スーパーロボット大戦 exA

 

第17話 リフト・オフ

「終わりだよっ!」

 ガンダムサンドロックのヒートショーテルが、ディストーションフィールドをものともせずにバッタを真っ二つにする。
 コクピットのカトル・ラバーバ・ウィナーは四散するバッタには目もくれずに次の獲物を探した。そこに、

「カトル様!」

 髭を蓄えた強面の男から通信が入る。

「ラシード? どうしました?」
「まずいです。ディストーションフィールドでビームライフルがはじかれるのは聞いていた通りなのですが……」
「まだ何かありますか?」
「こいつら、機体が再生します」
「何だって!?」

 強面の男……ラシードに言われてカトルが周りを見てみると、確かにサンドロックのように一刀両断するならば撃破できる。
 だが、マグアナックによるバズーカやマシンガンなどの攻撃では、直撃が与えられないと表面装甲の傷がなくなっていくのが見た目に分かった。

「バッタは、AI制御の無人機動兵器だということでしたが、それ以外のファクターがあるってことなんだろうか……」

 そんなことをつぶやきながらも、カトルの、サンドロックの剣腕は衰えることはない。
 首を振って、カトルはサンドロックのバーニアを全開にして飛び上がった。

「行かせるわけにはいかないよ!」

 気合一閃、サンドロックがバッタを斬り伏せるが、その数は減るどころかどんどん増えていく。
 この時代において驚異的な練度を誇るマグアナック隊と、特機とも十分以上に渡り合えるガンダムだとしても、数の暴力に対抗するには限度がある。
 戦争は物量だ、という意見はすなわち真理なのだ。

「カトル様、このままでは持ちません!」
「全員が無理に白兵戦闘に参加しなくてもいいから、バッタを散らばらせないように威嚇射撃。陣形の歪んだところを切り崩していって。あと20分でいいんだ、みんな、頼みます!!」

 ラシードの悲鳴に対してカトルは冷静に指示を出す。だが、内心はかなりあせっていた。

「ウイングかヘビーアームズぐらいの広域火力があれば……なんて、ないものねだりをしても仕方がないか」

 カトルの小さな呟きに応える者などいない。今は、ここを守らなければならないからだ。

「まぁ、負け戦は慣れたものだし、そのためにあるガンダムだから」

 次の標的を定めてサンドロックが再び飛び上がる。バッタを1体叩き落したが、その隙を突いて数体のバッタが脇をすり抜けていってしまった。

「うわっ、しまった!」

 バーニアによるジャンプではバッタとの空中戦は無理だ。機動力が違いすぎる。
 それをカバーするための陣形をとっていたのだが、物量差の限界を超えてしまったのだ。蟻の穴からでも堤防は決壊する。

「このぉっ!!」

 追いすがろうとするが、ヒートショーテルの切っ先のぎりぎりを掠めてバッタは飛び去ってしまう。ディストーションフィールドで守られた装甲は見る見るうちに再生していく。
 自由落下の始まったサンドロックではもはや追いつく術はない。
 万事休す、かと思われたそのとき。

 サセボの上空に閃光が走った。

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