第16話 「決意
×戸惑い
×北辰襲来」
*注:サイド2は本編の流れとは何の関係もありません。
今現在アキトさんとカイトは月にいます。
私達は今からアキトさん達を迎えに行く途中です。
そうそう、イツキさんも無事ですよ。
因みに白鳥さんは無事に乗船しました。
過去同様にミナトさんとの出会いがあったようです。
今は事情を知るナオさんに平和的に連行してきてもらい、取調べ中。
「さて、彼にはどう動いてもらいましょうか・・・
・・・どうしたの?ラピス。」
私は振り向くと、隣で作業をしていたラピスが震えていた。
「どうしたのラピス?」
アキラも気付いた様だ。
「・・あ、あ・・・く、くる、アイツが・・・・」
「来るって誰が?」
ラピスがこんなに怯える相手・・・
「!!まさか!!ラピス!!アイツなの!!」
「・・・」(コクッ)
「・・・そう・・・」
あいつが来る・・・
「ねえ姉さん、アイツって?」
「・・・オモイカネ、艦内の映像を出せるだけ出して。
ラピスはアキトさんに知らせて。」
私はアキラの問いを無視し、ウィンドウを開く。
『了解。』
ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!・・・・
映し出された映像全てを無言で睨む。
サッ!!
!!やはり・・・今奴が居たのは・・・相転移エンジンの制御室!!
「オモイカネ、相転移エンジンの制御室の映像を!!」
そのころ
ビィー!!ビィー!!ビィー!!
警報の鳴り響く月面プラント
「なんだと!!どう言う事だ!!」
俺は我を忘れ整備員の襟首を掴み片手で持ち上げる。
「で、ですから、小型相転移エンジンが盗まれました。」
ドサッ!!
「どうする、アキト。」
ナデシコには北辰が、ここには月臣が。
くそっ!!こんな時に!!
「カイト、お前は先に戻ってろ!!
俺もこっちが済んだらすぐに行く!!」
「了解。」
その頃、ナデシコのブリッジ
(今からそっちにカイトが跳ぶ。)
(解りました。
カイトは相転移エンジンの制御室の爆弾を解体してください。)
(!!しかし!!)
(北辰を退けてもナデシコが爆破されては意味がありません!!)
(・・・解った、でもルリ・・・)
(大丈夫ですよ。)
(死ぬなよ。)
(ええ。)
プシュ!!
カイトとの通信を終えた時、ちょうどブリッジに
パイロットとゴートさん、ナオさん、シキさんとメインのメンバーが集まってきた。
「どうしたのルリちゃん、警報まで鳴らして。」
「侵入者です。」
「侵入者?白鳥さんの事?」
「いえ、違います。
今から来るのは暗殺のプロです。」
「どう言う事?」
「今説明している暇はありません。
(ナオさん、シキさん、ちょっと。)」
私はナオさんとシキさんに耳打ちする。
そのころ月面では
ドゴォォォォン!!
「ちっ!!時間が無いのに!!」
元々ガイアと合体して戦闘する事を前提に作られた機体だ。
ガイア無しでは動きが悪すぎる。
!!ナデシコでは戦闘が始まったか。
急がないと。
ルリ!!無理をするなよ!!
ナデシコブリッジ
今私の前では信じられない光景がひろがって居る。
ルリちゃんに呼ばれてブリッジに来てすぐ、
ブリッジのドアを爆破して7人の怪しい男が入ってきた。
戦闘訓練を受けているパイロットが一撃。
白兵戦のプロのゴートさんも・・・
ドサッ!!
・・・5秒ともたなかった。
「つまらんな、これが地球最強の戦艦か?」
先頭に立つまるで爬虫類のような目をした男が呟く。
「さて、あの漆黒の戦神、テンカワ アキトの乗るブラックサレナとやらのデータを渡してもらおう。」
その男が私の方を向き、要求する。
「御断りします。」
そのセリフを言ったのは、ルリちゃんだった。
「遺伝子細工か、そこの二人の小娘にも用がある。」
今度はルリちゃんとラピスちゃんにそう言う男。
ルリちゃん達はさっきから様子がおかしい。
今も、ルリちゃんを先頭に、やや後ろ両脇にナオさん、シキさん
シキさんの真後ろにメティちゃん、ナオさんの真後ろにアキラちゃん。
そして最後尾にラピスちゃん。
と言った陣形の様な物を取っている。
「・・・貴様に利用されるくらいなら!!」
そう言って数歩前に出て、ポケットから何かを取り出す。
ソフトボ―ルより少し小さいくらいで、手が邪魔で見えないけど中央に絵が書いてある。
それで、天辺に栓みたいな物が・・・
!!まさか、手榴弾!!
ルリちゃんはそれを胸の前に持ってきて、栓を抜く。
え?
ドッゴォォォォオオオオオオン!!
鳴り響く爆音、立ち上る煙・・・
「自爆したのか!!」
あの男の声が聞こえて、私はやっとルリちゃんのした事を理解できた。
「う、うそ・・・でしょ・・・」
「そんな・・・」
「ルリちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
私はあらん限りの声で叫んだ。
その時。
ザクッ!!
「ぬっ!!」
ザシュ!!
ブシュゥゥゥゥ!!
ザクザクザクザク!!
シュン!! ボトッ!!
「うぎゃぁぁぁぁぁあああ!!」
「グワァアア!!」
「どうした!!」
ザシュザシュザシュ!!
「なんだ!!、何が起こった!!」
「ガハッ!!・・・」
「クッ!!」
まだ晴れぬ煙の中で何かが起こっている。
そして、煙が晴れたそこには
「・・・訂正しよう。
流石地球最強の戦艦だ、楽しませてくれる。」
爬虫類の目をした男の左腕には槍が刺さっていた。
そして、周りを見渡すと、
侵入して来た男達は、一人は首から血を流し倒れている。
一人は黒い剣のような物で両手両足を貫かれ、行動不能、
更にもう一人血を流して動かない者。
それから、右手を切り落とされている者。
そして、残りの二人はシキさんとナオさんと対峙している。
「その歳で『神速』を使えるとはな・・・」
煙が完全に晴れ,その男と対峙していたのは
ルリちゃんだった!!
「ル,ルリちゃん!!
よかった、びっくりさせないでよ。
偽者の爆弾なんて、心臓に悪いよ。」
私は気が抜けてまだ敵が目の前にいるというのに座りこんでしまった。
「偽者?違うな、あの手榴弾は威力は確かに低かったが、
人一人なら軽く殺せるほどの威力がある本物だ。」
「え?」
男の言葉に私はもう1度ルリちゃんを見る。
所々服が焼け焦げている・・・
それに血の跡?
そして、その手には黒い剣のような物が握られていた。
「この剣は,『黒鍵』と言って、昔、教会が人外の者を狩る時に使った物。」
そう説明し出したのはメティちゃん。
あの子の手にも黒い剣が何本も握られている。
「貴方達みたいな外道に使うにはピッタリの武器でしょ。」
そう言って笑うメティちゃん。
そう、その笑顔は何時もの笑顔。
自然過ぎるその笑顔が今は凄く不自然で
今はとても怖い・・・
「両腕落とすつもりだったのに、
仕掛けるのに1分も掛かった上にこれじゃあ、やっぱり修行が足りな過ぎるか・・・」
今まで気付かなかったけど、アキラちゃんも例の男達と対峙している。
その手には鈴のような物が握られている。
今なら、煙と血のおかげで解る、その鈴からは糸のような物が出ている。
そう言えば何時も着けているリボンを外している。
「しかし、『虚を突く』ってあそこまでするとは思わなかったぜ。」
「まったく、アキトの周りにはなんでこんな非常識な奴ばかりなのかねぇ。」
敵と対峙しながらも冗談の様に喋る二人、
でも隙は無いのだろう。
一体私の前では何が起きているの?
私以外の人も唖然としている。
ザシュ!!
ルリちゃんと対峙している男が腕から槍を抜く。
ヒュンッ!!
それをルリちゃんに向かって投げる!!
パシッ!!
それを受け止めたのは・・・
ラピスちゃん!!
「もう私は人形にはならない!!」
そう叫ぶラピスちゃん。
スッ
そのラピスちゃんを手で制し、ルリちゃんが前に出る。
そして、黒鍵と言った武器を十字に構え
「我等はアキトの代理人
人誅の代理執行者
我等の使命はアキトに仇なす愚者の
その肉の最後の一片までも殲滅する事。
行くぞ!!北辰!!」
その声を合図に死闘が始まる。
ルリちゃんがその北辰と言った男と
シキさん、ナオさん、メティちゃんが手負いの一人を含む3人の男と。
私はもう訳が解らなくなって、事態を傍観する事しか出来なかった。
シュッ!!シュッ!!シュシュッ!!
空を切る黒鍵。
ルリちゃんの攻撃をかわす北辰。
「面白い、『神速』を使い、二刀流剣術のできるマシンチャイルド。
面白い素材だ、わざわざ我が出向いたかいがあるというものだ。」
シュ!!カキィィン!!
「・・・」
無言で戦うルリちゃん。
「ハッ!!」
シュ!カキン!!シュッシュッ!!
「ちっ!!流石に不意打ち以外ではそう簡単にやらせてくれないな。」
「覇ッ!!」
シュシュシュシュシュッ!!
「ぬっ!!」
「は!!」
カキィンッ!!スッ!!!カキィンカキィィン!!
ザシュ!!
「クッ!!」
ナオさん達のほうは、ナオさんとシキさんが前で3人と戦い
メティちゃんが後方から黒鍵を投げて援護している。
こちらは確実に敵を追い詰めている。
ルリサイド
カキィン!!カン!!
上段からの切り落とし、袈裟切り上げ。
ドッン!!
最後に回し蹴りで攻撃しつつ再度距離をとる。
「惜しい、真に惜しい。」
やはり今の私の体重では体術の威力は無いに等しい。
ここはやはり・・・
元々力が弱く体重の軽い女性が剣術において男に対抗するならこれしかない!!
スゥ
私は刺突の構えをとる。
「これで終わりです。」
「やはり、そうなるであろう。」
北辰は余裕の表情だ。
でもこれでもう、終わりだ!!
テンカワ流戦闘術
奥義之歩法
神速!!
ドックン!!
私の周りの世界だけ白黒になり空気もゼリーの様に重くなり、
私以外の物の動きが全てスローモーションになる。
タンッ!!
私は北辰に向かって地を蹴る。
今の私の動きは常人の目には映らない!!
手榴弾の爆発からもこれで逃げたのだ。
「ハァッ!!」
小太刀二刀流
奥義之伍
虎突!!
ヒュンッ!!
私は北辰の心臓めがけて左手の黒鍵を突き刺す!!
これなら北辰でも避けられるはずが・・・
スゥ・・・
ヒュンッ!!
だが北辰は見えている筈の無い突きを身体を捻り、紙一重でかわす!!
なっ!!でも、この技の一撃目を避けたくらいで!!
私は直ぐに右手の黒鍵で北辰を追撃する。
ヒュンッ!!
しかし
パシッ!!
その攻撃は避けられた上に右手を掴まれてしまう。
そんな!!神速の動きが見えている筈が無いのに!!
「破ッ!!」
ガシャァァァン!!
「く、ぁ・・・」
私は虎突の勢い利用され、そのままコントローラーパネルに叩き付けられた。
ザシュ!!
スゥ・・・ドゴン!!ザザザザァァァ・・・
私は北辰の腕を斬り、何とか掴まれた腕から何とか抜け出せたが
勢いのまま私は飛ばされてしまった。
その時、メティサイド
ガシャァァァン!!
「ハッ!!」
「く、ぁ・・・」
私が黒鍵を投げようとした時、
突然、優勢だと思っていたルリから苦痛の声と思念が飛んで来る。
シュシュシュシュシュ!! シュゥ!!
「あ!!ナオ兄さん!!」
私は不覚にもその声と思念で黒鍵の1本が手元が狂ってしまい
それが不幸にもナオさんの方に飛んでいった!!
ザシュ!!
「くっ!!」
幸い腕をかすめただけで、戦闘に支障が無い程度の傷だ。
だがそれによって生まれた隙は致命的だった。
「キェェェェ!!」
北辰六人衆のうちの一人がナオさんに斬り掛かる。
こんな隙を逃すほど北辰六人衆は弱くない!!
ザシュ!!
「ぐ!!」
直撃は避けた、避けたけど・・・
「ナオ!!このぉぉぉ!!」
「ハッ!!」
シュシュシュシュシュ!!
私は再度黒鍵を投げる。
しかし
カン!!カン!!カィン!!
全て落とされるか避けられるか、だった。
「くっ、この!!」
私のミスでナオさんが戦線離脱、私達の戦闘は形成逆転してしまった。
ルリサイド
「ルリちゃん、ナオさん!!」
ユリカさんの声が聞こえる。
ナオさんの名前も呼ばれていると言う事はあっちも何かあったのかな・・・
ヨロ・・・
私は何とか立ちあがる。
「ゴフッ!!」
ポタ、ポタ・・・
これは・・・やっぱり内臓が少しやられましたね。
ちゃんと受身は取ったんだけど・・・
「ほう、まだ立てるのか。」
「・・・さっきのを、避けられるとは思わなかったわ・・・」
「お前の我に対する殺気は強く真っ直ぐな物だからな・・・
至極読みやすい
それだけだ。」
・・・先読みされたというの?
くっ、私が甘かった・・・
でも!!
スゥ
「ほう・・まだやる気か?」
「貴様はここで殺らなければならない。
例えこの命に代えようとも。」
「ふっはっはっはっは。
お前に我は倒せぬよ。」
「・・・」
こいつだけは、ここで!!
ドックン!!
ダンッ!!
私はもう1度神速を使い、北辰に挑む。
ヒュン!!
だが、私の捨て身の攻撃も北辰に避けられて・・・
ドゴッ!!
膝で蹴り上げられる。
「ぁ・・・」
ガードは間に合ったが・・・
バンッ!!
私は天井に叩きつけられ、そのまま落ちる。
もう、動けない・・・・
「滅!!」
北辰の手が迫る
私、ここで死ぬの・・・
ゴォォォォォォォォオオオ!!!!
「むぅぅ!!」
タン!!
物凄い音が聞こえて、気が付いたら私は
アキトさんの腕の中にいた。
「!!・・・アキト!!
もお、遅いよ!!」
アキトさんの登場に気付いたユリカさんが泣きながら歓喜声を上げています。
「兄さん!!」
「アキト!!」
「お兄ちゃん!!」
アキトさんの登場に安堵する皆。
「遅れてごめんね。」
「アキ・・トさん・・・ごめんなさい、
私・・・役立たずで・・・」
「両腕を潰したんだろ?
十分だよ。
ありがとう、今はお休み。」
優しく微笑んでくれるアキトさん。
「・・ア・・キ・・・ト・・・」
私の意識はそこで途絶えた。
「アキラ、ルリを。」
「はい。」
俺はルリをアキラに任せ北辰に向かう。
「始めまして、と言うべきかな?北辰。」
「貴様がテンカワ アキトか。」
「そんな事はどうでもいいだろ?
お前はここで死ぬんだから。
まったく、お前はことごとく俺の大切な物を傷つけてくれる。」
ゴォォォォォォォォォォォ!!
ユリカサイド
何これ・・・
アレがアキトなの?
怖い。
シキさん達と戦っていた男も手が震えている。
誰も動けない。
北辰サイド
何なのだこれは!!
まるで宇宙空間で幾万の敵に囲まれたような感覚は!!
全ての場所が狙われ、次の瞬間にでもやられる。
そんな感覚だ!!
奴に殺気、いや、鬼気はこの周辺全てを包んでいる。
こんな事があり得るのか!!
アキトサイド
「死ね!!北辰!!」
「我はまだ死なん!!」
ヒュン!!
ユリカに向かって何かを投げる北辰。
「チィッ!!」
パシッ!!
俺はそれを叩き落とす。
パキィィィィィィィィン!!
閃光と爆音が鳴り響く。
「キャァ!!」
チッ!!小細工を!!
「クソッ!!」
そこにはもう北辰はいなかった。
俺は格納庫に急いだ。
シュゴォォォォォ!!
貨物ブロックから飛び出す小型のジンタイプ。
俺はガイのエステに乗りこむ。
「逃がさんぞ!!北辰!!」
俺が発進しようとしたその時。
ドゴォォォン!!
ハッチで小さな爆発が起こる。
「何!!」
『アキト、今の爆発でハッチが開かねえんだ!!』
「チキショォォォ!!」
ドゴォォォン!!
俺はハッチを壊して外に出た。
くそ!!かなりのタイムロスだ!!
シュゴォォォォォ!!
俺は全速力で北辰を追う。
が、北辰は何故か後30秒ほどで追いつく位置に止まっていた。
『遅かりしテンカワ アキト。』
そう北辰が通信を入れて来たと思うと、
ゴォォォ!!
突如北辰の背後に小さなチューリップが現れ、口を開く。
現れた?違う、最初からそこにあったのだ!!
まさかステルスタイプだとでも言うのか!!
『また会おう、テンカワ アキト。』
そしてそのチューリップに入る北辰。
「クソォォォォォォ!!」
俺はリミッタ―を解除してスラスターが爆発せん程の
速度で迫ったが、間に合わなかった。
ドゴォォォォン!!
振り上げた拳はチューリップに突き刺さり、破壊した。
俺はとんでもない奴を取り逃がしてしまった・・・