〜シラズニイキタシアワセノダイショウ〜
炎だ………。
その中に建っている一人の男…………。
黒いマントにバイザ−をかけた、一人の男が立っている。
「何でだ……」
俺は問いかける。
その男の隣には、彼女が横たわっていた。
彼女は死んでいる。
これは事実だ。
殺された。
これも事実だ。
周りには……生きている人間は一人もいない。
そうだれも。
娘は如何したのだろう?
(愚問だ………)
編み傘の男に殺された。
ここの施設を吹き飛ばし、消えて行った。
そして次に現れたこの男は………。
虫の息だった彼女を殺し、そして今俺に銃を向けていた。
爆風を受けまともに動けない、体から搾り出す様に声を出す。
「娘が………しら……ないか?」
声は掠れて思うように話せない……。
「ああ……・知っているよ」
返って来た返事は、意外に若くそして明るかった。
だが何処か芝居じみたものを感じる………。
だがそんな事よりも、その男の言葉がきになった。
「え?」
まぬけな声だ。
恐らく今まで生きた中で、最も間抜けな声であることは間違い無いだろう。
そんな事を片隅に考えていると…………。
バァン!!
「!!」
銃声と共に、弾丸が俺の体を貫く。
「あ………」
「多分………お前が行きつく先にいるはずさ」
その言葉の間にも、引鉄を引きつづける男。
それに合わせて、おれのからだは跳ねていく。
「全く………何も知らないのなら、死んでいれば良いものを……聞きたい事すら知らない奴等に聞くだけ………時間の無駄だろうが…・」
侮蔑ですらない……ただただ迷惑だ……そんな口調だ。
そしてそれが………俺が聞いた最後の言葉だった。
同日――タ−ミナルコロニ−「シラヒメ」壊滅
俺の悪夢は…………まだ終わらない………。