_どうも、無理な申し出を快く了承していただいて
「いいよ、僕も・・たまに話したくなるし」
_「レニさんでしたか?」
「ええ、レニ・ミルヒシュトラーセです」
_「生まれはどちらの方で」
「国籍はドイツです、けど・・戦争で父さん達がこっちに引っ越したんです・・その両親も、すぐに死にましたが」
_「す、すみません」
「かまいません・・アキトのおかげで、もう、乗り越えました」
_「そう、そのテンカワ・アキト・・さっそくですが・・・彼との出逢いなどから話していただきたいのですが」
「出逢い?・・アキトとの・・」
_「どうかされましたか?」
「いや・・今思い出すと・・すごく、変わった出逢いだったね、思い出すと・・笑えてくるんだ・・時間かかるけど・・いいかな?」
_「はい」
「最初の出逢いは・・戦時中、まだ僕が整備員のまねごとをしていたころ・・そのころは少年兵として志願して、働いてたんだけど・・・あの人は、気付けば隣にいたんだ」
_「整備・・ですか?コックとしてとかなら、聞いたことはありますが」
「違うよ・・整備とかしてるんじゃなくて・・寝てたんだ」
_「寝て?」
「そう・・・誰かから逃げて、横倒しになったエステバリスの下に潜り込んで隠れてたんだ、オイルまみれになりながら」
_「逃げてた・・と言うことは」
「女の人、よくアキトを捜してたから、最初は借金取りか何かかと思ったけど」
_「・・・またですか・・・」
「よくあるの?」
_「彼を追っているとほぼ必須ですね、女性に追われてるのは」
「ふぅん・・・とりあえず、邪魔にならないから放っておいたんだけどね・・あの頃は、他人に興味なかったし」
_「なるほど・・・寝てたんですか?」
「うん、熟睡、昔似たようなことしてたんだって、だからそこが落ちつくって」
_「・・コックの次は整備士ですか?つくづく多芸な方ですね」
「・・・昔、2人きりで戦ってた時期があるって言ってた」
_「おや?・・・しかし彼はナデシコ以外では・・」
「それ以上は教えてくれなかったけどね、哀しそうな顔、してたから」
_「そうですか・・それで、彼はそのまま?」
「帰りたくないって言ってたから家に泊めてあげたけど?」
_「・・そ、それは・・・逃げませんでしたか?」
「別に?感謝しながら付いてきたけど」
_「・・・か、彼は女性に家に誘われると逃亡するという統計があるんですが」
「・・そのころ、僕は女の子には見えなかったからね」
_「そ・・そうですか?とてもそうは・・」
「髪を伸ばし始めたのは最近、昔は邪魔にならないよう切ってたし、汚れてたから」
_「はぁ・・まぁ、女性関係に関しては亀より鈍いそうですから、そういうこともあるかも知れませんねぇ」
「それで、食事を作ってくれて、一緒に寝て」
_「ね・・寝たんですか」
「うん、父さんの側に居るみたいだった、最初は帰るって言ってたんだけど・・寂しいなって思ったら」
_「・・父性本能か何かでしょうか」
「たぶんね、何度も頭を撫でられたから」
_「・・・まぁ、男の子・・だったんですね?」
「隠すつもりはなかったけど、わざわざ忠告する気もなかったし・・朝は、僕より早く起きてた、朝ご飯が用意してあって・・・おはようって、誰かに言うのは、本当に久しぶりだった」
_「そうですか・・」
「その後、僕がドッグに行くのにあわせてアキトと歩いたんだけど・・途中で、銀と金の髪の2人の女の人に会って、アキトは連れて行かれたよ・・震えながら」
_「・・・あの方々ですか」
「有名な2人だったから僕も知ってたけど・・何で知り合いなのかは分からなかった」
_「・・まだ、知らなかったんですね?」
「・・・僕は、自分が生きるのに精一杯だったから、自分達を護ってくれている漆黒の戦神を知ってはいても、その名前までは気にしなかった」
_「そうですか・・」
「その日、また・・アキトが来て」
_「寝てたんですか?」
「ううん・・話を聞いてくれた、父さんのこと、母さんのこと・・ずっと」
_「・・・彼は、子供には優しいですからね・・女性にも優しいんですが、何というか・・事後処理がちょっと」
「その日は、どこかへ帰ってしまったけどね・・何日か・・姿が見えなくて、それで・・気付いたら隣で寝てた」
_「整備の時にですか?」
「うん、遠征に行ってたって気付いたのはずっと後、ぼろぼろだったから・・借金取りから逃げ回ったのかなぁって」
_「そ、それは・・天下の漆黒の戦神に対してずいぶんな言いようですね」
「僕にとっては、そんな偉い人にはとても見えなかったから、逃げ回ってて、たまに僕の家に泊まりに来る人・・・女の人から逃げられるのと僕が寂しくない・・どっちが、アキトの理由だったんだろうね」
_「両方でしょう・・夜這いされたこともあるそうですから」
「身辺整理したら?って言ったら固まってた」
_「・・・レニさんは、借金を整理したらって意味で言ったんですよね?」
「アキトには・・どう聞こえたんだろうね」
_「耳は痛かったでしょうね」
「たぶんね、困ってたから・・・それから、何度か家に泊めて・・ただ、アキト、ちょっと厄介な癖があったっから」
_「な、何です?」
「・・頭を、撫でてくるんだ」
_「それは・・・まぁ、保護者と位置づけていたなら普通だと思いますが」
「どんな時でも」
_「はぁ
「洗い物の最中でも整備の手伝いの最中でも」
_「・・・」
「ほとんど毎日髪はオイルまみれになったよ」
_「き・・綺麗な髪ですけど」
「頑張って洗ったから・・・それで、一度・・アキトが洗ってくれたときがあったんだけど、その時の女ってばれたから」
_「・・・かなり危険な内容になってきましたね」
「僕が自分を女って自覚したのも、その時かな?」
_「・・好きだと?」
「うん、そうだね・・・周りにばれたときはもっとすごかったけどね、アキトの買い物の約束を取り付けて・・・何年かぶりにスカートをはいて、たくさんの女の人に追われて大変だった、僕はアキトに抱かれてたから楽だったけど」
_「彼の腕の中ですか」
「・・・楽しかったよ・・とっても」
_「その写真・・」
「その時の写真」
_「・・・計画的だったんですね」
「うん、同じ少年兵だった子に頼んで撮ってもらった」
_「・・・」
「寂しいときはいつでも側にいてくれる・・・アキトが僕にくれた約束、護って・・もらう、僕はもう、アキトの側にいないと駄目だから・・もう1つの約束もね」
_「ど、どうも・・ありがとうございました」
「・・・・・・・・」
冊子を握り、震える少女に話しかける女・・・その目にも怒気はあるが、少女達の怒りはそれでは収まらない
「何を?」
「・・アキトとお風呂にはいれるのは私だけなのに・・・」
「・・・私より年上・・・」
・・・当時15歳、今なら結婚も可能な年齢だ、その年頃の少女が2人にその意思がなかったとはいえ同棲のように寝食を共にした・・それが許せないのだろう
そして、金と銀の髪を持つ姉妹もまた
「・・あの時、少年と勘違いしなければ」
「・・・・週に三度は、行方不明になることがありましたね」
沸々と怒りを募らせる2人・・現在の彼女の容姿が美少女と呼ぶに相応しいことがなおさら腹立たしい
「それで?この子は今どこに?・・徹底的に聞き出さなければ」
「数ヶ月に辞職願いを提出しているわ・・それ以降は料理店のウェイトレスとして短期のアルバイト・・・最終日に・・黒ずくめの男と共にタクシーで駅へ・・・昨日ね」
「・・・・・・アキト・・さんは?」
「行方不明・・・・・・」
「・・・・」×15
「・・・」
「終わったかい?」
「うん・・」
風がそよぐ・・それを、身に受けながら・・
草原の高台に立てられた墓地で、空を見上げる少女・・・
「約束・・守ってくれたんだ」
「・・今まで、約束を守れたことは滅多にないからね・・それに、子供との約束はなにがなんでも守ることにしてるんだ」
薄く笑う少女、肩まで伸びた髪は今日のために切り揃えた・・
成長した自分を、見てもらいたくて、服も・・スカートをはいている・・少し気恥ずかしいが
「僕、今日で16だよ?・・分かってる?」
「・・・(汗)」
「まぁ・・あの頃ろくな物食べてなかったし、細いのは仕方ない・・アキトの料理は美味しかったなぁ」
拗ねたようにアキトを見上げ、けれど笑う・・それに笑みが返され
「私などの料理で満足していただけるなら」
「よし、決まり・・アキト、しゃがんで」
「んっ?」
膝を付き、微笑むアキトの方に手を置き
「よっと」
首に抱きつくとそのまま脚を前に投げ出す・・
「うわっ」
慌ててその身をアキトが抱き上げ
「よし、行こう、アキト」
「・・このまま?」
「当然」
悠然と頷く少女に苦笑を返し
「かしこまりました、お姫様」
彼等は草原を下っていった・・・
あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
完全セリフのみ、状況描写いっさい無し・・不可能です
書いててきつかったきつかった、泣きたくなるね
それとレニ・・・やばいな、ほとんど覚えてないよ口調、何年前だったけな、クリアしたの
・・・少なくとも、遠い昔だ・・・
まぁ、好きな子なんですけどね
火元は体型があれ(・・・)で寡黙で影のある子に弱いんで
もう一撃でノックアウト
とりあえず、火元がアナザー物の定義を気にも留めず書き上げたのはこちら・・こっちはすぐ書き上がったのにな、校正合わせても三時間かかってないし
それを書き直すのに・・・うわぁ(汗)
まぁ・・・こんなのレニじゃないっとか、連載にしろっとか言うのはメールでどうぞ
・・・もうここまで来ると連載増やすのが怖くなくなるね
・・・火元の把握してるだけで26本・・これでも三日に一本は書き上げてるんだけどなぁ・・(汗)
龍ちゃん、今度連載何本有るか数えといて、よろしく
では
代理人の感想
う〜む、実にさわやかかつハートフル。
「戦神」シリーズでここまで爽やかなラストは初めてですよ(爆)!
個人的にはパイロット版の方の趣向もこれはこれでありかな、とも思うのですが・・・
まあ、実質的に1.5本読めたわけですしOK(笑)。