全ての命あるものを阻むように存在する宇宙。
暗く何よりも暗く。
変わる事の無い世界を厳然と見せ付ける。
そんな世界を僕は…好きだった。
何故ここに居るのだろう…。
そう疑問に思ったことが幾度かあった。
今この場に居るのは確かに幸せと言えるだろう。
かつて得る事の出来なかったものを得られたのだから。
いや得ようとしても得ることが認められなかった。
そうして得ることが出来たものがあるからこそ僕は恐れを抱く。
罪人でしかない僕がこれほどのモノを得ていいのだろうか?と。
これは今一時のものだけですぐさま消えうせるものではないのかと。
そう思うたびに過去を振り返る。
消えうせた人間。
それら全ての人がこの身体に縛りつくようにある。
形無く重さ無く、それでもこの身に縛りつく。
縛鎖のように、いや茨のように。
この身をそして心を傷つけ縛りつける。
一人につき一本。
総数は計り知れない。
いつか動けなくなるときが来るのだろうか?
この身を縛り付ける鉄の茨の重さに負けて。
それは何時になるだろうか…。
巻きつく茨。
冷たい暗黒の世界。
空は遠く。
僕は思う。
広がる冷然たる世界を視界に収め遠く、そして近い時に思い馳せる。
かつてこの暗い空を駆けた時を。
無辜の人々を殺戮して回った時を。
限りなく増え続ける咎。
命ある場所は、命が存在できる場所はだから好きではない。
だからこの宇宙が好きだ。
人の生み出したカガクの力が無ければ何者も存在できないこの世界が。
冷たい世界、それゆえ僕はここが好きだ。
だがそれでもあの人が居る。
故に僕は咎がある地へと降りる。
だが……。
僕かそれともあの人か…。
どちらが先になるかは分からないがいずれ命果てるそのとき。
その瞬間に僕はなにを思うだろうか?
哀しみか、後悔か、はたまた…。
その後、僕が存続している時僕は地へと降りるだろうか。
繰り返される時、以前はこの地で消えた人。
あの人はなにを思うだろうか。
自らの手で守るべき者たちを殺してしまったあの人は。
ああ、何も分からない。
人の想いなど僕には決して分からない。
悲しみは遠く、喜びも遠く。
僕に再びそれを与えてくれたあの人にしか僕はそれを抱けない。
人は何よりも遠い。
あの人はこのイバラの重さを知っているだろうか。
感じているだろうか。
無くした心が、今はとても惜しい。
本当に護るべきものは一人。
心を得ることが出来るのも一人。
いつか一人で無くなる時は来るだろうか…。
護るべき人は一人。
心を得ることが出来るのも一人。
もし二人目が出来るとすれば…。
妖精の如き彼女。
始めは似ていたからだろう。
僕が『殺した』彼女に。
故に思いを抱いた。
その思いはいつか想いとなるのだろうか?
揺れる心の琴線が音を鳴らす。
その姿が、声が微かに琴線を鳴らす。
君が僕に抱く想いは気づいている。
だが僕にはその想いを計り知る事は出来ない。
それは強いのか弱いのか、重いのか軽いのか。
計り知る事が出来ないその想い。
だから僕は…それが怖い。
君は…僕を…。
僕は…君を…。
今一度この地にて消える『人』
貴方はなにを思いますか?
この世界を。
人を。
そして…。
空は遠く、どこまでも遠く。
宇宙は遠く、どこまでも遠く。
人は遠く、どこまでも遠く。
僕はその遠さに想い馳せる……。