パーティー直前


「こんな格好するのか?

 もう少し動きやすいのが良いのだが・・・」


 俺は今ルリとメティとドレス選びをしている。

 
「十分動きやすいのを選んだつもりですが?

 よく似合ってますよ。」


 俺は今真紅のドレスを着ている、足にスカートが絡んで動きにくいぞ。


「私はこれにしようかな。」


 とメティはルリと同様のドレスを着ている。


「また随分と動きにくそうなドレスを選んだな。

 お前もシュンの護衛があるだろ?」


「こっちの方が何かを隠し持つのに便利なんだよ。」


「なるほど・・・でも俺は基本的に素手だからな。」


 コンコン


 そんな時、部屋にアキトが来た。

 
 あ、別にいきなり入って来たわけじゃなく、俺達には解る。


「どうぞ。」


 アキトもこの部屋の状況くらい解っていると思うが、

 まあ、礼儀というものだろう。


「やあ、ドレスは決まったかい?」


「うん、似合う?アキトお兄ちゃん。」


 メティがアキトに自分のドレスを披露する。


「ああ、よく似合ってるよ。

 カイトも綺麗だぞ。」(ニコッ)



「・・・ありがとう。」


 多分俺の顔は今赤い。


 ルリは笑ってるし。

 

 その頃サブロウタ


「皆さん、着替えは済みましたか?」


「ええ、おまたせ。」


「ところでなんでドレスなんか持ってきたんです?」


「だって、ねえ。」


「舞踏会・・・」


「女の子の夢」


「こんな時にドレスを着ずに何時着るの?」


 始めっから潜入するつもりだったんかい!!


「それにしてもエスコートがサブロウタじゃねぇ。」

 
 と嘆息する舞歌様。


「全くです」×7


「悪かったな!!

 なんならプリンス オブ ダークネスでも、

 そのロイヤルガードの二人でも呼びましょうか?」
 

「ぜひそうして。」×8   


 ぐわ・・・即答ですか?

 
 いいのか?敵のリーダーとも言える奴とそのお付を呼ぶって言ってるんだぞ。

 因みにお付はシキとナオだ。


 いいだろう!!呼んでやるよ!!


 俺は自棄気味にコミニュケを開く。

 

 

 そしてパーティー会場


 パティーが始まり、俺はルリのメティはシュンの護衛につく。

 シキとナオはアキトの護衛(必要あるのか?)となっている。

 
 因みにそのアキトは女性に囲まれていたが、

 俺達、というかルリの入場の隙に、


 逃げ出した。


 でもこの距離なら何処で何をしているか俺達には解るんだぞ。

 なあ、アキト。


 ルリとメティからも殺気と思念が飛んでくる、ついでにサラとエリナのも。


 むっ!!


(ねえ、アキトお兄ちゃん、こともあろうに知らない美女と踊り始めたよ。)


(ああ、解ってる。

 俺はともかくルリを差し置くとは・・・)


(ねえルリちゃん、黒鍵投げていい?)


(そうですねぇ、ここでなければ

 私もとっくに投げてるんですけど。)


(じゃあとりあえず、踊っていい?)


 この場合は剣舞を舞うってことか?

 踊っている振りをしてアキトを切り刻む、と。

(許可します。)


 おいおい・・・


(二人とも落ちつけよ。)


((これが落ちつけますか!!))


(まあ、待て、

 今肉体的な苦痛を与えるより、

 後でお仕置きをゆっくりじっくりしようじゃないか。)


 変わったな、俺・・・


(ふふふふ、そうだね。)


(さて、何をしましょうか・・・)


 とりあえず暴走は止まったか・・・


 まったく・・・アキトも命知らずだな・・・


 今アキトが踊っているのは赤毛の美女らしいな、

 ここからでは見えない。


「お嬢さん、私と踊っていただけませんか?」


 タキシードを着たシキが近寄ってきた。

 お前、仕事は?

 ま護衛対象がアレではな・・・


「そうだなぁ・・・」


 俺はルリの方を振り向く。


 今ルリは数人の人と話をしている。

 俺の視線に気付き、

 
(構わないわよ、自分の身は自分で守れるから。)


 それもそうだな。


「貴様如きに俺のパートナーが勤まるとは思えないが、

 今回は付き合ってやるよ。」


 とシキの手を取る。


「では参りましょう。」


 俺達はダンスの中心に来る。


 その時!!


 ドックン!!


 え?


 この感じは・・・


「どうした、カイト?」


 ドックン!!
 

 まさか!!


「アキト!!ルリ!!」

 

 

 ルリサイド


「アキト!!ルリ!!」

 私がその声にカイトの方を振り向こうとしたその時!!

 
 シュッ!!


 私の視界の隅に腕輪を持った手が私の心臓めがけて近づくのが映った。


 腕輪?違う!!


 サッ!! ザシュ!  タン!!


 私は咄嗟に後方に跳んで避けたが、左腕にかすった。


 ジュワァ・・・


 私のドレスは紅く染まっていく・・・


「キャァァァァ!!」


 悲鳴が上がる・・・


 でも一箇所だけじゃない!!


 まさか!!


(アキトさん!!メティ!!)


(すまん、今話している余裕は無い!!)


(同じく!!)


 三点同時襲撃?


 やってくれる!!


 私は今私の腕を切った奴に向き直る。


「翡翠のチャクラムなんて随分贅沢な武器を使ってますね。」


 そう、翡翠の腕輪に見せかけたチャクラム。

 それで私の腕を切ったのだ。


 だが、そんな事は問題では無い。

 問題は、カイトの声が無かったら私はその攻撃に気付かなかった。

 こいつは全く殺気を出さなかったのだ!!


「ルリ!!」


 カイトが私とその敵の女、いや少女との間に割ってはいる。


「よくもルリを傷つけたな!!」
 

 カイトは怒りの表情を浮かべ、戦闘態勢に入る。


「・・・任務失敗。」


 ヒュン!!


 その少女は感情も意思も感じられない、

 機械の様な声でそう呟いたかと思うと、はめていた指輪をこちらに向かって投げる。


 カッ!!


 その指輪は空中で爆発して閃光を放つ。


「くッ!!」


 気配が遠のく、逃げる気!!


 そして視界が戻り。


「逃がすか!!」


 敵を追おうとすると。


「姫様!!」


「ルリ!!」


 私はお母様とそのお付の女性に囲まれてしまう。


「この程度なんともありません!!かすっただけです!!」


「でも、ルリ・・・

 ああ、血が・・・」


 もう、こんな時に!!


「カイト!!早く追って!!」


「了解!!」


 タ!! 




 同時刻、メティ、シュンサイド

 

「アキト!!ルリ!!」

 カイトさんの叫び声が聞こえる。

 そして、思念も同時に飛んでくる。
 
 これは、不安と・・・怒り?それに悲しみも。


 !!


 殺気!!


 そして、その殺気を発している先には・・・

 
 男がデリンジャーを持っている!!

 
 狙いはシュンさん!!


「シュンさん!!」


 私はシュンさんに向かって飛ぶ。


 ダン!!


 そして、弾丸が発射された。


 バシュゥン!!


 ドン!!


 私は何とかシュンさんの盾になることに間に合い、
 
 そのままシュンさんに倒れこんでしまう。


「メティ君!!」


「メティ!!

 このぉぉぉ!!」


 ドゴ!!


「がっ・・・」


 ナオさんが発砲した犯人を殴り倒す。

  
 一撃?おかしい、弱すぎない?


 殺気は・・・まだ消えてない!!

 まだいる!!


 私は全ての感覚を使い、周りをサーチする。


 ・・・・・・・いた!!


(シュンの後ろ!!)


 私はリンクをナオさんとフルコンタクトにして敵の位置を伝える。


「!!

 そこか!!」


 シュ!!

 
 ザクッ!!


 ナオさんの投げたナイフはシュンさんに後ろから近づいていた男の腕に当たる。


「ぐっ!!」


 カラン!!


 男の腕からナイフが落ちる。


 そして


 ザザザザザ!!

 カチャ!!


「動くな!!」


 二人の男はピースランドの警備兵に捕まる。


「メティ君、大丈夫か?!」


「メティ、傷は?」


「大丈夫だよ。」


 私は立ちあがり、ナオさんの方に振り向く。


「大丈夫って、お前撃たれただろ?」


「へへへ、『イージスの盾』はデリンジャーの弾如きじゃ貫けないよ。」


 私は右腕に装備している『イージスの盾』(メティ専用)を二人に見せる。


「お前、何時の間に!!

 ったく、心配させるなよ。」


「まったくだ。

 しかし助かった、ありがとう。」


 二人とも安堵の溜息をつく。


「当然、私はシュンさんの護衛だよ。」


「それより、それ、どっから出した?」


「乙女の秘密。」


「あっそ・・・」


 周りでは既に避難が始まっている。

 恐らく、国王が指揮をしているのだろう。


「それよりお兄ちゃんを!!」


「そうだな、行くか。」


 私達はお兄ちゃんが向かった方へと急ぐ。 

 

 同時刻、シキサイド


「シキ、お前はアキトの方へ!!

 アキトを襲った敵は絶対に逃がすな!!」


 そう言ってルリちゃんの方に走るカイト。


 とりあえず俺は逃げた敵を追ったアキトの後を追った。


 でもなんでカイトはアキトを襲った敵を逃がすなって言ったんだ?

 アキトを傷つけられた怒りか?

 いや、そんな風じゃなかったな。

 じゃあ、何故・・・


 やめやめ、今はアキトを追う事に専念しよう。

 唯でさえ早いんだから、見失っちまう。


 そして俺はアキトを追い、会場の外に出る。

 

 同時刻、サブロウタサイド


「何故だ!!何故応答しない!!」


『ザ・・ザザザ・・・』


 俺がアキト達を呼ぶために開いたコミニュケからは雑音しかしない。

 
 くっ!!これではルリルリとも連絡が取れない!!


「ナデシコ!!応答してくれ!!」


『ザ・・・・ガガ・・』


「ダメみたいですね。

 完全に電波が妨害されています。」


 飛厘ちゃんがそう告げる。


「他に連絡の手段は?」


「俺はこのまま帰艦するものと思っていましたから・・・」


「そう・・・じゃあ、突入しかないわね。」


 舞歌様の言葉に全員身構える。

 ここの警備の凄さは知っている様だ。


「・・・この中で強い3人を選んでください。」


「3人?どうするの?」


「3人までなら俺が中に連れていけます。」


「どうやってです?」


 ホントは使いたくないけど、今はある物を全て利用しなくては。


「下がってください。」


 俺はアキラから渡された腕時計を着け、腕を十字に構え、


 サッ!!バッ!!バッ!!


 印(だと思う)を結んでいく。


「・・・何やってんの?」


 舞歌様達の目がちょっと冷たい・・・


「なんでもこうしなければいけないそうです。

 理由は作った本人に聞いてください。」


 その間も印を結ぶ。


 初めてだから20秒も掛かった。

 急げば5秒くらいで済むかな?


 印を結び終わると腕時計を着けたほうの手に黒い光りの玉が現れる。

 そしてその黒い光りの玉を空に投げる。

 すると


 ヒュン!!バチバチバチ!!
 
 
 空に魔方陣が浮かび上がる。

 なんでもボソンジャンプのゲートとか言ってたけど・・・

 
 なんか、ゲームで召還獣を呼び出しているみたいだ・・・


 更にその魔方陣に鎖を投げる。


 ジャリィィィィィィン!!


 そして、引っ掛かったような感じがしたら、思いっきり引っ張る。


 シュン!!パリィィィィン!!


『ヒィヒィィィィィン!!』 


 タン!!


 そして降り立つ鎖に繋がれた漆黒の天馬『ブラックジャック』

 こいつは他の2体の様に見た目にこだわった訳ではなく、

 完全な戦闘用、ステルスにフィールドごと覆う光化学迷彩、

 更にこいつの頭に、ユニコーンの角の様に付けられた高周波ブレード。

 アキラがこれから立場が危うくなる俺に設計してくれたもの、

 元はアキト用だったららしいが、アキラが更に改良したそうだ。

 こいつなら呼べば来るし、宇宙だって出れるから、何処からでも逃げ出せる。

 逃げ出したら、ナデシコに連絡とって、アキトかカイトちゃんに迎えに来てもらえばいい。

 俺はいろいろ『覚悟』してたんだけど、アキラはちゃんとこんな事を考えていてくれた様だ。

 因みにこいつの他の2機との大きな違いは・・・


『主よ、暫く使う機会が無いと言った割には

 随分と早く呼び出したな。』


「ああ、急遽予定が変更してな。」


 こいつには完璧な自分の意思がある、

 オモイカネの縮小版で、

 エステ程細かい操作補助が無い分ディア達より軽いから搭載したそうだ。


『ふん、まあいいだろう。

 だが私の初陣だ、詰らん仕事では無いだろうな?』


 でもかなり生意気だな、おい。

 
「ま、詰らなくは無いと思うが、

 で誰が乗ります?」

 
 と、俺は優華部隊の方に振り向く。


「・・・お〜い、もしも〜し。」


 皆固まっていた・・・

 

「ま、単純に戦闘力なら私と百華と三姫ね。」


 いち早く元に戻った舞歌さまが答える。


「まあ、そうなりますか。

 ・・・ところでどうやって3人乗るんだ?」


 ブラックジャックを見て言う三姫ちゃん。


「私が二人を抱えて、更に私の前に一人すわってもらうのです。」


 俺がそう答えると、


「な、なに!!じゃあ、私はお前に抱き付かなければいけないのか?!」


 顔を赤くして叫ぶ三姫ちゃん。


「・・・はい、そうなります。」


 しょうがないじゃん。

 もとの2機の製造目的は『それ』なんだから・・・


「冗談じゃない!!第一お前が乗る必要は無いだろ!!

 私が二人を抱いて、前にもう一人乗ればいい!!

 お前が来ても大して役には立たないだろ!!」


 ピクゥゥゥ!!


「こいつは主、つまりは俺以外の命令は聞かない様になってまして。

 それに、いっちゃ何ですけど、俺は貴方より強いですよ。」


 爆弾投下


 俺はさっきからちょ〜と性格が気に食わなかった三姫ちゃんを睨む。

 流石に今のはきた。


「なんだと!!」


 予想通り戦闘態勢に入る三姫ちゃん。


「止めなさい、三姫!!今はそんな事している時間は無いわ。

 それに彼の言っている事は本当よ。」


 舞歌様が三姫を止めにはいる。

 どうやら舞歌様は俺の実力を察してくれたらしい、

 と言う事は、舞歌様もそれなりに強いわけね。


「ご冗談を舞歌様、私がこのナンパ男より弱いのですか!!」


 ナンパ男って・・・何処から情報が漏れたんだ?


「本当だよ、三姫ちゃん、悔しいけど、さっきからこの人

 隙だらけの様で全然隙が無いんだよ。」


 今にも暴れ出しそうな三姫ちゃんをさらに百華ちゃんがなだめる。


「嫌なら他の人と代わって下さい。

 今は力を示している時間は無いんで。」

 

「では残りの方は少し待っていてください。

 間に合えば話を付けてきますので。」


「はい、ではよろしくお願いします。」


 そう言って見送ってくれる零夜ちゃん。

 うん、かわいい子だ。


「じゃあ出してサブロウタ君。」


「・・・」


「私馬に乗るのは初めてです。」


 俺は両手に舞歌様と三姫、仕事と割り切ったらしい、

 でも『変な事したら刺す』と俺にナイフを突き付けていたりする。

 それで前に百華ちゃん。


「では行きますよ。

 フィールド展開、ステルス機動!!」


 キィィィィィィ・・・・


「わ、本当に見えないです。」


 零夜ちゃんがこちらを向いて驚いている。

 どうやらステルスはちゃんと機能しているようだ。


「行くぞ、『ブラックジャック』!!」


 俺はブラックジャックの手綱を引く。

 因みにブラックジャックの手綱は呼ぶときに投げ入れた鎖だ。
 

『オオ!!』


 バサッ!!バサッ!!


「ところでもう行ったのかな?」


「多分・・・気配が消えたし。」


 下ではそんな会話が聞こえる。


 俺は急ぎパーティー会場に向かう。


「ところで舞歌様、もし、既に北斗とアキトの戦闘が始まっていたらどうします?」


「もしそうなっていたらもう手の付けようが無いわ。」


「そうなったらどちらかが死ぬか、もしくは相打ちか・・・」


「まさに最悪の事態だね。」


 ・・・俺としてはここで北辰の息子が倒される事を願いたい。


「でも多分、今の北斗は・・・」


 そう言えばあの北斗がどうやってここに潜入するんだろう?

 来ていたら直ぐに騒ぎになるはずだな。


「!!止まってサブロウタ君!!

 今下に枝織が!!」


「え?枝織って・・・」


 とその時!!


「!!

 避けろ!!」 


 俺は本能で危険を察し、手綱を引く。


 バシュッン!!


 ドゴォォォン!!

 何かがフィールドを貫き、ブラックジャックの右翼を破壊する。


「きゃぁ!!」


「くぅ!!」


「何!!」


『なんだと!!ステルスを見破った上にフィールドを貫くとは!!』


 フィールドを貫いたってことはフェザーランチャー!!

 ってことは・・・


 俺は発射されたと思われる場所を探す、

 するとそこには


「シキだ!!ステルスを解除しろ!!

 アイツは狙撃だけならアキトを上回るんだ。

 気配さえ発しているものなら当てる事ができる。

 このままじゃやられるぞ!!」


『了解!!』


 シュゥン!!


「なっ!!アレは『ブラックジャック』!!

 てことはサブロウタか!!」


 どうやら気付いてくれたようだ。


 ガタン!!


 突如揺れる機体


「どうした!!」


『すまん。

 重力制御をやられた!!』


「なにぃぃぃ!!」


 グラッ!! 
  

 傾き、落ちる機体。


「うそっ!!」


「そんな!!」


 マズイ、このままじゃ・・・


「きゃぁぁぁぁ!!」


「しまった!!百華ちゃん!!」


 なんとか体勢を整えようとした中、

 唯一俺が支えていなかった百華ちゃんが機体から落ちる。


「くっ!!

 シキ!!百華ちゃんを頼む!!」


 そう叫び、俺は機体から飛び降りる。


「ちぃっ!!」



 ヒュゥゥゥゥン・・・


 ダンッ!!

       ドガァァン!!


 俺は何とか二人を抱えたまま着地に成功する。

 後ろでは体勢を崩しながらもブラックジャックが着地した。


 しかし、流石にあしにきたなぁ・・・

 二人は重い!!
 
 声に出して言うほど俺も愚かではないが・・・


「なんだ今の音は!!」


「こっちから聞こえたぞ!!」


 ふぅ、そりゃ気付くか。


「お二人は下がっていてください。

 一人で十分です。」


「ちょっと、サブロウタ君!!」


「何を言っている!!」


 俺は二人の静止を無視いて向かってくる警備兵の方を向く。

 に、し、ろ、は、十人か・・・

 軽いな。


 ドガ!!バコ!!バシッ!!ズガ!!ドゴ!!メキョ!!

 ゴグ!!ザシュ!!ゴン!!パカァァン!!

 
 全員一撃


「なんだ、噂程じゃないな。」


『まったくだな。』


 とブラックジャック。

 因みにザシュ!!はこいつが高周波ブレードで切った音で

 ゴン!!は踏みつけた音、パカァァン!!は後ろ足で蹴り飛ばした音だ。

 蹴り飛ばされた奴、生きてるかな?


「大丈夫なのか?」


『ああ、飛ぶのは無理だが、地上での戦闘と走る事はできる。」


「そうか。」


「サブロウタ君。」


 俺は舞歌様に呼ばれ振り向く。


「やるわね。」


「ありがとうございます。」


「おい、サブロウタ。」


 今度は三姫に呼ばれる。


「なんだ?」


「その・・・さっきは済まなかった。

 ・・・お前は強かった、無礼を許してくれ。」


 さっきの事を詫びるてくる三姫。


「いや、いいよ。」


 なんだ、かわいい所もあるじゃん。


 あっ、そう言えば・・・


「そう言えばシキを百華ちゃんは?」


「あら?そう言えば・・・」


 俺は周りを見渡し、二人を探す。

 
「あら、あんな所に。」

 
 舞歌様の言葉に振り向くと、シキに覆い被さる様に倒れている百華ちゃんがいた。

 ちゃんと間に合った様だ。


「おい、二人とも、何をやって・・・ん、だ?」


 俺が二人に近づいてよく見てみると・・・


「あらあら・・・」


「・・・」


 見事にくっついていた。

 唇と唇が。

 多分落ちてきた百華ちゃんを受け止めて、勢いを殺しきれずに

 そのまま倒れて、こうなったんだろう・・・

 
 で、そのまま固まってると。


「あ〜〜!!

 シキさんが仕事もしないで知らない女の人とキスしてる〜!!」


 会場のほうからメティちゃんが現れる。


「おお、シキ君も隅におけんなぁ〜」


 とシュン提督。


「シキ・・・お前、カイト一筋じゃなかったのか?」


 と冷たく言うナオ。


「ちがぁぁぁぁぁう!!

 偶然だ!!事故だ!!不可抗力だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 といきなり復活し、無実を主張するシキ。

 因みに百華ちゃんはその場に座りこみ、俯いている。

 そんなにショックだったのか?


「でも百華のファーストキスを奪った事には変わりないわよね。」


「かわいそうな百華、見ず知らずの男に純潔を汚されて・・・」


 追い討ちをかける舞歌様と三姫。


「違うんだぁぁぁ!!」


 ムクッ


 突然立ちあがる百華ちゃん。


「あ、あのな、今のは事故だ。

 決して意図的にやったわけではないぞ。」


 弁明を続けるシキ。


「シキ・・・様ですね?」


「あ、ああ。」


 俯いたままの百華ちゃん、

 だが


「責任・・・取ってください!!」


 突然シキに掴みかかる。


「ま、待ってくれ、今のは不可抗力だ、ノーカンだ!!」


「私の純潔を奪った責任を取ってください!!」


「そんな・・・キスくらいで・・・」


「キスくらい、なんて・・・私の身体はそんなに安い物なのね・・・」


 泣き出す百華ちゃん。


「あ〜シキさんが女の子をなかした〜」


「シキ、ダメだぞ、責任は取らんと。」


「シキ、お前がそんな無責任な奴だったとは・・・」


「そうよ、女の子の純潔を奪った罪は重いわよ。」


「それより『キスくらい』という発言に問題があります。

 一体女性の心をなんだと思っているんですか?」


 上からメティ、シュン提督、ナオ、舞歌様、三姫だ。


「そんな事言われてもだな、

 今会ったばかりの女の子の責任を取れとっていっても・・・」


 5人の圧力に後退しながら弁明するシキ。


「なら・・・今から愛してください!!」


 真剣な顔で訴える百華ちゃん。


「お、俺にはカイトがいるんだ。

 許してくれぇぇぇ!!」


 百華ちゃんの真剣な顔に怯み、逃げ出すシキ。


「あ!!待ってください!!」


 それを追いかける百華ちゃん。


 ・・・どうしたもんかな


「ところでサブロウタ、どうしてお前がここにいる?

 その人達は誰だ?」


 ナオがこちらを向く。


「この方は東 舞歌様、それと優華部隊の神楽 三姫。

 俺達はここに潜入した北斗を探しに来たんだ。」


 俺はナオに事の次第を説明する。


「何!!北斗まで来ているのか!!

 マズイな・・・

 今アキトは枝織と名乗った女の子を追って行ってしまったぞ。」


「枝織ですって?やっぱりさっきのは枝織だったのね。」


「舞歌様、その枝織というのは何者ですか?」


「今は説明している暇は無いわ!!

 直ぐにその二人を追わないと!!」


「でも北斗が・・・」


「北斗もそこにいるわ!!

 行くわよ!!」


 タッタッタッタッタ!!


 今来た方向に走っていく舞歌様。


 俺達はその後を追った。

 

 

 その頃、カイトサイド


 シュッ!!タタタタ!!   

 
 俺はルリを襲った女を追って会場を飛び出した。


 く、早い!!

 逃がしてなるものか!!

 このままじゃ走りにくい

 アキトが誉めてくれたドレスだが、仕方ない!!
 

 ザシュ!!ザシュ!!


 俺はドレスのスカートを破り捨てる。


 これで追いつける筈。


 タン!!タン!!シュン!!タタタタ!!


 もう少しで追いつく。


 そしてちょっとした広間に出たとき


 タン!!


 その女は立ち止まる。


 ここで俺と戦おうというのか?


 スゥ・・・


 女は髪飾りを外し、こちらを振り向く。


 その時、雲で隠れていた月が顔を出し、月明かりがその女の顔を照らす。


 そして、俺が見たその顔は・・・


「な!!バカな!!」


 それはあまりにも見知った顔・・・


『俺』・・・だと!!」


 そう、その女は『俺』その物だった。


 唯一の違いは、俺がマシンチャイルドで目が金色なのに対して

 そのもう一人の『俺』は鳶色の目をしていた。


「私は『七星』、草壁の剣。」


 もう一人の俺は感情の無い声でそう告げた。

 

続く

 

 

代理人のとりあえずの感想

 

もうそろそろカイトの出生の秘密が明かされるのかな?

・・・・まあ、既にバレバレと言う話もありますが(笑)。

 

ちょっと気になったポイントですが、この話ではクローンだか姉妹だかが複数いそうな感じですよね。

カイトは性格的にも「洗脳されきった場合のあの人」に近いので

それとの対比でこの「七星」さんを出したのかな?