< それいけ!テンカワアキト >
あの、忌々しい戦争が和平という奇跡の幕を閉じ。
激戦を戦い抜いたナデシコの面々も、今は平和な世界へと溶け込もうとしていた。
しかし、その平和を享受できぬ不幸な男が一人・・・
これは、その男の愛と(自分自身の)平和への戦いの話である。
「・・・ウリバタケ君、生きているかい?」
「ああ、何とかな・・・」
この二人は先日、台風に見舞われてしまい、無人島に流されているのだ。
ちなみにスワンボートは大破している。
「全く、何処なんだここは!
ん、これは・・・。 アカツキ、これが読めるか?」
「・・・かなり古い文字みたいだね。
何々・・・、『此処デ己ノ魂ヲ清メ、我ニ仕エヨ。ソシテ汝壷ヲ売ルベシ』
ウリバタケ君、これはもしかして・・・」
「ああ、間違いないな・・・」
「うむ、我が神発祥の地のようだ」
「「どうやって来た、ゴート(さん)!?」」
「ああ、パラシュートで降りてきた。
それと、彼女達に頼まれてこれをもって来た」
「お、これはサバイバルの道具か?
・・・ということは俺達を助ける気は無いらしいな」
「ゴート、どうやって僕らの場所が分かったんだい?」
「彼女達がここに居ると言っていたのでな。
そして我が神もここに行けとお告げがあった。
彼女に無理を言って志願してきた甲斐があった物だ。
新たな入信者が二人もいるのだからな・・・」(ニヤリ)
二人に迫り来る恐怖!
そしてアカツキとウリバタケに新たなる道が開くのか!?
でもゴートさん、他にも入信者って居るのか?
それにあんたの神って・・・いや、怖いから発言は控えておこう。
さて、この二人を入信(洗脳)される日は遠くは無い・・・?
第四話
戦神、苦悩の日々 前編
俺が高校に通い始めてもう三日が経った。
クラスにも馴染み、仲の良い友人も出来た。
・・・ただ一部の事を除けばだが。
パン パン パン
「何やってんのよ、宗介!」
「いや、急に背後に回られたのでつい反射的に・・・」
「反射的に人を撃ってもいいのか!?」
「俺の育った所で疑わしい行為をした者は何人か死んでいたが」
「お前の育った基準で考えるなぁ!」
スパアァァァァァァン!
う〜ん、ハリセンであそこまで飛ばすなんて・・・。
て言うか何処から出したんだ?
銃声を聞いても驚かなくなったな、俺・・・。
緊急時に動けるかな?
それと教室に行く途中、二人のミイラ男と遭遇した。
ジュンに続いて二人目だ。
あ、ナオさんもそうだったな。(自分がやったのに忘れている)
何か言っていた様だがこんな奴と面識なぞ持ちたくないので無視し、教室に入っていった。
今日の授業が変更になったらしく、1時間目が体育になったらしい。
周りでは他の授業が潰れて嘆いている者、喜んでいる者様々だ。
ちなみの俺は喜んでいるほうだな。
まあ、俺の得意な科目は殆どそれなんだがな。
後は・・・家庭科ぐらいかな?
そして俺が外に出たときのある事件が起こった。
「洋子ちゃん、今日のクラスって確かまどかちゃんの所だよね」
「ええ、まどかのボールって打ちにくいのよね・・・。
おでこの反射で何も見えないし」
「ははは、本人の目の前で言わないほうが良いと思うよ」
「大丈夫よ、何時もの事だし」
ガシャァァァァン!
「あ、下の人アブナ〜イ!」
「アキト、上から・・・」
「・・・え?」
俺が上を向いた瞬間、体が動かなくなった。
ゴートに良く似た石膏像が目の前に迫っていたのだ!
しかも俺とゴートさん似の石膏像の唇が重なる様に!!
俺はソレに恐怖を覚え、逃げる事が出来なかった。
そして、石膏像と見事な接吻を果たしてしまった。
無論、次の瞬間石膏像は俺の頭に当たり砕け散ってしまい、俺も二つの衝撃により気絶してしまった。
ここは何処なんだ・・・。
あれ、アカツキとウリバタケさんじゃないか?
お〜い、アカツキ〜ウリバタケさ〜ん!
『おや、テンカワ君じゃないか。
どうしたんだい、こんなところで?』
いや、なんか悪い夢を見ていた気がしたんだ。
『そうかい、でもこれを持てばそんな夢を見なくなるよ!』
これって・・・お前がいつも使っているあの光る歯じゃないか!?
『ああ、さっき神からのお告げがあったんだ。
汝、この歯を造り売るべしと・・・。
テンカワ君、神って本当に存在したんだね、ゴート君に教えられたよ。
それでこの歯なんだけど今なら一本で10万、フルセットで500万のお買い得だよ!!
今なら何とポリ○ント一年分が付いてくるよ』
アカツキ、いったいどうしたんだ、いつものお前じゃないぞ!
ウリバタケさん、アカツキに何があったんですか?
アカツキがなんか変ですよ!?
『テンカワ、あいつは十分正気だよ。
本当に神は存在するんだ!
勿論俺も会ってこう言われた・・・汝、メガネを造り売るべしってな。
それでどうだ、神がお勧めする逸品は!?
ビームが出るのは勿論のこと、GPSに衛星通信、デジタル望遠機能。
そして録画機能に耳掻きまで出来るという優れもの!!
スパイ御用達のこれがなんと800万というお買い得だぞ!!』
ああ、どうしたんだよ、二人とも!
ゴ、ゴートさん! もしかしてあんたが!?
『テンカワ、お前は我が教団にとって必要不可欠な存在だ。
そして今我が教団に入るとある特典がついてくるぞ!
それは・・・・・』
そ、それは・・・・・?
『我々3人の誰かと一つに成れる権利だ!
テンカワ、私と一つに成らないか?
それはとてもとても気持ちの良い事だぞ』
『テンカワ君、僕と一つに成らないかい?
それはとてもとても気持ちの良い事だよ』
『テンカワ、俺と一つに成らないか?
それはとてもとても気持ちの良い事だぜ』
う・・・うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
く、来るなぁ近寄るなぁ!!
俺の周りを裸になって回るなぁぁぁぁ!!!
どこかに逝けえぇぇぇぇぇ!
ドゴォォォォォォォォォォン!!
な、昂氣をぶつけたのに全く効いていない!?
『テンカワ(君)、(私・僕・俺)と一つに成らないか(い)?
それはとてもとても気持ちの良い事だ(ぞ・よ・ぜ)』
うわああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
はあ、はあ・・・。
ここは・・・、保健室か?
いたた、どうやら人中に当たったようだな。
よ、良かった、夢で・・・・。
しかし何で空から石膏像が降ってきたんだ?
「あははは、大丈夫?
この馬鹿があんな所から石膏像投げちゃうからさあ」
「えっと・・・君は?」
「私は2年4組千鳥かなめ、それで後ろに居るこいつは同じクラスの相良宗介。
それより怪我の具合はどう?」
「あ、ああ・・・、大した事は無いよ。
そうだ、今何時かわかりますか?」
「時間? ・・・下校時間を軽く越してるかな」
そ、それじゃあ今日一日中寝ていたのか?
まあいい、今日は帰ってゆっくり休もう・・・。
色々な事があり過ぎた・・・。
「それじゃ、手当て有難うございました」
そういって誰かは分からないが持ってきてくれたバックを手にかけようとした時・・・
「動くな、その鞄の中身、調べさせてもらう!」
一言も喋らなかった男、相良宗介が銃を向けて言う。
俺が何か悪い事でもしたのか!?
そんなやりきれない思いばかりが募っていた。
「ちょっと、怪我人になんてことしてんのよ!」
「そうは言ってもこれには然るべき理由がある。
たとえ手負いの者だとしても手を緩める訳にはいかん」
プチン♪
そう、何かが切れた音が聞こえた。
「おうおう、よく言った!
ちょっとツラかしてもらおーじゃないの!!」
そう言うとかなめちゃんは宗介を連れて出て行った。
あの、俺の鞄は・・・?
「・・・・・」
「・・・・・!」
や、やっと見つけた・・・。
それにしても足が速いな、二人とも。
「そうだ、君は常に危険な立場に居る。
そしてその君を護衛する為に<ミスリル>から派遣された兵士―――それが俺だ」
なんだ、ミスリルなんて聞いた事無いが・・・。
「えと・・・ミスリルってあんたの星?」
「違う、何れの国にも属さない軍事組織だ。
俺はその特別対応班に所属している。
専門分野は偵察・サボタージュとASの操縦、階級は軍曹だ」
ASか、確かクリムゾンが一時期製作していたと噂していたが・・・。
「あんた何トチ狂ったこと言ってるの!?
もう戦争は終わってるのよ!
全然説得力が無いじゃない!」
「いや、これは全部真実だ」
「じゃ、そう言うことにしとけば?」
かなめちゃんはそう言うと怒りながら帰っていった。
「なあ、宗介といったか?」
「む、何の用だ?」
「鞄返して欲しいんだけど」
「忘れるところだった。
それに怪しい物は入っていないようだ・・・」
結局調べたのか?
まあ別に怪しいまれる様な物は入れてはいないが。
「所でお前はさっきの話を聞いたのか?」
「・・・えっと、何のこと?」
やばいな、これじゃすぐばれるな・・・。
「む、それなら良い・・・」
・・・違う意味で一般教養が欠けてるな。
まあ鞄は返してもらったしゆっくり帰るか。
そうだ、一旦教室に戻って忘れ物無いか見ないとね。
よし、忘れ物は無いみたいだし帰ろうかな。
あれ、この部屋に洋子ちゃん達の気配があるけど、何やってるんだ?
まあ本人に聞けば分かるんだが、今日の所はゆっくり帰りたいからな。
―――洋子ちゃん達の気配が消えた!?
様子を見ようと部屋の中に入るが・・・中はただの用具室で人間の気配は微塵も感じ取れなかった。
・・・やっぱり疲れてるんだな今日は早めに寝よう。
バタンッ!
何だ、いきなり扉が閉まるなんて・・・。
誰かのいたずらかと思った瞬間、この部屋が急に眩しくなって・・・。
シュン!
「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」
幻かな、それとも頭の打ち所が悪かったのかな?
俺は頭の中で全てを否定しようとしたが、現実はそう甘くなかった。
まるで珍獣でも見るように12の視線が送られてくる。
そして逃げようと思い、ボタンみたいな物に手を伸ばそうと思った瞬間・・・。
「逃がすかっ!」
投げられた缶コーヒー(飲みかけ)が俺に向かって飛んでくる。
いつもの俺なら避けられたが今は避ける気力が全く無い。
更に追い討ちをかける様に、中身が飛び散って視界も塞がってしまう。
ガンッ!
当たった所はまたしても人中だった・・・。
幾ら俺でも同じ場所、しかも急所に喰らえばやばい。
それにしても、なんか運が落ちてきたかな。