ここは、どこにでもあるようなアパート。

 

このアパートにはこの4年間使われることもなくそのままの部屋がある。

 

部屋にいた笑い声が無くなってもなお、ひき払われることもなくそのままだった。

 

それは、そこにあった幸せが奪われた後も失いたくなかった何かがあった。

 

だから・・・・・・今まで・・・・・・

 

そう・・・・その思いがあったからこそ今があるのだ。

 

 

 

 

そしてやっとすべてが終わり、住人が帰ってきた。

 

 

 

まず帰ってきたのは二人の女性だった。

 

女性達は家具をそろえ、この家に帰ってくるであろう男と

 

今まで男を支え続けた少女を待った。

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れ時、マンションの前に止まった黒塗りのリムジンから二つの影が現れた。

 

その影はゆっくりとマンションを上り・・・・・ドアの前で止まる。

 

 

「・・・・・自分の家に帰るだけのはずだが・・・・・

緊張するな・・・・・・」

 

男の手がドアのノブの前でふるえていた。

 

 

「ガンバッテ」

 

少女のが男の手を握り、そっと励ました。

 

「ああ・・・・」

 

 

ゴクリと唾を飲み込むと、二人はドアノブを回した・・・・ 

 

 

 

キー・・・・

 

 

ドアは小さな音を出しながらゆっくりと開く。

 

ドアが開いた隙間からは優しい光があふれ出してきた。

 

「ただいま・・・・」

 

黒いバイザーを着けた男が、ありきたりのはずの言葉を、

緊張で声がうわずりながら口に出す。

 

プレゼントらしき白い箱を握って・・・・

 

「タダイマ・・・・」

 

男の足下にいたピンクの髪の少女が、男の後に続いて恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

 

 

 

『お帰りなさい』

 

 

 

二人の女性はすぐに応える。

 

 

 

とても嬉しそうな顔で・・・・

 

 


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