでチートプログラムを実行。
 経験値関係の条件設定をイジってレベルを限界まで上げますね』

そのまま、業務連絡っぽい事を。
その宣言と共に、各人のレベルアップを告げるBGMが次々と鳴り響き、全員のレベルが99まで上がった。

『次は装備です。此処のよろず屋、マーベリック社アリアハン本店へ向かって下さい』

数分後。自分や仲間のパラメータを確認して一喜一憂。

『ど〜せズルするなら、パラメータの方も限界値まで上げでくれたってイイでしょうに〜
 おまけに、何故かドラ○エV以降の勇者の代名詞とも言うべきデイン系(雷撃系の攻撃呪文)の呪文が使えなくて、別のど〜でも良いヤツに差換えになってるし〜』

と、呆れた事に、レベルがMAXまで上がってなお、そのステイタス表にほとんど成長の跡が見られなかった葛城ミサトの愚痴を黙殺しつつ、ホシノ君が話しを進めて行く。

『ごきげんよう、皆様』

向かった先には、ゲームのTPOを無視してマーベリック社の女性用制服を着込んだカヲリ君の姿が。
そして、彼女に促されて入った某商人の町のそれよりも広い店内には、古今東西総てのド○クエのアイテムが。
その一番奥には、四人の職業別の最強武器&防具。そして、6色のオーブを初めとする冒険中に必要な必須アイテムの数々が揃えられていた。

『………どうやったのよ、ソレ』

モニターの前で、思わずそう呟くアスカちゃん。
そんな彼女の言葉が通じたかの様に。否、実際に応える形で、

『これらのアイテムは、当社がその総力を結集して揃えたものですわ。
 その詳細について此方を御覧になって下さいませ。一部始終を修めたPVってことね』

と言いつつ、カヲリ君が大振りな水晶玉を指差し、それに呼応して、画面がどんどんアップに。
至近距離まで近付いた後、そのまま水晶の中に映る映像を映し出す。



   〜 エジンベア城 〜

夜の帳も降りた頃。海辺に面した城下町に、時ならぬ哄笑が響き渡る。

『HAHAHAHA! 予告状通り、渇きの壷は頂いたわ。また会おう明○君!』

『だ〜れが○智君だ! 者共、撃て! 撃て! 妖しい鳥に乗った、あの奸賊めを生かして帰すな!』

ゲームのTPOを無視してハングライダーを駆る、某怪盗キ○ドっぽく真っ白なタキシードを着込んだ盗賊。
マーベリック社が誇るメイド四人衆のリーダー、エクセル小林の甲高い声での嘲笑(?)に激昂し、部下を叱咤しる警備隊長。
それに応じて、虎の子の魔法使い小隊より一斉にメラが。

『おっ(ヒョイ)ほっ(ヒョイ)こりゃ(ヒョイ)なんと〜』

飛来する数十にのぼる火玉に、流石のエクセルもタジタジに。
だが、得意の軽口だけは衰える事無く、

『いや〜、ヤルもんだ。流石だぜ、とっつあん』

『だ〜れが、とっつあんだ! 俺はまだ29歳だ! 訂正しろ〜!』

『もうすぐ30じゃん。キッパリと、とっつあんよ』

『ふん! 貴様とて、四捨五入すれば30って年恰好だろうが!』

『(チッチッチッ)生憎と、アタシはキラキラ星から来た高等生物なんでね。25歳から先は、逆に18歳まで1歳ずつ若返るんよ』

『え〜い、戯言を!』

かくて、互いを好敵手と認め合った彼等の攻防は、海岸線に朝日が差し込むまで続く事に。



   〜 サマンオサ城 〜

突如、頭部から血が流れだし。それを切り口に、まるで見えない巨人の手で引き裂かれたかの様に、
盛大に血飛沫を撒き散らしつつ、サマンオサ王の身体が左右に吹き飛んだ。
その凄惨な。あまりにも血生臭い光景に、一瞬、シ〜ンと静まり返った後、

『お、王様〜!? 誰か! 誰か来てくれ〜〜!!』

重臣達の叫び声が響き渡り、蜂の巣を突いた様な大騒ぎとなる城内。
それゆえ、一拍遅れて響いてきた『ガーン』という耳慣れない音に気付く者は居なかった。
かくて、ボスト○ールは死んだ。仮初の姿のままで。
本来ならば、人間のそれなど比較にならない敏感な聴覚と第六感を持つが故に、不意打ちを喰らう事などあり得ない彼(?)だったが、
1q以上も先からの超遠距離狙撃という、このゲームの世界観を無視し捲くった攻撃の前には成す術も無かったのだ。

そんな、神技とも言うべき狙撃を披露した告死天使の加護を得し人物。
メイド四人衆の一人、綾杉チハヤはと言えば、

『あら、いけない。先輩の御指示通り『ちょろいもんだぜ』って言うのを忘れていました』

相手がモンスターなので、念の為に用意したバレット M82(50口径(12.7mm)の重機関銃弾を使用する対物狙撃銃。
 対人狙撃に使用するには少々過剰過ぎる破壊力なのだが、火器の口径を規制する条文は存在しないので、一応、ハーグ条約には抵触しない)
の大ぶりな銃身(全長約145センチ、重量約13kg)を片付けながら、のほほんとそう呟いた後、

『さて。次のターゲットはジパングのヒミコですか。
 この場合は矢張り、『そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!』が適当でしょうか?
 ああ、そうそう。ついでですから、ロマリア王とその側近の大臣も処理しておきましようね。
 きっと、その方が話が早く進む筈ですし』

と、さも楽しそうに次の予定を確認しながら足早に狙撃ポイントを後にした。



   〜 バハラタ、商人連合組合 〜

『それでは、どうしても私共には黒胡椒を売って頂けないのですか』

『ああ。余所者には分けてやれないな』

『おやおや。『此処の北にある【人さらいのアジトを】より人質を救出したら』という御条件にて、売買契約は既に締結していた筈ですが………』

そう言いつつ、懐からゲームのTPOに合わせた羊皮紙製の契約書を取り出す、マーベリック社営業部長、豹堂ハヤト。
だが、中肉中背の体躯に七三の髪型と、どこにでも居そうな。
青○かコ○カ辺りで買ったと思しき如何にも大量生産品っぽい、一般的なサラリーマンにありがちなスーツ姿こそチョッと浮き気味だが、
何故か周りに警戒心を与えないその容姿が災いしてか、偏屈で鳴らした老人達には完全に舐められる事に。

『はあ〜ん。偶々盗賊共が居なかったスキを突いただけの癖に偉そうに』

『そうじゃ、そうじゃ。寧ろ、コレが向こうを怒らせる結果に。連中が報復に来たりしたら、どうしてくれるじゃ。その辺、責任を取って貰えるんじゃろうな?』

口々に勝手な御託を並べる長老達。
その繰言を、一通り聞き終えた後、

『(ハア〜)正直、気は進まないのですが………仕方ありませんね』

溜息と共に、豹堂はプランAを諦め、眼鏡を外して裏の顔に。
そのまま、龍頭拳(中指の第二関節を突き出す形で握る拳形。空手の一本拳に近いもの)にて、彼等のこめかみを次々にヒット。
長老達がそれを認識するよりも早く。僅かな痛みすら感じさせる事無く、恙無く天国(?)へとエスコート。

その間に、かの老人達に頭を押さえつけられていた若手の商人達を、
昔取った杵柄とばかりに、ウィッグを付けてドレスアップしたライザが誑し込み………じゃなくて、上手く扇動。
邪魔者が居なくなった事もあって、開かれた市場を旗印に新たな組織を立ち上げる事に。
かくて、プランBは成功して黒胡椒を大量ゲット。

『ハァ〜〜〜ハハハハッ! 大王イカだかなんだか知らねえが、この俺にハンドルを握らせたら最後だぜ〜!』

『はいはい。貴方が最速なのは良く判っていますとも。
 (コホン)まあ、それはそれとして。首尾良く目的の物も手に入った事ですし、このままポルトガへ向かって下さい』

『OK、ダンナ! ぶっ飛ばすぜ! 振り落とされんなよ!』

大航海時代の物を模した大型帆船と、久しぶりの大物の操縦。
それも操縦席……とゆ〜か、船の舵が船先に。
潮風とスピードを肌で感じられる位置にあった所為か『最高にハイってヤツさ!』状態な、同僚の鷲爪マサキを適当にあしらいながら。
すぐ背後に迫っている吸盤の付いた巨大な触手も黙殺しつつ、システム手帳を片手に今後の予定を確認するハヤト。
正に、ジャパニーズサラリーマンの鏡とも言うべき勇姿である。

だが、かの地ポルトガでは、そんな彼をして対応に苦慮する事態が勃発。
これまた同僚の一人であり、何気に担当していた任務を早めに片付けたポール=サメジマが、フルーティなソースで頂く獣肉の臭みが感じられない肉料理をメインに据えた店を、
その城下町にて勝手にオープンしていた為、ポルトガ王との交渉材料だった黒胡椒の価値が、彼等の到着を前にして大暴落。
その結果、当初の約束通り、勇者御一行様の御座舟を用意して貰う話は大いに難航する事となるのだが、これはまた別の話である。



   〜 アッサラーム 〜

『おお。お客さん買物上手ですね。私、まいってしまいます。でも、あなた友達………』

町の片隅に店を構えた露天にて、恰幅の良い小太りな身体に如何にも人の良さそうな笑みを称えた商人Aと、とある冒険者御一行が、鉄兜の値段交渉をしている。

最初は32000Gと、明らかに法外な金額だった。
だが、その事を指摘すると、商人は値段を半分に。次いで、更にもう半分に。
そして、その都度、『友達』を連呼すると共に、どうしても買って欲しい事をアピールする。
この値引き攻勢を前に情にほだされたらしく、お買い上げになる冒険者御一行。

『私達、いつまでも友達。また、きっと来てくださいね』

相も変らぬフレンドリーな態度で、その背を見送る商人A。
だが、その姿が見えなくなると同時に、その笑顔には嘲笑の色が。
それもその筈、彼の売った鉄兜の定価は1000G。
それでも充分利益が見込める所を、その8倍値での売却。
そんな、インド人もビックリのボッタクリ商売を成功させた事で、ホクホク顔となる商人A。
だが、彼の幸せは長くは続かなかった。

  ドス

と、突如、その背にナイフが突き立てられる事に。
そして、激痛と驚愕に顔を歪める商人Aの耳元に。
背後より、その凶行に及んだ少女から囁く様な呟きが。

『困るんですよ、我が社のテリトリーでこういう阿漕な商売をされると。(この地区は私の担当なんで、カスミの責任問題になっちゃうんですよね。プンプン)』

『ま…マーベリック社の者か!?』

『(クスッ)御想像に御任せしますね。
 それに、私の素性などより、もっと重要なお話が。
 今、ナイフを抜けば、貴方は急性出血のショックで即死します。
 ですが、このまま20分以内に教会に駆け込めば。或いは、僧侶なり賢者にベホマを掛けて貰えれば助かります。
 とまあ、此処まで言えば、もうお判りですよね?(サッサとバックに付いている組織の事を吐きやがれです)』

『わ…判った。話す、話すから助けてくれ!』

『……………』

『我々は、悪逆なグラシス=ファー=ハーテッドの独裁政権を打倒する為に立ち上がった、聖霊ルビスの加護を受けし正義の使徒(ドスッ)うごぉっ!』

商人Aの長口上にイラっときたらしく、みなまで言わせずにナイフをより深く突き刺して止めを刺す。
そして、奇声を発して倒れ付したその遺体に向かって、何事も無かったかの様に一礼した後、

『それ、カスミのお気に入りの一本ですので、天国に行かれた後も大切にして下さいね。(これがホントのメイドの土産ですう)』

と言い残して立ち去る、フリフリなレースの沢山付いたゴスロリチックなメイド服の。
メイド四天王の一人で、建前と本音が限り無く等価値近い少女、宗像カスミ君。



   〜 商人の町 〜

ポルトガから西に位置する大陸にある商人の町。
元は只の草原だったその場所は、今では大陸でも随一の商業都市に。
そんな急速に発展した地にて、その実権を一手に握るマーベリック社の。
その会長であるグラシス中将を打倒せんと、クーデターが起っていた。

『やれやれ。『是非とも商人が欲しい』と言うんで、わざわざ老骨に鞭を打って来てやって。
 おまけに、只の野原だったこの地を此処まで発展させてやったと言うのに。
 それをまあ、恩を仇で返す様な真似をしおってからに。
 とゆ〜か、実際、一体ナニが気に入らないと言うんじゃ、お主等は?』

さも心外だと言わんばかりに、西洋人特有のオーバーなジェスチャーで頭を振りつつ愚痴っぽくそう呟くグラシス中将。
だが、集まった糾弾者達は、そんな余裕ぶっこいた態度こそが気に食わないらしく、

『お得意の韜晦はその辺にして頂きましょうか、グラシス会長。既にネタは上がっているんです』
『そうだ、そうだ!』
『コッチには、アンタが夜、町の西の牢獄の裏で怪しい男達と密談していた所を目撃した者が居るんだ!』

声を荒げつつ、証拠と呼ぶには些かな稚拙な状況証拠を上げてみせる。
もっとも、中将の方はと言えば、それを否定すらせず、

『それで、それが如何かしたのかの?
 そんな事は、この町が誕生した直後よりずっと続いていた事。それを今頃になって言い出されても困ってしまうのう。
 それに、チョイ情報に齟齬があると言うか。わしが密会してるんは、そんな無粋な相手じゃなくて、桃色髪の妖精なんじゃが………』

『なっ!? 貴様、この後に及んで開き直るつもりか?』
『盗人猛々しいとは正にこの事』
『もう良い。これ以上、何を言っても無駄だ。サッサとふんじばれ!』

先程まで以上にテンションを上げ、今にも掴みかからんとする町の代表達。
大勢でいきなり押しかけた挙句、相手にアッサリ論破されるや否や、たった一人の老人を相手に実力行使。
それでも、彼等は己の胸に恥じる事はない。自分達が正しいと固く信じているのだから。
歴史上、何度も繰り返されてきた正義の戦い。所謂、革命と呼ばれるものである。
しかし、この場合は相手が悪過ぎた。

  ドン

襲い掛かってきた代表者達の鼻先に向け、手前のテーブルを蹴飛ばして機制を制すと、
中将は『こんなこともあろうかと』会長室の隅のロッカー内に用意してあったM16(アサルトライフル)を取り出すと、それを腰溜めに構え、

   ガン! ガン! ガン!………

卓袱台返しをモロに喰らって転倒していた彼等の直ぐ足下へと躊躇い無く発砲。
その着弾音と衝撃に、ビビリ捲くる町の代表者達。
中には失禁している者さえ居たが、それを嘲笑する者は居ない。
彼等には理解不能な攻撃ではあったが、それが生存本能に盛大に危機を訴えるものであったが故に。

『さて、お前さん達の話は良く判った。
 チト秘密主義に走り過ぎたと言うか、わしは少しばかり怪しい行動が多かった様じゃな。
 いや、すまんかった。(ペコリ)これ、このとおり。許してくれ』

『…………は、はひ』
『も…もうお気になさらずに』
『どうか頭をお挙げ下さい』
『とゆ〜か、どうか私達の浅慮をお許し下さい。お願いしまふ』

『(ホッホッホッ)有難う。いや、上手く和解出来て良かったぞい。
 何せお前さん達は、カヲリの後釜。チョイとばかり大きくなり過ぎたこの町の経済を切盛りする上で無くてはならない、わしの大事なブレーン達じゃからのう』

そんな黄門様の様な朗らかな。
それでいて、チョッとイイ感じに腹黒い笑みを浮かべながらのグラシス中将の言をガクガクと頷きながら肯定。
口々に、彼への新たな忠誠を誓う町の代表者達。

かくて、たった数発の弾丸によって、この町の利権を我が手にせんとの野望に燃えていた革命家達の士気は完全に瓦解し、中将の政治基盤は更に強固な物となった。
そう、力無き正義は無力なり。
これもまた、過去の歴史が物語る真理の一端なのである。

そしてラストワン。こ〜ゆ力技をやるならば、オオトリはヤッパリこの少女。



   〜 ランシール北部 地球のへそ 〜

『バルディッシュ、最下層部のブルーオーブを巻き込まない様に座標修正を。ディバ○ンバス○ーいけるね?』

黒を基調としたゴスロリルックの少女が、己の身長とほぼ同じ位もある魔法杖(?)に最終確認を。
それを受け、彼女の頼もしき相棒(?)が必殺技に必要なプロセスを次々にクリア。

『all light my master』

『shooting mode set up』

  ギュイ〜〜ン

何気に太陽系最強の超AI。オモイカネによる制御の下、魔法丈の先端に在りし日のアキトを彷彿させる様な感じでDFSが高密度で圧縮されてゆく。
その反動で、杖に掛る負荷はシャレにならないものになっているが、それをものともしない力が少女にはある。
そう。彼女は決して、可愛いだけの存在ではないのだ。

『ディ○イィィン、バ○タァァッ〜〜!!』

   ドゴ〜〜〜ン!

そんなこんなで、某白い悪魔の。『説得』と書いて『戦闘』と読む熱血魔法少女の必殺技を借りての魔力砲攻撃によって、洞窟は綺麗サッパリ無くなり更地に。
そして、オモイカネのナビの下、その一角をスコップにて掘り起こすと、

『良し、ブルーオーブの確保完了。次は黄金の爪の回収に行くよ!』

『Yes my master』

『トベルーラ!(飛翔呪文)』

かくて、とある漫画のネタを流用しての裏技を駆使して大空へ。
イイ感じな笑顔を浮かべつつ、これまた某魔法少女っぽく本邦初公開にして本ゲーム内でしか使えない高速飛行魔法を。
良くも悪くも、最近はもう吹っ切れ捲くっているミルクちゃんだった。



   〜 再び、マーベリック社アリアハン本店 〜

『(フッ)これがマーベリック社クオリティですわ。情報を制する者が世界を制するってことね』

『……………いや、違うからソレ。情報以外のモノだって制しまくってるじゃない。もう、おもいっきり』

呆れ顔でそう突っ込むアスカちゃん。
だが、そんなギャラリーの声を無視して、

『さあ。早速、そちらの更衣室にて装備の方をお整えになって。
 また、お入用な物は、総てこの四次元ポシェットにお入れ下さいませ。これより、冒険の旅に出発ってことね』

と、彼女をして、あの状況はかなりキツイらしく、常ならぬ強引な口調で。
まるでヤケクソの様な調子で、話に巻きを入れて行くカヲリ君。
かくて、勇者御一行様の、その道程が完璧なまでに舗装整備された冒険の旅が始まった。

『これは老婆心から申し上げるのですが、そちらのチルドレンの保護体制は少々杜撰過ぎるのではないでしょうか?
 本職の軍人である葛城三佐は兎も角、それ以外の少年少女など所詮は素人。
 あんな風に湖に放り出したままにするなど愚の骨頂です。
 今回みたいに、エントリープラグごと簡単に誘拐されてしまいますよ』

『御忠告どうも。個人的には『ンな事が出来るのはアンタ等だけだちゅうの!』って、言いたい所だけど、ありがたく今後の方針決定の参考にさせて貰うわ。
 で、本命の話はナニ? アタシ等にもヤって欲しい事があるんでしょ。もったいぶらずにサッサと言いなさいよ』

その後ろ姿を見送った後、徐に呈されたホシノ君の苦言を、いかにもイヤそうな顔で聞き流しつつ先を促すアスカちゃん。
その不貞腐れた様な態度に、僅かに苦笑しつつ、

『おや、既にお気付きとは。話が早くて助かります』

『当り前でしょ。わざわざコッチに断りを入れる必要なんて無いじゃない、ココまでの話は』

『いえ。仮にそうだったとしても、御挨拶をくらいはするつもりだったのですが。
 どうやら、予想以上にウチは礼儀知らずな団体だと思われているみたいですね。
 これは此方の不徳のいたす所。この場をお借りして謝罪します』

と、ペコリと頭を下げた後、

『さて。それでは此処からが本題と言いますか、実は赤木博士にお願いしたい事があるのですが………』

小揺るぎもせずに、いつもの調子で淡々と話しを切り出すホシノ君だった。




次のページ