ブリッチでは、遅れて来た艦長がこれでもか!と言わんばかりの満面の笑みを浮かべ自己紹介の真っ最中。





「私がナデシコの艦長!ミスマル・ユリカでぇーっす!ぶい








そのぶっ飛んだ登場のしかたに思わず、バイツすらも時が止まり「ぶい
じゃねェだろがヨ」と突込みを入れるのが遅れるほどの衝撃を覚えるのであった。





…果して大丈夫?機動戦艦ナデシコ。
数々の問題を抱え機動戦艦ナデシコついに初お目見え!
クルー達にも色々問題がある様子。
本当に大丈夫なのか。機動戦艦ナデシコ!
しかも、突然の敵来襲!姉さん!ピンチですっ!




















機動戦艦ナデシコ
Lone wolf
第一話:不思議な縁…後編






















急いで戻ったプロスがブリッチに飛びこんだその瞬間、ナデシコのメインモニターに映し出されている映像に暫し呆然となった。
空を覆い隠さんがばかりの敵無人機。
いきなりの大ピンチである。
…にも関わらず、ブリッチにいたクルー数名が何故か艦長を見たままぽかんと口を開けて、職場放棄をしていた。そんな状況にも関わらず呆けているクルーを見てこめかみをピク付かせたプロスは眼鏡をかけ直すとコホンッと大きく咳払いをする。



ッハ!?い、今とんでもない衝撃が…」



ふるふる頭を左右に振って何かを思い出そうとしているバイツと「バカばっか」と小さく呟くルリに「プロス人選誤ったね」と言っているラピス。半開きになった口からぽたぽたと茶をこぼしている下品なじーさん…もといフクベ提督。呆然と起ち尽くしているミナトにメグミ。顔を真赤にしてキーキー五月蝿いムネタケ。腕を組んで難しい顔をし、むっつりと黙り込んでいるゴート。兎に角、非常事態にも関わらずブリッチは変な空間だった。

「ゴート君。何があったのです?」

「…うむぅ」

艦長…つまり自己紹介によるとミスマル・ユリカと名乗った女性を見ながらゴートはプロスの質問に「うむぅ」と返事をした。
早々と「コイツはダメだ」と判断したプロスは比較的まともなルリラピに話しかけた。
ルリラピはプロスの質問に対し、先程あった出来事を簡素に述べる。そして、現在の状況報告を始めた。

「敵、木星蜥蜴地上にて破壊活動を繰返しています。連合軍と交戦中。蜥蜴のターゲットは限りなく100%でナデシコです」

「艦長、早くマスターキー差して。動かないから」

いきなり冷静に思い切り年下の女の子2人に非難ゴーゴーの目で射抜かれ、ユリkaはたじろぐ。
軽く引きつった笑いを浮かべると「う、うん!そうだね。ユリカ艦長さんだモンね」と言い、懐からマスターキーを取り出した。




「ナデシコいっきまーす!」









んが、しかしユリカが持っている鍵はどこからどう見てもトランクの鍵だった。ユリカ自身もハとそれに気付き、表情を引きつらせた。

「ジュジュジュ、ジュンくん!マスターキー!マスターキーが
ない よぉ!?」



思わずバイツが「うをいっ!」と芸人真っ青の速さで突っ込んだ。
そんな事をブリッチで繰広げている間に状況は益々悪化の一途を辿っている。
そしてそんな状況にムネタケがキレた。





「ムッキーッ!良いから早くしなさいヨっ!アタシはこんな所で死にたくないわ!!」






言っていることは正論だが果てしなく五月蝿い。地団駄を踏んでどたどたと騒がしい。金切り声で神経を逆撫で。頭を激しく左右に揺らせて見苦しい。

バイツは思わずポツリと呟いた。






「…誰だ。こんな役立たず乗艦させやがったヤツァ」





「…勝手に乗りこんだんですよ。彼」




その呟きに答えたプロスと呟いたバイツの間に奇妙な沈黙が流れ、バイツは徐に騒いでいるムネタケを後ろから羽交い締めにするとそのまま投げ捨てる。メキャリゴズッ! と言う、何やら「普通はそんな音、出ねェよ」ってな衝撃音をムネタケの頭部が発し、がっくりと痙攣すらせず大人しくなった。

そしてそんな喧騒の中、ユリカはどうにか付き添いの男か女かよく解らない中性的な顔立ちをした副艦長からナデシコのマスターキーを受け取ると場違い100%な底抜けに明るい声で、







ナデシコ起っきろ〜〜







と、叫びながらガシャコンっとキーを差し込んだ。


ブゥンとモーターが鈍い音を出し始め、オモイカネが作動し始めた。





<マスターキー確認。相転移エンジン始動します>






漸くナデシコが機動を始める。ルリは一応、上司である艦長に現在状況を報告する。
因みにルリが現在ユリカに対して抱いた考えは「天然さんでしょうか」との事。

ユリカは現在状況を確認するとまたもや場違いなほどぽやや〜んとした態度と言葉でルリの「艦長天然ボケ」メーターを増幅させるに至った。




「うっわぁ!すごいすごい!一杯だよっ」








「アンタそりゃ敵機だよ




バイツは何故か、フクベの隣に…副提督の居場所である。立つとユリカを見ながら疲れた声で呟いた。そして、投げやりにユリカに言う。

「いいから早く出せ」

そんなバイツにルリは反論した。

「今出たら袋叩きです」

「かまわねェから逝け」

物凄く投げやりな言葉に誰よりも早くプロスがキレた。それはそうだろう。いかに艦長の所為でナデシコがピンチに陥ったとした事実があってもクルーの一人でもこんな投げやりになってしまっては場の雰囲気が悪くなるからだ。

「バイツさん!それは困りますっ!ナデシコが壊れたらどうするんですか!?高いんですよっ!!」

思わず、ユリカすらもこけそうになったプロスの怒りだった。暫しの沈黙の後バイツが妥協策とでも言わんばかりに言う。

「主砲を上に撃て。それでそっから出たら大丈夫だ」

「それだと、上の基地の人巻き添えになるわよ?」

今度はそれに対してミナトが反対する。流石に助かる手段とは言え人としてやってはいけない手段だとミナトは思ったからだ。が、そんな事は意に介さずバイツは面倒臭そうに言った。



「構わん。大事の前の小事だ。
逝ってもらおう




「バイツ。それ酷い。いくら役立たずでも味方を攻撃したらナデシコの立場が悪くなる」

非難ゴーゴーな視線でラピスがバイツを睨んだ。「と言うか何でバイツさんが指示してるんです!」とルリとプロスが見事にハモり、それに対しバイツはユリカを指差し「だって
アレに任せたらどっちにしろナデシコ永遠に…って事になりそうじゃねェか!?」と叫んでいた。それに対して、プロスは眼鏡をキランと光らせ「聞き捨てなりませんな。それは私のスカウトとしての目を疑うとの事ですかな?アレでも仕官学校を主席で卒業した才女なんですよ!」といきなり喧嘩をしていた。それをルリは横目で見ると深い溜息と共に、

「バカばっか…」

と、呟いたのだった。そして漸く再起動したフクベ提督が鬚を湿らせた茶を拭うとユリカを見ながら問う。

「さて、どうする艦長?腕前、拝見といこうか」

渋い台詞なだけに鬚からぽたぽた垂れる零れた茶の雫が全てを台無しにした。ユリカは一瞬思案顔になると今までとは打って変り真面目に指示を出す。

「海底ゲートから海底へ出てください。その後速やかに敵背後に回りグラビティブラストで殲滅。敵機の誘導はエステバリスでお願いします」

そんな凛とした姿のユリカをバイツは驚愕の眼差しで見、プロスはそんなバイツを見て勝ち誇る。フクベは「ほぉっ」と感心すると目を細め頷いた。
…茶ァ滴らせてるけど…。

「囮役として出撃して下さるパイロットさんに繋いでください」

「パイロット二名。共に出撃不可」

ユリカの声にルリがいきなり即決で切落した。それには流石にユリカもパニック。プロスもパニック。バイツもパニック。フクベは魂抜けかけた。

「お、おい!手も足も出ねぇじゃないか!」

バイツがルリに言い、焦る。
ルリはそれに対して、

「ヤマダさん。あ、もう一人のパイロットの方ですけどただ今医務室で骨折した足の手当て。アキトさんは…」

と言い、格納庫の映像をプロスとバイツに見せた。因みにラピスも覗こうとしたのだが見えなくてバイツによじ登りそこから見ていた。して、格納庫はと言うと…。




「俺のエステがぁぁぁぁぁぁっあああッ!!?」





整備班の手により物の数分で分解されていたりした。もう片方のエステは損傷していて満足に動かせる状態ではなかったのだ。


「あんた等ッ!何やってんだ!?敵来襲してんのに分解する奴がいるかっ!」


「いや!分解した時はまだ来てなかったっ!」


アキトの怒りにウリバタケはいきなり屁理屈で対抗した。一瞬固まったアキトだったがすぐに再起動。フクベとは違いスペックが高いのだ。

「せめてあっちでも良いから動ける位にしてくれっ!」


そう言ってアキトは自称パイロット・ヤマダが壊したエステを指差す。


「あ〜、一応アレは動くぞ。ただし!腕が上がんねぇから戦闘は出来ねェ」

ウリバタケがアキトの言葉に対してそう答えると、アキトは動くのであれば幸いと口早にそれを伝えた。

「動くんならそれで良いっ!早く準備してくれっ!」

アキトはコミュニケを付けるとルリに繋ぎ話しかける。その表情は緊迫しており何時になく真剣な面持ちだった。アキトは口早に話しながらちらちらと体勢を立て直されているエステに視線を送っていた。気が気ではないのだ。

「今から出るから、ナデシコの体勢を整えて!作戦は!?」

「あ、はい!取り合えず囮に徹してください。以上です」

「OK!解った。そっちも気を付けて!じゃ、行って来ますっ」

そう言うが早く、アキトは走り準備が整ったばかりのエステに飛び乗った。コックピットが閉まり、エステの眼の部分が淡く電光を放つ。ブゥーン…と鈍い機動音を響かせると歩き始めカタパルト上にその機体を設置させる。格納庫の扉が開き、整備士達がエステの周りから離れるのを確認しカタパルトが火を吹きエステは一気に中空へと身を飛ばした。

一機のエステに群がる木星蜥蜴の無人機。アキトはそれを紙一重で避けながら誘導を開始した。しかし当初から大破している機体の為思うように操れないでいるらしく、敵からの攻撃を被弾する。



『くそぉっ!バランサーが飛んでるっ』



アキトの叫び声がブリッチに響き渡り、ルリとラピスを青ざめさせる。プロスもこの時ばかりはヤマダ・ジロウの人選を誤ったかもしれないと苦渋に満ちた表情で眉を顰めていた。




「アキトさんっ!アキトさん!!」



ルリが必死にアキトとの通信を試みるがアキトはそれどころではないらしく、どうにかといった様子で敵からの攻撃を避け誘導する。多少被弾するものの、最小限に押さえているらしくそれでもまだエステを駆る。

「格納庫、聞こえるか」

バイツがコミュニケを取り出し格納庫に通信した。その表情は冷静なものだが抑揚のない口調に静かな怒りを感じさせた。

「二度と本人の承諾を得ずに勝手な真似をするな。次はない」

それだけ伝えるとバイツはコミュニケを切りブリッチから出ていこうとした。心配そうなルリラピの頭をくしゃくしゃっと乱暴に撫でると「そのままアキトに話掛けとけ」と言い、そのまま歩いて出ていった。バイツはブリッチから出ると煙草にを懐から取り出すとそれに火を付けて大きく一吸いした。がりがりと頭を掻くとアキトのコミュニケにプライベート回線で通信を入れる。



「おい。聞こえるか」




『なんだよっ!こっちはそれどころじゃない!』





「良いから聞け。エステから腕を切り離せ。そいつを群れになってるバッタの中心に落として一機誘発させろ。
その後はもう片腕を落としてエステのブースターで爆発させる。それで煙に巻いて逃げろ」



バイツはそれだけ伝えると、アキトからの返信を待たずに一方的にシャットアウトした。
再度大きく煙草を吸うと、指で弾き再びブリッチに入って行った。

アキトは愚痴をこぼしながら「やれば良いんだろっ!?」と叫び、片腕を切り離した。
アキトのいきなりの行動にブリッチの面々は驚愕を露にした。


「アキト!アキト!」


ラピスがモニターに被り付くようにして今にも泣き出しそうだ。ラピスの目には敵からの攻撃をアキト機が被弾し腕が落ちたかのように見えたのだ。
その他の面々もラピスのそれに近い物を感じ、焦燥感に駆りたてられた。ルリもラピスにと同じく泣き出しそうなほど焦っていた。
普段、表情を出さない二人だが事がアキトに対してという事となるとそうではなくなる。今、二人は兎に角必死だ。


腕を切り離したアキトのエステはと言うと、落ちた腕が敵機に着弾しその衝撃で爆発。その余波を煽りそれを取り囲んでいた敵機は次々に誘発して行った。
そして残ったもう片方の腕を切り離すと、それに背を向けブースターで着火させる。爆発する数瞬前にアキトはそれを蹴り飛ばすと爆発によって生じた爆風と爆煙を利用しその場から一気に離れた。

そして、それによりアキトのエステにも変化が見られた。劣勢だった動きをどうにか立て直し着実に誘導ポイントへ向かってエステを移動させ始めた。


「アキトさん!
アキトさん!聞こえますか!?」



ルリの通信にも漸くアキトの返答が返って来るようになった。余裕すら感じられないものの返答が返って来たという事に対して、皆一様に安堵した。



『こちらテンカワ!ナデシコの状況は?こっちは後5,6回被弾したらやばい。出来るだけ早く来て下さいっ』



劣勢から立て直したというだけで好転とまでの状況は変化していないらしく、焦った口調でアキトからの通信が入った。

「後、3分ほどでそちらに向かいます!頑張って持ち堪えて下さいっ!」

アキトからの通信にユリカが応え、てきぱきと指示を出す。他の面々もその指示に従い手早にナデシコをアキトの元へと駆る。その3分の何と長い事か。
エステで囮をしているアキトも、その様子を黙って見ているバイツも、ナデシコを動かしているクルー達も皆一様にその3分を一刻も早く流れるように願った。


「アキトさん!海面に向かって降下して下さいっ」


『了解っ』

アキトの駆るエステが海面に向かって降下する。敵機からの攻撃をすれすれで避けながら、遂に追っ手から逃げ切り海面に到達したエステが海に着水しそうになった瞬間、大きな影が浮上した。

ドン!とその影の上にエステが降り立つと、ナデシコがその巨大な体を遂に現したのだ。そして、ユリカの最後の指示がブリッチに響き渡った。

「敵、目標補足!グラビティブラスト発射っ!敵、まとめて全部やっちゃってっ!」

「了解!」

ナデシコから一筋の巨大な光が発射されその目標上にいた敵機を余す事なく殲滅させた。クルー達はホッと胸を撫で下ろすと、ナデシコのメインモニターにエステに乗っているアキトの姿を映し出した。アキトの方も額にかいていた汗を手の甲で拭うと「ふぅっ」っと溜息を洩らすのであった。

「アキトさん!大丈夫ですかっ?」

ルリがアキトを見ると同時に心配そうに聞き、アキトは小さく頷くと「大丈夫だよ。有難うルリちゃん」と微笑みながら言葉を返す。ルリも、それで漸く安心したのか小さく微笑んだ。

「アキトアキト!怪我ない?」

ラピスは目尻に涙を浮かべ詰め寄るようにしてアキトに向って身を乗り出す。アキトは苦笑すると「大丈夫。心配かけてごめんねラピス」とすまなそうに微笑んだ。ラピスもそれで大きく頷くと涙を手の甲で拭い、満面の笑みを浮かべた。

「御疲れ様でした。テンカワさん」

プロスが小さく会釈しアキトに労いの言葉をかけ「今回は特別手当を出さないと割に合いませんなぁ」と苦笑していた。アキトも苦笑し「お願いします」と笑った。

「うむ」

そんな二人をゴートはチラリとみると何故か納得したかのように「うむ」とだけ呟き頷くと、押し黙り腕を組んでむっつりとした表情のままメインモニターのアキトを見ていた。

「ふむ。艦長もパイロットの君も素晴らしい!流石は一流を集めただけの事はある!」

フクベは多少興奮気味にそう言うとユリカとアキトを誉めた。ユリカは「えへへ〜…照れちゃうなぁ」と頬を緩め、アキトは「運が良かったんですよ」と苦笑していた。

「御疲れ!有難うね。ナデシコの英雄さん」

ミナトが小首を傾げにこりと微笑んでアキトにそう言う。アキトはちょっと照れ気味に「そんなガラじゃないですよ」と頭を掻いていた。

「心配しました!有難う御座いますぅ」

メグミは両手を胸の前で組むと目をきらきらさせて感激していた。アキトは「役に立てて良かったよ」と微笑んだ。

「有難うー!ええと、テンカワ・アキト…アキト?アキトアキトアキト…ん〜?」

ユリカはアキトに満面の笑みで礼を言った後、アキトの名前をひたすら呟きつづけアキトを引かせていた。苦笑しながらユリカを見たアキトも「ん…?」となにやら思案顔だった。

「う、うう…誰か僕の上にいるこの人剥がして…」

副艦長っぽい例の中性的なユリカの付き添い人はバイツに投げ飛ばされたムネタケがナデシコが揺れた反動で覆い被さってしまいその下敷きになっていた。

バイツはアキトを見て何も言わずに小さく口元を緩めると親指をぐっと小さくつきたてていた。そして、ルリとラピスの頭を乱暴に撫で「迎えに行っておいで」と言っていた。二人は頷くとそのまま走り去り、バイツはそんな二人を見届けた後にオペレーターシートに腰を下ろした。

「オモイカネ。ルリとラピスがお迎えに行っちまったからな。代わりに俺が状況報告を聞くぞ。ナデシコの被害と、地上、防衛軍、連合軍、民間の被害を出してくれ」

<被害は甚大。民間、軍共に多大な被害を受けています。負傷者28名です。重傷者も多数出ていますが死者は出ていない模様>

「上出来だ。…オモイカネ。初陣は大勝利だぞ」

バイツはフッと頬を緩めると髪を掻き上げた。オモイカネもどことなく嬉しそうだ。
因みにバイツはオモイカネ搭載時からの知り合いの為、仲が良い。
そして、小声で「俺とアキトの通信した部分は重箱の隅にでも閉まっといてくれ」と言っていた。オモイカネは<別に隠さなくても>と文字を映す。

「馬鹿。あんなのルリとラピスにばれてみろ。冷やかされちまうだろ」

バイツは苦笑しながら頭をがりがり掻いた。冷やかすのは好きだが冷やかされるのは苦手な性質なのだ。オモイカネは「どうせばれると思うけど…」と思いながら<りょーかい>と文字を躍らせていた。なんだかんだ言ってもオモイカネもアキトの無事が嬉しいようだった。

因みに艦長ミスマル・ユリカと副艦長アオイ・ジュンと名乗った例のムネタケサンドになっていた人物はプロスに遅刻の件で説教中。滝のような涙を流してそれに堪えていた。
フクベ提督は再び茶を飲み始めると今度はバイツではなくゴートと将棋を打っていた。
ミナト、メグミ両名は先程の先頭の事に加え世間話の花を咲かせ談笑中。
ムネタケは首があらぬ方向に曲がりかけた非常に危篤っぽい状態で放置プレイ実施中で、ヤマダ・ジロウパイロットは先程のアキトの戦闘をどうやらコミュニケで見たらしく松葉杖をつきながら競歩の選手も真っ青な勢いで格納庫に到着。
いきなり叫んでいた。



「お前!!」



松葉杖の先をアキトに「ベベン!」と向けながら唾を撒き散らし顔を真赤にして詰め寄って来た。

「な、何!?」



「コックピットん中に俺のゲキガンガーがなかったかッ!?」




アキトは「ちょっと待って」とヤマダ・ジロウを押さえるとエステのコックピットを調べた。そして、暫くガサゴソ探していたが小さく「…あ」と呟きコックピットから降りてきた。




「あったか!?あったよな!?」




「いや。ない。見なかったよ」

つぅっと額から頬にかけて一筋の汗が伝った。ヤマダ・ジロウは「そんな事はない!間違いなく俺はあの中に置いた!」と松葉杖をつきながら異常に凄まじい速度でエステに向って行った。



「おい、アキト。手からはみ出てるぜ?
ソレ



アキトは慌てて
ソレをポケットに捻りこむ。その瞬間に「ベキッ」という何かが折れたような音が聞こえたがアキトはきわめて普通の表情で爽やかに声の主であるウリバタケに振りかえると頭を掻き言った。


「何もないじゃないですか?いやだなァ。ウリバタケさんったら嘘つかないで下さいよ」


アキトはヤケに爽やかな風が吹きそうなほど微笑むと一生懸命ポケットのふくらみを押さえていた。アキト…非情ではなく酷い男だ。
ウリバタケはあえてソレには突っ込まず苦笑すると頭を掻いて、アキトにすまなそうに言った。

「なんつーか…、悪かったな。まさかあんな事態になるたァ思わなくってよぉ。あー、その何だ。悪い!この通り!」

ウリバタケは頭を下げるとアキトに謝った。アキトもそれで「まぁ、済んだ事ですし…それに一応生きてますから。終わり良ければ全て良し…てね」と苦笑しながらウリバタケに言うのであった。ウリバタケはもう一度頭を掻くと苦笑する。

「お前のダチにも怒られちまったよ。”二度と本人の了承を得ずに勝手な真似をすんな”ってな。次からはお前に許可貰ってからにするわ。で、早速なんだけど、ばらしちまったついでにアレのプログラム弄って良いか?」

「はぁ、まぁ良いッスけど…」

アキトがそう言うや否やウリバタケはアキトのエステに向ってすっ飛んでいった。それにはアキトも苦笑し、「なんだかなぁ」とこめかみを掻きながらぼやいていた。


「アキトさんっ」


「アキト!」



「あ、ルリちゃん。ラピス。ただいま」

背後からルリラピがアキトを呼ぶ。アキトはその言葉で振りかえるとにこりと微笑み二人の前にしゃがみ頭を撫でた。二人はそれは嬉しそうに首を竦めると気持ち良さそうにアキトに撫でられるその感触を堪能するのであった。









「俺のガンガー3ィィィィィッ!!!??」












遂に機動戦艦ナデシコ出発!
初戦闘で負傷者二名(ヤマダ・ジロウ&ムネタケ・サダアキ)を出すも初陣は飾った。
しかもクルーは皆どこか一本抜けている模様。
いきなりの不安要素を盛り沢山で機動戦艦ナデシコは行く!
王子様は悪い魔法使いと出会う前に自我を保つ事が出来るのでしょうか?
















後日譚へ続く。




後書き


久々に原作見ました。一回一回参考にしながら書いてこーと思っています。
久々に見た感想「ぐぉ!?ムネタケの顔が記憶と違うッ!?」という事と、「リリーちゃん萌え(核爆)」です。


一家に一台リリーちゃんの時代が来る筈だーーーー!



主人公二人組


アキト君

ピンチ脱出。あんな状況下で良く頑張ったものです。
バイツ君の口添えがあったにしろそれを切り抜けたアキト君アッパレです。それにしてもマメな男ですね。
一人一人に返答してるし。やはり他の作者様のアキト君同様天然ジゴロになってしまうのでしょうか?
しかもガイ君のゲキガン人形破壊するし、それも爽やかに誤魔化すし…酷い。


バイツ君

少し恥かしがり屋と判明。しかもムネタケの台詞パクってしまうし、ムネタケ殺しかけるし、アンチムネタケでしょうか?
今回は結構シリアスも決まったかな?と思うバイツ君です。



今回の主要登場キャラクター


ミスマル・ユリカ艦長

年齢20歳。
結構好きなキャラクターなので待遇は良いです。暫くはバイツ君と同様ギャグキャラ兼ボケキャラとして出張ってもらいます。
女性クルーの中ではナデシコ一の怪力の持ち主という設定。その張り手はゴートさんですらぶっ倒れる威力を誇っているのデス。
果たして一番初めの被害者は誰になるのでしょうか?うむぅ悩む所です。


アオイ・ジュン副艦長

年齢20歳。
ムネタケに挟まれただけの出番(汗)
物語中には出ていませんが、ムネタケに初キッスを奪われてしまいました。今はまだ本人が気付いていませんが(封印した)後々出てくる事でしょう。さぁ!ジュン君の運命やいかにっ!?


フクベ提督

いまいち決まらないおじーさんになってしまいました。結構御茶目かもしれないデス。


ムネタケ副提督

緊急入院を余儀なくされました。


プロスさん

損害で大忙し。多忙過ぎてお疲れ気味です。
キャラ紹介を見て「ネルガルSSの長はナデシコSSオリジナルの設定」てのを発見。原作の設定かと思っていたデス(滝汗)
…あーはっはっは!何とかなるさッ(爆)


ゴートさん

未だに発病中(汗)


ルリラピ

アキトの事で神経すり減らし中な戦闘。アキトの事に関すると我を忘れてしまうみたいです。


メグミさん

アキト君良いかもメーター増幅中デス。


ミナトさん

「アア…泣きそうな表情も良いわ・・・」冗談です(汗)ルリラピ守ってあげたいメーター振りきり中デス。


セイヤさん

エステバリスカスタム・タイプBの改造・改良に着手。怪しい仕掛を取り付け中の模様。


ジロウ君

ゲキガンガーがなくなって生きる希望を無くしてしまいました。
毎日VRに出向いて夕焼けの波止場でハードボイルドに漢泣きしています。




以上が今回のキャラ説明になっています。
説明というよりも情景描写になっていってしまったような気が…。
それにしてもこんなに沢山のキャラクターを書こうと思うと疲れますね(汗)
まだまだ増えると思うとプラトーンをしたくなります(笑)


 

 

代理人の感想

爽やかに酷いアキト(爆笑)。

 

ガイは泣き、犯人は冷や汗を掻きつつ証拠を隠蔽する!

アキトに拉致られたゲキガンガー3の運命や如何に!

待て次号! (おい)

 

>許可

う〜ん、改造ならともかく整備でいちいちパイロットの許可もないと思うんですけどねぇ。

整備が仕事なんですから。

問題は「出れる機体が無い状態にしてしまった」ことであって、

「アキトの機体をばらした」こと自体はさほど責められるべき事でもないと思います。

まぁTPOはわきまえてなかったかもですが(笑)。