機動戦艦ナデシコ
The Triple Impact
第十七話 二つの海 Bパート
今回ダイアンサスに課せられた任務は、テニシアン島に落ちた新型のチューリップを片付けることである。
「パラソル部隊、急げーーー!!」
「「「「お〜〜!!」」」」
であるから、本来彼らはテニシアン島に着くなり真っ先にチューリップを片付けなければならない。
「女子に負けるな〜〜!!」
「「「「「おぉーーー!!」」」」」
だが、せっかく南の島に来たのだから――。
「ま、息抜きも必要ってことですよね」
はしゃぎ回る他のクルー達を眺めながら海人が言う。
「海人さんは遊ばないんですか?」
大きめの浮き輪を担いだハーリー。どうやら遊ぶ気は満々らしい。
「活発に動くってのはあまり好きじゃありませんしね。今日はゆっくりするつもりです」
「はぁ…。そう言えば、アキトさんや透真さんはどこ行ったんですかね? それとヤマダさんも見当たりませんけど」
「ヤマダ君なら、昨夜にゲキガンガーを徹夜で鑑賞したおかげで、現在は自室で睡眠中です」
♪〜♪♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜♪♪
『ゆめがっあすをよんでいる〜〜♪』
「ぐおおぉぉぉ〜〜……ぐおおぉぉぉ〜〜……」
暗いな部屋の中、映写機を付けっぱなしで深い深い眠りにその身を沈めているヤマダ ジロウ。
『たましい〜のさけびさレッツゴーパッション♪』
ある意味、この瞬間のダイアンサスで最も平和な男であった。
「ゲキガンガー、ねぇ…。そんなにいい物なんですかね?」
「まあ僕はあまり好きにはなれませんし、透真なんか『俺はゲキガンガーが大嫌いだー』とか言って木連で変わり者扱いされてましたが……。単純な勧善懲悪で分かりやすいですからね、あれ一色で育つと確実に性格が頑固になりますよ」
「…と言う事は、木連の人ってみんなヤマダさんみたいな人なんですか?」
「八割方はそうです」
「うわぁ、嫌だなぁ…」
ハーリーが何か変な物でも口に入れたような顔になる。
それを見た海人は苦笑しつつフォロー(らしき事)をする。
「慣れればどうとでもなりますよ。要は『そういう物だ』と割り切る事が肝心です」
「…何だかなぁ」
げんなりした感じで呟くハーリー。
こんな話を続けるのも何なので、話題を巻き戻してみる。
「…んーと、アキトさんと透真さんの話題から始まったんでしたっけ? 二人はどこ行ったんですか?」
「アキトなら、あそこでお店やってますよ」
そう言って海人の指差した先には、急造りっぽい浜茶屋が建っていた。
「ラーメン!」
「焼きそば!」
「かき氷!」
「お前ら、少しは遠慮しろ! 作る人間は一人しかいないんだぞ!!」
黒いエプロンを着たアキトが、狭い厨房内をかなりのスピードで移動しながら料理を作っている。ちなみにウェイトレスはラピスだ。
なお、そのすぐ横には全く同じ造りの建物があり、
「チキショ〜〜!! 美味い料理が出てくる浜茶屋なんて、浜茶屋じゃないやい!!」
中ではウリバタケが一人で悔し涙を流していた。
「忙しそうですね、アキトさん」
「でも、楽しそうですよ。あと透真は……あそこですか」
沖の方を見つめる海人。砂浜からかなり離れた位置にゴムボートが一つあり、その上に横たわっている人影が見えた。
「のんびりですねぇ」
「あれも一つの楽しみ方ですよ。あなたもあなたなりの方法で楽しんで来たらどうです?」
「それじゃ、お言葉に甘えて。行って来まーす!」
タッと砂浜を駆けて行く少年。絵になる一コマである。
「…一昔前は、三人ともお風呂にも入れなかったんですけどねぇ…」
まだノアを創立する以前、火星で一緒に生活していた頃。
ルチルもラピスもハーリーも、水の中に体を入れるのを怖がっていた。
あの頃はシャワーから徐々に体を慣らしていったものだったが……。
「もう完全に克服できたみたいですね。いいことです。……あ」
“水が怖い”で思い出したが、そう言えば――。
「……まあ、大丈夫でしょう。イザとなったら水の上に浮くこともできる人間ですし。…さてと」
暇潰しがてら、島を散策でもしようと立ち上がる海人。
向こうから“覗かれている”のは分かっているが、自分から行動しない限りは大丈夫だろう。
わざわざ自分から手を出すようなバカは、こっちにも向こうにもいないはずだ。
…しかし彼のこの予想はこの後、二度に渡って裏切られることになるのだった。
大海原の上に一人、プカプカと漂う透真。
「平和だ……。いいなあ、こういうのも」
ここまでのんびりするのは久しぶりな気がする。それに彼の故郷には“海”そのものが無かったため、こうして海の上にいると言うだけでも感激なのだ。
「ふわぁ……」
あくびを一回。横になっている内に意識も徐々にまどろんでくる。
こんなに日が照り付けている状態で、迂闊に眠りこけようものなら盛大に日焼けをしてしまうかもしれないが……。
「……困ってから考えよう……」
そして透真が夢の世界へと足を踏み入れかけたその時、
ザバァーーーーーッ!
「うおおぉっ!!?」
突然、彼の体がゴムボートごとひっくり返る。
「会長、こんな所でプカプカ浮かんでないで一緒に泳ぎましょうよ!」
そこへ響くリンの声。どうやらこれは彼女の仕業のようだ。
「会長……って、あれ?」
…返事が返って来ない。見てみると、姿も見当たらない。
「まさか…」
もしかして透真は水の中に潜み、自分に仕返しをするべく虎視眈々とチャンスを窺っているのでは。
ひょっとしたら自分はいきなり片足をつかまれて水中に引き込まれるかも。
そうしたら、いくら水泳でインターハイの決勝に出場した自分でも溺れてしまうかもしれない。でも、そうなったらパニックになった振りをして正々堂々と透真に抱きつくことができるだろうし…。
(よし、いける! いけるわ、リン!! …さあ会長、どこからでもかかって来てください! 私はいつでも準備OKです!!)
身構えるリン。いつ、どのタイミングで来るかは分からないが、うまく引き込まれて抱きつかねばならない。腕の見せ所だ。
ゴボッ
「………」
十秒経過、まだ来ない。すぐ横では、海中から出て来たと思われる小さな泡が浮かんでいる。
ゴボゴボゴボッ
「………」
三十秒経過、まだ来ない。心なしか、海中からの泡が増えてきたような気がする。
ゴボゴボゴボゴボゴボッ………ゴボッ
「………」
一分経過、まだ来ない。どうやら、泡は止まったらしい。
「……あれ? 遅いなぁ…」
二分経過、いつまで経っても来ないのでリンが首を捻る。と、
ドバアァーーーーーンッ!!!
「キャアッ!?」
海の底から、いきなり人間サイズの黄金の光の塊がもの凄い勢いで浮上して、海上に飛び出した。
ザブーーーンッ!!
そして飛び上がった光の塊はそのまま垂直に落下し、着水したと思ったらゴムボートにしがみ付く。
「ゲホッ! ゴホッ、ゴホッ!! …ゼェ、ゼェ、ゼェ………し、死ぬかと思った…!!」
海水を吐き出し息も絶え絶えに、生きていることの素晴らしさを実感する透真。
「か、会長?」
「うおぉっ、アイハラ!? な、何が目的で俺の命を狙った!!? まさか、お前はクリムゾンあたりのスパイ…」
「そんなわけないでしょ、もう! …それにしても会長、泳げなかったんですか?」
えらく意外そうな声でリンが聞く。
「…うるさい、俺の生まれ育った所は海が無かったんだよ」
ふてくされたように透真が呟く。
「プールも無かったんですか?」
「いや、さすがにプールくらいはあったが…」
透真の脳裏に、嫌な思い出がよみがえる。
まだ透真が八歳の時。まだアキトにも、海人にも、北斗にも、零夜にも出会っていなかった頃の話。
透真は姉の沙耶香に連れられてプールに来ていた。
そこまでは、まあいい。
問題はこれからであった。
「いい、透真? 泳ぎなんてのはね、水の中で適当に動き回ってれば自然と身に付くものなのよ」
「うん、姉さん」
「んーー、聞き分けのいい子は好きよ。じゃ、行って来なさい!!」
ドガッ!
「うわぁっ!?」
蹴撃一閃。十六歳の少女が、蹴りで八歳年下の弟を深さ1.5メートルのプールへと突き落とす。
……八歳児の身長と言うものは、大体130センチ前後が普通である。
つまり、この深さだと八歳児はよほど泳ぎが達者でない限り、溺れる。
そして透真はプールに来るのはこれが初めてであり、当然泳ぎが達者であるわけが無い。
バシャーーン!!
「ガボッ、ゴボッ! た、助けて姉さん!!」
「助けを呼べる余裕があるなら、まだ大丈夫よ。んじゃ、ちょっと泳いで来ようかしら」
ザブン!
薄情にも弟を無視し、綺麗なフォームでプールに飛び込む沙耶香。そのまま人魚もかくやと言うスピードでプールを泳いで行く。
…透真にとっての不幸は、監視員がこの姉の泳ぎに見とれてしまったため、彼を救出するのが大幅に遅れてしまったことであった。
「………」
左腕でゴムボートに必死にしがみ付きつつ、こめかみに右の人差し指を当てながら回想を終える透真。
「……いいや、もう」
ボンッ!
「キャッ」
いきなり透真の体が金色に輝き、水しぶきがおこる。水しぶきが飛び散ったことによりリンは一瞬目を閉じるが、すぐに目を開く。
するとそこには体中に昂気を纏わせ、そのまま水の上に立つ透真がいた。
「か、会長?」
「…海岸に戻ってる」
ドンッ!! バババババババ……!
そのままゴムボートを肩に担ぎ、黄金に輝きながら水面を疾走する透真。なんとも現実離れした光景である。
一方、一人取り残されたリンは、
「うーーん、作戦失敗かぁ…」
と、波間を漂いつつも次の作戦を練るのであった。
海から上がった透真は、気分転換にアキトの浜茶屋に寄ることにした。
が、
「焼きそばをくれ」
「悪いな、もうソースが切れた」
「じゃあ、ラーメン」
「残念だが、麺が無い」
「…カレー」
「ついさっき売り切れた」
「……ブルーハワイのかき氷」
「今まさに、ここにある氷は全て溶けてしまったな。お気の毒に」
「………何でもいいから、冷えた酒」
「そんな物は、最初から置いてない」
「………………水」
「はい、どうぞ」
コトッ
注文するメニューがことごとく売り切れだったり品切れだったりしたため、結局ただの水を飲むことになってしまった。
しかも出された水は小さめのコップに半分くらいしか入っておらず、おまけに温度は人肌と大差ない。
「………アキト、お前は俺に何か恨みでもあるのか?」
「何故そう思う?」
「…言うまでも無いだろ」
透真がジト目で十年来の親友を見つめる。
その親友は、厨房の奥から焼きそば用のソースとラーメン用の麺を大量に取り出して自分の手に届く範囲に置き、ずいぶん前から火にかけていたと思われる鍋にカレールーを入れ、携帯用冷凍庫の中にある氷が少なく見積もってもあと10キロはあることを確認すると、改めて透真に向き直った。
「……ま、俺だってたまには、な」
「“たまには”じゃねーよ、ったく」
頬杖をつきつつ海を見る透真。
「海の上を走れても、海の中ではサッパリ――と言うのも変な話だな」
ザク、ザク…
アキトは透真にそう言うと、おもむろに焼きそば用のキャベツを刻み始める。
「うるさい。泳げる人間に、泳げない人間の気持ちが理解できてたまるか」
「懐かしいな、昔は五人でプールに行ったりもしたもんだが…」
嫌がる透真を零夜と枝織とアキトと海人の四人がかりで半ば強引に引っぱった(引っぱられた)記憶が、両者の脳裏をよぎる。
その時の透真の役割は、“プールサイドで四人を応援する引率のお兄さん”だった。
「お前って何でもそつ無くこなしそうなイメージがあったからな、泳げないのはけっこう意外だったぞ」
「……いいんだよ、泳げなくたって死にはせん」
「いや、死ぬこともあると思うぞ」
刻んだキャベツを金属製のボウルに入れながらアキトが言う。
「人間として生きていくに当たって、“泳ぐ”という行為は必然性を持たないんだよ」
「…それは、人それぞれだろ。泳がなきゃ生きていけない場面に遭遇するかもしれんし」
「少なくとも、俺はそんな場面に遭遇する気は水素原子一個分も無いな」
わざわざ地球に現存する原子の中で最も軽いものを引き合いに出す透真。
要するに、『ケッ、泳がなくても生きていけんじゃん。別に泳げなくてもいいもんね、俺これから先も泳ぐ気なんてこれっぽっちも無いし』と言いたいらしい。
……何とも、回りくどい言い方をする男だ。
「ハァ〜〜………」
そんな透真を見て、アキトは深い深い溜息を吐く。
「これ見よがしに溜息をつくな、鬱陶しい」
「…人間、どうしても溜息をつきたくなる事だってあるのさ」
「分からんでもないが、見せ付けるようにしてやるのは止めろ。……ん? そういや、海人の姿が見えんな」
アキトの言葉に呆れつつ海岸をぐるりと見回してみると、見慣れた顔がいないことに気付いた。
「その辺をウロついてるんじゃないのか? 最近、色々と仕事が溜まってるみたいだしな。気分転換でもしてるんだろう」
「この島にこうして来る事が、気分転換の一環でもあるんだがな。……でもまあ、確かにアイツにかかる負担はこの先大きくなるだろうな」
透真が、わずかに心配した様子を含めながら呟く。
「これまでだけでも、サレナ三機の改良と新兵器開発……。それにこれからは後継機の設計だったか」
「ああ。“ハイドランジア”、“ブーゲンビリア”、それと……何だっけ?」
「“ブローディア”だ」
「よく憶えてるな」
「当たり前だ、いずれ自分が乗る予定の機体だぞ。…それにしても、“ハイドランジア”ってアジサイの事だろう。何でそんな名前を選んだんだ?」
「“気まぐれ”って花言葉が気に入ってな。“守護”なんてご大層な花の名前を付ける気は俺には無い」
「…別にいいだろ。それに、何もかも守ろうとか言うほど俺は傲慢じゃない」
「……分かってるさ」
“何もかも”は守れない。だから、せめて自分の目に止まる人だけでも――。
自分の目の前であれこれと料理の下ごしらえをしているこの男は、そういう人間だ。
甘いとも思うが、違う人間なのだから考え方や生き方も違って当然。口出しする気は無いし、自分が口出しされても無視する。
……たまに例外はあるが、それはそれ。
「しかし、もし海人が花言葉で選択したんだとしたら意外だな」
「? “ブーゲンビリア”の花言葉って何だ?」
「……“情熱”」
「………それは、まあ………」
意外と言うか、何と言うか。
「ま、個人の趣味にケチ付ける気はないがな。……んで、その酔狂な花言葉の名前を付けた人はその辺をウロついてる、と。……その辺……ねぇ」
砂浜を挟んだ海の反対側には、いかにも南国といった感じの林が広がっている。
その林を数秒間ほど睨み、不敵な笑みを浮かべる透真。
「…“遊んで”来よっかなぁ」
思いついたように呟く。
「止めておけ。今の所はただ見てるだけなんだ、わざわざ自分から手を出すことも無いだろう」
「でもまあ、せっかくだし」
透真は立ち上がりつつ目の前の水をクイッと一口で飲み干すと、コップを置いて林に向かって歩き始める。
「……ほどほどにな」
カレーの煮立ち具合を見つつ、呆れたように言うアキト。
「安心しろ、“遊ぶ”だけだ」
「なら、いい」
ガサガサ……
透真はそのままアキトの方を見ずに首をコキコキと鳴らしつつ、林の中へと消えて行った。
「アキト、林の中に何かあるの?」
透真とアキトのやり取りを傍から見ていたラピスが尋ねる。
「覗きが趣味の暗い奴らだ。…それとラピス、お前には後で気配の読み方を教えてやるよ。覚えておいて損は無いだろうしな」
「? ……うん、がんばる」
アキトの返答の意味はイマイチよく分からないが、後で何かを教えてくれるらしいことは分かったので、その意気込みをアキトに伝えるラピス。
銃を教わるにせよ、こうして仕事の手伝いをするにせよ、アキトと共有できる時間は彼女の好きな時間の一つだった。その時間が増えるというのはとても嬉しい。
そんな感じでラピスがちょっとした幸福感に浸っていると、海岸の方から乱入者がやって来た。
「ねえねえ、今ここに透真いなかった?」
“今まさに海から上がったばかりです”と言った様子の黒髪金目の少女。
「ルチルか。透真ならもういないぞ」
“透真なら”と言った時点で、次の質問が来る事は予想できた。しかし、ただ正直に答えるのも何なので少しからかってみる。
「どこ行ったの?」
「ここ以外のどこか」
「何しに行ったの?」
「海で泳ぐ以外の何か」
「…何分くらい前に行ったの?」
「少なくとも、お前が来る前だな」
「……じゃあ、どっちに行ったの?」
「空に向かって飛んで行っていないことだけは確かだ」
「………アキト、ケンカ売ってんの?」
だんだんルチルの声が不機嫌になって来た。
「そんなことするわけ無いだろう。馬鹿にしてるだけだ」
「それをケンカ売ってるって言うのよ!!」
ガタッ!! ヒュッ!
イスを倒しながら、店のカウンターから身を乗り出してアキトに右の拳を放つルチル。
パシ!
しかし、アキトはそれを空いた左手で(右手は包丁を持っているため、さすがに使わなかった)難なく止める。
「…堪え性の無いヤツだな」
子供というのは往々にしてそういうものではあるのだが、知り合いの赤い髪の人間(こっちは多分、大人になっても堪えられないだろう)もそういう性質なため、他人事とも思えない。
「うっさいわね! アンタが人の神経を逆撫でするような事を言うのが悪いんでしょうが! 透真じゃあるまいし!!」
確かに自分でもちょっとやりすぎたかと反省しているが、それにしたって怒りすぎじゃないだろうか。
彼女の怒りの根底にあるものを自分なりに考えてみる。
(……もしかして、透真にかまってもらえないからストレスが溜まってるんじゃないだろうな)
なかなか現実味のある仮説だ。怒っているのがラピスだったら99%納得するだろう。もし原因が間違っていたとしても、ストレスが溜まっているのはまず間違いあるまい。
(と、なると…。ストレスを解消する必要があるか。効率のいいストレス解消と言えば……)
パサッ
エプロンを近くに置いて、身軽になるアキト。そして浜茶屋の建物を出て砂浜に向かう。
「どこ行くの?」
「場所を変える。ここはまだ使うだろうしな、壊すわけにもいかんだろう。付いて来い」
「?」
テクテクと歩くアキトとルチル、そしてアキトに付いてきたラピスの三人。
そして周囲に人のいない地帯に着くと、アキトはルチルに向き直ってこう言った。
「さあ来い、相手してやる。…ラピス、離れてろよ」
「うん」
頷き、小走りで五、六メートルほど離れるラピス。一方のルチルは最初、困惑していたが、
「…は? 何でそう――いや、まあいいか。ちょうど体を思いっきり動かしたいと思ってた所だし…」
すぐに考えを改め、戦闘体勢に入る。
「…それに透真はともかく、アキト相手に私がどこまで通用するのか試してみたいし、ね!!」
ダッ!!
セリフが終わるのとほぼ同時に、ルチルは砂を盛大に後方へ蹴り上げながらアキトへと向かっていった。
あとがき(簡易版)
海、ですか……。
……ここ四、五年ばかり、海はおろかプールですら泳いでないですねぇ……(遠い目)。
いや、泳げないってワケじゃないですよ(笑)。行く機会が無かっただけです。
『海を見に行こう』と思って見に行った事はあるんですけど、『海に泳ぎに行こう』と思って泳ぎに行った事は無いんですよね。
何故でしょう?
……って、あとがきの部分に何を書いてるんでしょうかね、私は。
管理人の感想
ラヒミスさんからの投稿です。
おお、北極とテニシアン島の同時進行になるのですね。
・・・と言ってる間に、北極は終わってるけど(苦笑)
透真が泳げないとは、ちょっと意外ですが、トラウマなら仕方が無いでしょう(笑)
そのかわり水面を走ってますがね。
私もここ4、5年、海もプールも行ってませんよ(涙)