コンテストの翌日
「カイトさん、二人の様子は?」
『今のところは問題は無い。』
その状況自体が問題なんだけどね。
『次はミラーハウスに入る様だ。』
「了解、引き続き監視を続けてください。」
はぁ〜・・・なんでこうなるんだろう・・・
今現在お兄ちゃんと北斗・・・枝織の方だけど、は遊園地にいる。
何故って?そんなの私が聞きたいくらいだよ。
あれはコンテストの一位が発表された時・・・
「そして、栄光の一位と二位は!!」
一位と二位のパネルが同時に回転する。
ジャン!!
止まるパネル
そこには・・・
『何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』
今度は会場を驚愕の声が支配する。
そうそこには
「一位は同票でテンカワ アキト殿と北斗殿になります。」
となってしまったのだ・・・
やはり北斗と枝織で一人と言うのは大きかった様だ。
「おい!!どうするんだよ、賞品は!!」
「そうですな、賞品が賞品だけにじゃんけん合戦では不服でしょう。
アキトさん、北斗さん、あと舞歌殿も来てください。」
プロスさんに呼ばれ集まる3人、関係者のみで話し合いを行っている様だ。
そして、暫くして、またプロスさんがマイクを握る。
「結果をお伝えいたします、正当な話し合いの結果、
お二人の賞品は互いの生殺与奪権の交換という形になりました。
ただし条件として、互いの命を奪えるのはお互いのみとし、それ以外の場合は
補完し合う、とう事になりました。」
淡々と告げるプロスさん。
え、え〜と,つまり・・・
「つまりは
『お前を殺すのは俺だから、勝手に死ぬんじゃねぇぞ、俺以外が相手の時は助けてやっても良い。』
って事か?」
私が理解に苦しんでいると、リョ―コさんがそんなことを言った。
「まあ、飾り気無く言うとそうなりますね。」
どうやらそう言う事らしい・・・
それでその後舞歌さんが
「そうだ、貴方達、お互いを補完し合う意味でも二人で何処かに出かけてきなさい。」
と、とんでもない事を言い出したのだ。
勿論私達は全力で止めたけど(実力メイン)、
更に優華部隊も参加して(零夜マジ)、それでも二人を止める事はできず、
お兄ちゃんまで(契約に乗っ取って)・・・まあ、お仕置きはフルコース決定かな。
こうして今二人はナデシコから離れ、デートしていると言う訳だ。
でもタダで行かせるわけには行かないので、カイトさんとナオさんを見張りに付けたのだ。
因みに人選理由はカイトさんはジャンプでいつでも逃げられるから、
それと周りから怪しまれない様にカップルにしたいので、男性で唯一のジャンパーのナオさん。
と、言うわけだ。
あ、因みに本来カイトさんの席ではシキさんがナオさんとカイトさんのデートの様子を事細かに
記録している、画像付きで。
後でお姉ちゃんに送る気なんだろう・・・
お姉ちゃんは昨日のうちに帰っている。
今はそんな事どうでも良いけど。
『遊園地内の喫茶店に入ったぞ。』
カイトから報告が入る。
「できうる限り近づき、会話を盗聴してください。」
『了解。』
最近よく思う、私って変わったな・・・
カイトサイド
「よし、俺達も行くぞ。」
喫茶店の中に入った二人を追い、俺はナオの手を引き喫茶店へ入る。
「引っ張るなって!!」
因みにナオの格好はジーパンにシャツとパーカーだ。
そう言えばナオの私服って見るの初めてのような気がする。
俺はピンクのワンピースで今日は髪は三つ編みにしている。
ワンピースはピースランドでシキに買ってもらった物、
髪を止めている黄色いリボンもそう、そう言えば靴も・・・
良く考えてみたら今着ている物は下着以外は全部シキに貰った物だ。
貰った時は使う機会があるか悩んだものだが、有効利用できて良かった、
あとで改めて礼を言っておこう。
因みに自分がプレゼントした服で他の野郎とデートに行かれた男は・・・
「ナオォォォォ!!この恨み、
我が魂魄百万回生れ変ろうとも覚えてるからなぁぁぁぁぁ!!」
と怒り狂いながらミリアに送る浮気の証拠写真を集めていた(今回のデートだけじゃない)。
戻りまして
「チョコレートパフェ二つね。」
俺が考え事をしている隙に勝手に注文するナオ。
「おい!!」
「なんだよ、店に入って何も注文しないわけにはいかないだろ?
あっちも同じ物を頼んだみたいだし。」
と言ってアキト達の方を不自然にならない様に見ると、
既にあっちは二人でパフェを食べていた。
「お待ちどう様です。」
ウエイトレスが二つのパフェを持って来る。
仕方ない・・・
俺はパフェを食べながらアキト達の会話に耳を傾ける。
「さっきの鏡がいっぱいあるところ面白かったね。」
「木星にはやっぱり無いのかい?」
「うん、見たこと無いよ。」
「そう・・・じゃあ今日は楽しもうね。」
「うん。」
「それと、機会があったあら今度はカイト達も一緒に、
水族館か動物園にも行こう、そうだな、できれば優華部隊の人達も一緒に。」
「うん、零夜ちゃんとも一緒に行きたい。」
・・・俺も初めてはアキトと着たかったぞ。
俺はふと正面を見ると、既に一杯目を食べ終えたナオがパフェを追加注文していた。
まったく・・・なんと言うか、たまにこいつの年齢を疑いたくなる時がある。
あ。
「おいナオ、頬にクリームが付いてるぞ。」
と俺が言うのとほぼ同時に。
「アー君、クリームが付いてるよ。」
アキト達の方でもそんな会話があり。
相手が自分で付いた物をふき取るより先に
スッ
俺が指でクリームを取り
ペロッ
勿体無いので舐める。
どうやら変な所で俺と北斗はシンクロしているようだ。
その映像を見たナデシコでは
「アキト(君)(さん)(お兄ちゃん)!!!!」
と言う女性陣の絶叫と(この瞬間お仕置きスペシャルコースが確定した)
「北ちゃん不潔よぉぉぉぉぉ!!」
と言う零夜の悲鳴が響き渡り、更に
「ナオォォォォォ!!今の映像,
10倍拡張の動画ファイルでミリアさん送っとくからな!!」(泣)
シキが泣きながら映像を記録していたそうな。
アキトサイド
「う!!」
さ,寒気が・・・なんか変な事したかな?
「どうしたのアー君?」
枝織ちゃんが俺の顔を覗きこんでくる。
「あ、いや、何でも無いよ。」
「そう?」
・・・今日はスペシャルコースかな?
まあ、もう決まった事だし、ここはせめて舞歌さんを敵にまわさない様にしておこう、せめて・・・
「そろそろ出ようか。」
「うん、次は何処に行くの?」
俺達は喫茶店を後にする。
俺達を監視しているカイト達も付いて来る。
多分隠れているつもりなんだろうが、T−LINKがあるから二人とも位置が黙っていても解るぞ。
「ねえ、アー君、次は何処に行くの?」
枝織ちゃんが俺の前に立つ。
「ん〜どうしようか・・・大体まわったからな・・・」
今は大体四時、日も沈みかけている。
今まで俺達は遊園地内の絶叫系を除くアトラクションをあらかた遊び尽くした。
残っているのは・・・
「後は観覧車だね、ここの観覧車は景色が良いので有名らしいから、
今の時間なら丁度夕日で綺麗だろうから,行こうか?」
「うん、行こう。」
俺達は観覧車へと向かう。
あ、そうだ、観覧車でなら会話を聞かれる事もないだろうから、ちょっと聞いておこう。
「ねえ枝織ちゃん、聞きたい事があるんだけど。」
俺は観覧車に乗って少し上がった所でこう切り出した。
「何?」
「君はお父さんの事を、北辰の事をどう思ってるの?」
「え?お父さんの事?えっとねぇ・・・」
俺はその回答にあの時北辰を殺せ無かった事を新ためて後悔する事になる。
カイトサイド
「アキト達は観覧車に乗ったぞ。」
アキトの後を追い、アキトと4つ後の観覧車に乗った俺達はそこでルリ達に現状を報告する。
『何ですって!!カイトなんとしても会話を盗聴して!!』
「やってみよう。」
『それから、場合によっては狙撃する事も許可します。』
「了解。」
ルリとの通信を終え、アキト達のいる方に向き直る。
それにしても狙撃とは・・・ルリかなりキタようだな,さっきの。
まあ、あんな甘いシチュエーション経験が少ないからな。
「狙撃とは穏やかじゃないなあ。」
ナオも狙撃には少し不満の様だ。
狙撃と言っても当たる事は期待できない。
ルリも解っていて、邪魔ができれば良いと思っていると思うが・・・
「まあ、場合によってはだろ。
それより、有線の盗聴機があったろ、出してくれ。」
「いいが、どうするんだ?」
「コードをいっぱいに伸ばせば何とか届くだろ。」
「へいへい。」
俺は窓から手を出し、アキトの乗っている観覧車に盗聴機のマイクを投げつける。
古い物だが物理的な盗聴となると防ぐのは容易ではないから使っている。
マイクと繋がっているコードも本当に良く見ないと気付かないほど細いから便利だ。
では、二人の会話を聞くとしよう。
『・・う、で・・そ・・・ちが・・・・・・』
む、音質が悪い、付ける位置が悪かったか?
『なら・・・アー・は愛してくれるの?』
!!愛してくれるの?だと!!北斗め、なんて事を言っているんだ!!
『・・・織ちゃ・は俺・・・・の・・・ってるの?』
待て!!いったい何処からそんな会話になったんだ!!
『私・・・好きだよ。』
「おい、ナオ、ライフル。」
「と,とりあえず落ち着けって。」(汗)
多分今の会話を一緒に聞いているナデシコのブリッジは地獄絵図になっている事だろう。
だが、その会話はまだ続いていた。
『そう、・れ・・・俺はきみ・・・・・・・・・・・・を、、あい・・・・・・し・てあげ・・るよ。』
「ナオ、フェザーランチャーを出せ!!」
「落ちつけよ、カイト、場所を考えろ。」
俺がナオに掴みかかっていると俺達の前にウィンドウが開く。
ピッ!!
『カイト、一旦戻ってきなさい。』
いつも通りの声に聞こえるが目が据わっているルリ。
「何をいているんだ、今なら狙えるぞ!!」
『今連盟の緊急会議でアレを使う事が決定しました。』
「アレ?ああ、あの実験中のやつを使うのか?」
アレとは新型のお仕置きシステムだ、詳細はトップシークレットだぞ。
『ええ、ですからもう戻ってきて良いですよ。
どうせT−LINKからは逃げられませんから。
ふふふふふ・・・』
そうか、アレをつかえるなら良いだろう。
「解った。
ナオ。」
俺はナオを掴んでジャンプの準備をする。
「なあ・・・アレってなんだ?」
「詳細は秘密だが、お仕置きのミラクルコースとだけ言っておこう。」
「そ、そうか・・・」
(アキト、ちゃんと逝けよ・・・)
「目標、ナデシコ、ジャンプ!!」
シュゥゥゥゥゥゥ・・・
俺達を虹色の光りが包む。
パシュン!!
そして俺達はナデシコに向けて時空を跳ぶ。
アキトサイド
俺は枝織ちゃんの話しを聞き、人と言う物が信じられなくなりそうだった、
いや、奴は,北辰は最早人間では無いか・・・
北辰が枝織ちゃん、北斗にしてきた教育、それは・・・殺人人形を作るような物だった。
枝織ちゃんのこの無垢さをも利用した。
「お父さんはね、言うと通りに仕事をしたら愛してくれるんだよ。」
・・・屈託の無い笑顔で語る枝織ちゃん。
俺は・・・
「そう、でも俺はそれは間違っていると思うよ。
俺はそれを愛とは言わないと思うな。」
この子も北辰の・・・いや、戦争の被害者だ。
俺はこの子を救えるだろうか?
そもそもこの子の救いが何なのかは解らないが。
「え?・・・そうなの?じゃあ、アー君は私を愛してくれるの?」
でも俺は、何かをせずにはいられなかった。
俺なんかが、死と血にまみれた俺が本当の『愛』を教えられるとは思えない。
だけど・・・
「枝織ちゃんは俺や舞歌さんの事をどう思ってるの?」
少なくとも・・・
「私は舞歌おねえさんもアー君の事も好きだよ。」
今の俺は一人じゃないから
「そう、それなら俺達は君に北辰が教えられなかった、愛情という物を教えてあげられるよ。
俺一人では無理だけど、ナデシコの皆、優華隊の人達、舞歌さん,皆で教えてあげるよ。」
「ホント?」
「ああ、皆が君に言う事、する事の意味をよく考えてみるといい、きっと君の事を思っている筈だ、
まずはそこからだね。
優華部隊の人達の事も好きかい?特に零夜ちゃんだっけ?彼女とは仲が良いけど。」
「うん、零夜ちゃん好きだよ。」
「そう。
あ、枝織ちゃん、外を見てごらん。」
話しこんでいる間に観覧車は頂上付近に着ていて、空も夕日に染まっていた。
「木星では見れないでしょう?どお?」
「ん〜外が赤くなって見える。
物の色が判別しにくいからイヤだ。」
「そう、俺はこの景色は綺麗だと思うな。」
「そうなの?ん〜〜・・・」
俺は枝織ちゃんと一緒に外の風景を眺める。
そして、終点近くなって枝織ちゃんのほうを見ると
「枝織ちゃん、そろそろ・・・ああ、寝ちゃったのか。」
「・・・すー・・・」
天使の寝顔をした枝織ちゃんがいた。
しょうがないな。
俺は枝織ちゃんを背負って観覧車を出る。
そして、遊園地を出て、人気の無い公園、
公園と言っても滑り台とかがあるような所ではなく木とかが沢山ある自然公園って言うのかな?
そんな所だ。
俺達は来る時も『ファルコン』に乗ってここに降りてきたのだ、因みにナオ達も『レックス』で来た様だ。
と言う訳で、帰る為にまた『ファルコン』を・・・
スゥ・・・
パスコードを言おうとした瞬間、俺の首に手刀が添えられる。
「何故俺がお前の背中にいる?」
枝織ちゃんじゃない、北斗か!!
と、言うことは・・・
「枝織ちゃんが眠ってしまったから俺が運んでるんだよ。」
失念していた、俺は俺と互角の戦闘能力を持った暗殺者を背負っているのだった・・・
「そうか、まあ良い。
良いが、まず下ろせ。」
俺は言われた通りに北斗を下ろす。
「では決着をつけようじゃないか。」
少し距離を置き、構える北斗。
殺気を放ち、昂気を纏う・・・
が、すぐに殺気を向ける対象が変わる。
「決着をつけるのも良いが、その前にお客さんを相手しなくちゃいけないな。」
どうやら俺達は囲まれた様だ。
「その様だな、俺達の戦いを邪魔するのだからタダでは帰さんぞ。」
俺達はそれぞれ後ろを向いて
「「出て来いよ。」」
敵は7人、周りに人はいない、ここは結構開けてるし、広い。
丁度良いな。
音も無く姿を現した敵は全員同じ黒いローブにピエロの様な仮面、
死神ってところか?
「「俺の命は死神では取れないぞ。」」
俺と北斗は同時に同じセリフを言い、構える。