【読む前に】

 このお話は『時の流れに福音を伝えし者』、略して『時福』の合間に書いた作品です。

 息抜きとして書いた作品でもありますので練度も低く、主に『時福』の方を書いているためあまり進み具合もよくありません。

 この作品の読者の感想次第で『時福』の方と連動して書いていこうと思っています。

 もしこの作品に良い評価をしていただき、続きを期待していただくならお知らせ下さい。

 『時福』と共に少しづつ頑張っていこうと思っています。

 

 

 

 

 

 

∞黒のお姫様∞

第二話:それぞれの旅立ち・表

 

 

 

【2185年 ユートピアコロニー宇宙空港】

 

 

 人の流れが激しい空港内、その人込みの中に黒のバイザーと黒のマントを着た長髪の少女がいた。

 

「予定時刻まであと数分ね。 あの人達は私を知らない、けど私は知っている。 

 私と会って正体を知ったらどんな顔をするんだろう。」

 

 少女はふとぼやくようにしゃべっているが、なんだか少し嬉しそうに口元が釣り上がる。

 

 しかし、はたから見れば格好からして変な人にしか見えないので、まわりの視線を集めている。

 

「なんだか、視線が集まってきたような? やっぱりこの格好が原因かな。」

 

 少女は視線には気がついても、理由には気がついてなかったみたいだ。

 

 ふと、少女は数m先を歩く八歳くらいのボサボサ髪の無愛想な少年が歩いていた。

 

「ふふっ、これからいろいろ大変だけど、がんばってね。」

 

 おそらく聞こえていないだろうが少女は少年にむかって言った。

 

 その間にも少年は歩いていき、空港から出ていった。

 

「・・・・・・もうそろそろね。」

 

 そう呟いて間もなく・・・・・・

 

 

    ドグゥゥゥワァァァァァァン!!!!

 

 

 大きな爆発が起きて、回りの人々は大混乱に陥った。

 

「さてと、ネルガルより先にあの人達を見つけないといけないな。 

 フレイア、二人の場所を教えて、それと例のものの転送準備をお願い。」

 

 少女はコミュニケで通信を繋ぐ。

 

《はい、お二人はマスターの十時方向・五十メートル先にいます。》

 

「わかったわ。 一分後に例のものを送って。」

 

《了解》

 

 通信を閉じると少女は十時の方向に向かって走り出した。

 

 しばらく走るとそこには男女が二人、倒れていた。

 

 少女は二人の状態を調べる。

 

「よかった、ちゃんと生きてる。 さっき爆発のショックで気絶していたのか。」

 

 そして少女の隣に光が集まり、光のあとにはそこに倒れている二人とそっくりな【物】があった。 

 それはここに倒れていた二人のクローンだ。 

 これらは二人のかわりにここに置いていく身代わりだ。

 

 少女は二人を自分の傍に寄せると、三人のまわりにディストーションフィールドが張られた。

 

「それじゃ行くよ父さん、母さん。・・・・・・ジャンプ!!」

 

 少女達はその場から消え、そこにあったのは二人のクローンと青いひし形の石だけ。 

 そしてまもなく黒服の男達が現れるのだった。

 

 

 

 

 

 

【2195年 十月一日 火星圏上空】

 

 

 リアトリス艦内、ブリッチでは識別コード名:チューリップのデーターが映し出されていた。

 

「敵は真っ直ぐに火星に向かっています。 

 大気圏突入後、予想到達地点は南極。」

 

 オペレーターがチューリップの動きを報告する。

 

 そして、フクベ艦長は全艦隊に命令を下す。

 

「敵の目的が、侵略であることは侵略であることは明白である。 

 奴を火星に下ろしてはならん!! 各艦、射程に入ったら撃ちまくれ!!」

 

 フクベ艦長の命令と同時に全艦は戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

《マスター、スーパーユーチャリスを使って何をするんですか?》

 

 少女はスーパーユーチャリスの艦長席に座っている。

 

「ユートピアコロニーに落ちてくるチューリップを破壊しようと思って。」

 

《ですが、火星を制圧されてしまえば結局破壊されてしまいますよ。》

 

「・・・・・・それでもユートピアコロニーの人を少しでも助けられる。 

 それに自己満足だけど私の力で自分の故郷を守って見たいの。」

 

《マスターの御心のままに。》

 

「ありがとう」

 

 フレイアは少女の気持ちを察してそれ以上何も言わなかった。

 

 そうしている間に、チューリップは火星の衛星軌道に進入してきていた。

 

『総員待避!! 本艦をぶつける!!』

 

 傍受していたリアトリスの通信からフクベ艦長の最終命令が出された。

 

「フレイア、ジャンプフィールド形成、それからグラビティブラストスタンバイ。

 スーパーユーチャリス最初の戦闘だから、祝砲がわりに出力最大でね。」

 

《了解・・・・・・ジャンプフィールド形成完了》

 

「ジャンプ!!」

 

 

 

 

 ユーチャリスはユートピアコロニーの上空にジャンプアウトした。

 

 上空からはリアトリスの衝突で軌道を変えたチューリップが迫っていた。

 

「グラビティブラストは?」

 

《充電率108%突破。 いつでも行けます。》

 

「グラビティブラスト発射!!」

 

 ユーチャリスから特大の黒い閃光が発射され、

 チューリップは閃光に飲み込まれて間もなく粉々になって消え去った。

 

《チューリップ完全消滅を確認。》

 

「さすが古代火星人の技術。 現代との技術の差がよくわかったわ。」

 

 スーパーユーチャリスの実戦はこれが始めてだったが、予想していた通りとんでもない威力だと実感していた。

 予想していた通りとんでもない威力だと実感していた。

 

「フレイア、ユーチャリスを戻して地球にいくわよ。 

 戸籍や資金とかは用意できてる?」

 

《はい、資金の方も株の売買と、クリムゾンの隠し口座から頂いたので十二分にあります。》

 

「・・・・・・フレイア、株の売買はいいけど、クリムゾンの隠し口座からってのはちょっと。」

 

《いいじゃないですか、隠し口座ですから表沙汰にする訳にもいかないでしょうし、

 クリムゾンは潰す予定なのですから。》

 

 クリムゾンは前の世界で第一次火星大戦前から木蓮と繋がっていた上、

 火星の後継者の支援もしていたので潰しておいた方がいいのだ。

 

「まあそうだけど・・・・・・フレイア、変わったわね。」

 

《え、そうですか?》

 

 フレイアは特に変わっていないように見えるが真面目だった性格がより真面目になって、

 目的には手段を選ばずより有効な手段で敵を倒すと言った性格になってしまった。

 

「とにかく次に行きましょ。 ボソンジャンプ準備して。」

 

《はい。・・・・・・ジャンプフィールド形成完了》

 

「ジャンプ!!」

 

 少女はユーチャリスを隠すと地球へ向かった。

 

 大気圏外にいるリアトリス他艦隊は既に火星から離脱していた為ユーチャリスを確認されることはなく

 変更進路からチューリップがユートピアコロニーに落ちたと連合軍は勘違いしていた。

 そしてチューリップを一瞬で破壊するのを見ていたユートピアコロニーの人々からは【火星の守護者】と呼ばれることになる。

 

 

 

 

 

 

 

【地球 ネルガル本社】

 

 

 何十階にも及ぶネルガル本社ビルの最上階にある会長室にロンゲの男、

 アカツキが立派な机に一人座っていた。

 

 アカツキはデスクウインドウである情報を見ていた。

 

「連合軍が敗退、火星が制圧されるか。 

 弱ったねえ、火星にはまだ我が社の最先端の技術が残ってるって言うのに。」

 

 アカツキは言っている事とは裏腹に、あまり困った表情をしていない。 

 これは性格からくるものなのだろうが。

 

 そこへ一本のメールが届く。

 

「おや、誰からかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・すごいね、これは。」

 

 アカツキは受話器を取ると短縮ボタンを押した。

 

「アカツキだよ。 プロス君、大至急こっちに来てくれないか・・・・・・・・・・・・ああ、ゴート君も連れてきてくれ。」

 

 話が終わると受話器を戻し、頬杖をついて呟いた。

 

「まったく誰がこんなもの送ってきたんだか。 しかしエリナ君がいなくてよかったよ。 

 これを見たら思いっきり騒いでたろうね。」

 

 

 

 自称、愛の伝道師様へ

  始めまして、アカツキ。 メールに付けたデータは気に入った?

 見ての通り、それは社長派の汚職、その他もろもろの公表されるとマズイものばかり。

 私はこれを材料にあなたと交渉したいんですよ。

 あなたもマシンチャイルドの実験には快く思ってなかったでしょうし、

 これだけあれば社長派を解雇してネルガルを完全にあなたのものに出来ますよ。

 こちらの要求は2つです。

 一つ目は一年後に発進予定のナデシコに私ともう一名を乗せること。

 二つ目はマシンチャイルドの保護。 社長派の秘密研究所で実験台になっている子達を助け出してほしいの。

 もちろん助け出した後は非人道的な実験はやらないこと。

 それとこれ以外にもまだデータはありますから断るのは最良に選択じゃありませんよ。

 後日、そちらに行きますので、ナデシコ乗船の契約については自己紹介も含めてその時に行いましょう。

 おみやげも楽しみにしていて下さいね。 クリムゾンの重要機密データですから。

 

 

 

 デスクウインドウのメールにはこのようなことが書いてあった。

 

「これだけのものを手に入れられるなんて何者なんだろうね。 

 まあ今度来るっていってるし、それまでの楽しみにしておこう。」

 

 そして、数分も経たない内に来たプロス達はメールの内容に、アカツキ同様に顔にださない驚きを与えた。

 

 その数日後、現れた少女の要求は簡単に通り

 ネルガルの全ての秘密研究所のマシンチャイルド達は保護された。

 

 

 

 

 

 

【サボセ近辺の草原】

 

 

《もうすぐここに現れるんですね。》

 

「私の記憶が正しければこの場所のこの時間に現れる筈よ。

 落ち着いて話を聞いてくれればいいけど。」

 

《確かにそんな話をしたら誰でも混乱しますからね。

 しかも彼はバッタに追いつめられた直後なんですよね。》

 

「ええ、一年の内にトラウマを無くせればいいんだけど。」

 

《どうせなら記憶操作しちゃいましょうか♪》

 

「冗談でもそんな過激なこと言わないでくれる。

 仮にも彼は私なんだから。」

 

《それでも彼は私のマスターじゃありません。

 私のマスターは生涯あなた独りだけです!!》

 

 そんなに力いっぱい言われてもな〜

 ここ数年でフレイアったらさらに人間らしくなっちゃって。

 それもちょっと変な方向に・・・

 

《あっ・・・マスター、ボース粒子の増大を確認。

 来たみたいですよ。》

 

「ぞれじゃあ自分との初対面にいきますか。」

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました時、空にはナノマシンの輝きが無く

 火星では見る事の出来ない月があった。

 

 ここはもしかして地球? どうして?・・・

 

 たしか俺は火星のシェルターにいて、たくさんの人達がいて・・・

 壁が壊れたと思ったら中から黄色い虫みたいなロボットが現れて・・・

 トラクターで倒したと思ったら後ろのほうで爆発が起こって・・・

 そしたらたくさんのロボットが現れて囲まれて・・・

 思い出せない、その後急に意識を失って・・・

 

 そうだ、アイちゃんは!! 他の皆は!!

 

 俺は起きあがってみると回りには草むらが広がっていた。

 そして首回りに何か違和感を感じた。

 

 ・・・ない 俺の父さんの形見の石が。

 あの時の騒動で落としたのか?

 

 足元を見渡してみたけど落ちていなかった。

 

「ねえ。」

 

 その時不意に後ろから声が掛かった。

 

「はい?」

 

 俺は不意を突かれたので、つい気の無い返事をしてしまったが

 後ろにいた人を見て息を飲んだ。

 

 後ろにいたのは黒服の少女。

 服装ははっきり言って変だったがそうも思っていられなかった。

 黒服、いや黒マント姿とは正反対に綺麗な白っぽい肌

 そして月光で輝いているような黒髪に、

 それよりも輝き深みのある黒い瞳。

 俺は数瞬見惚れてしまっていた。

 

 

「・・・何、ボーっとしてるの?」

 

 俺はハッとなって気を取り直す。

 

「い、いや、な、なんでもないよ。」

 

 俺は多少どもって返事をする。

 なにやってるんだ俺、そんなにうろたえることじゃないだろ!!

 

 俺は気を落ち着かせるため深呼吸をする。

 この子には変に思われてるだろうけど、俺にはそんな余裕はなかった。

 

 今度こそ気を取り直して俺はこの子に話かけることにした。

 

「ところで君は誰?」

 

 俺は何とかどもらずに話しかける事ができた。

 

「私?」

 

 そう言うとその子はふふっと微笑んだ。

 俺は表情にドキッとどころか心臓が鷲掴みにされたような気がした。

 

「私は・・・」

 

 

 俺はこの後に続く言葉に衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前はテンカワメノウ

 あなたの妹よ。」

 

 

 

 

 

第二話:裏に続く




 

∞あとがき∞

 

 ・・・まっ、そういうことなんで

 裏の方どうぞ。

 

 

代理人の感想

・・・・・まー、逆行物のよくある滑り出しかなと。