『テンカワ』
十分に手加減してギガノスのメタルアーマーを1機ずつ戦闘不能にさせながら、W17からの問いかけにアキトが答える。
「どうした?」
『アカツキナガレのバイタルに異常。これは、気絶だろう』
「何!?」
そう思いつつ、アキトはふと、アカツキを何に乗せたのか思いだし、ヴァイサーガの身をよじって回避軌道を取らせながらがっくりと肩を落とした。
「しまった……ソードブレイカーのフラッシュバックか……興味を持ったら使うよな、アカツキだしな」
『今からではフォローも間に合わない。撃墜1機に戦死者1名か』
嫌になるぐらい冷静なW17の指摘に、アキトは頭を大きく振った。
「冗っ談じゃないっ!!」
返す太刀で眼前のメタルアーマー・ゲルフの両腕を斬り飛ばし、アキトは一直線にアカツキのアシュセイヴァーの元へ向かった。
「そこまで慌てなくても、問題はないのだが」
あまりに焦っていたため、アキトはW17のつぶやきを聞き落としていた。
同じ光景はオービットベース側でも確認していた。
アキトがあっけなくプラクティーズの電子戦用カスタムゲルフを落としていたため、ジャミングが解除されたのだ。
「あらあら、会長さん、頑張ったのに」
薄い笑みを浮かべながら、3次元解析されたレーダーの状況を映し出すモニターを見てレモンがつぶやく。
対照的に真っ青な顔をしているのは会長秘書のエリナだ。
「……道楽にも程があります! 自分の命を何だと思っているんですかあの人は!! こんなところで出ていったって破嵐万丈の助けは来ないのにっ……!!」
覚えのある名前を聞き、おや? とレモンが視線を向けるが、さほど気にすることもなくモニターを見続ける。
「アカツキ君の身に何が起こったのかね?」
レモン達の目の前で指揮を取る幸太郎が確認の質問を投げかける。
「どうやら、全方位攻撃の情報のフィードバック過多が原因のようです」
「猿頭寺さんの言うとおりですわ。IFS、イメージフィードバックシステムは機体の制御を思考波でダイレクトに行うことができるのが特徴。であるが故に、アシュセイヴァーのソードブレイカーの遠隔同時攻撃の情報が一度に返ってきて、ナノマシンを制御する補助脳がオーバーフローしましたの。バイタル情報から見て、脳に過負荷がかかって気絶したというところかしら?」
軽い口調で説明しているが、最後の状況を聞いてほとんど全員が顔を青くした。
ドッグファイト中に気絶。
どう考えても死亡確定である。
ところが、その情報を真っ先に入手して分析しているはずの耕助と、端で解説していたレモンは落ち着き払っていた。
「さて、騎兵隊の捨て身の一槍は間に合うかしら?」
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