サレナ 〜希望の花〜 第六話 Bパート |
撮影が終わった後のナデシコ食堂
今の時間帯はピークを過ぎており、ホウメイが直接机に運んだりしていた。
アキトも調理場で後かたずけをしているはずだ。
「・・・・・誘導尋問でしょうか?」
「ははは、そんなに気にすることはないんじゃないかい?」
サレナは食堂でチャーハンを食べていた。
ホウメイさんはサレナにアキト製チャーハンをはこんで、一息ついて椅子に座っている。
ロボットが食べるのはおかしいと思われるが、
サレナはかなりの生体品を使っているため、食事により栄養分をとらなければならない。
尤も、人間とは違い栄養剤などで事足りるのだが、なぜか食堂を利用していた。
「まぁ、あのエステバリスの事を知りたいのはみんな同じさ。」
「はぁ・・・・でも、あんまり教えたりすると、私の本来の目的に支障が・・・・」
「もう少し、みんなを信用してあげたらどうだい?
秘密にしているだけだと誰も信用しないよ?」
「はい、でも私はみなさんを信じてますから、今は何も言えないんです。」
そう私は口止めされている、未来のみんなから・・・・
今、未来のことを知ってもいい・・・・
そうすれば、あんな事は起こらないはずだ。
でもちがう、確かに悲しいこと辛いことがあった。
それは決して忘れてはいけないこと、無にしてはいけないこと。
そう私の目的は・・・・・
「そういえば、僕は一度も君にブラックサレナを作ったわけを言わなかったね。
・・・・・
最後だからまぁ話のネタだと思ってきいてくれないかい?」
未来でジャンプの最終チェック中にアカツキさんは、私に話しかけた。
「はい・・・」
「僕は、ブラックサレナって言う言葉を聞いてこう思ったんだ。
彼に、黒いユリがみつかればって思ってね?」
やっぱり復讐を成功させてあげたかったんでしょうか?
絶望の奥底にいたテンカワ アキトの願いを聞き届けるために
今の私があった。
もう復讐の相手はここにはいない。
だから、私は過去に向かうのだと思っていた。
・・・・
「ああ、君は黒いユリの花言葉を知っているかい?」
アカツキさんは何か思いついたようで、私に聞いてきた。
「ええ、『復讐』ですよね。」
もちろん、この鎧が作られた理由。
「うん、でもそれは黒いユリに限った事じゃない。
『復讐』の本来の意味は墓場に生えたユリ、別に黒くなくてもいいんだよ。
ただ、黒は不吉だからね。」
・・・・ブラックサレナはテンカワ アキトの復讐のために作られた機体。
名前もその花言葉をとってブラックサレナとなったと聞いていた。
でも・・・・違うの?
私は・・・・・・・・
「では黒いユリの花言葉は??」
本当の訳を聞きたかった。
黒いユリに隠されたもう一つの理由。
もしかしたらそれが、みんなが私に託した思いなのかも知れない。
確かアカツキさんが直接ブラックサレナとつけた訳じゃない。
だけど決定する権限があった。
だから、その権限を使って黒いユリのもう一つの花言葉を
ブラックサレナに託したんじゃないだろうか?
「うーん、黒いユリは結構最近に見つかった物なんだ。
っていっても大航海時代位にさかのぼるんだけどね。
だから統一的な見解は無いんじゃないかな?」
アカツキさんは黒いユリの花言葉をこのブラックサレナに
託した訳じゃないということだろうか?
「で、黒いユリだけどこんな話があるんだ。
まだ黒いユリが発見されていない当時は、こんな意味があったんだ。
『絶対手に入らない物』って意味がね。」
「・・・・!!
でも今は確かに黒いユリの品種がありますよね??」
アカツキさんの答えは、やはり絶対手に入らない絶望という意味だった・・・
でも・・・・・おかしい。
そう、今は黒いユリは現在している。
品種改良や遺伝子操作ではなく、原種が存在している。
「そうだね、絶対に手に入らない物のはずなのに人間は見つけたんだよ。
絶対に見つからないはずなのに、長い航海の果てに見つけだした花。
・・・・・
絶対に手に入らないと言う絶望的な状況を一変させた花。
希望の花・・・・
黒いユリにはこんな花言葉が似合うと思わないかい?」
そうなのか・・・・・
黒いユリに隠された歴史・・・・
私が託されたもう一つの意味。
希望・・・・
なんだかとってもやっかいな任務だと思う。
復讐はただすべてのものを壊せばいいだけ、
でも希望は違う。
希望は・・・・壊すだけじゃ生まれない。
あのとき私は、初めて自分がやりたいと思うことを見つけた。
どうやれば希望が生まれるのか全然分からない。
でも、私は望み続ける。
神様が機械の願いなんて聞いてくれるとは思わないけど・・・・
私は絶望の中で希望をつなげる者。
だから、今はまだ何も言えない。
未来のみんなは黙っておいた方がいいという。
ここは、正しくは過去の世界であって過去じゃない。
ただ、未来の人たちは言った。
「過去世界を変えると言うことは、自分たちの過去を否定すること」
「悲しいこともあった、辛いこともあった。」
「でも僕たちは自分たちの過去を誇りに思う。」
このまま未来を喋ってしまえば、未来の人たちを否定してしまうことになる。
だから私はまだ、未来を教えるわけにはいかない。
それに私は思う。
このまま喋れば、この時代のみんなが未来という絶望に飲み込まれてしまうから・・・・
自分たちが作り出した未来こそ、たとえそこが辛くても、
希望があるはずだから・・・・