「CRAZY?ちがうよ、BAD BOYさ」
機動戦艦ナデシコ
BAD BOY
プロローグ 1
KIRITO
『 グリフォン 』【griffon】
・ギリシャ神話に登場する、鷲の上半身に、ライオンの下半身の姿をした神獣。番人としての役目を持つ
アプソリューダ
・傭兵部隊もしくは結社名。規模、組織構成、本拠地など詳細は不明。「絶対兵団」、「Third
Eyes」等の異名を持つ。数年前に突如解散。
午前5時、朝霧の立ち込めるこの時間帯、まだ街もまどろみの中にいる。
そこもまた例外無く同じ感覚の中にある港の倉庫群、その一つで二つの人影が向かい合って並んでいる。
否、片方は人の形をしているが人ではない、膝を折った形にもかかわらずその大きさは人間の規格のおよそ数倍はある。
人の創りし巨人、それは一般に機動兵器と呼ばれるものだった。
「よう、調子はどうだ?」
もう一方の人影がそれに向かって話し掛ける。
こちらは本当の人間、声からすると性別は男だろう、少年といったほうが適切かもしれない。
しかし規格外という意味ではこちらも負けていない。
照明を落とした薄暗い倉庫の中においてもはっきりとその存在を主張する頭髪は一切の穢れを寄せ付けぬ純白、正面に浮かぶウィンドウの反射を受けて光る双眼はまがい物には決して再現することのかなわないルビーブラッドのような炎紅朱だった。色素の薄い肌と、両耳を飾る瞳と同色のピアスによってその存在感は際立っている。
広大なる自然の可能性、白種<アルビノ>
『可も無く、不可も無し。休眠に入るには悪くない状態だな』
ウィンドウに写される機体情報とともに音声が機動兵器側から返ってくる。
「・・・そうか」
そういって人影はウィンドウを含めた計器類全ての電源を落とし、シートをかけるとそれを背にして床に直接座り込んだ。いくつかの手順を踏みながら終了を表示するウィンドウを明かり代わりに懐を探りタバコのケースとライターを取出す。全ての電源が落ちるのと口にくわえたタバコ
に火が灯るのはほぼ同時だった。
しばしの間静寂がその空間を支配する。
そこにあるのは闇と小さなタバコの灯火、そしてそこから立ち昇る紫煙だけだった。
火が根元まできたとき再びウィンドウが顔の正面に表示された。ただし無骨なデータは表示されていない。代わりにサウンドの状況を表現するイコライザのようなものが表示されている。
『これからオレは眠る。お前はどうする?』
それを受けて咥えていたタバコの火を飲み終えたコーヒー缶で揉み消しながら人影が口を開く。
「さあな、とりあえず偽の戸籍があるからしばらくは戦いから離れて技術屋でもしながらぼ〜っとするさ。」
『犯罪者が。でも技術屋か、悪くないな。しかしその“なり”でできるのか?』
「まさか。染めるさ、カラコンみたいな便利なものもあるしな。堅気にゃこの色はきつかろう。」
『くくく、違いない。』
「だろ?」
一頻り笑い合うと立ち上がり尻のほこりを払い、いすの背に掛けてあった上着とその横に置かれていた荷物に手を掛け歩き始める。
『行くのか?』
「ああ。」
そういって、シャッターを背の高さ分引き上げると、朝日が差し込み倉庫の床を照らす。
「じゃあな、ギア」
できた隙間をくぐり、シャッターに手を掛けた状態で巨人に声を掛ける。
『Good luck KIRITO. 願わくは長く、そして良い休暇を・・・』
巨人のモニターアイと視線が絡む。
「・・・お互いにな」
そういうとシャッターを一気に引き降ろす。
数秒の騒音とその余韻が静まるとふたたび倉庫内が暗闇と静寂の溜まり場となる。
『「お互いに」・・・か、それも悪くない』
そのせりふを最後にそこは時間帯に反して永い眠りの支配する空間となった・・・・。
― 1年後
「・・・御免下さい、ちょっとよろしいですかな?」
「・・・はい、何でしょう?」
「私こういう者でして・・・。」
「ネルガル重工・・・プロスペクター・・?本名ですか?」
「いえいえ、ペンネームみたいな物でして、ハイ。」
「はぁ、そのプロスペクターさんがどういったご用件で?」
「ええ、実は腕の良い整備の技術を持った方を探しておりましたところ、噂で貴方のことを耳にしまして。どうです、当社で働いてみませんか・・・」
「ネルガルで、ですか?」
「正確にいえば、今度ウチで製造されました戦艦で、ですが。」
「戦艦?ネルガルが?」
「ハイ、ネルガル重工製 機動戦艦ナデシコです。」
― 刻が震えはじめる
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AKITO
『何も変わらないさ。そう、少なくとも変わらないでいることができるんだ。』
あとがき
みなさんはじめまして、珀彦といいます。
・・・・どこがナデシコ?私も分かりません(笑)
でも自分のなかで出会った溜まり続けていたものを吐き出すつもり書きます。
お約束になるか、異端となるかはわかりませんがよろしかったらお付き合いください。
私にとってはこれがナデシコです。皆さんにとっても・・・だったらいいなあ。