ラスト・ユニバース 〜時の流れに〜 IF
第参話 委員会発足
「アキトッ!!俺と勝負だっ!!!」
「な、なんで北斗がここにいるんだ!?」
アキトは即座に逃げ出し、それを北斗が追っかける。
そこから二人の追いかけっこは始まった。
「ん、どうした、アキト?」
ばびゅーーーーんっ!!!!!!
栄治がテントから出てくると、突風が二つ襲ってきた。
ちなみに風速にして、40m以上である。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しかし、栄治は何事も無かったように受け流した。
「ただいま戻りました、お父様。こちらが統合軍のオオサキ大佐です」
「はじめまして、オオサキ・シュンです」
「あ、享子、那美子、彩子の親の竹内 栄治です。今回はわざわざ来てもらってすいません。ところで享子、そちらの方々は?」
なにか、いつもの栄治より元気が無い。目がボーとしている。焦点があっていないようだ。
「ええ、こちらは…――」
享子がフィリス達を紹介しようとしたが、栄治は今にも眠たそうである。おそらく、今までの疲れがどっと出たのだろう。ちなみに徹夜三日目である。
「お父様!!」
栄治が倒れそうなると、ちょうどシャトルの中から出てきた奈美子が支えた。
「い、いかん。享子、那美子お客様たちのことをしばし頼む。シャワーでも浴びてすっきりしてくるから…」
と言うと、のらりくらりとまるで酔っ払いのように、栄治はシュン達の元から去っていった。
「・・・だそうですので、こちらへどうぞ」
「ああ、しかしあれで大丈夫なのか?」
シュンの目の前には、木に正面衝突して頭を押さえつけている英治の姿があった。
「・・・たぶん」
三十分後
「すいません、お待たせして。私がEGの総司令官の竹内 栄治です」
先ほどの姿とはうって変わって、はきはきとした口調で言う栄治。しかし、額にはバンソコウが張ってある。
「統合軍大佐のオオサキ・シュンだ」
「ネルガル研究員のフィリス・クロフォードです」
「マキビ・ハリです。皆はハーリーって呼んでます」
「紫苑 零夜です。全く北ちゃんたら…ぶつぶつ」
「…え〜と、あと、あの赤い髪の女の子はなんて名前なんでしょうか?」
「ああ、彼女は影護 北斗君だ。あれでもアキトと同等の力を持っている」
「でしょうね。しかし、アキトはなぜ走って行ったんだ?」
「もしかして、わからないんですか?」
ハーリーが栄治に聞いた。
「ええ。まったく」
「「「「(に、鈍い)」」」」
「?」
栄治の答えに四人とも同じ事を思った。
「さて、皆さんにはアキトの相談相手として来てもらった訳ですが、実際どう思いますか?」
「…なにをだ」
かなりまじめな顔でシュンは言った。
ズッシャーーーーンッ!!!
……と言う音が聞こえた気がした。
「ん、どうした皆?そんなに受けたか?」
「オ…オオサキさん」
いつもは無表情なフィリスも、この時ばかりは冷汗を流していた。
「冗談だよ。じょ・お・だ・ん」
しかし、シュンはそんなフィリスに気付く事無く、子供のような無邪気な笑顔を見せた。
「シュンさ〜ん」
ハーリーは今にも泣きそうだ。何せ相手はアキト&北斗の実力に驚く事の無い実力を持っているかもしれないのだ。もしも、相手が冗談の通じない相手だったら、ハーリーは気が気でなかった。
ハーリーが栄治の方向くと…、
「くっくっく…」
下をむいて笑っていた。ハーリーの目にはそれが無気味に見えた。いや、フィリスと零夜もそうなのだが…。
「いや〜、アキトから聞いていましたが、俺の予想通りの人でよかった。これから色々とあると思いますがよろしく」
栄治の笑い声(?)が止まると、栄治はスクッと椅子から立ちシュンに手を差し出した。
「いや、こちらこそよろしく」
シュンも手を差し出し、二人は熱い握手を交わした。
その後二人が椅子に座ると、
「さて、これから第一回アキト結婚対策委員会を開催したいと思います。ちなみに委員長は俺です」
「そして、俺が副委員長だ」
栄治とシュンがそろって言った。この二人、間違いなく同類である。これからアキトはこの二人のおもちゃ(酒のつまみも言う)にされるに違いない。
ちなみに委員会のメンバーは今のところこの二人である。
「すいませんが、委員会会員以外は退出願いますか。もちろん会員になられるならば、ここにいて結構です」
しかし、栄治の勧誘(してないけど)を断って三人はテントを出て行った。ハーリーは組織幹部のため、零夜はアキトの結婚なんかに興味ないため(興味あるのは北斗の事のみ)、フィリスは特に関心がないためであった。
そして、このアキト結婚対策委員会(以下委員会)は後でとある人物とEG構成メンバー全員を加え、同盟・組織と言った二極対立構造を同盟・組織・委員会の三極対立構造に変えることとなる。もっとも、委員会は半ば中立的存在だが。
ちなみにこの委員会の別名はアキトを困らせ楽しんじゃおう委員会と言う(笑)。
では、この委員会の趣旨を説明しよう。
この委員会はアキトに誰か結婚相手を選ばせ(もちろん委員会メンバーは全力を持ってそう言うふうに仕掛け、また全力で協力する)、そして選んだら同盟&組織に情報を流し、アキトと同盟の追いかけっこと、アキトVS組織そして同盟VS組織を見て楽しんじゃおうと言う。もちろん、情報を流したらアキトに一切の協力はしない。すべてアキトとアキトの選んだ相手で乗り切れというのである(ただし、相談ぐらいには乗る)。つまり中立になると言う事だ。
アキトが何か言ってきたら、「愛の試練だ。がんばれよ」と言うのみである。
委員会のステータス(同盟、組織との比較)は、構成員の数は同盟の二倍程度で、ネットワークは今のところ一番下である。しかし、科学技術は同盟以上だ。そしてこの委員会の最大のステータスはアキトの信頼が一番強いと言う事だ。実力の順位を言うと、委員会、同盟、組織と言う順番といったところであろう。
最後にこの委員会の開催期間は、アキトが本当の結婚をするかアキトが30歳になるまでである。
そしてテントの中に栄治とシュンの二人だけになると、二人は夜を徹して計画(お遊び計画)を話し合った。
だがこの委員会、実際に機能するかどうかは不明である(だってあのナデシコだもん)。
ちなみにその頃のアキト君
「こらーーー!!!!待てアキトぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!お・れ・と・勝負だぁーーーーーー!!!!」
「その前になんで北斗がいるんだぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!???」
「いいから、止まれぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!!」
「止まったら沈むわぁーーーーーーーーー!!!!!!」
アキトと北斗は現在海の上をマッハ2のスピードで走っていた。
そのまま四日中アキトと北斗は走りつづけ、栄治達の所に戻ってきたのは走り出してから五日後だった。
五日後
シュン達は北斗が戻らないでいるので今だ足止めをくっていた。
この五日間、栄治とシュンは夜中に委員会を開きアキトの結婚についての話し合い、もといアキトお遊び計画を練っていた。そして昼間は他の三人と一緒に享子や那美子にこの星の色々なところを案内してもらい、レジャーを楽しんでいた。
「さて、今日は釣った魚で天ぷらや刺身といきますか!!」
と栄治が言った。
今日は栄治、シーク、享子、那美子、彩子、シュン、フィリス、ハーリー、零夜の計九人は海に来ていた。第壱話でマルスが乗っていた空母で釣りを楽しみに来ていたのだ。釣りをしないものは、空母に乗っている飛行機を自由に操れた。ただしその場合は、講習を受ける事になる。他にも、海のレジャーはすべて楽しめる。
そんで、今は昼時なので釣りを楽しみながら釣った魚をこの場で調理すると言う豪快な事をしようというのだ。調理は自分で行う事も出来るが、栄治に頼めばやってもらえる。ちなみに栄治の料理の腕はアキトには追いつかないが、十分超一流レストランで通じる腕である。
キューーーーーーーーン!!!
栄治、享子、那美子、彩子、シュン、フィリス、ハーリー、零夜の前を一機のF-15Jが通過する。シークである。今シークはF-15Jでトロール漁業をやっていた。なんとも豪快なやり方である。だがうるさくてかなわない。だがそこはナデシコクルーとEGである。全員釣りに夢中になって、シークを気にしてはいなかった。
ツン ツンツン
とその時シュンの浮きが沈んだ。
「ヒットォォォォオオオ!!!!」
シュンが叫びリールを巻いていくと、だんだんと魚の姿が浮かび上がってきた。その魚の色は赤かった。
「シュンさん真鯛ですよ!!!」
ハーリーは言った。
「いや、金目鯛かもしれない」
シュンは否定的だったが
「いえあれは…――」
「真鯛ですね」
零夜が違うと言い、フィリスが断言した。
「シュンさんがんばってください!!」
「任せろハーリー君。これでも釣りの腕はセミプロ級だ」
と言うとシュンは見事30cmぐらいの真鯛を釣り上げた。
「さて、どうします?自分で調理しますか?」
「とその前に墨と紙をくれないか?」
「ああ、魚拓を取るんですね。いいですよ。でも自分で作ってくださいね」
と言うと栄治は和紙と水そしてすずりと墨を手渡した。
結局、料理し始める事が出来たのは三十分も後の事だった。
ピー ピー
「あら、もう一杯?やっぱり艦載機は駄目ね。今度は爆撃機で来ようっと」
F-15Jのコクピットでシークが言った。
しかし、爆撃機って…。ナデシコクルーとEGにはまともな人はおらんのかい!!!!!だいたいそんなに魚を捕ってどうする?
そしてシークは、一度空母を通過し収穫した魚を下ろし(落とし)、そしてアングルトデッキから着艦しようとした時、突如目の前に黒き閃光が現れた。
「くっ!!!」
ギュィィィィィィィィィィィイイイイイ!!!!!!
なんとシークはスピードを上げ左翼を甲板1cmまで近づけた急速左旋回でその黒き閃光をかわしたが、今度は目の前に紅き閃光が現れた。
「しょ、衝突するぅぅぅぅぅぅううう!!!!!」
シークは今度こそ無理だと悟った。しかし、その紅き閃光はF-15Jをなんと足蹴にして黒き閃光の元へと行ったのである。
「シュン隊長こんな所にいたんですか。探しましたよ」
その黒き閃光改めテンカワ・アキトはにこやかな笑顔でシュン達の方へやって来た。彼はまだ自分のやった事に気付いていない。
しかし、シュン達はF-15Jの方が気になりアキトの方を見ていなかった。
「うわー、いい食材があるじゃないですか!!え〜と、なに作ろっかなぁーー」
しかし、アキトもシークが取ってきた魚介類に目を奪われシュン達の方は気にしなかった。
「アー君、今日はなに作るの?」
そして、食材選びをしているアキトに紅き閃光改め影護 北斗……じゃなかった枝織が話しかけてきた。枝織もまた自分のしでかした事に気付いていないようだ。
そしてその時、
ドカァーーーーン
という音が艦後方で聞こえた。
「機関全速落下地点へ急げ!!!」
その音を聞いた栄治は全速で現場に艦を向かわせた。
でかい艦だったので、そんなに変化は感じられなかったが。
「どうしだろ、アー君?」
「さぁ?」
しかし、事態を引き起こした二人はまったく気付いてなかったりする。
そして、救助されたシークと栄治はこう言った。
「「お前等二人、今日の飯抜き!!」」
と宣告した。当然だ。
「お、俺なにかしましたか?」
「枝織お腹すいたよ〜〜〜」
「「やかましい!!!!享子、ロープもってこい!!!!」」
シークと栄治は完全にぶちギレテいた。
「お、おい栄治にシーク君。その辺にしといた方が…」
シュンが止めようとしたが、栄治とシークは聞く耳を持たなかった。
「む〜〜〜。えい!!!」
シュ
バシッ
枝織が昂気をこめた手刀を栄治に向けはなったが、栄治はやすやすと受け止めた。
「「「「「「なにっ!!!」」」」」」×シュン、フィリス、ハーリー、零夜、アキト、枝織
「だめだよ、人にそんなもの向けちゃ」
そういいながら栄治は枝織の手を握っている。
「栄治さん昂気使えたんっスか?」
アキトもこのことに関しては知らなかったようである。
「昂気?ああ、この娘が出している変なフィールドの事か。俺が使っているのは君達で言うところのディストーションフィールドだな」
さらっとすごい事を言う栄治。
「なっ!!!!そんなのイネスだって発明してないのに!!」
フィリスが驚いて言った。
「そうなのかフィリス君!!」
「ええ、最低でも携帯装置が必要なのに、彼はそれすらもつけている節がないわ!!!」
「さすがですね、フィリスさん。その通りです。私は携帯装置なんかつけてはいませんよ」
「む〜〜。放してよぉ〜〜〜」
「あの、枝織ちゃんが嫌がってるので放してもらえませんか?」
「おっと、これは失礼しました」
零夜が栄治に進言すると栄治はすぐさま手を放した。
「じゃあ、どうやって制御をしてるんですか?」
ハーリーは聞くが栄治は
「さぁ、考えてみてください。あなた達はその答えを知っているはずですよ」
と某魔族の神官みたいな笑顔をして答えなかった。
「まさか、お前…」
アキトは何か知っているようだ。
「まさか相転移エンジンを体の中に!!!!?」
「おしい!!俺が使ったのはナノマシン。ナノマシンを体に張り巡らせ重力子をコントロールしてるんだよ。ま、超小型相転移エンジンも内蔵してるけどね。ただし!!君達が戦った相手とは比べ物にならないけどね」
栄治はにこやかに言った。
「と、言う事はアキトを上回る力を持つと言う事か!!!」
シュンが聞いた。
「う〜ん、残念だけどそれは無いね。防御力だけなら上回る自身あるけど、総合的見るとアキトやなんだか性格変わちゃってるけど北斗ちゃんには及ばないね。だけど今ここには、シークや享子達もいるし五人がかりでなら二人に勝つ自信はあるよ」
「あの、なんか勘違いしてるようですから言いますけど、あの娘は北ちゃんじゃなくて枝織ちゃんですけど」
「へっ?そうなの?」
「しかも、北斗君をちゃん付けで呼ぶなんていい度胸してるな」
栄治が禁句に触れると、零夜とシュンが追い込む。
「な…なんかまずい事言っちゃた……かな?」
冷や汗をだらだら流しながら聞く栄治。
「(うんうん)」×シュン、フィリア、ハーリー、零夜
「おい、貴様」
後ろで美しく静かだが、大噴火前の富士山のように恐ろしい声が響いた。
「ほ、北斗。栄治さんも悪気があって言った訳じゃないんだから」
「黙れアキト。誰であろうと俺を女扱いする奴は殺す!!!!」
一応〜時の流れに〜弟一部であるがままを受け入れると言った北斗(詳しくは第一部第26話を参照)だったが、面と言われて言われるとむかつくらしい。
「だって、女じゃん」
ピ・シ…
栄治は言ってはならない事を言ってしまった。その瞬間、アキト、シュン、フィリス、ハーリー、零夜の時が凍る。
「絶対にぶっ殺す!!!!」
「座標102…――」
「させるか!!!!」
「わーーー!!!!!ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああい!!!!!!!!!!」
栄治はボソンジャンプで逃げようとしたが北斗が許すはずもなく、栄治は艦内を逃げ出した。だが、自信があるのは防御力だけと言うだけあって、逃げ切れなかったが北斗に一撃も入れさせなかった。しかし、栄治も防御が手一杯で攻撃に出る事は出来なかった。
結局二人は飯抜きの刑を無しにする事で和解した。もちろんこの和解には、栄治が北斗を女扱いしないと言う事も含まれている。
その後、栄治達はアキトの作った料理を楽しみながら飛行甲板で宴会をした。ただし、北斗の殺気が常に栄治に向けられていたのは言うまでもまい。
翌日
「それじゃあ、シュン隊長お元気で…」
シュン達が来てから六日、もうそろそろ地球の方が限界だと言う事でシュン達は帰ることになった。
「アキト一年後には必ずくるんだぞ」
「もちろんです。あの皆さん、俺の事は…」
アキトは今だ自分の心が整理できずにいた。
「心配するな。すべて、俺のわがままに付き合った事にしておく」
「細工はわたしが行ったので心配は無用です」
すずが言った。ちなみにすずの隠蔽工作はルリやラピス、オモイカネを軽く凌駕する。
「あれ、北ちゃん知らない?」
零夜が聞いた。どうやら北斗が見つからないようである。
「ん、そういえば気配がないな」
アキトもあたりに北斗の気配がないことに気付いた。
「「(まずい!!!)」」
アキトのその言葉に栄治とシュンは冷や汗を流す。
「では、シュン。例の件よろしく」
「ああ、任せとけ」
「それじゃすず、気を付けて行ってこいよ」
「あの…北ちゃ…――」
バタン ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
最後の方はめちゃくちゃ早く言って、北斗がいないにも関わらずスズは地球に向けて発進した。
「よし、行ったな」
栄治はスズが飛びだったのを見てガッツポーズをした。
「あ、あの北斗は…」
「心配するな、本人の希望でここに残ったんだから。しかも、零夜にはいてほしくないらしい」
栄治は言ったが、その半分は嘘である。
「はぁ、そうっすか?」
「と言うわけでお前たち二人同じ部屋な。これは枝織ちゃんのほうの希望だ」
もちろんこれも嘘だ。枝織なら喜びそうだが。
「なにと言うわけですか!!!!」
「もちろんベットはダブルベッドだ。お前達が夜激しく動いても良いように戦艦の装甲で作った特注ベットだ。まぁ、一応ピー位はしとけよな。そんじゃなー」
アキトは文句を言い立てたが、栄治は言いたい事だけ言ってさっさと行ってしまった。ちなみにその頃北斗は、シークから性教育を受けていた。
しかし、夜一体何をするのだろう?私(作者)は純情なのでわからない。
そして話は一年後へと進む。