アキトサイド


 恐らくサブロウタを回収する為の物だろう連絡船の前に集まる皆。

 カイトとルリは別の敵を追っている為ここにはいないが。

 ここにいる皆、優華部隊以外は皆驚愕の表情をしている。

 それは目の前に現れた北斗が『女だった』事だけでは無い。

「生身で・・・会うのは初めてだったな、テンカワ アキト。

 もう一度自己紹介をしようか?

 俺の名前は北斗・・・北辰の愚息よ。」


 そう言って俺と向かう北斗。

 
 枝織ちゃんの時は解らなかった、

 視覚に頼らなくなったのがこんな事で仇になるとは。


 カイト、お前と北斗の因果は・・・


 北辰、貴様が外道だとは知っていたが再確認したよ!!

 

 

 カイトサイド


 ドン!!バシッ!!ザシュ!!


 ヒュッ!!タン!!
 

 激しい攻防の後、一旦距離を取り体勢を立て直す。


 くっ!!何故だ!!俺が『製造』されるのは後2年は先の事!!

 それにアキトとユリカの遺伝子だって回収されたとは考えにくい。

 
 だがアレは『俺』だ。

 理屈じゃなく、解る。

 アレは間違えなく『俺』だ。

 俺が俺としてアノジャンプでこの世界に来たと言う事は俺の前にいる『俺』は

 この1年以内に『製造』された事になる。

 だったら何故だ!!

 何故こんなに強い!!

 俺はこの2年、アキトと共に修行を積み、あの頃とは比べ物にならないくらい強くなった。

 なのにその俺と互角だと?!


 まさか、完全な戦闘用?今のアキトの出現によって必要になったから?


 アキト・・・歴史はとんでもない方へ狂ってしまったよ・・・


 しかも、この戦いはお互いに『異常自己治癒能力』を持っているから、

 殆ど一撃必殺をしなければ勝負はつかない。

 気絶させるなど、器用な事ができる程甘い戦いでは無い!!


 俺はまだ死ねない。

 よって俺は『俺』を殺さなければならない。

 ここで『俺』を逃がす訳にはいかないから・・・

 

 その頃、ルリサイド



 私は何とかお母様達を振り払い、カイトの元に急ぐ。

 
 それにしてもこの皆から伝わってくる『驚愕』の思念は何?

 アキトさんからはそれに『怒り』も追加され、カイトからは『戸惑い』がある。

 メティとナオさんは『驚愕』で動け無い様ですし・・・


 ともかく、今は一人で戦闘しているカイトのもと急がなくては!!


 ドックン!!


 私は『神速』を発動し、カイトのいる位置まで走る。



 そして、私がカイトのところに到着した時


 ドゴン!!


 カイトと敵はお互いに全力の攻撃を仕掛け、その反動で飛んでいるところだった。


 バシッ!!

 タン!!
 

 私はカイトを受け止め、着地する。

 そして、敵の姿を確認し、私はカイトの『驚愕』と『戸惑い』の理由を知る事になる。


「な!!ま、まさか・・・カイトの『オリジナル』?!」


「・・・違うよ、ルリ。

 アイツは『俺』だ。」


 『俺』って・・・

 よろめきながらも立ちあがるカイト。


 そして敵も。


 二人とも凄い傷を・・・え?


 ジュゥゥゥゥゥゥ・・・


 な、何!!二人の傷が塞がっていく!!

 いくら何でも早すぎる!!


「カ、カイト・・・」


 私は戦闘中だと言うのに呆然としてしまった。


 敵と向かい合い、構えるカイト。


 だが敵は・・・


「・・・状況不利、撤退する。」


 感情の無い声でそう呟くと、イヤリングの片方をこちらに投げる。


「!!

 ルリ!!」


 カイトは一瞬反応が遅れた私を抱えて飛ぶ。


 ドゴォォォォォォォォンン!!


 今度はさっきのような閃光弾ではなく、本物の爆弾だった。


 タン!!


「くっ!!取り逃がした・・・」


 地面に膝をつくカイト。


「カイト・・・

 今はアキトさんが心配だわ。

 アキトさんの所に向かいましょう。」


「ああ・・・

 !!」

 
 バタン!!


 立ちあがろうとしたカイトはまた地面に膝をついてしまう。


「どうしたの、カイト!!」


「く、ちょっとダメージを受けすぎたみたいだ・・・」


 回復の為に睡眠を強制されているのね。


「ルリ、時間が無い。

 跳ぶぞ!!」


「跳ぶって、あなたそんな状態で!!」


「大丈夫だ、今はアキトの所へ・・・」


 そう言って私を掴み。


「ジャンプ!!」


 そして私達は虹色の光りに包まれた。



 
 
 シュゥゥゥゥゥ・・・

 タン!!


 ジャンプアウトした場所には皆が集まっていた。


 そして、アキトさんは誰かと戦っている。

 皆はその戦いを離れて見ている。


 アキトさんが戦っている相手は・・・


「こんな事って・・・」


 私は驚きのあまり固まってしまった。


「アキト・・・俺は・・・」


 バタン!!
 

 カイトは倒れてしまったが、私は動けなかった・・・


 そして、アキトさんと、北斗の戦いは引き分けに終わり、

 両陣営ともそれぞれの戦士を連れて退いた。

 

 


 3時間後、会場休憩室


 
 バッ!!


「ここは・・・」


 意識が戻り、状況を確認する。

 
 まったく、傷が早く治るのは良いが、強制的に眠らされるのでわな・・・

 リンクはちゃんと5人感じる、アキトは無事か。


「よっ!!起きたか。」


 俺が寝ているベットの脇に座っていたナオが俺の顔を覗く。


「俺は何時間寝ていた?

 現状は?アキトは無事の様だが・・・」


「ああ、北斗はサブロウタとその他の数人の女性に連れていかれた。

 で、今1時間前に起きたアキトが会議室に行ってる。」


「そうか・・・」


「ところで、アキトと北斗が最後に何か淡い光りのような物を

 纏ってる様に見えたが、アレはなんだ?」


「ああ、あれか?

 あれは恐らく木連式に口伝でのみ伝わる、『武羅威』だろう。

 そして、光って見えたのは『昂氣』と呼ばれる物だ。

 魂が具現化した物だと伝わっているが・・・」


「魂ねぇ・・・

 少し昔の俺なら笑い飛ばしただろうが、

 アキトとの修行で少しは強くなったし、実際見たからな。」


「あれに辿り着いたのは知られているだけで十名に満たないそうだ。」


「・・・また、突き放されたな。」


「直ぐに追いてやるさ。」


「そうだな。」


 暫し沈黙の後


 ガチャ!!


「カイト、起きたか。」


 アキトが部屋に入って来た。


「ああ。

 ところで現状は?」


「ああ、それなんだが・・・」


「後数十分でナデシコが敵と接触します。」


 アキトの後ろからルリが入ってくる。


「敵か?じゃあ戻った方が・・・」


「それが出来ないんだよ。」


 更にメティが入ってくる。


「アキトもルリちゃんも無茶するぜ。」


「まったくだ。」


 シュンとシキも。


「俺が寝ている間に何があったんだ?」


「それがね・・・」


 メティが会議室でのやり取りを話し始める。




「・・・つまり、クリムゾンにケンカうられて、ナデシコの勝敗に

 こっちはアキトとルリ、更にブローディアシリーズとそのパイロットを、

 あっち和平の推薦を賭けた、と。」


「ま、そう言う事になるな。」


「敵の数は?」


「チューリップが37、無人機無数。」


「・・・・・・多くないか?」


「大丈夫だろ、皆も強いから。

 仲間を信じろよ。」


 仲間、か・・・


「そうだね、伊達に私達が遊んであげてた訳じゃないからね。」


「今、エリナ君がナデシコに連絡している。」


 それを聞いたナデシコの反応、見てみたいものだな。
 

 

続いて