機動戦艦ナデシコSS 二人のテンカワ

 

第五話  別れ、そして出会い

 

 

 

 

 

 

 

木星圏都市部郊外

 

 

「アキト、ここが木星蜥蜴の本拠地なのか?」

 

『ああそうだよ、正しくは、木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び、

 他衛星小惑星国家間、反地球共同連合体、略して、木連。』

 

「何だ?その長ったらしい名前は?」

 

『ま〜、正しい呼び名は、追々覚えれば良いから、とりあえず、

 木連と覚えておけば良いよ。』

 

「木蓮ね〜……、これからの行動は、打ち合わせどうりに、やれば良いわけだろ?」

 

『ああ、よろしくたのむよ、兄貴。』

 

「ああ、まかせておけ。」

 

『それじゃ、俺は、火星に戻るよ。』

 

「………ああ、元気でな。」

 

『兄貴も、元気でな、三年後、また会えるから……。』

 

「……三年後?ああ、判った。」

 

『それじゃ、また…………ジャンプ!!』

 

カイトの視界から、青い光と伴に、アキトの姿が消えた。

 

「ああ、それまで、お前も生き抜けよ。」

 

カイトは、アキトが消えた場所に向かい、呟いた。

 

「さ〜て、とりあえず、敵さんに捕まえて貰わないとな。」

 

カイトは、そう呟きながら、市街地へ向け、歩き出した。

 

しばらくして、火星では……。

 

『ふ〜う、兄貴も届けた事だし、俺も、地球に旅立つまで、後、少しだな。

 兄貴とまた会うまでの、三年間にあれだけは、完成させておかないとな。』

 

その時アキトも、これから訪れる、旅立ちに向け、物思いに、ふけっていた。

 

『でも………、イネスさんと、マリ先輩に、兄貴の事どうやって、説明しよう?』

 

【説明!!】

 

この時、アキトの言葉に、反応した女性がいた……かもしれない。

 

『………とりあえず、寝るか?』

 

場面は戻って、木星……。

 

カイトは、街中にある交番らしき建物の前に居た。

 

「さて、出頭するかな?」

 

そう呟きながら、建物の中に入って行った。

 

「あの〜、すいません。」

 

「はい、何でしょうか?」

 

そう答える、警官らしき人物。

 

「ここって、何処でしょうか?」

 

「はい?」

 

「ですから、ここって、何処ですか?」

 

「ここですか?」

 

「はい」

 

「ここはですねー、ガニメデの第一都市、エドです。」

 

「エドですか?」

 

「はい、そうです。何かお困りですか?」

 

「はい……、私、どうやら、記憶喪失の様なんです。」

 

「はい?記憶喪失……ですか?」

 

「ええ、そうみたいなんです。」

 

「……それなら、病院へ、行かれた方が、いいですね。」

 

「病院ですか……。」

 

「はい、それじゃあ、病院に連絡を取って、迎えに来てもらいましょう。」

 

「あっ、はい、お願いします。」

 

(おいおい、こんなんで、信用するのか?)

 

「ええ……、はい……、そうなんです……、それじゃあお願いします。」

 

「あの〜。」

 

「ああ、今すぐに、病院の方から、迎えが来ますので、安心して下さいね。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「いえいえ、いいんですよ。」

 

五分後……。

 

「すいませ〜ん。病院の物ですけど〜。」

 

拍子抜けするような、明るい声で、12〜3才の女のコが、入って来た。

 

「ああ、お待ちしてました。この人が、さっきお話した人です。」

 

「この人?……ジロジロ……。」

 

「何ですか?」

 

とっさに答える、カイト

 

「ふ〜ん、判りました。確かに、病院まで、つれていきます。それじゃ〜こっちだよ。」

 

そう答える、女のコ。

 

「どうも、ありがとうございました。」

 

御礼を言う、カイト

 

「いえいえ、どういたしまして。では、お願いします。」

 

にこやかに、言う警官。

 

「は〜い。」

 

そう、言い残し、交番から、出て行く二人。

しばらく歩いていたら、横に居る女の子が、質問してきた。

 

「そう言えば、あんた、名前は、何て言うの?」

 

「僕ですか?……う〜ん、何て名前か、思い出せないんですよ。」

 

「ジロジロ、何〜んか、怪しいな〜。」

 

「えっ?どうしてですか?」

 

(何だこのコ、俺の嘘に気が付いたのか?IFSからの情報で、

 完璧に記憶喪失の、症状をコピーしているはずなのに?)

 

「だって、今までに、何人もそうゆう人と、会って来たから、

 大抵そう言う人って、嘘ついてるんだもん。」

 

「そんなに、いるのですか?」

 

「いるいる、今までに、20人ぐらい、見たから。」

 

「は〜ですが、私は、本当に、何処から来たのかも、判らないんです。」

 

カイトは、交番に入る前から、記憶喪失の症状のデータを、IFSから、

引き出して、今まで、話してきている。話し方には、殆ど感情が、こもってないはずだ。

 

「う〜ん、でもあなたは、本当に記憶喪失みたいね。大抵の人は、

 今の質問で、自分の名前とか、答えるから。」

 

「は〜、所で、あなたの名前は、何と言うのですか?」

 

「私の名前?私は、ユキナ、白鳥ユキナ。よろしくね。」

 

「ユキナさんですか、よろしくおねがいします。」

 

「所で、そんなに丁寧な、言葉使いじゃなくてもいいよ。」

 

「は〜そうですか。それでは、普通にしゃべらしてもらうね。」

 

「そうそう、その方が、自然だよ。後、ユキナさんじゃなくて、ユキナちゃんでいいよ。」

 

「判ったよ、ユキナちゃん、所で、危ないよ。」

 

「危ない?何が?」

 

「何って、そんなに先に行くから、クルマが、突っ込んでくるよ。」

 

「へ!クルマ?」

 

その時、ユキナに目掛けて、クルマが突っ込んで行く所だった。

 

「キャ、キャー!!」

 

「危ない!!ハッ!!」

 

カイトが、ユキナ目掛けて、跳びこんだ。

 

キキィー!!

 

「気よ付けろ!!危ねーだろーが!!」

 

クルマのドライバーが、カイト達に向け、そう叫んだ。

 

「すっ、すいません!!」

 

誤るカイト。

 

「まったく!!」

 

そう言い残し、ドライバーは、去って行った。

 

「大丈夫?ユキナちゃん?怪我はない?」

 

心配そうに、尋ねるカイト

 

「う、うん、大丈夫。」

 

まだ、驚きのあまり、放心状態のユキナ。

 

「そう、よかった〜、それより立てる?」

 

そう言い、手を差し伸べる

 

「あっ、ありがとう……、君は、大丈夫?」

 

顔を真っ赤にしながら、答えるユキナ。

 

「ああ……、僕は大丈夫だよ。」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「ああ、今の出、どうやら、名前だけ、思い出したみたいなんだ。」

 

「え!!思い出したの!!」

 

「ああ、でも、思い出したのは、名前だけみたいなんだ。」

 

「そう、で、名前、何て言うの?」

 

「カイト」

 

「カイト?苗字は?」

 

「………判らない。」

 

「そう……、でも、一つ思い出したから、良いじゃない。」

 

「そう……だね。」

 

「…………とりあえず、病院まで行こうか。」

 

「ああ……。」

 

「…………。」

 

そうした事がありながら、二人は、病院へ着いた。

 

 

日にちが変わり、次の日の朝、火星では……。

 

 

【[えっ!!]】

 

【何ですって!!カイトくんが、居なくなった!!】

 

[本当なの!!アキトくん!!]

 

『はい、朝起きたときには、もう……。』

 

【何か、手掛りはあるの?】

 

『手掛りと言うか、置手紙が、あったんですよ。』

 

[手紙?]

 

【その手紙は?】

 

『ここに有ります、後、もう一通、マリ先輩宛に。』

 

[私宛?カイトくんから?]

 

『はい、これです。』

 

手紙を、マリに差し出すアキト。

 

【置手紙の方は?】

 

『それは、こっちです。』

 

それを、手渡すアキト。

 

【どれどれ】

 

手紙には、こう書かれていた。

 

「アキトへ、俺は、自分自身を、心と身体を鍛える為に、旅に出る。

 恐らく、かなり遠くへ行くつもりだ。

 アキト、あとは、お前だけでも、エステの方は、作れるだろう。

 戦艦の方は、イネス所長と、マリ先輩と協力して、作り上げてくれ、後の事を頼む。

 あと、そこに添えてある手紙を、マリ先輩に、渡してくれ

 イネス所長と、マリ先輩に、よろしく伝えてくれ。

 身勝手な俺の行動を、許してくれ。        カイト」

 

【何て事なの!!いきなり居なくなるなんて!!】

 

[カイトくん………。]

 

【それと、マリさんの方は、何て書いてあるの?】

 

[あっ、はい………………カイトくん。]

 

マリは、顔を真っ赤にして、涙を堪えていた。

 

【何て書いてあったの?】

 

[はい、ほとんど内容は同じです。後は…………。]

 

【後は……何?】

 

[あっ、いっ、いえ何でも無いです。]

 

またまた、顔を真っ赤にするマリ。

 

【………ハハ〜ン、ナルホド、そうゆう事。】

 

ニヤケナガラ、そう答えるイネス。

 

『フッ!!』

 

同様の、そぶりを見せる、アキト

 

【でも……、何処行ったのかしら?】

 

『それは、僕にも解りません。』

 

[…………。]

 

未だに、顔が赤いマリ

 

【ま〜、ネルガルの、調査力で探すとしますか?】

 

『待ってください。兄貴の好きな様に、やらせてやって下さい。』

 

[私も、そう……思います。]

 

【……あなた達、……分ったわ、好きな様にさせましょう。】

 

[『ありがとう、ございます。』]

 

 

 

 

その時、カイトは……、病院に居た。

 

 

コンコン、カイトの病室のドアがノックされた。

 

「はい、開いてますよ。」

 

自然に答えるカイト。

 

「こんにちは〜、カイト」

 

元気の良い、女のコが入ってきた、ユキナだ。

 

「こんにちは、ユキナちゃん。」

 

笑顔で答えるカイト。

 

「あのね〜、今日はね……この前のお礼をしに来たの。」

 

「お礼?お礼は、この前ので、充分だよ。」

 

「違うの、あの、お兄ちゃんが、お礼をしたいって。」

 

「お兄さん?」

 

「うん、読んでも良い?」

 

「ああ、全然構わないよ。」

 

「お兄ちゃん……、入って来てもいいよ。」

 

そう、ユキナが言うと、病室の外から、22〜3才の、男性が入ってきた。

 

「はじめまして、ユキナの兄です。妹が大変お世話になったそうで、

 今日は、お礼を言いに伺いました。」

 

その男は、丁寧な言葉使いで、話し掛けて来た。

 

「はじめまして、カイトです。どうもご丁寧に。」

 

その雰囲気につられて、カイトまで、丁寧になる。

 

「お兄ちゃん!!そんなに硬い挨拶しないでヨ!!」

 

「ユキナ!!妹の命の恩人に向かって、そんな事出来るか!!」

 

「いえ、いいんですよ、私もその方が楽ですから。」

 

「そうそう〜」

 

「は〜、では、改めて、妹を助けてもらって、ありがとうございます。」

 

「いえいえ、たまたま、一緒に居ただけですから、

 それに、怪我が無くて、良かったですね〜。」

 

「うん!ありがとうね。」

 

「こらユキナ!!」

 

「いえ、いいんですよ。」

 

「は〜、どうもすいません。」

 

「所で、お兄さんの、お名前は?」

 

「あ〜すいません、わたしは、木連、優人部隊少佐、白鳥九十九と、申します。」

 

「九十九さんですか。」

 

(おいおい、何てラッキーなんだ、ユキナちゃんの、兄貴だったのか、

 アキトの言っていた、白鳥九十九って、思いっきり楽になった。)

 

「そうだよ、お兄ちゃん、ゆめみずきって言う、戦艦の艦長もやってるんだよ。」

 

「こらユキナ!余計な事は、言うんじゃない。すいませんカイトさん。」

 

「いいんですよ。九十九さん。」

 

「あっ、それよりカイトさん、生まれは、どこですか?」

 

「生まれ?………すいません、解らないんです。」

 

「解らない?どうゆうことですか?」

 

「お兄ちゃん!!カイトは、記憶が無いの。」

 

「えっ!!すっ、すいません。」

 

「いえ……いいんですよ、あまり、思い出したくない記憶かもしれませんから。」

 

「「……………。」」

 

黙って聞いている、白鳥兄弟。

 

「このまま、思い出せないで、別人として、生きていった方が、

 良いのかもしれません。」

 

そう、呟くカイト

 

「「……………。」」

 

「あの、お礼と言っては何ですが、もしカイトさんさえ良ければ、

 自分が、新しい戸籍を、作りましょうか?」

 

「えっ!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

いきなりの、九十九の申し出に、カイトと、ユキナが驚いた。

 

「私は、記憶を無くした事が有りません、でも、無くしてしまった記憶が、

 もし辛くて苦しい物なら、忘れたいと思うかもしれません。」

 

「九十九さん……。」

 

「お兄ちゃん……。」

 

「新しい戸籍を作って、しばらく生活して、もし、記憶が戻って、それが、

 もし、辛くない物なら、元の生活に戻れば良いじゃないですか、それとも、

 記憶が戻っても、戻らなくても、新しい戸籍で、生活するでも、良いじゃないですか。」

 

「お兄ちゃん……。」

 

「…………。」

 

カイトは、九十九の申し出が、思ってもいなかったので、少し戸惑っていた。

 

「答えは、直ぐでなくてもいいです。じっくり考えてください。」

 

「九十九さん、ありがとうございます。その申し出、喜んでとまではいきませんが、

 ありがたく、受けさせてもらいます。でも……大丈夫なんですか?九十九さんは?」

 

「ええ、私は、全然、大丈夫ですよ。優人部隊の人間は、あらゆる分野に顔が利きますし、

 データも、完璧に作り変えますよ、直す時も完璧にやります。」

 

「お兄ちゃん………いいの?そんな事しても。」

 

「ああ、心配いらん、妹の命の恩人に対しての、お礼だ」

 

「九十九さん……ありがとう。」

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

あとがき

 

ど〜も〜TAKAです。

カイトが木星に旅立ちました。

そこで、偶然会った、白鳥兄弟、そして、いきなりの、木星人への転換。

全てが、うまく行きすぎ、この先、どのような事が起きるのか、

まだ、私も考えていません。う〜んどうしよう?

とりあえず、今の所、この先は、前編、後編にして、

アキトの話を前編、カイトの話を後編と言う感じで、行こうと思っています

それでは、第六話のあとがきで、お会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

TAKAさんからの連載投稿第六話です!!

カイトの演技力については置いといて(苦笑)

残留組の間では、思いっきり悪者ですね、カイト・・・

それを煽るアキトが凄い(爆)

何時からこんなに器用になった、アキトよ(笑)

しかし、根本的にお人好しだな九十九って・・・

 

それでは、TAKAさん投稿有難うございました!!

 

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