< 時の流れに福音を伝えし者 >
「俺の名前はガイ!! ダイゴウジ ガイだ!!」
「私の名前はアクアです。」
「何!! 君はアクアマリンなのか!!
くぅ〜〜〜〜!! これこそ運命の出会い!!」
「いえ・・・ですから私の名前はアクアと・・・」
「君と俺は赤い糸と過酷な運命で結ばれているんだ!!
でも大丈夫!! 俺はその運命を乗り越えてみせる!!」
「・・・もしもし?」
「おお!! この建物はまさに研究所!! 博士もここにいるんだな!!」
「誰ですか? 博士って?」
僕とアキトさん達は森を出る直前にばったり出くわした。
アキトさん達の方も特に怪我も無く片が付いたみたいだ。
「アキトさん、大丈夫だったようですね。」
「シンジくん、何で君がここにいるんだ?」
「僕も野暮用って奴ですよ。
放っておいたら皆が危なかったかもしれませんので。」
ミストの狙いは僕だけだけど、誘いに乗ってなかったらビーチを直接責められたかもしれないからね。
「なっ!! 伏兵がいたのか!!」
ゴートさんは自分が相手をした者達以外に敵がいたのだと勘違いしたみたいだ。
実際そうなのだが、二人が相手をしたのが囮で、
僕が相手をしたのが本命だ。
まあ、そう思ってくれた方がミストの事を話さなくて済むからいいか。
「ええ、まあ。 全員片付けましたけど。」
「・・・殺(や)ったのか?」
「いえ、気絶させただけですよ。」
「そうか・・・。 イカリも白兵戦が出来るのか。」
「実戦はこれが始めてなんですけどね。」
「そのわりには動揺がないな。」
「ひどい目に合ってきましたからね。
ちょっとやそっとじゃ動じませんよ。」
ATフィールドを使う者が存在した事にはかなり驚いたけどね。
「イカリといいテンカワといい、お前達の実力には底が知れんな。
一体、後どのくらい隠し手があるんだ。」
「さあ? そんなにないんじゃないですか?」
僕はちょっと茶化して誤魔化す。
ゴートさんがじっと僕を見ているが・・・
「・・・やめておこう、話す気もないのだろう。
テンカワにも同じようなことを言ったが、
お前の目もまだ濁ってはいないからな。」
「ありがとうございます。」
濁ってはいないか・・・
でも本当にそうなのだろうか?
大切な人を失っても泣けなかった僕の心は正常なのかな。
濁ってはいなくても僕の心は何色に染まっているのか・・・
その後、森を出た後にアキトさんが艦長に捕まって
何処に行っていたのか聞かれてたけど何とか誤魔化したようだ。
「美味い!! 美味いよこの料理!!」
「褒めてくれるのは嬉しいけど・・・
もう少し小声で話してくれない?」
「やっぱりアクアマリンは料理が上手だったんだ!!」
「ですから私の名前はアクア・・・」
「いや〜!! 俺は幸せだよ!!
ナデシコの女性にはこんな家庭的な事は出来ないからな!!」
「私の話し・・・聞いてます?」
「フフフ・・・アキト!! 見たか遂に俺にも運命の人が現れたぞ!!」
「・・・聞いてません、ね。」
「最近になってこの島は、個人の所有になったみたいですね。」
パクパク。
「へ〜、誰のだい?」
「あ、イズミ!!
そのイカちゃんは私が大切に焼いていたのに〜〜〜!!」
モグモグ・・・
「ヒカル・・・隙があった貴方が悪いのよ。」
「世界有数の複合コンツェルン、クリムゾン・グループです。
あ、アキトさんそのトウモロコシお願いします。」
「ヒカルさん、よかったら僕のどうぞ。」
「はいはい・・・ちょうどいい具合に焼けてるよルリちゃん。」
「クリムゾン・グループ!! 知ってるわ!!
ついこの間、一人娘が社交界にデビューして話題になってたわ!!」
ガシガシ・・・
「えっ!! いいのシンジくん、ありがと〜!!」
「・・・テンカワ、これは何だ?」
「え、焼きシイタケですよゴートさん。」
「何故、これが俺の皿に入ってるのか聞いているんだ。
抜いておいてくれと言った筈だが。」
「好き嫌いを言ったら駄目ですよ。」
「・・・むう。」
「そう言えば綾波、肉が嫌いだったなあ。」
「バリア関係ではトップの兵器メーカーね。
あのバリア衛星もこのクリムゾン・グループの製品ね。
でも、その財閥の一人娘は多分に問題児らしいわ。」
「はい、イネスさんホイル焼き出来ましたよ。」
「シンジくん、綾波って誰の事?
もしかして恋人!?」
「あら、有難うアキト君。
・・・レモンを忘れないでね。」
「はいはい。」
バリバリ・・・
「シンジくんもやっぱりそういう年頃なのね。」
「アキト〜!! 私のお肉はまだ焼けないの?」
「もうちょっと待ってろユリカ・・・生肉だとお腹を壊すぞ。」
「艦長なら大丈夫だと思いますけど。」
「違いますよ、ヒカルさん、ミナトさん。
綾波はなんていうか・・・パイロット仲間ですよ。」
「ちょっとメグちゃん!! それどう言う意味!!」
「テンカワ!! 俺の頼んでいた海老は焼けたか?」
「そこの皿に寄せてあるよ、ウリバタケさん。
・・・それと、ビールはさすがにヤバイんじゃ。」
「どもってるところがますます気になるな〜
それだけじゃないんでしょ。」
「何ですって!! ウリバタケ!! 貴方ビールなんて飲んでるの!!」
「さあさあ、お姉さん達に話しちゃいなさい。
アドバイスなら幾らでもしてあげるわよ。」
「会長秘書はお堅いね〜
心配しなくてもノンアルコールのビールだよ。
気分だけでも楽しんでるんだよ。」
「・・・本当かしらテンカワ君?」
「さあ?」
「だからほんとに違うんですよ。
ただもしかしたら妹になってたかもしれないなって。」
「で、その一人娘なんだけど・・・社交界にデビューする時に、全員の料理に痺れ薬を混ぜたり。
自分だけの少女漫画を描かせる為に、漫画家の誘拐未遂を起こしたり。
ま、財閥にとっては唯一の汚点よね。
モグモグ・・・
あ、アキト君このホイル焼きもう一つ頂戴。」
「アキトさん、私も欲しいです。」
「御注文受け賜りましたよ、ルリちゃん、イネスさん。」
「「そ、そう・・・(また過去形なの
シンジくんの過去っていったいどんな事があったの・・・)」」
そして、楽しい昼食後・・・(一部盛り下がったところもあったが)
俺達は新型のチューリップの探索を始めた。
「ご馳走様です、アキトさん。」
「どういたしまして。」
「女の人ってどうしてああ言う話が好きなんだろ。」
「・・・あれが新型のチューリップか?
さっそく破壊しますか。」
「待て!! ・・・あれはバリア発生装置?」
「しかも・・・クリムゾン家の紋章入り?
何を考えてるんだクリムゾン家は?」
「アクアマリン・・・君の不幸は俺が知っている!!
だが大丈夫!! 俺が必ず君を守って見せる!!」
「え、あの、私はただ悲劇のヒロインに憧れた・・・」
「そう!! 君は悲劇のヒロインだ!!
だが、しか〜〜〜し!!
この俺!! ダイゴウジ ガイが君を救ってみせる!!」
「でも、まだ不幸にはなってませんけど?」
「もう君に戦いを強いるキョアック星人に怯える事は無い!!
俺が君を自由にしてあげよう!!」
「・・・あの身体が痺れません?
実はさっきの料理には痺れ薬が・・・」
「俺に薬は効かん!!
なんせナデシコではこの一〇〇倍はキツイ劇薬を飲んでたからな!!」
「何者ですか? 貴方は?」
「俺の名はダイゴウジ ガイ!!
地球を守る正義のヒーローだ!!」
「・・・とんでも無い人を拾っちゃった。」
『くっ!! バリアが邪魔で攻撃が届かない!!』
アカツキの空戦フレームからの一撃も効果は無い様だ。
『しかも、チューリップ自体、バリアを張ってやがるしな!!』
『あ〜ん、固いよこのバリア。』
『ほんと、何考えてるんだろうね・・・お嬢様って人は。』
リョーコちゃん達の攻撃も効果無し、か。
『・・・テンカワ、お前ならどうする?』
『そうそう、アキト君はこういう場合どうするの?』
『是非、聞きたいわね。』
俺のやり方、ね。
チューリップを見つけたはいいんだけど
クリムゾンのバリアのせいで破壊出来なくなっていた。
そこで他の皆はアキトさんにどうするか求めた。
「それでアキトさんは皆さんの期待のどう答えるんですか?」
『そうだね〜・・・
ウリバタケさん・・・アレ、出来てます?』
『おう!! システム自体は既に完成して取付けてある。
だがな・・・この前みたいは戦い方はしない、と約束しないならコードは教えてやらん!!』
アキトさん、戦闘方法に関しては信用がた落ちですね。
『解りました。
今後あんな戦い方はしません。』
『・・・だ、そうだルリルリ、艦長、メグミちゃん。
確かに聞いたよな?』
ウリバタケさんがそう言った瞬間・・・
通信ウィンドウに三人が入ってきた。
ピッ!! × 3
『ええ、はっきりと。』
『約束だよアキト!!』
『嘘は駄目ですよ、アキトさん。』
完全に信用されてませんでしたね。
まあ、アキトさんももうよっぽどの事がない限りこの前みたいにはならないと思うけど。
それを防ぐのも僕の役目だと思うし・・・
『降参です、ウリバタケさん・・・コードを教えて下さい。』
アキトさんは両手を上げて降参のポーズをする。
そしてウリバタケさんがしてやったりと楽しそうに笑っている。
ほんと濃いな〜、この艦。
『よしよし・・・いいか良く聞けよテンカワ。
例のバーストモードはリミッター解除のコードを入力すると自動変更される。
フィールド・ジェレネーターが3分間だけ、出力を5倍に引き上げる。
いいか、3分間だけだぞ?
その後、ジェレネーターの冷却に30分間の時間がかかる。
まあ、今回は3分も時間はいらないと思うがな。』
ウリバタケさんの新しい発明か。
話の内容からしてリミッター解除を実戦使用に変えたようなものかな。
エヴァで言うならシンクロ率を一時的に400%にしたようなものか。
『了解。
さて、リョーコちゃん達は向こうに避難しててよ。
・・・結構、衝撃があると思うからさ。』
会話からアキトさんが何をしようとしてるのかだいたいわかったらしく、
大人しく3人は後ろに下がった。
「そんなにすごいんですか、これからやる事って。」
『ああ、エヴァならここにいても全然大丈夫だろうけど
一応シンジくんももうちょっと離れていてくれよ。』
「わかりました、何が起こるか期待してますからね。」
そう言って僕も少し後ろに下がった。
『僕はどうするんだい? テンカワ君?』
『あ、アカツキはあの建物に人がいないか確認してくれ。』
『了解。』
そう言えばガイさん、ずっと向こうの建物にいるな。
まあここに居ても、活躍出来なかっただろうけど・・・
『さて・・・終らせるか。』
そう呟いてアキトさんはD・F・Sを構え・・・チューリップの上空に待機した。
そして、ナデシコがナデシコがディストーション・フィールドを展開すると
アキトさんが攻撃の態勢に入る。
俺はナデシコがディストーション・フィールドを展開するの確認した。
「では、いくか・・・リミッターゲージ最大!!
バーストモード・スタート!!」
ブィィィィィィイインンンンン!!!!!
俺のエステバリスに細かな振動が走り出す!!
そして手に持つD・F・Sに白い刃ではなく、真紅の刃が出現する!!
「出力・・・フィールドの80%をD・F・Sに。
残り20%で防御フィールドを展開・・・行くぞ!!」
俺の意識が真下にあるチューリップに向かう!!
その意思に従って弾かれた様に俺のエステバリスが突進する!!
チューリップの上空10m地点・・・俺は真紅の刃に最大限の集中をする!!
瞬間!! 真紅の刃が以前と同じ、200m程の長さに延びる!!
「斬!!!!!!!」
ドスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・
俺のD・F・Sの一撃に・・・クリムゾンのバリアごと両断されるチューリップ。
多分中にいた、巨大なジョロはその姿を見せる事なく切り裂かれた。
「・・・全フィールド防御に移行。」
俺のエステバリスを真紅の防御フィールドが包む。
そして・・・爆発。
ドガァァァァァァァァンンンン!!!!
ズガァァァァァンンン!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ!! フィールドを展開していてもこれ程の衝撃とは!!」
「何処かにしっかりと掴まるんだ皆!!」
「きゃっ!!」
「頑張って!! ルリルリ!!」
そして、大きなクレーターを残して・・・
チューリップはその地から消え去った。
「・・・おさまったね?」
「アキトさん!! 応答願います!!
アキトさん!! アキトさん!!!」
「・・・テンカワ機・・・確認出来ました!!」
「!!
アキトさんから通信が入りました!!」
「すぐ繋いで!! メグちゃん!!」
『ふう・・・何とか無事だよ皆。
御免ね心配ばかりさせて。』
「そうだよアキト・・・心配ばかりかけさせるんだから!!」
「余り無茶をしないで下さいね、アキトさん。」
「無事で良かったです・・・アキトさん。」
『・・・ま、これ位でテンカワがくたばるとは俺は思ってないけどな。』
『え〜、さっきまで必死でアキト君のエステを探してたのは、誰だっけイズミ?』
『そうね・・・私は赤いエステバリスだったと思うわ。』
『お、お前等!! いい加減な事言うなよな!!』
『はははは・・・テンカワ機、今から帰艦します!!』
「了解、アキト!!」
実験が無事に終わってよかったです。
バーストモードは大量のエネルギーがエステバリス内に流れますから
もし何処かに不備があったら爆発してたかも知れませんでしたからね。
まあ、ウリバタケさんが整備に(限って)失敗する事はないと思いますけど。
ビー!! ビー!! ビー!!
(えっ!! なんです、警戒態勢!?)
ドゴォォォォォォォォンンンン!!!!
警告音が鳴った次の瞬間、ナデシコの船体は大きく揺れました。
「何が起こったの!? ルリちゃん!!」
「はい!! ナデシコ後方からの攻撃を受けたようです!!
敵は海中に潜んでいたもよう!!
今の攻撃でフィールド出力60%に低下!!」
でも一体なぜ・・・
前回はこんなことありませんでした。
『何があったんだ!! ルリちゃん!!』
「アキトさん!! ナデシコが攻撃を受けているんです!!
それもグラビティ・ブラストとは違う強力な光線兵器のようで
あと数発も受けたらナデシコのディストーション・フィールドでも持ちません!!」
『発射地点を教えてくれ!!
俺が直接叩く!!』
「はい!! 発射地点は・・・
!!!!・・・待って下さい!!
海中から何か現れます!!!」
な!! なんなんだあれは!!
ルリちゃんが叫んだその数瞬後、
ナデシコ後方の海上に巨大な黒い人型の巨人が出現した。
顔の部分には仮面のような物が付いている。
肩にはラグビーのショルダーと胸にむき出しの肋骨の様なものがあり
と
胸の中心には紅い球体がある。
・・・紅い球体?
確か何処かで見たような聞いたような?・・・
ドゴオォォォォォォンンンン!!!!
俺が疑問に思っている間に
黒い人型の巨人の仮面が輝き、そこから先ほどナデシコが受けた光線が発射された。
それは再びナデシコに直撃しディストーション・フィールドが揺らいだ。
クッ、またフィールド出力が下がったか。
考えている暇はない!!
「ルリちゃん、俺がアイツを『コンニャロ〜!!』
ルリちゃんとの通信をリョーコちゃんの声がかき消した。
『何処のどいつか知らねえが
ナデシコを落とされてたまるか〜!!』
『そうそう!!』
『しょうがないわね。』
「ちょっと待って、三人とも!!」
パイロット三人娘は俺の制止を聞かず巨人に向かって行ってしまった。
俺はすぐに三人を追いかけた。
『くらえ!!』
リョーコちゃん達は俺が追いつく前に
持っていたライフルで攻撃を開始した。
ババババババババッ!!!!
キュイイイィィィィンンンン!!!!
あれはシンジくんのエヴァと同じATフィールド!!
ライフルから発射された弾丸は紅い壁によって防がれた。
そうか、思い出した!!
胸の紅球、あれはシンジくんの記憶で見た使徒のコア。
じゃああれはシンジくんが戦っていた使徒なのか!!
『何だって!!』
『これってシンジくんのエヴァのフィールドと同じじゃない!?』
『ATフィールドだったかしら。』
リョーコちゃん達もATフィールドの事に気が付いたか。
その時、巨人の腕がリョーコちゃんのエステバリスに向けられた。
次の瞬間、手の中心の穴が輝いた。
バシュン!!
手の平から光の槍が発射された。
リョーコちゃんは急いで回避行動を取るが
エステバリスの右腕を吹き飛ばされた。
『『リョーコ!!』』
ヒカルちゃんとイズミさんが悲痛の声を上げる。
『クソッ、避けきれなかった!!』
よかった、リョーコちゃんは何とか無事のようだ。
だが、今度は巨人の仮面がリョーコちゃんに向いていた。
まさかさっきの光線を撃つつもりか!!
俺はエステバリスのスラスターを吹かして
リョーコちゃんの元に向かうが間に合わない。
そして仮面が光を放った。
「リョーコちゃぁぁぁぁぁぁん!!!」