機動武闘伝
Gナデシコ
廃墟の上を風が吹き抜けて行く。
デビルホクシンの消えた後を何するでもなく眺めながら、アキトを初めとする五人が佇んでいた。
ぽつり、とナオが口を開く。
「ったく、悪い夢でも見ているみたいだぜ。」
「これほどの敵、忘れられるものではないわね。」
舞歌が呟き、リョーコが厳しい表情で一人ごちる。
「俺も、生まれて初めてだぜ。・・・あんな、化物みたいな敵に会ったのは。」
「あれは・・・あれは一体なんなの?」
誰とはなしに問いかけられたユリカの言葉に答えるものは、やはりいなかった。
突然、リョーコが大声を上げて身を翻した。
「けったくそ悪ぃ。あーあー、やめたやめた!俺は一抜けさせてもらうぜ!」
「私も。」
「俺も、だな。」
舞歌とナオが思い思いの方向に歩き出す。
それらにも反応せず遠くを見て佇むアキトの後ろで、ユリカは暫し立ちすくんでいた。
風が冷たく吹きぬけ、アキトが目線を下げてわずかにうつむく。
ユリカが決意を決めたように何かを言いかけて・・だがそのままきびすを返した。
ふと、アキトのさ迷う視線が足元の廃墟の中に転がっている大時計の文字盤を見つけた。
ぼんやりと、その文字盤を見ている。
不意にその表情が凶暴な影がかすめたかと思うと、アキトの拳がそれを叩き割った。
風は、いよいよ強い。
「さて、テンカワアキトはデビルホクシンを目の当たりにしたものの、
師匠であるマスターホウメイ共々、再びその姿を見失ってしまったのです。
ナオ達ライバルとの再会。シャッフル同盟との別れ。
そして、師匠マスターホウメイへの激しい思いは、
今日彼をどのような運命へ導いて行くのでしょう。
更に、突如現れたネオドイツのファイター、シュバルツ・シヴェスターと、
そのナデシコシュピーゲルは一体何者なのか。
物語は次々と、新しい展開を見せて行きます。
それでは!
ナデシコファイト・・・
レディィィ!ゴォォォゥ!」
第十七話
「対決!
謎の覆面ファイター」
何処とも知れぬ暗い空間にデビルホクシンの咆哮が響く。
かつて、新宿の地下でそうであったようにその体は淡い赤光を放っていた。
その咆哮に答えるかのように力強い声が響く。
「ご心配なく、デビルホクシンさま。確かにテンカワアキトは我々を追ってやって参りましょう。
ですが!なまじ腕に覚えがある故に、それを逆手にとってこれを捕えるはいと易き事!」
デビルホクシンの前に立ち、熱弁を振るうのはやはり、東方不敗マスターホウメイであった。
その体がくるりと回転し、眼下のDH細胞に冒され操り人形と化した髑髏の兵士どもに向く。
「者共!よっく聞けい!」
一斉にどよめき、姿勢を正す髑髏兵。
魂の奥底までDH細胞に冒されきった彼らにも、まだ人間性の欠片、というか
残りカスのようなものはあるのかもしれない。
空中に映像が投射された。
ぼんやりした像が焦点を結ぶのと同時に再びホウメイが口を開く。
「テンカワ襲撃の場所は、ここだ!そう、奴は必ずここに来る!」
どこかの山中のようである。
険しい岩山とそれに続く深い森が見えた。
髑髏兵どもの空ろな眼窩がそれを注視する。
「戦いとは、ただ徒(いたずら)に己の力量をぶつけるものにあらず!
兵を用いるには九通りの地勢と天地風水の流れあり。
そう、襲撃にはまたとない絶好の地形なのだ!」
強くなってきた風に赤十字の旗がばたばたとはためいた。
基部から真っ二つに裂けた都庁の前で、十個余りのテントが風に吹かれている。
負傷者の救護の手伝いを買って出ていたガイの後ろに、ひょい、と立つ影が二つ。
ネオロシアのタカスギ・サブロウタとスバル・リョーコであった。
「いやあ、今回の事でネオジャパンに借りが出来ちゃったね。
テンカワ君が見当たらないんで君に礼を言って置くよ。
・・・・でも、俺達を助けた事を後悔しないようにね。」
「ナデシコファイトで手加減しろ、なんてこたぁ言わねえよ。」
サブロウタが苦笑して身を翻す。
リョーコが何か言う前に、ガイがからかうように口を開いた。
「アキトにはよろしく言って置くから、早く行きな。」
「なっ!・・・・そんなんじゃねえよ。礼を言っておきたかっただけだ!」
「そういきり立つなよ・・・・・・ま、考えてみりゃどうせそのうち嫌でも再会するんだろうしな。」
「フ・・違いねえ。じゃあな、熱血馬鹿。」
「あばよ、海賊。」
リョーコ達と入れ違いのようにしてユリカが入ってきた。
「アキトの居場所知らない?お別れの挨拶して置きたいんだけど。」
「ん〜、悪い、知らねえんだ。」
「じゃあ伝言お願いね。『たとえ離れていても、私の心はアキトのそばにいる』・・なぁ〜んちゃって!」
「はいはい・・・。」
呆れたように頷くガイ。
テントの入り口から顔だけ覗かせたジュンが、誰にも気付かれる事なく一人涙を流していた。
ドラゴンナデシコが新宿から東に向かって歩いていた。
開きっぱなしのコクピットハッチの上に舞歌がぼんやりと腰掛け、
右手の上に九十九と元一郎が乗っている。
「はぁ〜あ、アキト君に一言言って置きたかったなぁ。」
「・・・なんと言う体たらくですか、舞歌どの!
あのデビルホクシンを見て、なにも感じられなかったわけではありますまい!」
「だぁって、ね。居場所がわかんないし私一人でどうこうできるもんでもないし。」
「とは言え!」
「それに、コロニーの総師だって『ナデシコファイトに戻れ』って言ってきてんのよ?
デビルホクシンに張り切っているのは、九十九と元の字だけって事。」
プロスは相変わらずにこやかである。
「いやぁ〜、誠にこの度はお世話になりまして。」
「ん〜、まあ困った時はお互いさまって事で。」
ガイが照れる。
カズシも握手しながら改めて礼を述べた。
「本当に助かったよ。アキト君にもよろしく。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・うむ。」
「じゃあな、ガイ!アキトにあんまり心配かけるなよ!」
ナオが笑って車を出す。
ガイも笑いながら怒鳴る。
「馬鹿野郎!アキトが俺に心配かけてるんだよ!」
アキトは師を捜していた。
デビルホクシンの魔力に捕らわれた(と、アキトはまだ信じていた)師匠を救い出す為である。
「東京を南下したまでは判っているんだ・・・。追いつけさえすれば!」
アサルトランダーが廃墟を疾走する。
自分の動きが逐一監視されている事にも気がつかぬまま・・・・・。
あの、何処とも知れぬ空間でホウメイがその様を見ていた。
「兵は詭道なり。策無く戦えば、即ち敗北は必定!」
その頬に浮かぶ笑みは、自分の策に落ちた敵を見る軍師の、
あるいは罠に掛かりつつある獲物を見る狩人のそれだった。
「マスターナデシコ!?」
アキトの顔が驚愕に歪んだ。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけではあるが前方のビルの陰に姿が見えたのだ。
されに速度を上げ、マスターナデシコを追うアキト。
その影だけをアキトに見せつつ、マスターナデシコは逃げるように後退して行く。
(・・・・・兵法にまた曰く、戦いとは正と奇、虚と実の運用にしか過ぎず、
千変万化、水の流れの如く窮まり無く、一度その術中に落ちればこれを操る事造作も無し。
今、きゃつの目には我がはっきり見えている事であろう・・・・・・)
「師匠!師匠は何処だ!あのナデシコは何処へ消えたぁっ!」
最大スピードを出してアキトが道路を走る。
いまや彼の目は、あのマスターナデシコの影にのみ注がれていた。
(・・・戦いは盲信を戒めとする。己が力を計り、敵の力を計る。
それを怠る者は敵の手に落ちるより他無し。今、テンカワはまさにそれなり。・・・・む!?)
アサルトランダーを全力疾走させるアキトの前の道路に、いきなり人影が立ち塞がった。
三色に塗り分けられた布の覆面、グラマラスな肢体を包む白衣。
「うわぁっ!」
慌ててハンドルを切ったアキトは当然ながら大きく道をそれ、
斜面の下の松林の前で停止した。
「誰だ!出て来い!」
周囲に低く、くすくすと笑う声が響いた。
既に先程の姿は消えている。笑い声は聞こえても、どこから来るのか分からない。
忌々しげに怒鳴るアキト。
「出て来い!出てこないなら、松の木ごと吹っ飛ばしてやろうか!?」
「私よ。テンカワアキト君。」
はらり。
根元から三mあまり、松ノ木の表面が布の様にめくれる。
いや、驚くべき事にそこの部分だけは本当に布だった。
その下で松の木の幹に張り付いていたのは白衣を纏い、覆面を着けたゲルマン忍法の使い手・・・
「お前はあの時の!」
「そう。シュバルツ=シヴェスターよ。」
「そのシュバルツ=シヴェスターが何の真似だ!」
アキトは早くも、頭に血が昇りかけている。
シュバルツが、体重を全く感じさせない動きで松の木から飛び降りる。
驚いた事に木をしならせもせずに、だ。
「止めに来たのよ。貴方がどこへ行こうとしてるか、それを承知の上でね。」
「あの時は助け、今度は邪魔をすると言うのか!」
「悪い事は言わないわ。おとなしく引き返しなさい!貴方に勝ち目は無いわ。」
「お前の知ったことか!俺には俺の考えがあっての事だ!」
「考え?貴方の考えなど、マスターホウメイは先刻お見通しだと、言っているのよ!」
まるで、監視の目がそこにあるかのようにシュバルツが天を見上げた。
映像の中のその視線が覗き込んでいたホウメイの視線とぶつかる。
もちろん、あちらから見える筈は無いのだが。
(・・・あ奴!こちらの策に気が付いているって言うのかい!?)
視線を戻し、再びシュバルツが口を開く。
「いい、アキト君?むきになっても、勝てない物は勝てないのよ・・・」
「何ぃっ!」
物も言わずシュバルツがアキトの顔面に一撃を放ち、
反応する暇も無くまともに受けたアキトはもんどりうって倒れた。
「・・・それに腕の方もね!」
「・・・このぉっ!言わせておけば!」
アキトが猛然とシュバルツに挑む。
間合いを一瞬で詰め、拳、蹴り、肘打ちを無数に撃ち込む。
だが一発たりとも入るどころかかすりもしない。
「未熟未熟未熟未熟ぅっ!どうしたの?それでおしまいっ!?」
「ぐっ!」
逆にカウンターでみぞおちにシュバルツの膝蹴りを貰い、膝を突く。
「それでナデシコファイターとはね!テンカワアキト!」
「お・・・おのれぇぇぇぇぇぇっ!」
流れるような動きで立ちあがり、右の拳をシュバルツの顔面に叩きこむ。
だが次の瞬間、拳はシュバルツの残像を突き抜けた。
バランスを崩したアキトをシュバルツの回し蹴りが吹き飛ばし、松の木の根元に叩き付ける。
「テンカワアキト!今の貴方は人より僅かに抜きん出た己の腕に溺れているに過ぎない!
そのようなざまではデビルホクシンを倒すどころか、
貴方の師匠、東方不敗マスターホウメイに勝つことすら・・・夢のまた夢!
見なさい!アキト君!」
松の木に持たれかかるような格好でシュバルツを睨みつけていたアキトは、
風が自分の脇を通りぬけるのを感じ、刀が鞘走る音を聞いた。
その時にはもう、シュバルツはアキトの背後で背負った鞘に刀を収めている。
鍔鳴りの音、続いて、木が軋む音がした。
「!」
アキトがもたれていた、一抱えもありそうな太さの松の木が、ゆっくり倒れていった。
綺麗で滑らかな切り口。すれ違いざまの一閃でシュバルツが斬っていたのである。
シュバルツが背中の刀を鞘ごと抜き、アキトの方に差し出す。
「己の腕がどれほどの物か、この刀に尋ねなさい!
私の言葉が誤りと思うなら、いつでも向かって来ると良いわ。相手になってあげる。」
鞘に収まった刀を地面に突き刺し、シュバルツが身を翻した。
「くそっ!待てっ!」
ぼむっ!
追ったアキトの目の前で煙が爆発し、視界が閉ざされる。
数秒後にそれが晴れた時、既にシュバルツの姿はどこにも無かった。
(・・恐るべし、ネオドイツのファイター!・・・一体何者・・・?何故、テンカワにまとわりつく・・)
追いついてきたガイにシュバルツのデータを集めるよう言い残し、
アキトはやり場の無い怒りを胸に、一人浜辺に座りこんでいた。
「くそぉっ!師匠を助けようとする俺のどこが!悪いぃぃぃっ!」
いきなり立ちあがったアキトがシュバルツの残していった日本刀を抜き、
いきなり手近の松の木に斬りつける。
「りゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
固い手応えがあった。アキトの予想に反し、刀は一、二cm程木にめり込んで止まっている。
刀身を見たアキトが愕然とした。思わず自分の目を疑う。
「さ・・錆びてる・・・・!あいつは・・・こんな刀で・・・」
(松の木を両断したって言うのか!?)
錆び付いた刀身を注視しながら、ふと考えこむアキト。
(しかし・・・あれはなんだったんだ・・?あの時、俺は奴と戦いながら、
何か懐かしい人に出会ったような、そんな感じに一瞬捉えられた・・・)
「アキト。」
ガイの声がアキトを物思いから覚めさせる。
「・・・何か分かったのか?」
「大した事はわからなかったが・・・。」
ネオドイツのナデシコファイター、シュバルツ・シヴェスター。
かつて一度、デビルホクシンと思われる敵と戦った形跡あり。
一時行方不明の後、新宿に現れる。
覆面の下の素顔を見たものは無し。
正体に関しては全くの不明・・・・。
「・・・以上だ。」
アキトが刀を鞘に収め、きびすを返す。
そのままアサルトランダーの方に歩いて行くアキトの背中にガイが声を掛けた。
「待てよ。シュバルツに無理だって言われたんだろ?
・・・・・言わせてもらうが、確かに俺から見ても今のお前じゃ無理だ。」
「・・・俺には奥の手がある。」
確かにあいつは強い・・だが、俺には奥の手がある。
そう、シャイニングナデシコスーパーモードだ!
あれさえ発動させればたとえ相手が誰であろうと、負ける筈が無い!
あのパワーを使えば、必ずデビルホクシンから師匠を取り戻せる!
「こらぁっ!待ちゃあがれ、アキト!」
結局、アキトはアサルトランダーで出発した。
その後を、ガイがエアバイクで必死に追いかける。
さすがにガイを引き離すような真似はしないが、骨董品寸前のガイのエアバイクでは、
最新鋭技術の結晶であるアサルトランダーについて行くのも一苦労である。
「デビルホクシンの所へ行くつもりだな!」
「うるさい!俺は師匠に会うんだ!・・・見ろ!あそこを!」
再び、一瞬だけではあるがマスターナデシコが二人の前に姿を現していた。
ガイの目にはその特徴的なシルエットを一瞬残したのみであったが、
巨大な角とボディを覆う紅のマント型シールドは紛れも無くマスターナデシコのものであった。
アキトが、更に速度を上げた。
(・・・フフフフフ・・・およそ地形には六つの害あり。今奴は、その一つ『顛羅』に向かいつつある・・・
そこは地形険しく、思うがままの行動を不可能とする。然るに、近づく事無かれ・・・・)
道は深い森を抜け、隘路に入って行く。
左右は切り立った崖になっており、急なカーブが続く曲がりくねった道になっていた。
(だが、奴にはそれすらも見えず、只影を追うのみ・・・そして、蟻地獄にはまったが如く、
我々の思うままとなる・・・そして、獲物は罠へと自ら陥る・・・
これぞ、東方不敗は八卦の陣!一度はまれば、抜けられはしないさ・・・!)
「・・・道が分かれてるぜ?」
「大丈夫だ。師匠に習った事がある。戦場では高みを占めるが優位、
敵を探さんと欲すれば上へと向かうべし・・・山へ行くぞ、ガイ。」
赤いマント。黒い、巨大な角。だがそれをまとうのはマスターナデシコではなく、ムヅラアーミー。
同じ姿のムヅラが三体、山頂に着いたアキト達の目の前にいる。
完全な待ち伏せであった。
(ふふふふ・・・生兵法は怪我の元・・・かかったねテンカワ!行けい!)
ムヅラがビームライフルを構え、乱射する。
ガイが、ビームライフルの爆発の余波で吹き飛ばされた。
「ガイ!・・・・くそぉっ!ナデシコォォォッ!」
シャイニングナデシコに乗ってもなお、あくまでホウメイの姿を求めるアキトに
三体のムヅラがビームクロスを投げかけ、動きを封じる。
「師匠・・・答えてください!答えてくれないなら・・・俺のシャイニングフィンガーで!」
(・・・・・甘いね!)
ホウメイが手を振り下ろすと同時に、三体のムヅラの目が赤く光る。
ビームクロスを伝わるエネルギー衝撃波がアキトの肉体に火花を散らした。
「し・・・師匠・・・俺の話を・・・!」
(聞く耳持たないね!ハアッハッハッハッハッハッハッハッハ!)
苦痛に耐え兼ねたか、アキトが遂に膝を突く。
「アキ・・ト・・!」
崖にすがって歩くガイの耳に、聞き覚えのある笑いが飛び込んできた。
「くくくくく・・・・あはははははははは!」
「誰だ!」
(・・・!?)
今まで何も無いように見えた岩壁から、ナデシコシュピーゲルの姿が浮かび上がる。
「どうしたかと思ってきてみれば・・・このざまとはね。
いい格好よ、アキト君・・・!・・・・・・・・・はあっ!」
一閃。
それだけで三体のムヅラが両断され、ごろり、と転がる。
(・・・なんと!・・・)
「何故邪魔をする!俺は師匠と話を・・・」
「馬鹿!これが罠だと言う事にまだ気付かないの!」
「・・・で、でも・・・」
「説明してあげるわ。
貴方の行動は全てにおいて師匠に読まれ、ここに罠を張られて誘い出されたのよ。」
「まさか・・・。」
「戦いの極みに通じた者にとって、貴方の心を読む事など児戯にも等しい。
・・・つまり!貴方は既に師匠に負けているのよ!」
一瞬、愕然とするアキト。
だが、それを認めるにはアキトはまだ未熟だった。いや、若すぎた。
「そんな・・・・嘘だっ!俺はまだ、負けてない!俺には・・・スーパーモードがある!
勝負だ!あらためてあんたに、ナデシコファイトを申し込む!」
「・・いいでしょう、相手になってあげる!・・・・・ナデシコファイトォ!」
「レディ!」
「「Go!」」
お互いに突進し、正面から組み合う。
「パワーだけは一人前ね・・・でも!」
脇からの蹴りで態勢を崩すアキト。
側転して態勢を整え、突進する。
「まるで猪ね!どうしたの?隙だらけよ!」
滞空しながらの蹴りの連打をガードしきれず、顔面に貰うアキト。
「どうしたの!スーパーモードとやらを出してみなさい!」
「そ、そうだ・・・俺の・・・俺のスーパーモォォドォォッッ!」
間合いを取ったシュバルツの生み出す細く、しかし鋭い衝撃波がアキトの全身を間断無く襲う。
アキトはガードを固め、必死でそれに耐えた。
「どうしたのどうしたの!御自慢のスーパーモードとやらはどうしたのッ!」
「俺の怒り・・・俺のスーパーモード・・・!
俺の怒りのパワーよ・・・頼む!出てくれぇッ!」
シャイニングナデシコの拳が光を放つ。だがそれは・・・
「ふん!ただのシャイニングフィンガーじゃないの!そんな物・・・・・
無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!
無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!
無駄ァァッ!」
シュピーゲルの合わさった掌からエネルギーの網が撃ち出される。
それはシャイニングナデシコの両腕を後の岩壁に縫いとめ、
一瞬後には間合いを詰めたナデシコシュピーゲルのブレードが首に当てられていた。
「もはや勝負は決まったわ。首を落とすまでも無いわね。・・・・・・己の未熟さを恥じなさい!」
きびすを返して数歩歩き、言い捨てる。一瞬の後にナデシコシュピーゲルは姿を消した。
アキトが、両腕を磔にされたままがっくり、と膝を突いた。
うつむき、かすかに震えている。
天狗の鼻を、完全に折られた格好だった。
「・・・・負けた!」
いたたまれなくなったガイが、そんなアキトから目をそらす。
ふと、ガイは違和感を感じた。
さっきまでと変わらない風景・・・荒涼たる岩山、磔にされたシャイニングナデシコ、
破壊されて大地に伏す四体のムヅラアーミー・・・・・・・。
「・・・・・・・・『四体』!?」
むくり、とムヅラアーミーの一体が起き上がった。
ガイがおもわず悲鳴じみた声で叫ぶ。
アキトの顔がこわばった。
腕はまだ、岩壁に張り付けられて動かない。
(人知れず伏兵を忍ばせるも、また兵法!
ネオドイツのナデシコの邪魔が無くなった今こそ・・・テンカワ、覚悟しなっ!)
ゆっくりと、棍棒を振り上げてムヅラが近づく。
諦める、と言う言葉からは縁遠いアキトだが、ナデシコは動かず、頼みのスーパーモードも発動しない
この状況はそのアキトをすら観念させるに充分であったのかもしれない。
(や・・・・やられる!)
全身から冷たい汗が噴出す。思わずアキトが目を瞑り、顔を背けた。
アキトが迫るムヅラから目をそらし、迫る死を覚悟した次の瞬間、
コックピット内部がまばゆい光に包まれた。
同時に、シャイニングナデシコの肩アーマーが展開し、全身を黄金の輝きが包む。
(何ぃっ!?)
ホウメイが目を見張り、ガイが咆える。
「スーパーモード!」
「・・・そうだ・・・俺の・・・シャイニングナデシコ!
スーパーモードだぁぁぁッ!」
全身を輝かせ、シャイニングナデシコが跳ぶ。
膨大なエネルギーが両手から自然に溢れ出る。
「俺のこの手が光って唸る!
お前を倒せと輝き叫ぶ!
シャイニングフィンガァァァァァァ!
ソォォォォォォドォッ!」
一撃。
巨大な、赤き怒りの剣がムヅラ一体を丸ごとプラズマに変えるにはたったの一撃で充分だった。
(ぬう・・・今一歩と迫りながら・・まあいい。ここは引くさ。・・・まだまだこれからだよ・・・)
「おれは・・・シュバルツの言うとおり・・・俺は、未熟だ・・・。
求める時にスーパーモードを発動できず、望まざる時に発動する。
・・・これを未熟と言わずしてなんと言う!」
ガイは何も言わない。
只黙ってアキトの独白を聞いているだけだ。
「俺は修行の度に出る・・・・スーパーモードを使いこなす為に!
そう、ギアナ高地へ!」
「ギアナ高地!?どうしてそんな所へ・・・」
「俺の母なる修行の地・・・そして・・・師匠と共にこの身を鍛えたあの地へと・・
俺は・・・・・・・・・・行くっ!」
次回予告
皆さん、お待ちかねぇ!
ナオに活を入れるため、ギアナ高地へ向かうプロスペクター達!
そして、シャイニングとマックスターの火花散るファイトが開始されます!
ですが、そこには思いもよらぬ異変が忍び寄っていたのです!
機動武闘伝Gナデシコ、
レディィィ、Go!
あとがき
ドモンが原作で一番熱く、マスターが原作で一番濃いキャラだとすれば、
まさにこの人シュバルツこそブッちぎりで怪しいキャラNo.1!
今回も怪しさ大爆発!
・・・だと、いいのですが。
某所では「人間、ここまで怪しくていいのか?(笑)」
とまで言われてしまったこの人を、どれだけ怪しく描写できるかで
私の作家としての鼎の軽重が問われると言っても過言ではあるまい、うむ(笑)。
・・・でも、今回一番怪しいのは次回予告かも(爆)。
管理人の感想
鋼の城さんから連載第十七弾の投稿です!!
なんか、本当に怪しいよ・・・シュバルツ(苦笑)
何も知らない状態なら、混乱するって。
それにして、アキト君ボロボロ(爆)
もう、けちょんけちょん状態っすね(笑)
このどん底から、頑張って復帰をしてほしいものですね。
では、鋼の城さん!! 投稿有難うございました!!
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