機動戦艦ナデシコ もう一度逢う貴方のために
第3話 Bパート
透き通った水に染まった空の下。
今でも、忘れてない。
闇を纏わせた瞳を見せたかと思えば、穏やかな笑顔と全くの正反対。
それが、初めて出会った日だった。
「――テンカワ君?彼、もう帰っちゃったみたいよ。何時もの如く、バイトじゃない?」
偶々通りかかったアキトのクラスメートの言葉に、イツキは形のいい眉をピクリと震わせた。
―――ひょっとして、憶えてないのだろうか・・?
(・・・・・。憶えてないですね、これは)
その時、予感は確信へと変わって、
心の中でひっそりと、ため息をつく。
初めて会ってまだ数ヶ月。それでも隣に住んでいる彼の、自分自身への無頓着さは解っていたが、
これほどとは―――。
「んで、どうするの?伝言、しとく?」
「あ、大丈夫です。直で言ってきます」
どうせ場所は決まっているのだから。
そう思いながら、歩く速さを心持ち上げていった。
(・・アキトさん・・・。今日は自分の誕生日でしょう・・・・)
「アキトさん―――――」
イツキの予想通りと言うべきか、アキトのバイト先にて程なく見つけられた。
黒のベストにズボン。
典型的なウェイターの格好だ。
「ん、どうかした?」
いつもの様に、穏やかに笑っている。
が。
こちらの思いとは関係無しに、こうのんびりとされてると、身体から何か力が抜けてしまう気が
するのは気のせいだろうか。
「バイトは―――、何時までですか?」
「ええと、八時くらいじゃ―――――」
遅すぎる――――と言い出しそうになって、少しの間、何とも言えない表情でアキトを見つめて。
「アキトさん。六時までに帰ってきてくれませんか」
遮る様にイツキが切り出すと、アキトの眼差しがほんの少し、深いものになる。
「・・別に構わないけど、何かあったかい?」
「・・・・帰ってくれば解ります」
やっぱり分かってない。とばかりに深くため息をつくイツキに、アキトは―――、
「・・・・・?」
軽く目を閉じ考えて―――、首を傾げる。
やっぱり解っていなかった。
アキトは困惑の渦の中にいた。
結局、イツキの言を取って早めに切り上げた訳だが、何故そうなったのかが分からなかった。
(・・・・ん?)
ふと何かが引っかかった。
自分は何かを忘れている、ような気がする。
だが、それが解らないまま結局家路に着いたわけだが。
その答えは部屋の前に来たときに判明した。
「「「誕生日おめでとう!!!」」」
クラッカーの鳴る音と共に出た言葉。
「・・・・は?」
アキトの顔が、近年稀に見るほど呆然としたものになった。
「だめだよぉ。自分の誕生日忘れちゃ」
目線よりも下の方で、アイが頬を膨らませている。
その様子に合わせてか、フィリアがくすくす笑い、イツキは苦笑していた。
「結局、帰ってくるまで気付かなかったんですね」
呆れるやら嘆くやら。
そんな様子のイツキに、
「はは・・・」
ただ、苦笑するしかなかった。
「誕生日、か」
起きているのはアキトとフィリアの二人のみ。そのフィリアも片付けに台所へと行っていた。
(すっかり忘れていたな・・・・・)
あの日から自分は、自分自身への向けるべき何かが失せていたのかもしれない。
その中での今回の件は、その何かを思い出させてくれたのだろうか。
「アキトさん」
何時の間にか自分の傍に来ると、アイを起こさぬよう自分の膝の上に乗せ、撫でている。
その目は、いつになく穏やかで、
呼びかける声は、優しかった。
「私は――――、貴方の過去に何があったのか知りませんし、何を思って行動しているのかも
解りません。・・でも――――」
言いながらアイと、イツキに視線を向ける。
「私やアイ、それにイツキさんも、貴方がとても優しい人だという事は、知ってますよ。
・・・それに、それを表現するのがとても不器用な事も、ですよ。
これは、貴方が否定しようとそう信じてます。
・・・勝手に、ですけど」
そう言い終えると、また穏やかに微笑む。
「・・・・」
何の事は無い。
自分の悩みなど、端的ではあっても見通されていた。
そんな自分の未熟さに苦笑したい気分だった。
でも。
今はただ――――、
その心遣いが嬉しかった。
そして、
そのやり取りを、イツキはぼんやりとした頭で聞いていた。
今あの人が浮かべているであろう笑みが見れないのは残念だけど、
―――今は、これで良い。
そう思った。
血の繋がりもある訳でもない。
ちょっとした縁で出会った。ただそれだけ。
一癖も二癖もある人もいる。
―――でも、何時も傍にいる。
これを「家族」と呼んでもいいのだろうか―――――
もう一度眠りに落ちる頃、イツキの顔には確かに笑みが浮かんでいた。
それは彼と彼女達の、とある一日。
一見、変わり映えのないようで、代わりなどない。
そんな、大切な日々。
今日と明日。―――その繰り返し。
それが、変わらぬ日々の積み重ねで通りすぎて行く。
今を示す時は――――2194年。
―――――全ての始まりであるその日まで、あと―――――
運命に抗う叛逆者の鼓動 〜Fin〜
◆◇◆◇◆◇◆◇
これが限界でしょう(何が?)
今回はイツキにめいいっぱい動いてもらいました。
・・これまでと比べると違和感ばっちりですが(苦笑)
Aパートから続けてみれば、更に倍増すること請け合いです。
で、4話になればまた少しの間シリアス(?)になるかと。
とりあえずな登場人物その2
フィリア・フォースランド
アイちゃんのママさん(笑)
そして年齢不詳
笑うと目が閉じてしまうような、印象的な美人
医師の免許を持っているが、現在は保母をやってたりする
イメージ的には解り易く言うと、○ia2の某未亡人(こら)
PS:イツキに関して情報をくれた方々に大感謝、です。
ただ、それを役立てられるかどうか(汗)
それと、サブタイトルのネタが切れました(大汗)
次回予告(?)
その日、炎が全てを覆い尽くした。
その中を駆ける人々。
それぞれの内に、様々な物を抱えて。
そして、時の歯車が噛み合う。
―――全ては、蒼いチューリップの輝きのままに。
次回 第四話 「運命の車輪」
管理人の感想
かわさんからの投稿第四弾です!!
うお〜〜〜〜〜(ゴロゴロ・・・)
毎回毎回ターゲットが変わってるぞ〜〜〜〜
かわさん、貴方は何て優柔不断なんだ〜〜〜〜〜〜〜〜
・・・Benに言われたかぁ〜無い?
ごもっとも(爆)
でも、チューリップがもう落ちてくるのか〜
そうか、短い休暇だったな〜アキト〜
頑張って、一年間の修行の成果をオラに見せてくれ!!(ドラゴン○ールかい(苦笑))
それでは、かわさん投稿有難うございました!!
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