Bパ−ト
猛暑も過ぎ、昼間の日差しと風が心地よくなってくる頃ミスマル コウイチロウの妻は死んだ。
病死だった。
愛妻家で知られていた男だったが、彼は自分の妻の死に際には会えなかった。
自分の役職上抜ける事が許されなかった。
それより前には、自分の右腕とも成っているムネタケと3人でつるんでいた、高校時代の旧友が死んだ。
この時も彼は死の目には会えなかった。
火星からの転校生で、何時も彼が起こした騒動に二人は巻き込まれ、のんびりしている暇が無かった気がする。
高校を卒業し、コウイチロウとムネタケは軍の士官学校に、その旧友は、アジアでも有数の工業大学に入学して殆ど連絡をつかなかったが、それでも彼等は親友だった。
彼にとって大切な妻と親友、二人の死の時ほどかれは無力に感じられた事は無かった。
そして今日は、彼にとって大切だった妻の命日であった。
「タカトに宜しくな」
それが部屋を出て行く時に、ムネタケに言われた言葉であった。
「うん?今日は妻に会いに行くのだが?」
「奥さんは下戸だと思ったのだけどね。まあ君らしいといえば君らしいが……」
そう言ってお茶を啜るムネタケ。
「ついでに伝えておこう………では………宜しく頼む」
「受け賜りましょ」
それを聞いて執務室を出て行ったコウイチロウはフウッと深く息をついた。
(ムネタケもタカトに会いたかったのだろうが………)
しかし自分たちの役柄がそれを押し止めていた。
「タカトよ見ているのだろうか?お前の甥は、私の娘の思い人らしい」
(できれば、普通の恋をしてもらいたかったが………)
テンカワ アキト『漆黒の戦神』の異名を持つ英雄。
そして軍にとっては、危険人物であり重要人物の一人である。
(子供というのは知らず知らずに、変わって行くものよ)
「寂しいものだな……ユリエ………」
自分の愛妻の名を出した事を彼は全く気がついていなかった。
そしてまだ知らない………。
過去からの来訪者の存在に…………。
コウイチロウが、自分の愛妻の墓参りに訪れた時まず始めにした事といえば、花束と水の入った桶と酒瓶を下に落とすことだった。
少しの間じっと其の場所を見続けた。
その男に声を掛け様にも、声が擦れて唸り声にしか聞こえない。
それから何分、いやなん十分経ったのだろうか?
ようやく吐き出した声は、型どおりの問いだった。
「生きて………いたのか?タカト………」
「老いたな………コウイチロウ………」
そうそこに立っていたのは、高校の同級生であったタカト=テンカワであった。
だがこれは如何した事だ?
昔と全く変わらない姿にも驚いたが、何よりその男には似つかわしくない声の響きに驚きを隠せなかった。
その声はとても冷たく暗い、聞いたものの神経を凍てつかせてしまうのではないかと感じられるほどであった。
「久方ぶりの出会い…………と言う所か………」
それからしばし二人は無言であった。
コウイチロウのほうは、聞きたい事が多すぎて話す事が出来ず、タカトはタカトで用件を切り出すタイミングを計りかねているようだった。
コウイチロウは亡き妻の墓前に手を合わせ、娘の安全を妻に託しそして友との再会を報告していた。
そしてやがて振り向きもせず、タカトに話し掛けるコウイチロウ。
「二十年前のあの事故…………やはりネルガルの仕業だったのか?」
それは問いではなく確認であった。
タカトの事故死より何ヶ月かして何処からか手紙が届いた。
今時珍しく、紙で送られてきたものだが、それには切っても何もはってはおらず、彼の仕事机に何時の間にか置かれていたものであった。
そしてそれには、タカトがネルガルのてによって謀殺された事、そしてそれにはクリムゾンとの合併が絡んでいる事などが書かれていた。
それを見てすぐに調べようとしたが、其の時にはまだそれほど地位があったわけではなく、また何処から漏れたのだろうか、何故かいきなり上層部より任務を与えられ、そうこうしている内に真相が全て闇の中へ葬られてしまった。
だがそれから何年か後にネルガルのある研究所が崩壊し、一人の男が無惨な死体となって発見された事を聞いた。
其の時は異常な殺人事件程度にしか思わなかったが…………
「クリムゾンが欲したのはお前だったと聞いた。そして、ネルガルの血族とクリムゾンの血族の婚姻にお前が邪魔だったとも………」
恐らくはそれ以外に何か在ったのかもしれないが……………。
「そして、お前がボゾンジャンプの実験台に無理やりさせられた事も………知った……」
「知らないほうが…………良い事だ……」
「そうだな………知らないほうが良かった事だ」
そういって、上を見上げる。
吸い込まれそうなほど青い空が目に写った。
その事故の真相は闇に葬り去られたといっても、完全に消えたわけではなかった。
彼はこつこつとその事故の真相をムネタケと協力して、調べつづけていた。
無論、多分に推察が入ったが、それでも事件のほぼ全容を掴んだと確信を持っていた。
(二つの理由は…………建前だ)
ネルガルの前会長はタカトを恐れたのだ。
開発の才能と経営の才能は全く違う。
タカトにははっきり言って商才はないとは言わないが、経営者には向いていないし、本人もあまり出世なぞには興味を示さなかった。
だが前会長はそれを同一視した。
そしてその背中を押した人間も何人かいたことも確かだ。
その一人と目したのが、山崎(サンサキ)上総(カズサ)だ。
生体研究所の所長で、幾つもの論文を発表し、特に生体ナノマシンの事に関しては第一人者と言っても良い程であった。
だが、彼にはいくつかの謎があった。
まず、彼の出身地だが、彼は大阪の出身となっているが、そこには彼の名前が見当たらない。
そして両親が外国に転勤してヨ―ロッパに滞在した事になっているが、彼がいたという所は当時内戦が頻繁に起こっていた所で、書類なぞあってないようなものだった。
だが大学の卒業証明書はきちんとあった。
それが本物かどうかは解らないが…………。
そして彼はある会社を経由して、ネルガルの研究所に入り所長の地位を得た。
だがその会社と言うのが曲者で、それの親会社の親会社そのまた親会社を辿って行くと、クリムゾンに繋がっている。
こんな事は、ネルガルならとっくに調べが付いているはずだ。
何故?
そして一つの結論に達した。
ネルガルの内部は予想以上にばらばらになっていると言う事を…………。
恐らくタカトの事だ。
そんな事に気づきもしなかったのだろう。
だが第3者からの目から見れば?
彼は会長になる資格は十二分にあった。
(暁家の直系の血を引く令嬢を恋人に持ち、部下からの信頼もかなり厚い。更にある種の才能を持っている)
だから知らぬ間に彼は忙殺させられようとしたのだろう。
だが今一番聞きたかったことはそんな事ではなかった。
「何で…………教えてくれなかった?」
生きている事を………何故?
(少なくとも、そうであれば………何かが変わっていた筈だ!!)
そう………なにかが………。
だがその問いに答えたのは、そっけないしかし、冷たい声だった。
「言う必要が……………無かっただけの事だ…………」
その言葉にしばし絶句するコウイチロウ…………。
二人の間にしばし静寂が訪れる。
何処からか子供の声がする………。
誰かをせかすような声が聞こえた。
それに答えたのは少し年老いた女の声(と言ってもまだ三十歳前半ぐらいだろうが)。
その声が近づいて来ている様だ。
彼女達も誰かの冥福を祈る為に来たのだろうか?
そして今度は、彼等二人の静寂を破るかの様に風が吹きつける。
しかしそれは未だ穏やかで暖かい風であった。
「そうか……………」
目を伏せようやく絞り出せた声は、穏やかなそれでいて悲しげな声であった。
そしてまた訪れる静寂……………。
ブオッ!!
一瞬強い風が二人に吹きつけてくる。
しかし二人は、身じろぎ一つしない。
そしてタカトは飛んで来た帽子を目の前で掴む。
そして聞こえるか聞こえないかぎりぎりの大きさで、話し掛けていた。
「出来れば………もう会うつもりは無かった………」
「……………?」
帽子を追って来たのだろう。
子供が近づいてきている。
よほどのお気に入りだったのだろう。
とても嬉しそうだ。
「だが………会う必要があった…………如何しても………」
「何の為に?」
目を開いて、ゆっくりと立ちあがるコウイチロウ。
子供がタカトの元へ来た瞬間
「だが…………」
彼はその子供の顔を掴んで、
「何を!!」
その行動に体ごと振りかえるコウイチロウ。
「今はそうもいってられんようだ!!」
子供を投げ捨てるかの様にして放り投げた。
突如、その子供が、空中で爆発四散する。
「何だと!!」
その瞬間、明らかに爆発のものではない力で、後ろに引っ張られる。
タカトが後ろからコウイチロウを掴んで引き摺っているのだ。
それは明かに尋常でない力と速度であった。
何時の間にかにその子供を追って来た人物かはわからないが、女のほうも墓地の路地で倒れている。
「速いな………奴等動き出したか……」
その呟きはコウイチロウの耳にやけに鮮明に聞こえた。
突如、道路に出た瞬間に立ち止まるタカト。
「ど………如何した?」
「囲まれている」
「なんだと!!」
しかし彼は何も感じない。
向かい側の林の中からも、そしてその寺の門からも気配を感じる事はなかった。
「気のせいではないのか?」
「証拠を見せてやる」
そう言って地面に手を当てると、
「憤!!」
気合を地面に向けて発した。
途端にコウイチロウとタカトの地面を残して、周囲の地面が崩壊を始めると共に、その瓦礫などが、真上にまるで重力に逆らうかのごとき様子で、飛んで行く。
まるで、衝撃波の壁が自分たちを包み込むかの様であった。
「な………何をした!!タカト!!」
非現実な光景に思わず、叫び声を挙げるコウイチロウ。
「木蓮源流柔『古式』地球名:合気古武術『炎(ホムラ)の章』技名 遠当て地の章 裏殺技『荒波』」
「こ………古武術?」
そんなもの聞いた事がない!!
彼は心の中でそう叫んでいた。
やがて収まったが更に驚愕したのは、その規模だった。
半径200メ−トル前後のクレ―タ―が出来あがっていた。
「あが………ああ………お………」
口をパクパクさせるのが背一杯のコウイチロウ。
「…………遣りすぎたかな?」
さらりと言った言葉を聞き、思わずその男を殴りつけるコウイチロウ。
「………痛いぞ………」
「痛いぞ………じゃないわ!!如何するんだ、この道路!!しかも寺にも被害が及んでいるみたいな感じがするぞ!!」
「安心しろ…………お前の奥さんの墓は無事だ………多分」
「なんか今多分って聞こえたぞ!!多分ってなんじゃ?なんか『無事じゃない』って可能性があるって聞こえるぞおい!!」
「そうですねえ……僕も思わず、何かに祈りそうに成りましたから……いやあ凄い威力でした。お館様に良い土産話が出来ました。」
爽やかな声が、何処からか聞こえてくる。
「しかも誰かが巻き込まれたら如何するつもりだったんだ!!え?」
そう言って、タカトの襟をぐいぐい締めつけるコウイチロウ。
「いや…………もう既に巻き込まれてるんですけどね…………」
のんびりとした声が、コウイチロウの耳を打つ。
「ほら見ろ!!もう被害者が出てるじゃないか!!お前という奴はいつもいつも人を無断で巻き込みやがって!!」
声と共に、タカトの身体が宙に浮き始める。
しかしそれでも、顔色一つ変えずに成されるがままのタカトであった。
「いえそんなに怒らないで下さい。元はといえば、貴方を殺す為に皆集まっていたものですから………」
「ほら聞いたか!!私を殺す為に集まってくれた人達が、巻き込まれ…………………え?」
ようやく、不自然な声の存在に気づいた様だ。
タカトを離し、声のほうを振り向くコウイチロウ。
そこには編み笠を被った一人の青年が、時代がかった格好をして立っていた。
(何か不思議な事を聞いたような?)
もう1度言葉を確かめる為に聞き返した。
「私を殺す?」
「ええ。貴方を」
「私を?」
「殺しに来たんです…………ハイ!!」
そう言って指で笠を少し上にずらして、ニッコリ笑う青年。
そこには邪気がまるでありませんよ、と言っているかの様な笑みだった。
隣のタカトが感情の乏しい声で、話し始める。
「お前を殺す為に、わざわざ地球くんだりまでいらした、木星連合の暗殺部隊だ。今日は其の事をお前に話す為に来たのだが、手間が省けたな。」
その説明に息を飲むコウイチロウ。
木星の人間が既に地球にきているとは思わなかったからだ。
だがそれよりも、
「やはり和平交渉の伝達文が握りつぶされていたと言うのは、事実だったのか………」
木星連合の事は囁かれていた。
上層部が彼等の和平交渉の文を握りつぶしたと言う事も…………。
「おや?ご存じなかったのですか?こっちでは大々的に放送されていましたよ。そして驚いた。こっちに来てね。地球人が我々の事をさっさと忘れてしまっていたとはね。そう………とても平和だ………平和過ぎて…………」
そこで一端言葉を切ると、笠を深く被る。
そこをタカトが言葉を付け足す。
「頭に来る………とでも?」
「はははは…………まさか………ただ役目を果すのみですよ。僕は」
「そう…………役目は果さなあかん!!ええこというわあ」
タカト達の背後で、わざとらしい大阪弁が聞こえて来た。
振りかえったコウイチロウが見た人物は、黒いス−ツをだらしなく着てサングラスを鼻眼鏡ふうにかけたボサボサ髪の男だった。
振り向きもせずにタカトが彼に言い放つ。
「クリムゾンの犬もいたとはな。」
「クリムゾンだと!!彼等が木連と手を組んでいるとは………」
これは始めて聞いた事だ。
「何驚いてるねん自分………泥棒かて、手引きする者、盗む者、それを運ぶ者、売りさばく者、別れとるやないけ」
話す声は、とても速い言葉なのに、何処かぼおっとした感じに聞こえるのは、その男が空を見ながら、話しているからなのだろうか?
「泥棒と一緒にしないで下さいよ。我々は共謀者でしょ。少なくともギブ・アンド・テイクで今まで一緒に来ている仲じゃないですか」
「ああ………そうやな。」
しかし返事も何処か上の空だ。
「まあ、暫く付き合ってくださいよ。ついでに死んでくれればこれ幸いなのですが………駄目ですか?」
「まだまだ世に憚っていたのいでな。その願いは答えられんよ」
「そうですか」
コウイチロウの答えと共に、その青年の後ろから、左右に四人ずつ同じすがたの人間が姿を表した。
「自己紹介がまだでしたね。我が名は烈風が一子、烈辰(れっしん)。短い間ですがお見知りおきを」
「こらこらこら…………そう言う事はまず年配の俺に譲らんかい!!」
惚けた声で、話す男
「聞く必要はないな」
言葉をタカトが遮る。
「なんやと!!如何言う事やそれ!!」
「お前等は一まとめで『クリムゾンの飼い犬』、と言う呼称だけで十分と言う意味だが」
「かあ!!確かに俺はあのくそ爺の部下やけど、鎖に縛られて喜ぶ趣味無いわい!!縛るのはなあ女の子に限るんや!!」
何故か、力説している男。
そして、その言葉が辺りを静寂に包む。
「?女?縛る?」
それに反応したのは、烈辰ただ一人のみ。
後の皆は、ただ冷たい目を、彼に送るだけだった。
「な…………なんや………そないなめで俺を見るな………見るなああああああああああああ!!(涙)」
そう言って彼は走り去って行った。
「……………なんだったのだろう彼は…………」
「危ない趣味のコメディアンと言った所か………それともまだ夏ボケが残っていたのかな?」
不思議な者を見たというようなコウイチロウに、心の中でクリムゾンのSSの評価を一つ下げながら、投げやりに言うタカト。
「う〜〜〜〜〜〜ん。取り敢えずあの人の事は置いといて、仕切りなおしといきませんか?」
そう言う彼の何か不安そうだった。
「…………まあいいだろう…………どうせ引けと言った所で、無駄だろうから………取り敢えず………死ね。」
「解っているじゃないですか。どちらにしろ、貴方の戦闘力ぐらいは見ておかないと、こちらとしても立つ瀬が無いものですから」
そう言うとほぼ同時に、彼の後ろにいる八人が其々武器を構える。
「僕等とクリムゾンのSS合わせて五十人が、一瞬にしてお釈迦にされちゃいましたから……一矢ぐらいは報いたいんですよ」
ネルガルの上層部から流れた情報でこの男が日本にいる事がわかった時点で、地球に来ていた北辰の所にも要請が来た。
だがそれは彼への要請ではなく、彼の部下への要請だった。
そこで彼は、烈辰と何人かの若手をSSに出向させた。
だがそれが、戦いもしない内に九人にまで減らされてしまったのだ。
(確かめる必要だありそうだ………彼が何者なのか)
「報いることなぞできはしない…………大人しく潰されろ」
にべも無く言うタカト。
その言葉を合図に、飛び散る九人。
狙いはコウイチロウただ一人。
タカトはそう判断した。
其の為に何人かでタカトを足止めする気である事も…………。
「貴方の相手は僕がします」
正面から真っ向勝負を掛ける烈辰。
常人の目にはとまらない速度で、タカトに上下から刃が襲いかかる。
そして後ろからも一人。
残りはコウイチロウを狙い。
彼等は息の合った連携で、一斉に二人に襲いかかる。
が………
「な!!」
「いない!!」
「消えた?」
彼等の視界から二人が消える。
そして次の瞬間彼等が聞いたのは唸りを上げる風の声だった。
吹かれた紙のように吹き飛ぶ影。
そしてそれを行なったのは一陣の風を纏いし影だった。
だがそれに反応した男が一人。
拳を避け、衝撃に耐えた彼は、全速で駆けて行った。
「お命頂戴!!」
烈辰だ!!
コウイチロウの方に向かって、駆け出して行く。
(ただでは死ねませんのでね。せめて、貴方の悔しがる顔を肴に逝きますよ。)
後一駆けで、届く間合いに入った時、彼の前には………タカトがいた。
「!!」
「空の章『破神』」
何時の間にか、タカトの手が、彼の水月に触れていた。
(は………速い!!)
彼はこの世の最後の衝撃を覚悟した。
が!!何かが後ろに自分を引っ張って行く。
「命を粗末にしたらあかんでエ」
それは何処かに走り去って行った筈のあの男だった。
だが、
ドン!!
その身を貫かんばかりの衝撃が、彼の体に走る。
「ふぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その一撃で彼は気を失いそうに成る。
だがなんとか耐えて目を開くと、彼の背後には、例の男が立っていた。
「かなり加減した様やな」
「お前が助けねば死んでいたさ」
「まあ俺のフォロ−が、それだけ絶妙だったちゅう訳やな。」
「それでお前は如何したい?」
「う〜〜〜〜んと、まあ今日は退散しますわ。あんさんは強いし、俺も少しは互角に戦えると思うけど、お荷物が多いしな。時間稼ぎも無駄に終わった様やし、まあ今回はあんさんに、完全敗北ちゅうわけやな。」
「飼い犬『Eフォ−ス』の一員だな。お前」
「今は『帰って来た真紅の牙パ−ト2』って言うんやで。まあ正式名称は『エラ−』ちゅうねんけどな」
「やはり『Eフォ−ス』」
「まあ好きに呼んでえな。取り敢えず俺の名は、ランディ=タツナカ。武器はこれや!!」
タカトの方にカ−ドを投げるようにした。
今度は受け取るような素振りをするタカト。
そこには、鋼糸線で結んだ円形状の透明な刃があった。
「ヒュウ………お見事さん」
口笛を吹くような口調で感嘆の意を表すランディ。
やがてタカトの手でボロボロに崩れて行く。
「わ〜〜〜〜〜お!!凄いお力で」
「この刃…………氷で作ってあるな。」
茶化す言葉を無視して尋ねるタカト。
「あらら………のりがいまいち……。ま、以後宜しゅう。それと人間爆弾は我慢したってや。まその内やった本人からじきじきに釈明が来ると思うんで、ほなさよならや。」
そう言うと、烈辰を抱えたまま、かなりの速度で走り去って行った。
それを見ずにタカトは歩き出す。
「タカト………時間稼ぎとは如何言う事だ!!」
だがそれには答えず、歩いていく。
「タカト!!」
「ムネタケは無事だ………最も助けられなかった人間のいたようだが…………」
タカトの声に、目を見開くコウイチロウ。
「まさか………アジア本部を…………」
「襲った様だが、被害は少ない。少なくともムネタケとその家族達は無事だ」
「家族だと!!」
「動きを封じる為に使えるからな」
「なぜここまで………」
「それは、これからお前が重要になってくるからさ」
「これから?」
タカトは彼の役割を簡単に説明した。
「成る程……政治屋どもに和平案を出す為に…………か」
「お前は曲がりなりにも、アジア方面軍の最高司令官だ。最も…………政治家達に根回しをする必要があるが………それはこっちに任せてもらおう」
「しかし………軍が政治に首を突っ込むのはいただけぬ事ではあるぞ」
「その判断はお前に任せる。だが覚えておけ。お前の判断が、お前の娘の運命も決めると言う事を…………」
「言われるまでも無いわ。だが…………」
「だが?」
「ユリカの叔父になる男の頼みを、断る訳にも逝くまい!!」
「はっ?」
頷きそうになった後、首を傾げた。
(俺は今…………何か不思議な事を聞いた気が…………)
「人類の未来の為……そして(テンカワ君と)ユリカの明るい結婚生活の為に、まとめあげて見せよう!!このアジアを!!」
「…………ま………まあ…………任せた………取り敢えず…………お前達の護衛は、俺の部下に任せるから………が……頑張ってね(汗)」
(何か聞いてはいけない事を聞いたような………)
「任せろ!!ではアキト君への根回しは頼むぞ!!」
がっしり手を掴まれ、約束させられるタカト。
「いや……結婚って……本人の意志だから…………ほら、下手に家族が介入すると、悪化するって言うじゃないか……(汗)」
「………ふう…………最近耳が遠くて……何を言っているのかさっぱり……では、頼んだぞ!!」
そう言って、タカトを引き摺って行くコウイチロウ。
「いや………だから……」
「ユリカチャ〜〜〜〜〜〜ン!!もうすぐタカトが、アキト君を説得するからねえ」
「だから、先方は俺の事覚えてない以前に、しらねえっての!!」
「これで妻にも、顔向けできる。すぐにユリカの婿サンを連れてくるからな!!」
(〜〜〜〜〜〜〜っっ!!どいつもこいつも人の話を全く聞きやがらねえ……)
そしてアキトを毒つき始めた。
(あの優柔不断男!!根性無し!!ごちゃごちゃ悩むんだったら宗教がえしやがれ!!重婚O.k.の国に行って、二十人でも三十人でも、嫁さんにしろ!!俺の方まで迷惑かけるな!!あの女ったらし!!)
彼にそんな行動力があったなら、ナデシコはもっと平和だっただろう。
彼はコウイチロウ達と別れるまでしかめっ面がとけなかったそうな…………。
Bパ−ト完
中書き
「作者が逃走したので、この俺、『ファントム』が中書きの進行を勧めることとなった。ゲストはただ今、ラブラブ爆進中の高杉 サブロウタだ」
「ウイッス!!ってあんただれ?」
「気にするな。進めるぞ。」
「いや……だから、何か訳わかんないンっすけど」
「俺が分かっている。お前は質問をしてくれれば良い」
「お前が分かっていたって、しょうがないんだよ!!ちゃんと答えろっての!!」
「尚作者は今送付ファイルつきの無言メ−ルに怯えている為にネットを控えているそうだ。申し訳無い」
「そ…………そうなの?」
「まあ進めよう。聞きたい事はあるか?」
「う〜〜〜〜ん。進行遅くない?」
「あの男にそれを期待するだけ無駄だ。まあ、本編とは少しずつ変わっているがね」
「確かに……つまりは、ラストも変わると?」
「ちなみにこの主人公の活躍場所は、あくまでも未来だから、この時代のラストを書くかは不明だそうだ」
「なるほどな」
「ほかには?」
「それであんた誰?」
「次はCパ−トだが、今度はあのオテンバワルキュ―レ達の話に戻るそうな」
「おい……無視すんなよ」
「では、次会える事を期待している」
「おい!!」
管理人の感想
ランさんからの投稿第七話です!!
う〜ん、暗躍をしてますね〜タカトさん。
しかし、登場人物の近似者を使うとは・・・
話の組み立てが上手いですね〜
感心してしますよ。
でも、今回の一番のお気に入りは・・・
やっぱり、コウイロウとタカト会話ですね(笑)
だって、そのまんまアキト(黒い王子様)とルリなんだもん(爆)
ではランさん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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