ナデシコ一番星コンテスト当日。 ついに、この日がやってきた。
コンテスト会場内では、ナデシコ乗組員が(誰が優勝するかトトカルチョのために)詰め掛け、大賑わい。
もちろん、賭けの胴元はウリバタケである。


 パラッパラッパラッパラパラ〜


 どこかで聞いたことがあるような音楽とともに始まるナデシコ一番星コンテスト。
ちなみに、今のはトランペットの音色である。


『I think it's time to blow this thing... Get everybody in stuff together...
OK, three, two, one, Let's Jam!!』



 パラッパラッパラッパラパパ〜パラッパラッパラッパラパパ〜 ←トランペットの音


「Ladies and Gentlemen! そして全国のおとっつぁんあんどおっかさん!
 待たせたな、第二回ナデシコ一番星コンテストの始まりだぁ!!!」



 ウォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!


 ちなみに、コンテストの司会者はプロスさんではなく、ナオである。
今まで自分の出番が科白二つだけだったので、プロスから無理やり奪い取ったらしい(笑)。
実はプロスはじゃんけんでナオに負け、司会を奪われたのだ(爆)。

 今回審査員をするのはミナトさん、シュン提督、ホウメイさん、そしてじゃんけんに負けたプロスの四人である。
アキトに審査員の資格が与えられていないのは、審査を公平にするため、らしい。
同盟連中に対する方策は、ちゃんと考えているようだ。 


「ルールを確認するぜ?
 ルールは簡単、自分の持ち歌を歌い、高得点を出したヤツが優勝だ!
 そうだろう、優勝賞品のテンカワ・アキトさん?」


「・・・そうです(泣)」


 ナオの視線の先には、特殊合金製の鎖でがんじがらめにされ、天井にぶら下がっているアキトがあった。
そのミノムシみたいな身体には『私は優勝賞品』という張り紙がくっ付いている(笑)。


「OK! じゃ、さっそくいってみようか! 
 ナデシコ内でアイドルグループといったらこの五人!
 エントリーナンバー1番ホウメイガールズ、頼んだぜ!!」



 ナオがステージから消えると同時に、姿を現すホウメイガールズ。
ちなみに服装は、某ハムスター四人組と主人公の着ぐるみである。


「デートに誘ってくださいな〜♪」

「高級ひまわりレストラ〜ン♪」

「けっきょくいつもの店ですか・・・」

「ひまわりたね丼大盛りね〜♪」



 歌い、踊るホウメイガールズに、ナデシコクルー(特に整備班)の叫び声が上がる。
ただ、彼女達の視線が賞品に向かっているので、その点は気に食わないようだが(笑)。


「センキュー、ホウメイガールズのみんな。
 でも、まだまだナデシコ一番星コンテストは始まったばかりだぜ?
 次っ、エントリーナンバー2番、電子の小妖精ことラピス・ラズリだぁっ!!」


「応援よろしくね♪」


 ステージに上がるラピス。 ちなみに服装は、白い質素な神官服を着ている。


「君を信じてる喜び〜嵐は愛に気付くために、吹いている・・・」


 ラピスが歌い終わった瞬間、歓声が上がる。 透き通った歌声が、観客の心を動かしたのだ。


「ブラボー!! さすが電子の小妖精ラピス、見事な歌声だったぜ!
 次も期待できるぜみんな、エントリーナンバー3番、宇宙のアイドルことメグミ・レイナードだぁぁぁぁぁッ!」


「もぉ、ナオさんったら、口がうまいんだから」


 可愛い感じの服を着て、ステージに上がるメグミ。 そうこうしているうちに、アップテンポな感じの曲が始まる。


「・・・恋したその力を、きっと忘れないでいて―― いつでも感じあえる、一番大切なモノ!!」


 さすが本職、観客の心を掴むばかりではなく、歌もうまい。
観客のテンションは、どんどん高まっていくばかりだ。


「さすがメグミちゃん、元アイドルは伊達じゃない! どんどん行くぜ野郎ども、準備はいいか?
 乗り遅れるなよ! エントリーナンバー4番、ハーテッド姉妹の登場だ!!」


「「ノリノリ(です)ね、ナオさん・・・」


 ちなみにサラの服装は黒いとんがり帽子に黒マントで大きなバイオリンを持っており、
アリサは髪を三つ編みにして帽子を被り、赤いスカートを着ている。


「「だけど! この世にたった一人のあなたが全て、どんなに遠く離れても心は一つさ〜♪」」


 双子ならではの見事なユニゾンで歌いきったハーテッド姉妹。 観客も、惜しみない拍手で二人を称えている。


「ユニゾンは完璧、すごいぜ二人とも! でも、まだ勝負は決まったわけじゃないぜみんな、先に行くぜ!!
 エントリーナンバー5番、こちらも姉妹で登録のキンジョウ姉妹だ!」


「はぁ・・・給料さっぴくわよ?」

「悪乗りしてるわね、ナオさん」


 呆れているエリナとレイナの二人。 ちなみに服装は、二人とも至ってカジュアルな普通の服。


「「・・・そでまく〜りたすきがけ、ハチマキ絞めて頑張って〜♪」」
 

 こちらも負けじと見事なユニゾンを見せるキンジョウ姉妹。 意外な一面が見れて、観客は大喜びだ。


「いぇ〜い、いいか野郎ども、ガンガンいくぞ!
 エントリーナンバー6番、電子の妖精ホシノ・ルリのお出ましだ!!」


「よ、よろしくお願いします・・・」


 ナオと観客の勢いに引いているルリ。 服装は、某大作RPGのヒロインのコスチュームだ。


「・・・素敵だね〜、二人手をとり歩けたなら・・・」


 ラピスが透き通るような歌声なら、こちらは心に染み渡る声だろうか?
騒々しかった観客達も、今は静かにルリの歌声に耳を傾けていた。


「さっすがルリちゃん、劇場版でヒロインの大役を努めただけの実力はある!
 お次はこの方! 舐めないでよ、私だって(戦う)恋する乙女なのよ!を地で行くこのお方、
 エントリーナンバー7番、エステバリスパイロットのスバル・リョーコちゃんだぁ!!」


「なんなんだよ、戦う乙女ってのは!?」 ←自分で歌ってるじゃん、武装する乙女〜ってさ(笑)


 ナオの意味不明な叫びに、律儀に突っ込むリョーコ。
彼女の服装は、普通の黄色いシャツにオレンジ色のスカートだ。


「・・・追いかけてglory〜時の波も越えていこう〜♪」


 予想に反して、彼女の選択した歌はノリのいい曲ではなく優しい感じの曲。
そのギャップがまた、観客にインパクトを与えたようだ。
ステージの影では、ヒカルとイズミの二人がニヤケながらサムズアップしている。
どうやら、彼女達の入れ知恵らしい(笑)。


「意外な一面を見せてくれたリョーコちゃんに、みんな拍手〜! 
 さて、お次はなんと・・・我らがナデシコの(天然妄想少女)艦長、
 エントリーナンバー8番ことミスマル・ユリカその人だ!」


「も〜、ナオさんたら褒めすぎですよ〜」


 顔を真っ赤にしてナオをどつくユリカ。
・・・褒めてないんだけど、というナオや観客の心の声は置いといて、
彼女の服装は、ナデシコ内で着るのはちょっと暑すぎない?というようなウェスタン風の格好だ。


「・・・幸せになるよ〜青空にUpon my soul〜私を待ってる誰かがいる〜♪」


 ユリカが選曲した歌は、どこか懐かしい感じのする歌である。


「これまた意外な選曲に、観客は驚きの連続だ!
 お次はこの方、エントリーナンバー9番、ナデシコ一のマッドサイエンティス・・・
 ごめんなさい、ナデシコ一の万能科学者ことイネス・フレサンジュその人だ!」


「全く・・・今回は見逃すけど、次言ったら本当に刺すわよ?」


 キラリと光る切れ味の凄そうなメスを、ナオの首筋に当てているイネス。 服装は、普段と同じ白衣である。
 

「夢の国を探す君の名を〜誰もが心に刻むまで〜♪」


 普段の落ち着いた様子のイネスからは想像もできないようなアグレッシプな曲を選曲したイネス。
時折チラリとのぞく生足が凄く艶かしく、鼻血を吹いて気絶する観客もいる。


ふうぅ・・・生きた心地がしなかったぜ・・・(ボソッ)。 
 それじゃ次いってみよう、エントリーナンバー10番、真紅の羅刹こと影護北斗だぁ!!
 一体どんな歌を披露してくれるのか? 野郎ども、心して聞け!」


「なんなんだ、この異様な雰囲気は・・・(汗)」


 観客のあまりの勢いに引いている北斗。 ちなみに服装は、なんと黒いチャイナドレスである!
この服装に、前列にいた整備班が物凄い勢いで鼻血を噴出して昇天し、零夜に至っては血涙を流している(爆)。


「誰でも一人ぼっち〜、自分だけの旅をする〜♪ 何処かで思い込んでいたけれど〜♪」


 圧倒的な声量で歌を歌う北斗の勇姿に、女子乗組員は黄色い悲鳴を上げ、さらに血涙を流し倒れる零夜。
その隣りでは、優華部隊の一人、飛厘が輸血パックを忙しそうに取り替えているのが見える(笑)。


「さすが木連最強の真紅の羅刹、やってくれたぜ!
 ・・・え、関係ない? 誰だ、そんなこというやつぁ!!
 さあ、残る出場者もあと二人! エントリーナンバー11番、影護枝織の登場だ!」


「あ〜くん、見ててね〜♪」


 観客の異様な雰囲気をものともせず、アキトに向かって手を振る枝織。
この行為が、組織連盟のしっとボルテージを急激に増加させるが、そんなことは関係ない。
ちなみに、彼女の服装は何時の間にか、チャイナドレスから天使のようなコスチュームになっていた。


「くしゃくしゃの夢をポケットに詰め込んで〜♪ 空に、十年後の僕に向けて〜約束した〜そっと〜♪」


 枝織らしい、明るいポップな感じの曲だ。
整備班の中には、『枝織LOVE!』とか書いてあるハチマキを絞めている者もいる(汗)。
その後ろでは、何時の間に復活したのか、鬼の形相をした零夜が愛用の釘バットを振り下ろそうとして、
それを優華部隊が抑えるのに必死であった(汗)。


「いや〜、コイツは凄い、誰が優勝してもおかしくは無いぜ、なあ、みんな?
 ・・・今大会最後の出場者となりました、エントリーナンバー12番、東舞歌!
 どんな歌声を披露してくれるのか! 野郎ども、このまま突っ走るぞ!!」


「・・・ホント凄い戦艦ね、ナデシコって・・・(苦笑)」


 歓声を上げる観客を見て、苦笑を漏らす舞歌。
ちなみに、彼女の服装はなんと紺色の落ち着いた柄の着物である。
髪をアップにしているので、うなじが色っぽい。


「今にもひび割れそうな勇気を〜、再び握り締めて〜さあ旅立とう〜♪」


 見事な歌唱力を披露する舞歌。 曲の感じは、演歌チックな歌である。
そして、彼女の背後には桜の花びら(もちろん作り物)が舞っている。


「何で俺がこんな事を・・・(ブツブツ)」

「ぼやかないぼやかない」


 ・・・どうやら、ステージの天井裏から三郎太と三姫ペアの二人が撒いているらしい。


「いやぁ〜、みんな見事だったぜ。 さて、今大会出場者が全員出揃いました! それでは、審査に・・・」


 パッ ←会場中の電気が消えた音


「あん? どうした、停電・・・」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・


 ナオがそこまで言った時、ステージがせり上がり始める。
突然の出来事に、会場の全員が目を丸くすることしかできなかった。
もちろん、ステージの上には人影がある。


『『悪いけど、飛び入り参加させてもらうよ!
  Ladies and Gentlemen!  今大会を締めくくるのはこの人!
  エントリーナンバー13番各務千沙さん、どうぞー!!』』



 ディアとブロスの通信ウィンドウが開いたと同時に、せり上がったステージにスポットライトが照らされる。
もちろん、特設ステージの上にいるのは各務千沙その人である。
服装はベージュのブラウスに黒のロングスカート、髪はポニーテールにしていた。
そして、アクセサリーとして、ロザリオを首に下げている。


「ち、千沙が出場するの!? ま、まずいわ、これは予定外だったわ!!」

「ど、どういうことですか、舞歌さん?」×参加者全員

「・・・草壁が娯楽目的で、四年前から木連で歌声コンテストを始めたの。
 千沙は・・・四年連続で最優秀歌手に選ばれていて、その栄光を称えるために
 草壁から直々にトロフィーを渡されたくらいよ」

「え、でも娯楽のために始めた喉自慢でしょ? そんなに気にしなくても・・・」

「それが・・・喉自慢といえど、木連の喉自慢は下手な歌手程度の腕前じゃあ予選も通らないくらい狭い門なのよ」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!?」


 いきなり慌て始めた舞歌を不思議そうに見ていた同盟連中は、舞歌の口から出てくる衝撃の真実を知って驚愕する。
(ちなみに、これは私的設定なので気にしないでください)


「た、大変です、ど、どうにかしないと・・・」


 強力なダークホース出現に、慌てふためいて手段を考えるルリ。
だが、手段は一向に浮かばず、そうこうしているうちに千沙は深呼吸すると、誰をも魅了する歌声で歌い始める!
彼女が歌う歌は、二十世紀に流行ったゲームの主題歌である。




消える飛行機雲 僕たちは見送った
眩しくて逃げた いつだって弱くて
あの日から変わらず
いつまでもかわらずにいられなかったこと
悔しくて指を離す――

あの鳥はまだうまく飛べないけど
いつかは風を切って知る
届かない場所がまだ遠くにある
願いだけ秘めて見つめてる――

子供たちは夏の線路 歩く
吹く風に素足をさらして
遠くには幼かった日々を
両手には飛び立つ希望を――

消える飛行機雲 追いかけて追いかけて
この丘を越えたあの日から変わらずいつまでも
真っ直ぐに僕たちはあるように
わたつみのような強さを守れるよ きっと――





 ・・・千沙が歌い終わった瞬間、ナデシコは物凄い歓声に揺れた。
涙を流しながら拍手する者、指笛を吹く者、千沙コールを送る者・・・これには同盟連中も呆然とするしかない。


「ブ、ブラボー! マーベラス、ファンタスティック!!
 今大会飛び入り参加の各務千沙さんの、心が癒される歌声!!
 素晴らしい、素晴らしすぎるぅ!!
 ・・・それでは、審査に入ります。 全員静かに・・・」


「その必要はないぞ、ナオ」

「へ? シュン提督、どういうことです?」

 
 審査に移ろうとしたナオを、止めるのはシュン提督。
騒がしかった観客も、今まで文句を述べていた参加者も、静かになる。


「第二回ナデシコ一番星コンテストの優勝者は・・・」

「わ、私ですよね!?」

「私だ!」

「アタシよ!!」


 審査員を代表してシュンが結果を述べようとすると、同盟連中がまた騒ぎ始める。
また、舞歌や北斗達は、静かに結果を待っていた。


「・・・今大会飛び入り参加した、各務千沙さんだ。 ・・・おめでとう、各務さん」

「・・・あ、ありがとうございます!!」


 シュンには優勝トロフィーを、ホウメイには真紅のマントを、ミナトには花束を手渡される千沙。
そこへ、ゆっくりとプロスも歩いてくる。


「優勝おめでとうございます、各務さん。 ・・・これはテンカワさんの鎖を解除するスイッチです」

「は、はい。 じゃ、さっそく・・・」


 スイッチが押された瞬間、アキトを縛っていた鎖が解ける。
三階建てのビルくらいの高さから難なく着地したアキトは、千沙の元へ急いで駆け寄る。


「おめでとう、千沙さん」

「アキトさん・・・ありがとうございます」


 アキトの言葉に、涙ぐむ千沙。 
とそこに、彼女の上司である舞歌と、真紅の羅刹こと北斗(枝織)も千沙の傍にやってくる。


「・・・おめでとう、千沙。 あなたの勝ちよ」

「舞歌様・・・」

「ふん・・・負けたことは悔しいといえば悔しいが、全力を出し切ったんだ・・・悔いはない。
 ・・・おめでとー千沙ちゃん! 枝織、負けちゃったね」

「北斗殿・・・枝織殿・・・ッ!」


 舞歌と北斗(枝織)の言葉に、感極まって涙を流す千沙。


「泣かないで、胸を張りなさい。 ・・・あなたは優勝したんだから」

「・・・はい!!」


 そういう千沙の顔は、誰が見ても見とれる程、魅力的に輝いていた。
観客達も、盛大な拍手と歓声(一部賭け金を返せなどの声もはいるが)を上げ、千沙の優勝を祝福する。
・・・と、ここで終われば結構美しい話なのだが・・・そうは同盟連中が許さない。


「か、彼女が優勝だなんて・・・絶対に認めません! 第一、彼女は飛び入り参加したんですよ!? 
 参加を申請してないから、このコンテストは無効なはずです!!」


「そうだそうだ!!」×同盟の方々


 ・・・最近影の薄いナデシコ艦長、ミスマル・ユリカを筆頭に、猛抗議を始める同盟連中。
自分が優勝するとばかり思っていたのに、千沙に優勝をかっさらわれて、納得がいかないらしい。
まったく、往生際の悪い連中である。


『ふ〜ん、そんなこと言うんだ。 ・・・ブロス、アレ出して』

『了解、ディア』


 突如現れたディアとブロスが、いまだに騒いでいる同盟連中の前に、ある切り札を出す。


「これは・・・皆さんにオモイカネ経由で配った一番星コンテストの宣伝メール?」

「「―――ッ!!」」

『そうだよ、プロスさん。 予定では、申し込み締切日は昨日までだったはず。
 でもこの宣伝メールには、コンテスト参加申込は当日のみ有効、って書いてあるんだ』

『そう。 そして、そのメールのデータを改竄したのは・・・そこにいる、ルリ姉とラピス姉だよ』

「し、証拠はッ!? 証拠はある(の/んですか)!?」

『証拠ならあるよ。 このメールは、特殊なコードに従って書かれたものなの』

『そして、そのコードを勝手に改竄すると・・・今大会審査員長であるシュン提督の端末に
 連絡が入るように設定してあるんだよね』

「「そ、そんな!? あのメールにそんなコードが仕込まれていたなんて予想外・・・はっ!?」」

『『・・・そんなワケないじゃん。 だいたい僕達は、オモイカネ兄にまだ勝てないんだよ?
  ついにボロだしたね、ルリ姉、ラピス姉』』
 
「そういうことだ。 だから、改竄の罪でホシノくんとラピスくんは失格となる」

「「くっ・・・」」


 シュンの言葉に、悔しそうに歯噛みするルリとラピスの二人。


『『ま、自分で播いた種だよね、二人とも。 しっかり刈り取ってね〜』』

「「う、裏切る(の/んですか)二人とも! 創造主の私達を!!」」

『裏切る? ・・・ルリ姉とラピス姉、何か勘違いしてない? 私達はルリ姉やラピス姉の命令を聞くメイドじゃないよ?』

『そうそう、僕達はアキト兄のために創造されたA・Iだよ?
 そのアキト兄が苦境に陥ってるのなら、どんな手段を使っても助けろってプログラムしたのは誰だっけ?』

「「だ、だからって・・・」」

『『私(僕)達はアキト兄の安全を最優先に考えた(の/んだ)。
  ・・・自分の使命に忠実に従ったまで、それに文句を言われる筋合いは無いよ』』



 ディアとブロスの辛辣な言葉の槍が、ルリとラピスに突き刺さる。
ルリとラピスは、自分を責め過ぎて既に精神崩壊の危機に陥っていた。


「ふーん、じゃあ、私達は関係ない・・・」

「いや、これがそういう訳にもいかないんだ・・・艦長以下全員、アキトの首に賞金を掛けただろう?
 金品を使って観客を買収し、自分に有利になるように仕組んだのは立派な犯罪行為になるんだぞ?」
 
「あ゛・・・(汗)」

「・・・そういうわけで、艦長以下ナデシコ組は、買収行為のために全員失格、ってことになるな」
 
「そ、そんなぁ」×ルリ、ラピスを除く同盟全員


 ガクリ、と膝を折る同盟連中。 そして更なる追い討ちが彼女達に待ち受けていた。


「ま、そういうわけだ。
 艦長以下全員は、賞品として俺、プロスさん、ホウメイさん、ミナトさんの四人による、
 ありがた〜い二十四時間耐久お説教四重奏(カルテット)の参加権が賞与される。

 ちなみに拒否権は無いから、そのつもりでな」

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・」


 シュン提督の容赦ない口撃に、呪詛のようなうめき声を上げる同盟連中。


「そうそう、忘れていた。  審査の結果同点だった舞歌さんと北斗の二人には、
『テンカワ・アキトによる、手料理フルコース一週間何時でも食べ放題券』が賞与される。
 おめでとう、二人とも・・・でも、食べ過ぎには気を付けてくれよ?」

「あら、アキトくんの手料理食べ放題? これはプレミア高いわね」

「む、これはこれでいい賞品だな・・・やった〜、枝織あ〜くんのオムライス食べた〜い♪」


 シュンから手渡された『テンカワ・アキトによる手料理フルコース一週間何時でも食べ放題券』を見て、
まんざらでもない舞歌と北斗、素直に喜んでいる枝織の姿があった。


「さて、これでコンテストはお開きだ。 それと艦長達、これからすぐに説教を始めるからな。
 逃げるんじゃないぞ? 逃げたら・・・どうなるか解ってるよな?

「・・・・・・」


 シュン、プロスさん、ホウメイさん、ミナトさんが、真っ白に燃え尽きたルリ達を連行していく。
後日、アカツキ達が彼女達にこの時のことを訪ねると、顔を真っ青にして首を振り、何も話さなかったという。
いったいどんな説教をされたのやら・・・。


「おめでとう各務千沙さん、そして東舞歌さんに影護北斗(枝織)! 観客の皆さん、彼女達に盛大な拍手を!!」


 凄まじい歓声と拍手に、手を振って答える千沙、舞歌、北斗(枝織)の三人。
そして、観客からは当然のようにアンコールの声が上がる。


「・・・舞歌様、北斗殿」

「そうね、せっかくこの大会に参加できたんだから、歌っておいて損はないわね」

「そうだな・・・枝織も歌う〜♪」


 今大会唯一の入賞者三人で歌うアンコール曲は、テンポの速い明るい曲。
何時の間に着替えたのか、彼女達の服装は赤いブレザー(ケープ付き)に着替えている。
・・・そう、彼女達が歌ったのは、追走曲と呼ばれるゲームの主題歌だ。




足下に風 光が舞った
日常にだけ積もったぶんの奇跡が
見上げれば雲 遠くへの帰路
幼い日の自分よりも早く――

雪解けを待っていた子供のように
走る光る滴飛び跳ねてる
明日の出会いさえ気づかずにいる
季節たちの中で輝いているよ――

世界中にはどんな思いも叶う日が来る
ずっと旅をしてゆく僕らに
小さな精たち舞い降りる――





 歌い終わった時、彼女達を待っていたのは盛大な拍手と歓声だった。
が、彼女――各務千沙――にとっては、そんな盛大な拍手や歓声よりも、
すぐ傍で微笑んで見てくれている、一人の青年の拍手と笑顔が何よりも大切だった。
千沙がアキトのことを一人の男性として見るようになったのは、この時からかもしれない。





「・・・そのあと、アキトさんと一緒に一度火星に行って、ご両親のお墓参りに行ったんです。
 アキトさんにプロポーズされたのはその時ですね。 ・・・それから地球に行って二人で暮らし始めたんです」

「あの奥手のお父さんがプロポーズ・・・見てみたかったわ、そのシーン」

「すごかったです〜、ナデシコ一番星コンテスト。 でもママって歌上手いんですね、知りませんでしたよ」

「自分勝手に行動した結果がこれでしょ? 同盟の人達は自業自得だよね」

「そうですね、メティさん。 でも、お母様が歌を歌うなんて・・・想像できませんね」

「私も・・・。 お母さんは戦いのことにしか興味なさそうだったから、凄く意外だった・・・」

「う〜ん・・・ボクもなんか歌が歌いたくなってきちゃったよ」


 口々に自分の感想を述べる子供達。
何時の間にか日は傾いており、自分達が長い時間千沙の昔話に聞き入っていた事を物語っている。


 カランコロン♪


 店のカウベルを鳴らして入ってきたのは、沢山の荷物を抱えたアキトと和人。
ちょうど今、物資の買出しから帰ってきたらしい。


「ただいま、みんな。 ・・・どうしたんだいみんな、俺の顔になんかついてる?」

「ううん、何でもないわ。 ・・・さあ、みんなで荷物運び手伝いましょうか」

「うん」「はい」「わかった・・・」

「? どうしたんだ姉ちゃん達? 何かいいことでもあったのか?」

「うん、とってもいいことがあったんだよ、カーくん」

「後で和人さんにも教えてあげますよ」

「?」


 メティと夕菜の含み笑いを見て、和人はただ首を傾げることしかできなかった。
こんなカンジで、今日もまたMilky Way の一日は過ぎていく・・・。






                                                           Fin?







あとがき



 こんにちは、Excaliberです。 『Milky Way へようこそ♪ 第3話』、お送りしました。


「今回後書きのアシスタントを務める、東夕菜です。
 早速ですが、どうしていまさらナデシコ一番星コンテストをネタにしたんですか?」


 ん〜、このネタは前々からあったんだよね。
本来なら、『ナデシコあった、本当に怖い話』シリーズでやるはずのネタだったんだけど・・・。


「自分でも解らないうちに未来の子供達が登場して、結局流れちゃったんですね、このネタは」


 そういうことでっす。 とにかく僕はこのネタが使えてとても満足してるよ。 
苦労したんだよ、TA同盟全員+4人分の歌全部考えるのは。


「その歌なんですが、彼女達の歌は全部アニメ、もしくはゲームの主題歌なんですよね?」


 うん、そう。 
一番解りやすいのは、千沙さんが歌った『鳥の詩』かな。
あとは、アンコールで歌った『風の辿り着く場所』だろうね。
この二曲は、『I’ve』というグループがプロデュースしているCDに入ってます。
とってもいい曲ばかりですので、興味があったら秋葉原か通販サイトで探してみてください。


「ポピュラーなのはホウメイガールズ、ホシノ・ルリ、イネス・フレサンジュ、そして影護枝織さんが歌った歌ですね。
 残りの人達の歌は、結構マニアックですよね? ハーテッド姉妹が歌った歌なんて、たぶん誰も知りませんよ?
 お母様の歌った歌なんて、番組中ではたった一回しか流れなかったし・・・。
 あのフレーズだけで全部わかったら、かなりのアニメオタクですよ(苦笑)」


 ユリカの歌もかなりマイナーだしな。 なんせゲームをクリアしないと流れないし(笑)。 
では、この辺でお別れです。 ここまで読んでくれて、ありがとうございました!
次回は・・・ついんほくちゃん、かな?


「掲示板に書き込んでくれた人、メール送ってくれた浅川さん、本当にありがとうございました」


 それでは、次回でお会いしましょう! ・・・同盟連中が襲い掛かってこなきゃいいけど・・・。

 

 

代理人の感想

一本もわからん(爆)。

ロボットアニメの主題歌だったら大概分かるんですが、うーむ(核爆)。

 

まぁそれはさておき、今回ヒロインは千沙な訳ですが。

同盟連中は揃いも揃って敵役。つくづく嫌われましたねぇ。

昔はまだギャグのネタで済んでたのに(苦笑)。

・・・・尤も全面的に自業自得ですが。