機動戦艦ナデシコ <黒>
00.「プロローグ」→失われた「火星の日常」、後編
見渡す限り地平線の彼方、その向こう。
これ程遠くでも分かる。
はるか遠くから伝わる地響きと、天へと続く土煙。
宇宙の高みから落下してきたそれ……チューリップはその大質量を持って建造物を崩し、大地を震撼させる。次いで衝撃波が暴風となって全てを吹き飛ばし、一瞬遅れて大気との摩擦で蓄えた熱を放射。止めとばかりに圧電効果による高アンペアの電流を撒き散らし、生き残った生命を根絶やしにする。
こうして、チューリップは死の大地を造り、そこを守るかのようにバッタやジョロ、果ては戦艦などの「無人兵器」をばらまく。
ダダダダダダダダダダダ……!!!!
轟音と共に大量の薬莢が大地へと降り注ぐ。
火星、オリュンポス山、ネルガル研究所。第一次火星大戦後、生き残った数少ない人々の砦の一つであった。
敵は優に百を超える、バッタを主軸とした無人兵器群。
守るはたった六機のエステバリス隊。地球連合軍が逃げるときに捨てていったものを廃物利用しているのだ。もっとも、その手の物資も研究対象だったからか、ここには武器弾薬が腐るほどあった。
『クソッ……こんな時に隊長はどこ行ったんだよ!!』
そう愚痴る一号機、アオキ。
彼の乗るエステバリス・重砲戦フレームは両腕に取り付けられたガトリングアームを縦横に撃ち続ける。
確かに無駄弾は多いが、彼の動体視力はそれでも、最もバッタの集中している場所をかぎ分け、狙い撃ちをする。
『隊長ならコロニーに……民間人の救助に向かいました!!』
律儀に答えるのが二号機、オオツキ。
高速戦闘仕様の空戦フレームでディストーションフィールドを張ったまま敵陣に飛び込んでいく。
機体を限界まで削って搭載したフィールドジェネレーターは遺憾なくその性能を発揮、バッタ達を薙ぎ払っていく。
『おいおい……俺達だって民間人だろ?』
三号機、ミフネ。防衛拠点用砲戦フレーム。
まるで大型の獣の首から上半身が生えたかのようなそれは、エネルギー供給フィールドを生み出すための物だ。機体の優先性が高く、ディストーションフィールド発生機関もかなりの大型になる。
その分武装は貧弱で、単発式のキャノン砲を撃っている。
実戦に勝る稽古はないとはよく言ったものだ。彼らは間違いなく一線の上を行く戦士だった。
バシュウ……ドオオオォォォン……!!
多弾頭ミサイルが火を噴き、密集していた敵機を連鎖破壊する。
『イネス先生……隊長はまだですか!?』
「連絡がつかないのよ。彼の腕なら大丈夫だとは思うんだけどね……」
イネスと呼ばれた女性がそれに答える。
『……何処に行ってるんだか、あの人は』
『ヨシダさん、どうせ隊長のことだから落ちてきたチューリップに特攻かけてるんじゃないですか?』
その言葉に全員があり得ると思った。
それだけの腕と機体の持ち主なのだ、その隊長は。
バッタの総数は確かに百だった。
いくら破壊し続けても、補充されていくのだ。目の前に浮かぶ、たった一隻の戦艦から。
やがて、それは焦りを生む。
ドウッ……ガシャァァァンンン……!!
「四号機、被弾!」
守備型の中心であった機体、フジイの乗る四号機が接近を許してしまったバッタの至近距離での自爆に巻き込まれてしまう。
奇妙な機体ばかり居る中、機能的にはノーマルのままの陸戦フレームだが、だからこそ扱いやすく、支援戦闘に集中できていた、はずなのに。
『フジイ無事かっ!?』
「生命反応確認、バイタル問題なし! しかし機体は限界です!! 回収して下さい!!」
『ヨシダはフジイの救助に向かえっ! サクラバは護衛に回れ! 俺とミフネはここを死守する!!』
サクラバの乗る機体は五号機、乱戦、接近戦に特化した機体。チェ−ンガンとガトリングガンを両の腕に持ち、接近してきた敵を相手にするためにサブアームを二対装備している。
機体改修の時、機動力の落ちた機体を、大きくなった的を護衛するためにパイロットには広い視野が要求される。彼はうってつけの人材だった。
ヨシダの乗る機体は限界まで装備を削った陸戦フレーム。
その代わりに拡張性が高く、多様な装備を積み込んでいる。機体回収用の装備もまた。
もはや、攻め込まれるのは時間の問題だった。
確かにフルチューニングされた機体と、バッタでは機体の基本性能に雲泥の差がある。しかし相手は疲れを知らない機械。尽きることの無いその戦いの中、人はいずれ疲弊し、敗れ去る。
また、この時研究所内でも戦いは続いていた。
研究所地下、死した戦艦……遺跡の内部から力が生まれ続けていた。残り僅かな触媒を加えられたそれ……相転移エンジンから力を引き出していく。
「相転移エンジン大気圏内のため出力安定せず。現在12%で運転中」
いずれ生まれるはずだった戦艦。そのために造られた兵器、多連装グラビティブラスト。
「主砲グラビティ・ブラスト、使用可能まで後48秒」
そして生まれた力が宿るとき、声が飛ぶ!!
「エステバリス隊、退避して下さい!」
その声と共に、残っていた二体がフィールドを全開にして、被弾覚悟で一直線に戦場から逃げ出す!!
「主砲グラビティブラスト、発射!!」
そして生まれる、幾条もの光芒。
ゴウッ!!
その背より炎を吹き上げながら、火星の大地を走る影があった。
それは黒いエステバリス。
両の腕に大剣を持ち、刃に激しい光を映している。瞬時に浮かび、体を回転させる。機体は螺旋を描き、その全てを破壊する。
紅い軌跡。
無人兵器の断末魔の叫び、その滅びの炎の光。
たった一機、何の策謀もなく戦場に一筋の破壊の奔流を生みだしていく。肩に「EX−01」の文字があることから試作機だろう。体高だけで通常の1.4倍、重量ならば優に二倍はある。試作機ならばイエローカラーだろうが、何故か全身を黒く染めている。
腰には剣を収めるためのラックが。背には常識を疑いたくなるような大規模なブースターユニット。右腕に比べて異様な大きさの左腕。
ドウッ!!
逆制動をかけ、垂直に上昇!
「消えろっ!!」
ドウッ……ゴウウウッッッッ……
叫びと共に脚部ウェポンラックからミサイルが雨の如く降り注ぐ。
「ハアッ!!」
呼び声に応え、力が腕、腕から剣へと……伝わっていくのが分かる。
剣を振り上げ、あり得ない……黒い光を放つそれを、投擲術の理想的な姿を持って、無人戦艦へと投げつける。
ザ……ガシュッ!!
激しく大気をゆらし、それは何ら抵抗を感じさせずエンジンブロックを貫通、わずか数秒で戦艦が、付近に警護のために散開していた無人兵器ごと沈んでいく。
「……敵残存勢力!」
<戦艦0、バッタ17機、ジョロ24機>
「……やれるな」
<右腕アクチュエータ出力低下。他に問題は検出されません>
その答えを聞いたとき、アキトは次の目標へと既に飛んでいた。
それは何もなくなってしまった火星の大地で佇んでいた。あれから10分も経たないと言うのにもう、敵機は存在しない。
「これでこの辺り全てのコロニーが滅んだって訳か…」
エステバリスのコクピットを解放し、肩の上から双眼鏡を除いている。
ぼうぼうの髪を伸びるにまかせた10代後半の少年。背の半ばに届こうというそれをうなじで縛っている。彼はテンカワ・アキト、連合軍に見捨てられた火星において戦う力を持つ数少ない一人。
アキトは空……いや、地球のあるであろう方角を見て忌々しげに呟く。
「連合のクズども……その気になりゃ地球の通信も入るんだよ、火星じゃな……」
思い返すも腹立たしいとはこの事である。
連合政府は火星は全て避難を完了し、フクベ・ジン提督の手によりチュ−リップを殲滅、戦闘宙域とした火星を一時封鎖するとまで発表した。
第一次火星大戦とも呼ばれるそれは、宇宙空間を飛来するチューリップと呼ばれる岩塊を「事前の調査」により異文明の戦略兵器と断定し、それを破壊しようと言う連合の英断により行われたとされている。
事実を知る者には余りに下らない三文芝居ではあったが。
それだけで地球は安心したのだ。
この戦争に勝てる、と。
真実を知る恐怖から逃れるために、政府の出したこの広報を、余りに単純なこれを信じようとしたのだ。
火星の避難民が何処にいるのかなど全く気にもとめずに。
いや、真実を知ろうという者はいた。
真実を知った者もいた。
しかしそれが表に出ることはなかった。
真実は闇に葬られた。
いかなる手段でかは確かではない。
アキトはコクピットに戻り、キーボードを取り出す。
いかに思考制御のエステバリスとは言え、イメージにしにくい操作もある。通信……特に特殊なキーを要する暗号化通信などは。
タッ…タタ……タタタ……タン!
<入力完了。通信開きます>
何故かメッセージウインドウは警告の赤。
メッセージと共に通信ウインドウが開き、一人の女性を映し出す。20代後半の知的な美人。見た者を惹きつけるような光沢の金髪を持っている。
『何かあったの? アキト君が定時以外の連絡を入れてくるなんて…』
不審がる女性……イネス・フレサンジュ博士にため息をつぎながらアキトは一つの瓶を見せる。中には透明な水。
「今日の収穫なんだけど……毒入りの河の水。しかもご丁寧なことに浄水器や中和剤で無効化できるヤツ」
『……アキト君の話を裏付ける証拠、か』
「あそこのコロニーに生き残りがいないか調べてくる」
『え? 危険よそれは!』
「避難を待っている人が居るかもしれない……それにコイツならなんとか出来るだろうし」
そう言ってイネスを安心させようと微笑んでさえ見せる。
EX−01とはアキト本来の機体、エステバリスの原型となった<龍皇>とも呼ばれる遺失兵器を基に造られた最初のエステバリス。意味はE(エステバリス)X(試作機)−01(一号機)。10数年前に造られた試作品であるにもかかわらず、その性能は今だ他の追随を許さない。あくまで試作とはいえ相転移エンジンを持ち、装甲の一部にナノマシンによる自己修復機能を組み込んでいる。
研究者達の意欲作とも言えるが、扱える者が今までおらず、製作に携わった者の一人、テンカワ博士の実家の地下に眠っていた物を引っぱり出したのだ。
『ふう、分かったわ。防衛隊には伝えておくから早く戻ってきてちょうだい』
「りょーかい。通信終わり!」
ウインドウを切り、キーボードをスライドさせ、IFSターミナルに手を置く。
「さってと……頼むぞ相棒!」
その笑みは間違いなく魅力的だった。
「全く、あれがテンカワ博士の息子さんだとはね……」
そう呟くイネスの顔には苦笑めいたものが張り付いていた。
周りでも、古株の研究員がつられて話し始める。
「でもテンカワ博士もそうでしたよ。一度決めたら周りが何と言おうとも絶対に自分の意志を曲げない」
「そうそう、それでプロスペクターさんがその後始末で右往左往して……なんか、憎めない、力にならなきゃ、そう思わせる人だったよな」
「それが……あんな事になるなんて……」
一瞬、静寂が支配する。
「はいはい、お喋りはそのくらいにして、後始末初めて」
その声を合図にしてか、キーを打つ音が始まる。中には演算用に特化したIFSを使う者も。
「相転移エンジン、オーバーホールが必要ですね、これは……まあ、予備の方も今日中にはチェックは終わりますし」
「グラビティ・ブラストの方は右舷二門が使用不能。エネルギーバイパスに問題が発生しています」
「地下工房、稼働率低下。リアクター出力は安定していますが……」
「フジイさんの方は脳震盪だけで済んだようです。機体も中枢は生きてますから肩先からの交換だけでしょう」
暗い報告が続く中、ようやく明るい話題が一つ生まれる。
「ま、私達が苦労してるからユートピアコロニーの避難民の人達が安心して暮らせる。そう思えば結構嬉しい物ですね」
「それはそうだけど、ここの地下にある物を考えれば、安心できないのよね……」
「! ……<龍皇>のことですね」
誰もが息を呑む中、イネスだけが普段以上の深刻な表情を見せ、頷いた。
その遙か下。
たった一体のエステバリスがあった。全身にコードを配し、チキチキ……という音がそこかしこから聞こえてくる。そして奇妙なことに、それの置かれている倉庫にある物資はかなり腐食が進んでいる。
いや、エステバリスという表現は適切ではない、それは人の造った物ではないのだから。
漆黒。
全身を覆う鎧は鱗を想起させる。優美な、流線型の鎧に守られているようだ。放熱機構なのか、頭部から背にかけて黄金色のたてがみが生えている。まるで東洋の龍神だ。
だが、それは右半身に限ってのこと。なぜならば、左半身は岩の中にある。岩、と言うのもあくまでそれに似ていると言うこと。実際は自己修復の際に使われたナノマシン、その死骸が積層化しているためだ。岩の中にあるはずの腕は、事故の前とは微妙に形状が違う。修復だけでなく、進化さえしているのだ。
それは<龍皇>と呼ばれた。
「それと、<龍皇>の方ですが……今だ進展無しです」
「仕方ないわ、あれはブラックボックスの塊。神を滅ぼす獣、<龍>の名前は伊達じゃないわ。私達の技術の更に上、遺跡の守護者という説も間違いなさそうね」
その呟きを発した者の顔にの上には好奇心と、恐れにも似た何かがあった。
「ユートピアコロニーのチューリップは?」
「再生、見られません、今だボース粒子反応も無し」
「死んでますよ、あれは。気にすることもないでしょう」
「そうだと良いのだけど……」
それが余りに虫の良い考えだったことを、彼らは知ることになる。
愕然とした。分かってはいた。
しかし、実際にその目で見たのなら、それはまた、別であろう。
「やっぱり何も無し……人も、物も……」
やりきれないとはこの事。
人の命が失われることのつらさはあの時、我が身と心を持って知ったはずだと。
名も知らぬコロニー。
見あたる物と言えば、ここに来るまでに破壊した無人兵器群のみ。そして、大地に落ちたチューリップ。
「熱源感知」
<チューリップ墜落に伴い高熱が発生。現在気温140℃、個体判別不能>
「人は生きていられるか?」
<短時間ならば>
「そうか……撤収する。もちろんチューリップを叩いてからな。……機体状況を」
<脚部ミサイルポッド全弾使用済み。右腕アクチュエータ過負荷により出力47%まで低下。それ以外は使用可能>
IFSターミナルを握る、その手に力を込める。
機体がそれに答える。
有を無にかえ、その失われる存在を力に変えていていく。……相転移エンジン。
左腕が変形を始める。ブースターユニットへのエネルギー供給カット。現れた左腕のスリットに刀身を差し込み、仮想砲身とする。
遺跡と共に発掘された、恐らくは<龍皇>のための装備、誰もがその実在を疑った、完全剛体の剣である。
人の意識に反応するそれは、人の作ったどのような金属も耐えきれないほどの過大な電流にも耐え、この力を発揮する。
ジ……ジジ……
空気が帯電し始める。
今だ変形を続ける左腕。そこから銃口が現れる。
電磁レールガン。
ただし、人間の技術力では再現不能な大剣を砲身とし、相転移エンジンをエネルギー供給源としたレールガンではあるが。
シュッ……ガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
ただ空気を切り裂く音がしたかと思う暇もあらばこそ、既にチューリップは半ばから折れていく。
ディストーションフィールドを紙のように切り裂き、また、岩塊そのもののチューリップを貫くのだ、この機体は。
<チューリップ、活動反応無し。撃破>
「……帰るぞ」
それだけを言うのが、やっとだった。
例え、体に傷が無くとも、心がそうであるとは限らない。
癒えない傷があったとしても、痛みを和らげることは出来る。
「お兄ちゃん、お疲れさま!」
オレンジ色の髪の少女。出迎えてくれる子がいる。それだけで、自分のような人間が報われた気持ちになれる。
「……大丈夫?」
「あ、大丈夫だよ! ほら、元気、元気!」
変な表情でもしていたのかと、慌てて笑顔を作り、体を軽く動かしてみせる。
「あ、そうだ。これ……はい、アイちゃんにあげるよ」
「あ、ミカン……ありがとうお兄ちゃん! まま、お兄ちゃんにミカン貰っちゃったぁ」
「ほら、アイ。ちゃんとお礼を言いなさい」
「あ、良いですよ。そんな」
アキトは帰ってくる途中見つけた、生き残っていた農園から採ってきたミカンを手渡す。
戦争が始まって二ヶ月。
誰もが不安に押しつぶされそうな時。
子供達の笑い声というのは……とても、心が救われる。
ここ、ユートピアコロニーはチューリップが存在しているからか、他の地区のチューリップが飛来することが無く、また機能が死んでいるためか無人兵器が現れたのは「あの日」のみ。
火星の人々はここに集結しつつあった。
だが。
…カン……
硬い物がぶつかる音。
カン……カン……カカン!
異様な雰囲気を感じ振り返る!
ガン!!……ゴッ!!
コンクリートの壁を突き破って現れるそれは……無人兵器!!
「キャアアアアア!!!」
「うわあああああ!!」
そこかしこから悲鳴が聞こえてくる。
「チッ!」
アキトは腰からブレード−−近接戦用の高周波振動ブレード−−を引き抜くと、フォークリフトに飛び乗り急発進させる!
バッタに接近し、車体を叩きつけ、浮き上がった機体、腹の下をブレードで切り抜く。
バッタは瞬発的な出来事に弱い。それを熟知するが故の作戦だ。
「パニックになるな! 守備隊は防衛網を形成! 住民を避難させろ!!」
ガシャッ!
銃把の底でガラスシャッターを破壊し、手を入れハンドルを回転させる。
「現在手動でドアを開いています! 少々お待ち下さい!!」
武装した青年達がシャッターを開こうとしていた。
だが、敵はその上を行っていた。
ここで、アキトの記憶は途切れる。
残っているのは断片的な記憶。
開かれるシャッター。
そして、現れる、無人兵器の無機質な目。
吹き飛ばされる人間達。
大人も子供も、何の区別もなく。
まるで人形のように倒れ伏す人々。
そして、世界が青く染まる様を見た。
その日、雪谷才蔵は出前の帰り、行き倒れを拾った。
黄色いシャツの上に随分古い形のパイロットスーツを着た少年。
いずれ彼が目を覚ましたとき、彼の名を知ることになる。テンカワ・アキトという彼の名を。
アキトは夢を見ていた。かつての、もっとも強かった、尊敬していた者との別れを。
血を吐き、全身から血を流す龍馬の姿。
ここは、彼にとってもっとも神聖な場所、愛機<龍皇>のコクピット……胸の中。
最早目も見えず、耳も殆ど聞こえず、皮膚は壊死を起こし、感覚そのものが失われつつある。
『師匠……何でこんな……』
その脇に立つのはアキト。
無傷のEX−01と、半壊した<龍皇>。それが何を意味する物か、周りにいた戦士達は知っていた。
中にはもう、アキトの目の前で死んでいったはずの者もいる。
師には守れた、けれどアキトには守りきれなかった……もう死んでしまった戦友の姿も。
その彼らの顔は哀しみと怒りで染まっていた。
『そんな顔をすんな。……これが俺の選んだ道だったんだ』
蚊の鳴くような声。声帯もその機能を果たさなくなっていく。
『アイツが……師匠の言っていたアイツ……草壁さえいなければ……!!』
ぽん。
最早、力の入らない手でアキトの頭を軽く叩く。
『お前の道はお前が選べ。……俺のことは抜き、でな。それに生きていれば、いつかだれかと出会う。自分の全てと、それこそ命と交換しても良いぐらいの誰かが。俺にはお前って弟子がいた。……いや、弟分かな……』
それが、最後の言葉だった。
そしてアキトは、目を覚ます。
「まだ……見つかりませんよ、龍馬さん……」
哀しい、声だった。
そのアキトの枕元にはパイロットスーツと、二本の起動キー、そして一枚の写真が置かれていた。
龍馬とアキト、火星で撮った、修行の合間の平和な一時、二人ともイタズラ小僧そのものという笑いを浮かべた、もう戻れない昔の光景を封じ込めた写真が。
あとがき
初めまして、さとやしという者です。
無謀にも初投稿で連載、しかも他人のふんどしでの相撲。
無謀な上に無茶、無遠慮です。
一応OKはもらいましたが。
Benさんの「時の流れに」を「逆行モノ」ではなく「再構成」で書くとどうなるか、を目指してみようと思っています。といっても下地にするシナリオがTV版ではなく、「時の流れに」という程度でですけど。
また、物語の展開上アキトの戦闘力を上げるため、彼の人生の師ともなるべき人間を一人、用意しました。それが龍馬です。以降、所々にアキトの回想というか、フラッシュバック的に登場させるつもりです。
ちなみに悠は木連側で反草壁派を裏でこそこそ作ります。つまりしばらく出番は無し。
火星の守備隊も、しばらくは出番待ちに。彼らの出番は中盤戦から。
管理人の感想
さとやしさんからの初投稿です!!
う〜ん、シリアスですね〜
それにしても、前編から後編の数年間の間に一体何があったのでしょうか?
凄く気になるところですね。
アキトはますます強くなってるし(笑)
でも、やはり数の暴力にかてるわけではなく、ボソンジャンプをしてまったようです。
さて、今後はどうなるのでしょうか?
では、さとやしさん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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