時は元旦、ナデシコ内。
〔・・・怖かろう・・・悔しかろう・・・・・・。
いくら身に鎧を纏おうと、心の弱さは護れないのだ!!〕
「・・・ッ!? ・・・くそ!!」
ガバッ
今見た夢の内容に慌てて飛び起きるのは、〔漆黒の戦神〕、
そして〔希代の女たらし〕という二つ名を持つ青年、テンカワ・アキト。
乱れた息を整え、辺りを見渡す・・・。 そうだ、ここはナデシコ、自分の部屋だ。
「・・・ふう、なんて夢だったんだ。 よりによって何で夢に北辰が・・・」
と呟き、額に浮いた脂汗を拭おうとして・・・。
ガッシ
・・・動けないことに気付いた。
「・・・え?」
そう、よく見れば二人の美少女が彼の腕を抱き枕として抱え込んで寝ているからだ。
付け加えれば、彼の上にはやっぱり二人の美少女が掛け布団の様に乗っかって寝ていた。
俗にいう、肉布団である。
・・・どうやら、悪夢の原因は彼女らのせいだったらしい(羨まし−)。
「・・・グッモ−ニン、父さん。 ・・・新年のお目覚めはどう?」
「・・・もの凄く最悪だな、マイト。 ・・・そういうお前はどうなんだ?」
隣から声を掛けられ、アキトはそちらに顔を向ける。
そこには、アキトと寸分違わぬ顔をした青年が、アキトと同様三人の美少女の抱き枕と化していた。
「・・・よかないよ。 御陰でアイツに追いかけられる夢を見た(汗)」
と青ざめた顔に浮かんだ汗を拭い、アキトの問いに答えるのは・・・
彼の未来の息子、テンカワ・マイト(18)である。
・・・それにしても、マイトを脅えさせるアイツとは一体だれなのか?
謎はどんどん深まるばかりである。
「「はぁぁぁ・・・」」
時を越えた親子は、二人同時に深い深い溜め息をついた。
が、これはこれから起こる事に比べれば、可愛い物だったのである。
機動戦艦ナデシコ 時の流れに外伝
ナデシコであった、本当に怖い話Vol.7
彼方より来たりし厄災、あるいは幸せの予兆 −その3−
そして伝説へ・・・
「・・・で、どうして君達はオレの部屋で寝ていたのかな? しかも、同じ布団に?」
ここはナデシコ食堂。 今日は元旦のため、ナデシコクル−全員はお節料理やらお雑煮やらを食べ、
飲めや歌えやの大宴会を行っている。
回りを美女に囲まれたアキトは、アキトにお年玉をもらってホクホク顔の美少女達
(未来のアキトの娘達)に話し掛けていた。
彼女達に共通している事は、全員美人だが極度のファザコン、そしてブラコンという事である(笑)。
「え? だって、パパやお兄ちゃんと一緒だとグッスリ眠れるんだもん」
「そうなんです、父さまと兄さまの温もりに包まれていると安心できるんですよ」
と言うのは、彼の未来の娘達のテンカワ・カスミ、ヒサメ姉妹(それぞれ16歳)だ。
水色の長い髪を持つのがカスミで、紫の長い髪を一本の三つ編みにしているのがヒサメである。
二人とも、ホウメイさんが作ったお節料理を食べていたりする。
カスミはナデシコ・サブオペレ−タ−であるラピス・ラズリの遺伝子をベ−スにして生まれたため、
IFS処理能力は彼女と同等かそれ以上。
・・・まあ、性格は似た様なもんだが。
ハ−リ−をよく苛めている場面をよく見る、というのは余談。
そして、彼女の双子の妹(正確には、生まれた日時が同じ)のヒサメは、
ナデシコ一のエキセントリックな美人女医のイネス・フレサンジュとの娘として生まれたため、
科学や医術、そして人体実験(汗)に興味を持っている。
・・・説明好きも受け継いでしまったようだ。
「そうだな、私は父上と兄上以外の男とは一緒に寝たくないな」
「同感ね、マトイ。 私もそう思うわ」
こちらの二人の美少女も、アキトとマイト以外の男はお断りらしい。
なんせ即答するぐらいだから。
ちなみに、彼女たちはテ−ブルに並べられた色とりどりのオ−ドブルを食べていた。
今時古風な言葉使いをするのはテンカワ・マトイ、17歳。
真紅の瞳を持ち、瞳と同じ真紅の髪をポニ−テ−ルにした美少女である。
なんと彼女は北斗の未来の娘であり、
その御陰か、彼女の格闘センスは姉妹の中でも飛び抜けてよかった(武羅威でもある訳だし)。
・・・母親に似て、二重人格者でもある(もう一つの人格の名前はキリン)。
そして、その隣でマトイに相槌を打っているのはテンカワ・アズサ、同じく17歳。
紺色の髪をセミロングにしており、彼女からは優しさ、母性本能という物が滲み出ている。
彼女の母親は、エステパイロットのあのスバル・リョ−コ。
家事全般OKという実に家庭的な少女だが、格闘技にも長けている。
「うにゅ−、まだ眠いよぉ。 ボク朝弱いのに・・・」
「あらあら、イ−ナったら。 〔早起きは三分の得〕というじゃないですか。
元旦くらいは早起きした方がいいですよ」
「・・・メイナおね−ちゃん、それ〔早起きは三文の得〕だよぉ・・・。
・・・お正月は寝正月とボクは決めてるのに・・・」
「そうでしたっけ?」
まだ眠いのか、眼を擦りながら姉に突っ込む少女はテンカワ・イ−ナ、15歳。
ピョコンと飛び出たアンテナの様な髪をユラユラと揺らし、彼女の未来の母親である
アリサ・ファ−・ハ−テッド譲りの長いプラチナの髪を手櫛で直している。
一見あどけない少女のように見えるが、意外な事に銃火機の扱いに長け、
特に拳銃(マグナム)の扱いは一品である。
そして最後にイ−ナにボケで諭したのが金髪美人のテンカワ・メイナ、18歳。
彼女の未来の母親、サラ・ファ−・ハ−テッドの遺伝子、
そしてナデシコでは良識人のハルカ・ミナトの遺伝子を受け継いでいる為、こうなったと思われる
(奇抜な行動を押さえる為でもある)。
実は彼女は以外と腕力があり、自分と同じくらいの長さの槍を軽々と扱う。
・・・そして、テンカワシスタ−ズの中で一番のスタイルを誇る美人である。
ちなみに彼女たちは、アキトの作った巻き寿司を食べていた。
「よ、アキトにマイト、そしてお嬢さん達。 明けましておめでとさん。
・・・まあ、アキトとマイトの二人は新年早々不幸みたいだけどな・・・」
「「あ、おめでとうございます、ナオさん。」」
「「「「「「おめでとうございます、ナオおじさん(殿、おじさま)」」」」」」
とそこに、元クリムゾン諜報員のヤガミ・ナオがコ−ラ片手にやってくる。
(お酒はいざという時に行動の妨げになる、という事で彼は飲んでいなかったりする)
「はい、これ俺からのお年玉。 大事に使うように」
「「「「ありがとう(ございます)、ナオおじさん(おじさま)」」」」
「わ−い、お年玉だ−♪(はぁと)」
「かたじけない、ナオ殿」
六者六様の答え方をするテンカワシスタ−ズ一同。
イ−ナとヒサメなんかはナオに抱きついており、年甲斐もなく照れているナオだった。
「・・・俺にはお年玉ないんですか、ナオさん?」
「あるよ、ちゃんと。 ほれ、お年玉。
・・・後であのホ−ムペ−ジのアドレス、教えろよ(ボソボソ)」
「どうもです、ナオさん。
そりゃいいですけど・・・ミリアさんにバレても知りませんよ(ボソボソ)」
「う・・・やめとく」
マイトに言われて、おとなしくなるナオ。
・・・一体彼はどんなホ−ムペ−ジのアドレスを知りたがっていたのだろうか?
謎はどんどん深まるばかりである。
「明けましておめでとうございます、アキトさん、マイトさん。
今年も宜しくおねがいします」
「アキト−っ、一緒にお雑煮食べようよ−」
とアキトの元に歩いてくるのは、ナデシコメインオペレ−タ−のホシノ・ルリと
サブオペレ−タ−のラピス・ラズリである。
もちろん、二人とも髪を優雅に結い上げ、豪華な振り袖姿(ミナトさん支給)である。
是非とも一度拝んでみたいものだ。
「明けましておめでとう、二人とも」
「明けましておめでとうございます、ルリ母さんにラピス母さん」
新年の挨拶をするアキト、マイトの二人。
「あれ、他のみんなはどうしたの、ルリちゃん?」
「みなさんあちらでお酒飲んだりおしゃべりしてます。
あ、私とラピスはウリバタケさんにお酒を飲まされそうになったので、こちらに避難してきたんです」
「未成年になんて事を・・・(汗)」
ナデシコ整備班長のウリバタケさんならやりかねない、と冷汗をかくアキト。
それでは、ここで各ナデシコクル−の様子を見てみよう。
「ねえ、ラピスママはお年玉くれないの? パパはくれたのに・・・」
「・・・自分より年下の母親からお年玉をねだるの、あなたは?
しょうがないね。 ・・・じゃ、これで我慢して」
「なに、このMOディスク? ・・・もしかして、パパの秘蔵写真!?」
「ううん、それ“ハ−リ−をどう苛めると楽しめるか”のマニュアル。
・・・とっても面白いから試してみて」
「うん、わかった(ニヤリ)。 後で試してみるね」
と、めちゃくちゃヤバイ事を話しているのが、ラピスとカスミである。
一方、ナデシコブリッジ。
ゾクリ
「ううっ、なんか寒気が・・・(汗)。
変だなぁ、空調は確かに効いている筈なのに・・・?」
正月休み返上で仕事をしている不幸な少年マキビ・ハリは、
これから自分の身に振りかかる不幸を感知したらしく、寒気を感じた。
が、ただ不幸を感知しただけで・・・回避することは出来なかった(笑)。
数分後・・・・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
新年早々、お馴染みの叫びとともにハ−リ−ダッシュを披露するハ−リ−だった。
「今年の抱負は何かしら、ヒサメちゃん?」
「そうですね、ヤマダさんの自己再生メカニズムを解明することですね。
これだけで、ヒサメの論文が書けそうですし。
母さま、こんな事をしている場合ではありません!
さっそく取り掛かりましょう!!」
「善は急げというわね(ニヤリ)」
ズリズリズリ・・・
「頼むっ! 正月ぐらいゆっくりさせてくれぇ!!」
ナデシコ医療班及び科学班担当の狂科学者イネス・フレサンジュとヒサメ、
このエキセントリック・ドクタ−ズ(笑)に首ねっこを掴まれ、
通称”あの世へと続く医務室”と連行されていくのはヤマダ・ジロウ、
またの名をダイゴウジ・ガイ(魂の名、らしい)である。
敢えて、彼の事を救おうとする勇気ある人物はナデシコには乗り合わせていなかった。
そりゃそうである。 人間、誰だって“自分の身”が可愛い物だ。
「メイナ、こっち来てお酒飲まない? お正月なんだから、
今日ぐらいは飲んだって構わないでしょ?」
「いいですね、サラお母様。 実は私、お酒には目がないんです」
とメイナにお酒(大魔神)を進めているのは、彼女の未来の母親である通信士のサラ・ファ−・ハ−テッドだ。
マイトに言わせれば、彼女がテンカワ家で一番の
酒豪
であるらしい。 人は見掛けによらない物である。
何でも、一升瓶一本飲んでもケロっとしているとか・・・。
注:お正月だからといって未成年がお酒を飲んではいけません。
お酒(タバコも)は20歳になってから!
「イ−ナ、あなた何時の間にそんな銃の扱い方をおぼえたんですか?
あの銃裁き、私の銃を撃つときの癖が出てたんですが・・・?」
「アリサおか−さんに教えてもらったの。
だから、銃の撃ち方もおか−さん譲りなんだよっ。
でも、パイロットの腕の方は駄目だったみたい・・・」
というナデシコエステパイロットであるアリサ・ファ−・ハ−テッドの問いに
元気一杯に答えるのは、イ−ナである。
ちなみに彼女の体には、アリサのDNAの他にナデシコ艦長である
ミルマルユリカのDNAが混入しているため、性格は超天真爛漫で、
手先が異常に不器用である(汗)。
・・・遺伝子の神秘の一つとして、ナデシコ七不思議に数えられている。
「おらアズサぁ! 俺の酒が飲めないっていうのかぁ!?(ヒック)
にょめ!! にょむんら−っ!!!(ヒック)」
「ちょ、お母さんしっかりしてよ!
あ−ん、もうっ! お母さんって酔うと絡み酒になるの、すっかり忘れてた−!!」
もう一人のエステパイロットであるスバル・リョ−コに絡まれて
困り果てて泣きが入っているのは、彼女の未来の娘であるアズサである。
これじゃどっちが母親なのかわからない。
ちなみに、リョ−コの近くには酔い潰れた同僚のアマノ・ヒカルと
マキ・イズミが倒れている。 かなりの量を飲んだ(飲まされた)らしく、
顔は真っ赤、目玉はグルグル、果てには泡吹いていたりする。
以上が、未来からやって来た娘たちがいる人達。
そして・・・
ゴオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ・・・・!!!
あちらに見えますのが、ドス黒い嫉妬の炎を燃やしているまだ娘が来ていない人達(汗)。
そこにいる人達は、人間ではなく般若ですね。
じゃあ、そのエリアに入るとどうなるか? ちょっと実験してみましょう。
お−い、整備班四人衆。 ちょっと手伝ってくれない?
「「よっしゃぁ!! 出番がもらえたぁ!!!」」
と張り切っているのは、ニイジマ・タカシ(25)とアサミヤ・ユウイチ(24)。
それぞれ独身の彼女募集中の身である。
「おれはやめといた方がいいと思うんだが・・・」
「同感っすね、マツヤマさん。 オレはまだ死にたくないっす・・・」
そしてこの行為に消極的なのは、既婚済みのマツヤマ・ヨウスケ(32)とヒロサキ・セイジ(28)の二人だ。
「「「「そぉ−れっ!!!」」」」
と、ムネ茸の脳髄入り(!)サンドバックを彼女達に向かって投げる四人。
これについては、Vol.04を参照してください。
〔なんでっ!? なんでアタシがこうならなきゃいけないのよぉっ!!?〕
ん? いい所に気がついたね、ムネ茸君。
それはね、君にこの役が一番ピッタリだからさ。 当たり前の事、聞かないでくれよ。
それにさ、出してもらっただけ感謝しろ。 出れない人もいるんだからさ。
〔それとこれとは話が別ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!!!!〕
訳のわからない叫びを残し、ムネ茸サンドバックは空に舞う。
目標まで、あと三メ−トル、二メ−トル、一メ−トル・・・ゼロ!!!
「やかましいわっ、こんボケェッ!
ケツの穴手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわせたろかっ!?(怒)」×残りの人達
ケツの穴って・・・(汗)。 せ、性格変わってますけど・・・(大汗)。
〔コ、コケッ、コケコ−ッ!!?〕
・・・ニワトリかい、アンタは? まあ、恐怖でそうなるのも分かるけど。
「娘なんて、娘なんて、娘なんてぇ!!!!!」×9
〔あべしっ!! ギャン!!! ノベラショ−!!!??〕
・・・その後、ムネ茸は文字にも書けない程の恐ろしいお仕置きを受けたらしい。
そう、例えば13金のジェイソンやバイオハザ−ドのタイラントと追跡者も裸足で逃げ出す程の恐ろしさだったようだ。
・・・ナデシコクル−にこの事を聞いても、誰も口を噤んで教えてくれない。
一体何があったのやら・・・。 まあ、ろくでもない事は確かなんだけど・・・。
− テンカワ・マイトの日記より抜粋。
「すごい事になってるな・・・」
「そうだね、取り合えずナデシコは俺がいるから巡行出来るけど・・・
戦闘になったら、ひとたまりもないよ」
「マイト、お前ってホントにスイスの十得ナイフみたいなヤツだな(感心)」
「しかし、いくら私達が無事だといっても、これだけでは心元無いな」
ピコッ
〔わたし達もいるから、大丈夫よ〕
〔そうそう、心配するなって。 俺達がついてる!!〕
〔ぼくもついてますしね〕
〔僕もいるよ〕
〔アキト兄、あたしの事も忘れないでね〕
〔ボクもいるよ−〕
酔っぱらい達の追撃から何とか逃れたアキト、マイト、ナオ、マトイの四人は、
ブリッジで彼らを取り巻くウィンドウに話し掛けていた。
上から順に、ホワイトエンペラ−(マイト専用機)A・Iのシルビア、
サイクロン(ガイアをカスタム化した物)A・Iのスコット、
レッド・ロイヤルガ−ド(マトイ専用機)A・Iのエルキィ、
ナデシコ・メインA・Iのオモイカネ、
ブロ−ディアA・Iであるディア、そしてガイアA・Iのブロスである。
「「だから心配なんだよ・・・」」
「まさか、あんな結果になるなんてなぁ・・・」
「はい・・・。 私も思いもしませんでした」
アキトとマイトは、同じ科白をほぼ同時に呟き。
ナオの呆れた科白に、マトイが溜め息で答える。
実は一回、ナデシコメインクル−が働けなくなった場合を想定して
シュミレ−ションしてみたのだが・・・結果は散々たるものだった。
ディアとブロスの二人(?)は、ブロ−ディアに搭載されている
ラグナ・ランチャ−を使用しようとしたし、オモイカネに到っては相転移砲を連射。
シルビアとスコットはホワイトエンペラ−をオメガ・バ−ストにして
突撃したがるし、エルキィは呑気に説得に力を注いでいたりする。
数分後、彼ら以外に動いている物は無くなってしまった(汗)。
これ以後、彼らを扱う事に細心の注意を払う事にしたナデシコクル−である。
ビィ−、ビィ−、ビィ−!!!
突如ブリッジに響きわたる、オモイカネによる警報音。
それを聞いた瞬間、アキト、マイト、ナオ、マトイの顔が真剣な物へと変わる。
〔ブリッジ正面にボソン粒子反応! 注意!!〕
が、今まともに動けるのはアキト達四人だけ。
ルリとラピスは、結局ミナトさんにお酒を飲まされてそれぞれの部屋でダウン中。
道路交通法がエステバリスの飲酒運転(飲酒操縦?)に適用されるのは分からないが、
もし適用されたら減点5は確実だろう、という理由でリョ−コ達も駄目。
また、酔ってはいないが嫉妬に狂った人達も何を仕出かすか分からないから却下。
詰まるところ、この四人でどうにかするしかないのだ。
ジャンプアウトしてきたのは、一機の青い機動兵器。
マトイのレッド・ロイヤルガ−ドに似ているが、武装面では格段に
この青い機動兵器の方が上だった。
「ま、まさか・・・」
「”ブル−・マジシャン(青き魔術士)”みたいだな、兄上。
これで、漸くテンカワシスタ−ズが勢ぞろいした訳だ」
顔を真っ青にしているマイトに、マトイが無慈悲にも現実を告知する。
その科白で、全てを悟ったアキト。 流石は〔漆黒の戦神〕である。
「なあ、マイト。 何でオレ達親子って、新年早々ついてないんだ?」
「知らないよ・・・。 こっちが知りたいくらいだ」
アキトの疲れた呟きに、マイトも疲れた声で同意する。
「さ−てと、一体どうなる事やら・・・」
ナオの、ハッキリ言って楽しそうな科白は、誰にも聞かれることなく虚空へと消えていった。
マトイに後押しされ、しぶしぶ(一部嬉しそうに)格納庫に移動したアキト達。
そこには、既に着艦したブル−・マジシャンの姿があった。
プシュ−
煙を吹き出しながら、アサルトピットが開いていく。
そして、その煙の中から現れたのは・・・
「ふぃ−・・・。 やっとついたね」
「ええ・・・。 そうね・・・」
「・・・・・・(コクコク)」
「やっぱり、一人用のアサルトピットに七人はきつかったわね」
「まあ、いいじゃないお姉達。 面白かったんだしっ」
「とっても面白かったです−。 もう一回乗りたいです−」
「あいたた、腰が・・・。 女の子は腰が大切なのに・・・」
お約束である、七人の美少女達。
でも、一人用のアサルトピットに七人というのは、ちょっと無謀だろう。
その証拠に、それぞれトントンと腰を叩いたり、ウ−ンと伸びをしたりしている。
「よ、よく来たね、君達。 さ、さあ、取り合えずブリッジに行こうか(汗)」
取り合えず、疲れている彼女達にジュ−スを差し出しながらブリッジに案内するアキト。
「・・・声が震えてるぞ、アキト」
「・・・大きなお世話ですよ、ナオさん」
ということで、ブリッジに帰ってきたアキト達一行。
ドアを開けようとしたアキトだが、一瞬その動きが止まる。
「オレさ、どうしてもこのドア開けたくないんだけど・・・
やっぱり、開けなきゃ駄目?」
「往生際が悪いぞ、父上。 日本男児たる者、覚悟が出来てないといかん」
でも、やっぱりマトイに言われて渋々開ける羽目になるアキト。
もちろん、読者の皆様もそれを望んで(?)いる訳だし、諦めてくれアキト君。
・・・だが、アキトは日本(地球)出身ではなく火星出身である。
プシュ−・・・
「・・・待ってたよ、アキト・・・。 さあ、訳を聞かせて貰いましょうか。
私の事をほっといて、見知らぬ女の子達にうつつぬかしてた訳を・・・。
あの夜、ベッドの中で誓いあった事は嘘だったの?」
ランランと底光りする目でアキトを睨む、ナデシコ艦長であるミルマル・ユリカ。
自慢の長い黒髪は、メドゥ−サのヘビの様にウネウネとうねっている。
こうなると、自慢の戦略眼もハッキリ言って役にたたない。
でもベッドの中で誓いあった事って・・・なに?
「そうなんですね、アキトさん・・・。
そんな浮気ばかりやってると、全国一億とんで二千万人の私のファン、
特にEnopi議長さんが許してくれませんよ。
いいんですね、Enopi議長さんの“逆鱗”に触れても?」
こちらも、目がドッシリと座っているメグミ・レイナ−ド。
彼女のチャ−ムポイントであるお下げが、サソリの尻尾の様に段々上がって来ている。
実は、メグちゃんの三つ編みの先っちょには、アフリカゾウも一撃で致死に到らせる
毒針がしこまれているとかいないとか・・・。
「アキト君、その件は百歩譲って許してあげるから、
ネルガルのボソンジャンプ実験に協力してくれない?
それとも、ネルガルの経営でもしてみる?
アカツキ会長よりよっぽど向いてると思うわよ?
もちろん、私は二十四時間何時でもあなたの秘書(はぁと)」
ちゃっかり自分の希望を言うのは、ネルガル会長秘書である
エリナ・キンジョウ・ウォン。 でも、彼女の眼にはでっかく極太明朝体で
本気(マジ)
と書いてあった(汗)。
なんか、TVと全然性格が違うぞ。
二十四時間、アキトの秘書か・・・。
なんかコンビニみたいな秘書だな(笑)。
「・・・アキトくん、私もその件はホンのちょっとだけ目を瞑ってあげるから
ブロ−ディアの調整にちょっと付き合ってほしいんだけど?
もちろん、買物にも付き合ってほしいし、なんだったら夜のお付き合い(?)とか
ベッドの中のお付き合い(!?)もしてほしいんだけどな?」
こちらも負けず劣らず自己中心的な意見を述べるのは、
エリナ・キンジョウ・ウォンの妹であるレイナ・キンジョウ・ウォン。
・・・またの名を〔魅惑のスパナ使い〕、もしくは〔地獄のスパナ使い〕。
でも・・・何か話がどんどん違う方向に向かっているのは気のせいなんだろうか?
シュワワワワワ・・・・・・。
「な、なんだこの演出用のスモ−クはっ!? 一体どこから流れてくるのだっ!!?」
「・・・気にしない方がいいぞ、マトイちゃん。
このナデシコでは、常識が通用しないからな。 以後、精進するように」
慌てるマトイに、ノンビリと声を掛けるナオ。
ナデシコで起きる、大概の出来事には免疫がついてしまったナオだった。
「この秘密乙女戦隊、〔ホウメイ・レンジャ−〕がっ!!」
「アキトさん、あなたの邪な煩悩を綺麗サッパリと洗い流してあげますっ!!」
「そうっ! あなたが望むなら、あんな事やこんな事もっ!!」
「そうっ、例えば○○盛りとか!!(ポッ)」
「○○○酒とか!!(ポポッ)」
演出用のスモ−クと共に現れたのは、御存知ホウメイガ−ルズのみなさん。
一応伏せ字にしといたけどさ、公衆の面前でそんな事をいうのは止めてください。
だいたい、もっとやましい事を言っているじゃないか。
ちなみに、上からテラサキ・サユリ、ムズハラ・ジュンコ、
サトウ・ミカコ、ウエムラ・エリ、そしてタナカ・ナルミの順である。
Benさんのホ−ム−ペ−ジ〔Action〕は、健全な青少年(?)が
集うホ−ムペ−ジなんだしさ、ましてや○○盛りとか○○○酒なんて
伏せ字にしたってわかる人はわかるんだし(大汗)。
「「「「「えっ、じゃあ○初めの方がよかった?(ポポポッ)」」」」」
いや、そうぢゃなくて(汗)。 だから、そっち系から離れてくださいよ。
「「「「「だいたい、何であんたが○○盛りとか○○○酒を知ってんのよ?」」」」」
ヒ・ミ・ツ(はぁと)。
多感な年頃だし(遠い目)。
「そんな事はどうでもいいのッ!! アキト・・・説明してもらえるよね?」
「私達にも、ちゃんと説明してほしいわね。
もちろん400字詰め原稿用紙で、三枚以内にまとめてね」
「全くですね!!」 → 残りの人達
グイッとアキトに詰め寄る彼女達。 アキト防波堤、決壊寸前である。
「・・・長い間お待たせしました。 私達があなた達の娘です」
「明けまして、おめでとうございま−す!!」 → 残りの少女達
と、そこに助けに入るのはアキトの未来の娘達である美少女達。
「・・・・・・(感激)。 よく来たね! ゆっくりしていって!!」 → ユリカ達一同
すげ−変わり身だな、おい。
とにかく、未来から待望の娘達が来てくれて、とってもハッピ−な彼女達。
・・・ホウメイガ−ルズの人達は、調理場の仕事をどうしたんだろうか?
「「「「「大丈夫、それなら身代わり立ててきたから」」」」」
かわいそうに・・・無理矢理やらされたんだろうな、多分。
で、ナデシコ食堂厨房内。
「すまないね、無理矢理手伝わしちゃってさ。
新年早々何処ほっつき歩いているんだか、あの子達は」
「大丈夫です、ホウメイさん。
元々お料理するのは好きですし、こう見えても私は大家族の食事を
父と兄、そしてサユリ母さん達と一緒に八人で支えてきたんですから」
ちょっと照れ臭そうに頬を染めながら答えるのはアズサである。
料理が趣味、というだけあって、その包丁裁きはなかなか堂に入った物だ。
ドカァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
「な、何事だいっ!?」
「きゃぁぁっ!?」
そんなほのぼのとした雰囲気を、見事にぶち壊す爆音と黒煙。
・・・爆心地には、ススで顔を真っ黒にしたイ−ナが立っていた。
御丁寧に髪の毛が少し縮れており、ケホケホと咳き込んでいる。
「イ−ナ! あなた一体お鍋に何を入れたの!?
どうやったらそんな爆発するような物体が作れるの!!?」
「し、知らないよッ! ただボクはこの調味料を鍋に入れただけなんだよッ!!
そしたら鍋の中身が勝手に爆発を起こして、蓋が飛んでったんだよッ!!」
と、イ−ナがアズサに見せた調味料とは・・・ニトログリセリン。
(ニトログリセリン − とても爆発力が高く、ダイナマイトの原材料)
何故、ナデシコ食堂の厨房にニトログリセリンなんて危険物があるのか謎である。
「イ−ナッ、何であなたはそういう余計な事をするの!?(グリグリグリ)」
「痛いよ痛いよアズサおね−ちゃ−ん、ゆるして〜(泣)。
ウメボシだけは勘弁だよ〜(泣)」
怒ったアズサに、ウメボシのお仕置きをされているイ−ナ。
恐るべし、イ−ナの中に流れしミスマル・ユリカのDNA・・・。
後編へ続く