一方、ポルコートの中で万丈との通信を終えたデュオは、レーダーモニターを真剣ににらみつけていた。
「部隊を半分に分けて半包囲の態勢か。足の早い機体を先行させて混乱した隙に、ってところだな。やるねえなかなか」
『で、私たちはどうするのかな?』
スピーカーからポルコートの合成音声が聞こえる。
最初は面食らったが、いい意味で深く物を考えないデュオはもうこの状況にも慣れている。
ポルコートのレーダーはもとより、衛星回線経由の情報解析やロボットにあるまじき「臭いを感じる」イオンセンサーなど、破格の情報解析能力は歴戦のデュオをして実戦で通用すると思える出来栄えだった。
なら、活用しない手はない。
この辺の割り切り、判断の速さがデュオを生き残らせてきたといっても過言ではないだろう。
「相棒を使うしかないだろう。お前さんのミラーコーティングと俺の相棒のハイパージャマーなら、そうそう見破られるとも思えないしな」
『電子戦装備の機体がいれば容易だ』
「高々2個小隊の作戦運用で電子戦処理用の機体がいるほうが珍しいって。相手にするのが強行偵察部隊だってんなら話は別だけど」
数秒の沈黙の後、ポルコートが答える。
『……なるほど、その推論は信頼性が高いな。君の意見を受け入れよう』
「おっけー。できれば、もうちょっと軽い受け答えもできるようになってくれよな」
そういってデュオがコンソールを軽くたたく。
やめてくれ、こっちはデリケートなんだ、という声が聞こえたような気がするが、とりあえず無視した。
「こっちはせいぜい派手に暴れておくから、突入組の回収よろしく」
『了解した』
腕に装備した通信ユニットにコマンドを入力すると、暗がりの中に赤い光が2つ灯った。
「頼んだぜ、相棒」
デュオがポルコートのボンネットを一つたたいて、闇の中へ消えていく。
『相棒、ね』
WシリーズのAIマトリクスを組み込むときに、その開発者であるレモンはいまだ大型コンピュータの中にあるだけのプログラムだったポルコートの原型AIにこんなことを言っていた。
「パイロットは自分の命を預ける機体を自分の伴侶や親友のように扱うわ。感情のあるなしに関わらずね。猿頭寺さんも私も、あなたたちが人間のよき友人となれるように研究しているのよ」
自分の乗るガンダムを『相棒』と呼ぶパイロットが、今また超AI搭載のロボットを『相棒』と呼ぶ。
その事実はポルコートのメモリに確かに記録されていた。