機動戦艦ナデシコSS

サレナ 〜希望の花〜
第二章
忘れえぬ思い出達
第三話 Aパート  戦闘開始、 守りたいもの

 

「・・・・ふぅ、このB6領域ってほんと何もないところだね・・・・」

 

「買い物、できそうにもないですね。」

 

「「はぁ〜〜」」

ハルカとメグミは持っていた雑誌を閉じてため息をついた。

雑誌に載っているお洒落な店や、華やかな喫茶店、豪華なホテルなどは

最新鋭戦艦ナデシコのレーダーを持ってしても

視界360度 全く・全然・なんにも 見えなかった。

 

「ははっ、でもいいじゃないですか。

何もなければ賠償する必要がない。

思う存分戦えますよ。」

電卓をおしながらにこにこして気を落とした二人にプロスが答えた。

最もにこにこしていても他人には機嫌がいいのか悪いのかさっぱり分からないが。

 

「ナデシコは宇宙戦艦だからあんまり地上の戦闘は得意じゃないです。

どちらにしろ地上では全力出せません。」

「まぁな、だが被害を考えずに戦えると言うことは有利なことだ。」

ルリは何となく不愉快なようだ。

ゴートはブリッジに仁王立ちしてただジッと外の様子を見ている。

 

「・・・・何で俺はここにいるんだろう?」

ドアをロックされ配達後ブリッジから出れるに出られないアキト。

手持ちぶさたで何となくメインディスプレイを見ていたときそれはおきた。

 

敵の襲来を告げるけたたましいアラームが鳴り響く。

 

「ナデシコ前方およそ10キロ・・・・

チューリップの反応多数!!」

 

「え?

どうして今まで気がつかなかったの??」

ユリカははっと息をのみウィンドウに映るレーダーを見上げる。

いつもののほほんとした雰囲気はなく、顔から冷や汗がこぼれる。

ナデシコのセンサーならどでかいチューリップなら

50キロメートルからだってはっきり分かるはずなのに・・・。

 

「ちょうど山陰になってレーダーに反応しなかったみたい。」

いつの間にか雑誌が消えたコンソールをジッと見つめた後メグミが答えた。

 

 

「どうする?このまま直進?」

すでに舵を持ちながらミナトはユリカの方を向いた。

ユリカはウィンドウに釘付けで、ミナトの返事をしない。

 

「・・・・不味いですね艦長・・・・」

ウィンドウを見て、ルリがつぶやく。

ユリカも静かに頷き、珍しく厳しい顔でレーダーに映るチューリップを見つめた。

 

「ナデシコは町の郊外に出ます。

エステバリス隊は町の防衛とナデシコの護衛の二手に分かれてください!!」

「艦長!!このまま直進しましょう!!

チューリップはナデシコをねらっているなら、町まで攻撃しないはずじゃぁ・・・・」

 

一瞬考えてユリカが命令を下す。

しかし、ジュンが戸惑いながらユリカに進言した。

このままでは、町を戦場にしてしまう。

 

「もうおそいです。たぶんチューリップはこの町も攻撃対象にしています。」

ジュンの意見に淡々とルリが答えた。

 

「・・・・どうして、チューリップは戦闘兵器に反応しているっていってたじゃないか!!」

「・・・はい、チューリップは攻撃対象を戦闘力で判断します。

チューリップやバッタのAIは単純ですから、個々の対象の攻撃力まで判断しません。

わかりやすく言えば攻撃のスイッチを対象の攻撃力で判断しているとなります。

つまり、ここでナデシコが見つかった以上この町もナデシコ並の攻撃対象になるんです。」

 

「・・・・そんな・・・・」

ブリッジに悲痛なため息が聞こえた。

 

「アキトさん急いでください。

他パイロットの方達はもう発射態勢に入りましたよ?」

突然ウィンドウが開きサレナがアキトを呼んだ。

 

「はい!!」

ドン・・・

そのまま勢いよくブリッジから出ようとしたアキトだったが、

開かないドアにぶつかってしまった。

 

「早く開けてくれよ・・・」

アキトは扉が開かなくなって、出前が終わったのにブリッジから

出るにでられない状況になっていたのだ。

 

「あ・・・ルリちゃんお願い。」

メグミは急いでルリに頼んでおいたロックを解除してもらうように言った。

「・・・・・はい・・・・・」

「あっ、アキトはナデシコの護衛お願い。」

ルリが解除しようとしたとき、ユリカが何か思いだしたらしい。

 

「え?町の防衛の方じゃないのか?」

普段のアキトなら後方でのサポートが主なのだが、今回は事情が異なるらしい。

 

「うんブラックサレナってナデシコ並の攻撃力でしょ?

だから、町より市街地で戦った方が全力出せるからね。」

 

「・・・・わかった。」

ユリカの意見も最もなので、素直に聞くことにする。

アキトはふざけているように見えるけど、ユリカは仕事をしているのかなぁと思ったりする。

 

「リョーコさん聞きましたか?

後はリョーコさん達にお任せします。」

ユリカは上の方を見上げ声を上げた。

ユリカが答えた辺りにリョーコのウィンドウが開く。

 

「おうっ、もうとっくに決まっているよ。

ヒカル、イズミお前らは町の護衛だ。

俺はこいつの性能を確かめてくる。」

リョーコの答えた後に次々とウィンドウが開く。

 

「リョーコちゃんたら、もらったおもちゃ早速使いたがるんだから。」

「その武器の性能はどうですか?・・・リョーコーです・・・・ぷぷぷ」

完全にリラックスしているパイロット達は、もうすでに準備を終えているらしかった。

 

「・・・・さっさと行って来い!!」

リョーコはちゃかす二人に頭を抱えながら、ヒカルとイズミを押し出した。

 

「りょうかーい」

「リョーコのエステバリス・・・・リョーコ改・・・・ 了解・・・・」

 

「・・・・じゃぁナデシコが市街地についてから俺達は出るぞ。

だから早く用意しろ!!」

戦闘体制にもかかわらずいまだブリッジから動かないアキトに

リョーコはしびれを切らせていた。

 

「です。」

そしてプンプンしたサレナの姿。

 

「分かった、今すぐ・・・」

そういってアキトがブリッジから出ようとした時・・・・

 

ドン・・・

アキトまたもやぶつかる。

 

「あ、ロックはずすの忘れてました。」

ルリはすぐにドアのロックを開ける。

 

プシューと空気が抜ける音がしてドアが開いた。

「・・・・勘弁して・・・・まじで・・・」

そんな言葉がアキトの口から漏れた。

 

「それ私の台詞。」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 


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