次ぎの日の朝 ナデシコ医務室

 

 メティの腕を中心とした身体中の治療と、

 実はかなり酷かったルリの足の治療、

 ルリの足は度重なる神速に足が付いて行かなかったらしく、

 もう少しで砕けてしまう所だったらしい。

 その他俺とカイト、ついでにナオさんとシキさんの治療も終えた。

 そして、メティも目覚めた所で、

 シキさん、ナオさんを除く俺達四人はイネスさんに一箇所に集まる様に言われ、

 ケガの酷いメティとルリは一つのベットに座り、

 俺とカイトはそのベットの横に立ち、椅子に座っているイネスさんに向かう。

 

「・・・貴方達に言っておきたいことがあるわ。」

 

 イネスさんはその第一声と共に自分は耳栓をして大きく息を吸い込み・・・

 更に、巨大なメガホンを取り出す。

 

 まあ、何をするかはバレバレだ。

 でも、メティは今両手を吊っているので対応できない、

 そのメティを同じベットでイネスさんから向かって左隣に座っているルリが

 両手を使いメティの両耳を塞ぐ。

 ルリの耳はそのルリの更に左側に立っていたカイトが塞ぐ。

 そしてカイトのは俺が塞ぐ。

 この対応が完了するまで1秒足らず。

 

 ・・・俺は?

 

 と、思ったときには既に遅く。

 

「何を考えてるの

 貴方達は!!!!!!」

 

 メガホンから放たれるイネスさんの声が医務室を振るわせる。

 

 パキィィン!!

 

 ケースのガラス割れて砕ける。

 

「・・・・・」

 

 キィィィィィィィィィィィィィィン

 

 ぐわっ・・・耳が、頭がぁ・・・・

 

 俺だけが直撃を受けた破壊音波は耳を通り越して俺の脳まで直接響いてくる。

 とりあえずのた打ち回りたいのを耐えてる。

 

(ごめんね、おにいちゃん、大丈夫?)

 

 メティからリンクのが入る。

 

(・・・一応。)

 

「何なの今回のケガは!!

 一体何をすればあんな重体になれるわけ、訓練で!!

 特にメティちゃんの腕なんか、私が見て、

 貴方達だと言うことを前提にして、

 私の作った新薬が無ければ、

 どんな名医でも切り落していたわよ!!」

 

((((新薬!?))))

 

 その言葉にその場にいた全員に緊張が走る。

 今回は全員がイネスさんの治療を受けているのだ。

 

「あの、イネスさん、その新薬と言うのはどのような物なんですか?」

 

 俺は意を決し、イネスさんに問う。

 

「説明しましょう。」

 

 イネスさんは俺の言葉に説教を中断し、説明モードに入る。

 

 早まったか?

 

「今回投与した新薬は体組織を強制で活性化させ、

 身体のもつ治癒能力を一時的に数十倍にする事のできる物よ。

 まず、この薬の作るに当って・・・・・・

 ・・・・・であり、この薬の問題点は使いすぎると細胞に負荷がかかり過ぎて、

 逆に死滅してしまったり、あるいは、変質してしまう可能性があることね。

 でも、この薬は実験体β(某ハリ)で試験を重ね、実験体α(ヤマダ)で完成させ、

 整備班で審査したから3回使う分には安全よ。」

 

 ・・・ハッ!!

 終ったのか・・・

 まあ、つまりは一時的にカイトと同じ体質になれると。

 それにしても何か気になることを言っていたような気がするけど・・・

 でももう1度聞くのは精神的にも肉体的にも無理だ。

 因みに皆も少しぐったりしている。

 

「だから傷の方は良いわ、ほぼ完全に消せるから。」

 

 イネスさんは説明に次いで説教モードに戻る。

 

 ・・・

 

(カイト、ジャンプフィールド発生装置は?)

 

(・・・さっき治療を受けた時にイネスに取られたままだ。)

 

(何処にあるか解るか?)

 

(・・・イネスの胸の内ポケット。)

 

 ・・・まじ?

 

(アキトさん、今の私の足では盗って来れません。)

 

(私は手が使えないし。)

 

(俺も二人ほどではないが足も手もまだ回復しきっていない。)

 

 3人が期待の眼差しを送ってくる。

 

 俺にどうしろと?

 いくら何でもあの服の胸の内ポケットから盗るとしたら、

 服を破くくらいしか方法は無いんだぞ?

 

「ちょっとアキト君、聞いてるの!!」

 

「あ、はいっ。

 聞いてます。」

 

 俺が抜け出す方法を考えていると、イネスさんからの怒声が飛ぶ。

 

「いい、アキト君、貴方もそうだけど、ヤガミ君とカグラ君(シキ)はともかく、 

 ルリちゃん、メティちゃん、カイト君も今は微妙な年頃なのよ!!

 今回みたいな大怪我をしていたらその内、一生の問題に発展するわよ!!

 それでなくても貴方達見たいな子供が・・・」

 

 イネスさんはそこで一旦言葉を止める。

 そして、俺達を見た後、意を決したのか、再度口を開く。

 

「・・・もう、戦うななんて言わない。

 いえ、言えないけど。

 傷付かずに強くなる事なんでできないのも解ってる。

 でも、せめて、せめてもっと自分の身体の事に気を使って。

 貴方達はこの戦いで人生の全てを棒に振ってはいけないのよ。」

 

 悲しげに俺達を見るイネスさん。

 

「だから、今から私が言うことは絶対守って。」

 

 そう言ってルリとメティを見るイネスさん。

 

「いい?」

 

 何の反応も無かったことが不満なのか、聞き返すイネスさん。

 

「「はい・・・」」

 

 二人は一応承諾する。

 

「まず、ルリちゃん、貴方の足はもう疲労が蓄積していて、

 後少しで砕けてしまうかも知れないわ、

 よって私が治った事を確認するまで、車椅子を使えとは言わないけど、

 足は歩く事以外はしないで。」

 

「え、それでは修行が・・・」

 

 ルリはその内容に抗議しようとしたが、

 イネスさんは無視して続ける。

 

「メティちゃんは腕はまず使えないけど、

 他の各部分も無理をしすぎているわ、

 貴方も私が治るまで一切の戦闘行為、修行は禁止します。」

 

「え?そんな!!」

 

 メティも抗議をしようとする。

 だが、

 

「これは人として、医者としての忠告です。

 これ以上は本当に二度と戦えない身体になるわよ。」

 

 その言葉に抗議を止める二人。

 

「返事は?」

 

「「解りました。」」

 

 二人は渋々承諾する。

 

「それと、アキト君とカイト君、貴方達も大分身体に疲労が溜まっているわ。

 最低二日は身体を休ませる様に。」

 

「「・・・え?俺もですか?」」

 

 突然話しを振られて俺とカイトは見事にそろって反応が遅れてしまう。

 

「そうよ、解ったわね。」

 

「「・・・」」

 

「沈黙は了解と取るわよ。

 じゃあ、ディア、リリス、クオン、フィリア。

 聞こえているんでしょう、出てきなさい。」

 

 イネスさんがそう叫んだ直後、

 俺達の前にAIズがその姿を現す。

 

「貴方達は各自自分の主に付いて回って、

 まあ、言わなくても付いて回ってるんでしょうけど、

 四人が約束を破らないように見張っていて、

 破ったら私に知らせるように。」

 

 どうやら信用が無いやらしい。

 

『それを知らせたらイネス姉様はどうなさるのです?』

 

 そんななかクオンがイネスさんに質問をする。

 確かにそれは気になるところだが・・・

 

「勿論私の薬で治るまで眠ってもらうわ。」

 

 しれっと答えるイネスさん。

 

((((ちょっと待て(って)。))))

 

 俺達の心の叫びは見事に重なった。

 ・・・別に意味は無いけど。

 

「貴方達も自分の主が大切なら、心を鬼にして知らせるのよ。」

 

『『『『は〜い。』』』』

 

 イネスさんの言葉に喜んで承諾する4人。

 

 こうして俺達はナデシコ艦内では最高の監視付きの生活を送る羽目になった。

 

 

 

 その頃 シャクヤク医務室

 サブロウタサイド

 

 

「・・・ここは?」

 

 見なれない天井。

 少なくとも俺の部屋では無い。

 

 とりあえず身体を起こすか。

 

「っ痛!!」

 

 ぼやけていた意識が身体を起こしたときに走った激痛に覚醒する。

 

「あら、気が付いたの。」

 

 俺が声の発生源へと目を向けると、

 そこには白衣を着た飛厘ちゃんが立っていた。

 視線を動かした時に解ったがどうやらここは医務室らしい。

 

「えっと・・・なんで俺が医務室で寝てるんだっけ?」

 

 意識は覚醒したが記憶がまだ繋がっていない。

 俺は記憶の糸を手繰り寄せる。

 

 確か、トレーニングルームに行って、北斗と鍛練してたんだよな。

 それで、片手無しのハンデで戦って、

 暫くは一進一退の攻防をして、

 それで、俺が持って来ていた風魔手裏剣を使って、

 その攻撃も北斗の昂気の爆発でやぶられ、

 それで・・・

 ・・・ここからの記憶が・・・ほとんど無いな。

 俺がここで寝ているって事は、まあ俺が負けたんだろうけど・・・

 ん?

 

 俺は膝のあたりに違和感を感じる。

 今まで感覚がほとんど戻ってなくて気付かなかった。

 

「三姫・・・」

 

 三姫は俺の寝ているベットの横で椅子に座り、

 俺の膝のあたりで自分の腕を枕にして寝ていた。

 普通は腕とか胸のあたり来るものだと思うが、

 それは俺が上半身に傷を負っている為だろう。

 

「感謝しなさいよ、

 その子、ついさっきまで起きて貴方の事診てたんだから。」

 

「そうか・・・

 ところで俺何時間くらい寝てたんです?」

 

 俺は三姫に感謝の気持ちを込めてその寝ている頭を撫でながら問う。

 

「26時間27分よ。」

 

「そんなに!!」

 

 では三姫は昨日の昼から1日近くも診ててくれたのか。

 

「そうよ、三姫、もう大丈夫だって言っても休もうとしないから、

 さっき私が眠らせたのよ。

 多分そうしなきゃ貴方が起きるまで診てる気だったろうから。

 っていうか、貴方、起きるの早すぎよ?」

 

 眠らすって・・・

 まあ、この際、三姫に無理をさせなかったのだから良いか。

  

「あ、それで、俺って、どうやってやられたんですか?」

 

 俺は今俺が一番疑問に思ってることを聞いた。

 俺の体には記憶に無い傷がある。

 背中と右腕は確か、風魔手裏剣を使ったときのカウンターで、

 受けた腕と壁に叩きつけられたものだと記憶しているが。

 左腕と胸のあたりに大きな傷がある。

 と言っても包帯が巻かれてて、痛いのは解るけど、どんな傷かは解らないが。

 

「覚えてないの?

 あれだけの事をして?」

 

 俺の質問に飛厘ちゃんは呆れている。

 

 俺、変な事を聞いたんだろうか?

 

「まあ、いいわ、教えてあげる。

 と、言っても私が見たのは貴方が止めをさされる所で、

 更に言うとあんまり良く見えなかったんあけどね。

 聞いた話も含めて説明してあげるわ。」

 

 そう言って、手近な椅子に座り、状況の説明を始める。

 

 

 昨日の昼過ぎ(舞歌視点)

 

 私は先の戦闘の資料を持って自室に戻ろうとしてた。

 その道で何やら包みを持った三姫と零夜にあった。

 

「何をしてるの?二人とも。」

 

 珍しいと言えば珍しい取り合わせに私はちょっと興味があって尋ねてみた。

 

「ええ、北ちゃん、お昼まだだろうから一緒にと思って。」

 

「私は・・・その・・・サブロウタにさっきのお礼でもと・・・」

 

 いつもの事、で当然の様に振舞う零夜と対照的に三姫の初々しい事。

 と言うことは、その包みはお弁当かしら?

 まったく、あの二人はし合わせ物ね、

 と言っても、北斗は女性だし、今やあのテンカワ アキトにお熱だけど・・・

 

「それで、北ちゃん見ませんでした?」

 

「その、サブロウタは何処にいるか知りません?」

 

「多分、まだ鍛練室じゃないかしら。」

 

 と言う訳で、いつもの北斗と零夜はいいとして、

 サブロウタと三姫の方が見てみたかったので、私は一緒に鍛練室に向かった。

 

 

 プシュ!!

 

 鍛練室に着いた私達は室内へと入る。

 

 だが、そこでは壮絶な光景が広がっていた。

 

 左手の手刀を上方へ突き出している北斗。

 昂気を身に纏っている事から本気である事が伺える。

 その北斗の右の頬を掠めて突き下ろされている棍。

 その棍の持ち主はサブロウタ。

 そして、北斗の手刀は・・・

 サブロウタの右の胸を貫通していた・・・

 

 少なくともこの位置からはそう見えた。

 

 ガタンッ!!タンッ!!タン・・・

 

 場に三姫が手に持っていたお弁当を包みごと落とした音が響く。

 そして

 

 ブシュ!!

 

 その音を合図にしたかの様に北斗の頬とサブロウタの胸から血が吹き出る。

 

 そこに更に北斗は

 

「ハァァァ!!」

 

 サブロウタを蹴り飛ばす。

 

 バン!!

 

 私達からみた北斗の方向の壁に叩きつけられるサブロウタ。

 その音で私達はやっと我に帰った。

 

「サブロウタ!!」

「北ちゃん!!」

 

 三姫と零夜はそれぞれ北斗とサブロウタに駆け寄ろうとした。

 だが

 

「邪魔をするな!!」

 

 北斗の怒声によりまたしても立ち竦んでしまう。

 

 北斗が『邪魔をするな』と怒声を発した、

 つまり、この戦いは貴方にとって楽しい物だったのね、北斗・・・

 

 壁に叩きつけられたサブロウタは何時の間にか立ち上がり、

 棍を両手に持ち、前に突き出すと言う構えを取っている。

 少し俯いている為、表情が伺えないが。

 そして、北斗もそれに向かい構える。

 ・・・右手がおかしい・・・関節を外しているのね。

 

「ふっ・・・」

 

 だが、北斗はすぐに構えを解く。

 それを見た零夜と三姫はそれぞれの想いの人へと駆け寄る。

 

「あ、まだサブロウタには近づくな。」

 

 だが、関節を付け治していた北斗はそう言って三姫を腕を掴み制止する。

 

「北斗殿、離して下さい!!サブロウタが!!」

 

 制止を振り切りサブロウタの元へ行こうとする三姫。

 

「ああ、北ちゃんの愛らしい顔に傷がぁぁぁ!!

 サブロウタ!!許すまじ!!」

 

 北斗の頬の傷を拭きながらサブロウタを睨む零夜。

 

 そんな中でもサブロウタは未だに構えを解いていない。

 それどころかさっきから全く動いていない。

 それを見たその場にいた三羽烏+その婚約者はサブロウタに近づこうとするが、

 

「だから、近づくなって言ってるだろ。」

 

 またしても北斗が制止する。

 

「零夜、貰うぞ。」

 

 北斗は零夜からお弁当の入った包みを奪う。

 

 ヒュン!!

 

「あ・・・」

 

 そして、零夜が何か言う前にそれをサブロウタ目掛けて投げつける。

 すると

 

 バコン!!

 

 それはサブロウタの棍の間合いに入ると同時に砕け散る。

 本当によく見ないと見えないが淡い緑の軌跡が残っている事から、

 サブロウタが棍で叩き落した事が想像できる。

 しかし、サブロウタは見た目は未だ1歩たりとも動いていない。

 って緑の軌跡?サブロウタの棍の色は赤よ?

 なんで緑の軌跡が・・・

 

 私がそれを確かめ様とした時には既に軌跡は消えていた。

 

「こう言うことだ。

 あいつに今意識は無い。」

 

 まあ、今は置いておきましょう。

 つまりは、今のサブロウタに全く意識は無く、

 近づく物を防衛本能で攻撃する状態、と言うわけだ。

 

「でも、早く治療しないと!!」

 

 三姫が泣きそうになりながら叫ぶ。

 サブロウタからは今も血が流れている。

 

「そうだな、ここで死なすのは惜しいから・・・」

 

 そう言って北斗はサブロウタの棍の間合いのぎりぎり外まで来て、

 

「ちゃんと手加減はするが・・・

 死んだらちゃんと化けて出ろよ?」

 

 そう言って北斗は右手に昂気を収縮する。

 

「破っ!!」

 

 ゴオォォォッ!!

 

 そしてサブロウタに放たれる昂気の塊。

 それを受けたサブロウタは今度こそ倒れ、動かなくなる。

 

 

 戻りまして

 

「それでその後、急いでここまで運んできて、私が治療を施した。

 と言うわけよ。」

 

 最初は座っていたのに今は立って、ホワイトボードを背に、解説する飛厘ちゃん。

 因みに俺がやられるところは図解までされた。

 そう言えば飛厘ちゃんに治療されたんだ、俺。

 ・・・どこも改造されてないよな?

 

 俺は一応自分の体をチェックする。

 

「あ、改造はしてないわよ。

 三姫の見ている前でそんなことするほど命知らずじゃないし。」

 

 てことはする気はあったんですか?

 

「そうそう、一応貴方の損傷個所を教えておくわ。

 まず、一番酷かったのは肋骨ね、5本折れてて、3本ヒビが入ってたわ。

 次ぎに胸の傷ね、私達の位置からもまるで胸を貫かれた様に見えたけど、

 掠っていただけ、と言っても肉が結構持って行かれてたけど、

 後は右腕の裂傷などなど、細かいのは沢山あるから省くけど、

 はっきり言って今貴方がそんなに元気なのはおかしいんだけど?」

 

 いや、そんな事を言われても、

 俺はどう答えれば良いのだ?

 

「まあ、あの北斗殿に傷を負わした奴だから当たり前と言ったら当たり前か・・・」

 

 なんか妙に納得されてるし。

 

「まあ、2、3突っ込みたい点はありますが・・・っと。」

 

 俺はとりあえずベットから降りて立ちあがる。

 

「ちょっと、貴方はまだ立ちあがって良いような身体じゃ・・・

 まあ、良いけどね・・・」

 

 飛厘ちゃんは、

 立ちあがって、とりあえず三姫を俺の寝ていたベットに寝かせる俺を見て、

 呆れているような、諦めているような顔をする。

 

 ・・・まあ、身体中痛いのは確かだけど、動けないほどではないと思うんだけど?

 

「ところで何か食べる物無いですか?」

 

 とりあえず昨日から何も食っていないので腹が減ってしょうがない。

 

「ああ、はいはい・・・」

 

 これもまた飛厘ちゃんは呆れたような顔で備え付けの冷蔵庫から何かを取り出す。

 

「はい、これ。

 昨日三姫が作っていたお弁当よ。

 食べられるなら残さず食べなさい。

 もし残したら・・・」

 

 そう言って飛厘ちゃんは右手にお弁当、左手にメスを持ち、

 笑顔で俺に弁当を差し出す。

 

「ははは・・・まさか、愛妻弁当を残す訳無いじゃないですか。」

 

 俺はお弁当を受け取り蓋をあける。

 そこには、昨日落としたせいか、片寄ってしまっているが、

 色とりどりのおかずとご飯が詰っていた。

 

「では頂きます。」

 

 俺は冷えている事には構わず、箸を進めて行く。

 

「座って食べなさいよ・・・

 まあ、いいわ、食べ終わったら三姫を部屋に連れていってあげてね。」

 

 飛厘ちゃんはそう言って椅子を持って、さっきまで作業していたのだろう、

 机に向かう。

 机には何やら設計図の様な物と、戦闘の資料が表示されていた。

 

「なにをやってるんで?」

 

 俺は食べながらもそのウィンドウを覗く。

 

「ああ、昨日の鍛練で、私では格闘戦で北斗殿はおろか、お前とも

 戦闘能力の差がありすぎて、ついていけ無いことがあらためて解ったからな、

 せめて機動戦ではちゃんとした援護くらいはできないものかと考えていたんだ。

 それで、とりあえずは自分の機体の見なおしをしているところだ。」

 

 そう言って先の戦闘の資料と自分の機体のデータを照らし合わせる飛厘ちゃん。

 

「それなら、いっその事機体を大きく改造してみてはどうです?」

 

「改造する案があればとっくにやってるよ。」

 

 確かにそうだな・・・

 飛厘ちゃんの特技は確か火器の扱いだったな、

 それなら・・・

 

「じゃあ、こう言うのはどうです?」

 

 俺はナデシコで見せてもらったラピスちゃん達の兵器の開発案から

 良さそうなのを紹介する。

 

「何?それでは・・・になるのではないか?」

 

「そこは・・・・して、ここを・・・・」

 

「なるほど!!ではここはこうすれば・・・」

 

「で、ここは・・・」

 

「良いじゃない!!サブロウタ、貴方何処でこんな知識を?」

 

「ああ、ナデシコでちょっといろいろと盗み見てきたのでね。」

 

「なるほど・・・と言うことはナデシコでこの案があったのか。

 ではもっと改造してオリジナルに昇華しておかないとな。

 ありがとうサブロウタ。

 では私はこれから本気で設計にかかるから。」

 

 そう言って、机に向かう飛厘ちゃん。

 

「ではごゆっくり。」

 

 俺は邪魔しない様に、寝ている三姫を抱いて、

 医務室から出る。

 

 プシュ!!

 

「ん〜流石に身体中痛いな・・・まあ大丈夫だろう。」

 

 俺はとりあえず三姫の部屋を目指す。

 

 その途中

 前から歩いてきた北斗と遭遇する。

 

「サブロウタか。 

 ふむ、もう大丈夫の様だな?

 ところで、なんで三姫を抱いているんだ?」

 

 向うから話し掛けてきた。

 北斗の頬には確かに傷らしきものがあるがほとんど消えていた。

 

「今から寝てしまっている三姫は部屋に運ぶ所なんですよ。

 傷の方は、まあ、戦えるようになるのはもう少し時間が要りますが。」

 

「なんだ、そうか。

 アキトとの戦いの間の暇つぶしには丁度良かったのに。」

 

 俺は暇つぶし程度かよ・・・

 まあ、暇つぶしになるだけましと考えた方がいいか。

 何時かは無視できない存在になっちゃる。

 

「ところで零夜を見なかったか?」

 

 俺が密かな決意をしていると北斗が尋ねてくる。

 

「いえ、見ませんでしたが。

 どうかなさったのですか?」

 

「いや・・・どうも零夜が昨日から機嫌が悪くてな。

 舞歌に零夜と話して来いと言われたんだ。」

 

 零夜ちゃんの機嫌が?

 ああ、昨日お弁当を俺に投げたからだろうな。

 ・・・多分俺後で零夜ちゃんに襲われるな。

 

「じゃあ、俺はこれで。」

 

「ああ。」

 

 俺は北斗と別れ、再度三姫の部屋を目指す。

 

 三姫の部屋

 

 とりあえずあの後は特に何も無く三姫の部屋に着き、

 俺は三姫を寝かせる。

 

「さて、俺はこれからどうするかな・・・」

 

 俺がとりあえず部屋から出ようとした時

 

「・・・サブロウタ・・・」

 

 三姫が俺の腕を掴む。

 

「三姫、起きて・・・

 なんだ、寝言か。」

 

 俺は再度三姫の寝顔を見詰める。

 本当に、可愛い寝顔だ。

 いがみ合っていた頃では想像もできないだろう。

 

「なあ、三姫、お前は本当に俺で良いのか?」

 

 ふと、三姫の寝顔を撫でながらそんな事を呟く。

 何年も俺なんかを待っていてくれたんだな、この子は・・・

 前回の世界では俺は気付く事無くナンパに明け暮れていた。

 そんな中、俺はアキラと出会ってアイツに惹かれた・・・

 俺は・・・

 

「はぁ・・・俺はやっぱり根っからのナンパ野郎かもな・・・

 すまんな、三姫、もう少し待ってくれ。

 俺は俺なりに決着を付けたいんだ。」

 

 俺は俺の腕を掴んでいた三姫の手を外し、部屋を出る。

 

 プシュ!!

 

「さて、とりあえずは血の補充でも・・・」

 

 俺が食堂にでも行こうとしたその時だった。

 

「高杉 三郎太!!人誅ぅぅぅぅぅ!!」

 

 後方からそんな声が聞こえたと思ったら、 

 俺の意識はブラックアウトした。

 

 シリアスやった後すぐにこれですか・・・

 

 

 

 なかがき

 

ル:どうも皆さん、おひさしぶりです。

ア:まったくだな。

ル:え〜作者からの伝言です

  『今回はいろいろな不幸、事故が重なり、更新が遅れたことを深くお詫び致します。』

  だそうです。

  ドラクエWをやりこんでいた人のセリフじゃないですね。

ア:まあでも本人もパソコンの方もウイルスで苦しんだりしたのは確かだし。

ル:まあ、それはおいときまして、次ぎの投稿は1週間以内にさせますので、

  どうか見捨てないでやってください。

ア:はい、それでは途中集計です。

ル:はい。現在も前回と1と2の差は変わりません。

  3はいるにはいるのですが1と2との差が開きすぎたので断念します。

  といっても1と2が同率だった場合がありますが・・・

ア:はい、でも結構賛否両論なのにビックリしていたりします。

ル:そうですね。

  『・・・でなきゃダメ』と言う人が結構いました。

ア:作者の悩む所ですね。

ル:まあ、あいつはいくら悩んでも良いですが。

ア:それから、また新たに何か来ています。

ル:はい、それでは内容です。

  『ルリ、ラピス、カイト、メティ、アキラ、アヤなら誰が良いですか?』

  ・・・いったい何の事でしょうか?

ア:それは、敢えて聞かないでやってください。

ル:まあ良いでしょう。

  では今回はこの辺で。

ア:またお会いしましょう。

 

 

 

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